上 下
13 / 35
2章 ドラクル伯爵の野望

夏休みの始まり

しおりを挟む
 ここは、日本のトランシルバニアと呼ばれている、山に囲まれた『かぼちゃ町』です。その東側に広がる『あやかしの森』の中に、ツタがからまる赤い屋根の洋館があります。

朝霧あさぎりの立ち込める中、洋館の両開きの木の扉が開き、中から、フリルの白いシャツと黒いミニスカートを着用した、金髪に赤いひとみの少女が大きなカバンを持って現れました。

「おはようシャノンさん、さぁ、行こう」
「まさる君、それに麻里子や剛君も来てくれたんだ」

 朝霧が晴れてくると、屋敷から出てきたシャノンの前に、黒髪の十歳の少年、サマードレスを着込んだ黒髪に円メガネをかけた少女、顔につぎはぎのある人造人間の少年の三人です。

「シャノンさん、ぼくたちを招待してくれてありがとう」
「行先は、隣町のたまねぎ町だったわね」
「さぁ・・・行こう・・・!」シャノンは三人に連れられて森を出て、中央街ちゅうおうがいへと向かっていきます。

 今は、四人が通っている小中高しょうちゅうこう一貫校いっかんこう『聖クルス校』も夏休みに入り、気心の知れた四人で、これからとなりまちのたまねぎ町へ七泊ななはく八日ようかの旅行に行くことにしたのです。

 四人が、中央街の住宅街じゅうたくがいにある駅のホームに入ると、そこには、白いシャツにジーパンを着用した四十代前後の人間の女性と、まさるくらいの竜人の少年や赤い帽子をかぶった赤毛エルフの少女、猫の獣人の少女や団子鼻のゴブリンの少年など、人間以外の異種族の子供たちが待っていました。

「おはようございます、シャノンさん、皆さん、時間ぴったりですね」
「おはようございます、園長」そして間もなく、ホームに銀色に緑のラインが入っている直方体の車体を持つ三両の列車が停車すると、列車は両開きの扉を開きます。

「はい、虹色園にじいろえんの皆さん、押さないでゆっくりと乗ってください」シャノンたちは列をなして、列車の中へと入っていきます。全員乗り終わると、列車は扉を閉め、間もなくゆっくりと発車します。

 列車はほどなくして、目的地のたまねぎ町に到着すると、シャノンたちは、列車を降りて、ホームに降り立ちます。

「はい皆さん、これよりこの海浜町かいひんちょうのホテルに移動します。一列に並んで・・・!」園長はシャノンたちを先導せんどうして、駅を出ていきます。海浜町は、周りを水路に囲まれた西洋風の建物が目立つ町で、ここだけ日本じゃないみたいです。

「きれいな町ね」

「そうだね、かぼちゃ町に海はないもんね、潮風しおかぜが心地いいや」シャノンとまさるが話しながら進んでいくと、ほどなくして黄色い屋根にレンガをくみ上げて建てられた『シーサイド海浜ホテル』に着きました。園長は、シャノンたちをホテルの大ホールへ先導せんどうします。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

エロ・ファンタジー

フルーツパフェ
大衆娯楽
 物事は上手くいかない。  それは異世界でも同じこと。  夢と好奇心に溢れる異世界の少女達は、恥辱に塗れた現実を味わうことになる。

知ったかぶりのヤマネコと森の落としもの

あしたてレナ
児童書・童話
ある日、森で見つけた落としもの。 動物たちはそれがだれの落としものなのか話し合います。 さまざまな意見が出ましたが、きっとそれはお星さまの落としもの。 知ったかぶりのヤマネコとこわがりのネズミ、食いしんぼうのイノシシが、困難に立ち向かいながら星の元へと落としものをとどける旅に出ます。 全9話。 ※初めての児童文学となりますゆえ、温かく見守っていただけましたら幸いです。

【ヤンデレ鬼ごっこ実況中】

階段
恋愛
ヤンデレ彼氏の鬼ごっこしながら、 屋敷(監禁場所)から脱出しようとする話 _________________________________ 【登場人物】 ・アオイ 昨日初彼氏ができた。 初デートの後、そのまま監禁される。 面食い。 ・ヒナタ アオイの彼氏。 お金持ちでイケメン。 アオイを自身の屋敷に監禁する。 ・カイト 泥棒。 ヒナタの屋敷に盗みに入るが脱出できなくなる。 アオイに協力する。 _________________________________ 【あらすじ】 彼氏との初デートを楽しんだアオイ。 彼氏に家まで送ってもらっていると急に眠気に襲われる。 目覚めると知らないベッドに横たわっており、手足を縛られていた。 色々あってヒタナに監禁された事を知り、隙を見て拘束を解いて部屋の外へ出ることに成功する。 だがそこは人里離れた大きな屋敷の最上階だった。 ヒタナから逃げ切るためには、まずこの屋敷から脱出しなければならない。 果たしてアオイはヤンデレから逃げ切ることができるのか!? _________________________________ 7話くらいで終わらせます。 短いです。 途中でR15くらいになるかもしれませんがわからないです。

13歳女子は男友達のためヌードモデルになる

矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

妻がヌードモデルになる日

矢木羽研
大衆娯楽
男性画家のヌードモデルになりたい。妻にそう切り出された夫の動揺と受容を書いてみました。

処理中です...