夜の姫君 シャノン

1章 秘密組織AHMS

悪霊退治

　午後８時、まさるは、手提てさげランプを持って、たけしが待つ墓場の入口へやってきました。

「よし！時間通りに来たな！」たけしもバットを肩にかけており、まさるは不安な表情でランプをかまえながら、おぼつかない足取りで墓地を進みました。間もなく、暗闇のむこうに、うっすらと白いもやの塊かたまりが漂ただよっているのを見つけました。恐る恐る近づいてみると、それは、両手を顔に当てて泣いている白いドレスを来たおさげの女性の姿になりました。

「こいつが例の悪霊なんだな・・・！？」たけしがバットをかまえると、まさるは首をかしげています。
「そんなに悪そうには見えないけど・・・！？」

　しかし、たけしはバットを問答もんどう無用むようで振り回します。しかし、バットは霊れいを素通りするだけで、何かが当たるような手ごたえはありませんでした。

「くそっ！当たらねぇ・・・！」すると、すすり泣く声が金切り声に変わり、目の前の大きな墓石はかいしやら小石やらが宙に浮き、霊を中心に墓石や小石が回り出します。

「おい・・・！なんだかやばそうだぞ・・・！逃げろ～！」たけしはバットを投げ捨てて、一目散に逃げだしたのです。まさるは腰が引けて動けません。まさるに大きな墓石が迫ってきたその時でした！

　まさるが恐る恐る目を開けると、目の前に、赤いリボンをあしらった黒いドレスをまとう、金髪のロングヘアーの女性が現れて、その五体で大きな墓石を受け止めていたのです。女性は暗闇で光る赤い瞳を向けて言いました。
「大丈夫？まさる君！」その顔と声にまさるはハッとします。

「ノーブルさん！」まさるがゆっくりと立ち上がると、ノーブルはすぐ横に墓石を置おきます。
「ノーブルさん！こいつは悪霊なんだ！逃げよう！？」しかし、ノーブルは首を横に振ります。

「まさる君、彼女は悪霊なんかじゃないよ！私にはわかる！」ノーブルはポケットから宝石箱を取り出し、開けると、中には一カラットのダイヤが輝くプラチナの指輪が入っていました。
「あなたがこのあたりで無くした指輪だよ！約束通り、見つけておいたよ！あなたが恋人からもらったあの指輪を・・・！」それを見た霊はすすり泣くのをやめてこう言いました。

「ああ、それを・・・私に・・・ちょうだい・・・！」ノーブルは霊の薬指に指輪をはめてあげると、霊は晴れやかな顔で、光に包まれて消えていきました。
「ありがとう・・・ノーブルさん・・・！」ノーブルは両手を腰こしに当て、少し怒おこった声で言います。

「もう、こんな夜よる遅おそくにうろついたらダメよ！それから、私の事は今度からシャノンとお呼びなさい！
私たち、もう何年もお隣となり同士どうしなんだから・・・！」これにまさるは静かにうなずきます。

「・・・わかったよ、シャノンさん・・・」これに、シャノンは口元をゆるめます。
「それでいいんだよ。じゃあね・・・」シャノンはまさるのほおをなでると、去り際ぎわにこう言いました。

「・・・私から逃げられるなんて思わないでね♡」シャノンは霧の向こうへと消えていったのです。
「シャノンさんの手・・・冷たい・・・前から思っていたけど、シャノンさんって何者なのかな？」