上 下
17 / 48
3章 第2の神器

3-5 レジスタンス

しおりを挟む
 親子の案内で、エルニスとキャンベルは町はずれの緑地にやって来て、母親が噴水ふんすいのそばにある女神像のベルトのバックルを押すと、そばに地下への階段が現れたのです。全員が地下に下り切ると、壁にあるスイッチを押して、入口を閉じます。

 そこは、石のブロックの壁に囲まれた地下道で、たいまつやキャンベルの帽子の明かりを頼りに進んでいきます。やがて突き当りにとびらがあり、幼い息子が扉をノックすると、扉の奥から声がします。

「合言葉は?」
「自由よ、永遠に!」扉が開くと、中からよろいを着た兵士が現れました。

「なんだ、ピートじゃないか!お連れもいるようだ、さぁ、中に入って!」

 エルニスたちが部屋に入ると、そこはランプの明かりにらされた広い地下室で、麻の服を着たヘリオポリスの国民たちや鎧を着た兵士たちがいました。ピートが言います。

「みんな、強い味方を紹介するよ!勇者のエルニスさんと魔法使いのキャンベルさんさ!」それを聞いた途端とたん、周りの者たちは武器をかまえて、エルニスたちを取り囲みます。

「みんな!大丈夫だよ、キャンベルさんは悪い魔法使いじゃないよ!」ピートは必死にうったえますが、みんなは耳を貸さず、構えを解きません。

「魔法は人にあってはならない力です!教会は今も昔もそう教えています!」青いブレザーと白いスカートを着用した、金髪のロングヘアーの少女は弓をかまえて言い放ちました。エルニスとキャンベルが戸惑っていると、人々の奥から声がひびきわたりました。

「みんな、やめなさい!」それを聞いた途端とたん、人々はハッとします。

「おお!メアリ大統領だいとうりょう!」人々の視線は、青いロングドレスを着た精悍せいかんな顔つきの女性に注がれました。

「みなさん!今は争う時ではありません!共に手を組む時です!いいですか!?人間も異種族も魔法族もありません!良い者か悪い者か、それだけです!その他者を認めない振る舞いが、多くの争いを生んだのです!今この場でも、同じ過ちを繰り返すのですか!?」これに、周りの者は黙り込んでしまいまいます。

「確かに、そんなに悪い人には見えない・・・!」
「キャンベルさんは、間違いなく私たち親子を救ってくれました!」これにキャンベルも言います。

「そうです、魔法が悪いんじゃなくそれを悪用する者が悪いんです!魔法は世のため人のために生かされなければなりません・・・!」

「まさに、彼女の言う通りです!さぁ、キャンベルさん、こちらに!」メアリ大統領はキャンベルをまねき入れると、中でせいなる炎が燃えているダイヤ型のわくそなえた赤茶色の杖を手渡しました。

 キャンベルが杖を取ると、聖火が一段と明るくかがやきだしたのです。

「おお!人々をみちびく真の賢者けんじゃのみがあつかうことができるとされる神器『賢者のたいまつ』が輝きをしました!

 今、魔王軍は、このヘリオポリスのシンボルである『ヘリオスの灯台』の灯を消し去ってしまいましたが、そのたいまつの火を再び灯台に灯せば、邪気じゃきを払い、この国を取り戻す事が出来ます!」


 エルニスとキャンベルは、町の南西にそびえたつヘリオスの灯台に向かいます。三つのそうからなる石造いしづくりの塔で、前面をいろどるステンドグラスやとんがり屋根があり、灯台と言うより城か礼拝堂れいはいどうのようです。

「きれいな灯台だね」

「ええ、この国のいしずえとなった炎と太陽の神『ヘリオス』をまつる場所でもあるそうです、行きましょう!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ようこそ、悲劇のヒロインへ

一宮 沙耶
大衆娯楽
女性にとっては普通の毎日のことでも、男性にとっては知らないことばかりかも。 そんな世界を覗いてみてください。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

RUBBER LADY 屈辱の性奴隷調教

RUBBER LADY
ファンタジー
RUBBER LADYが活躍するストーリーの続編です

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

朝起きたら女体化してました

たいが
恋愛
主人公の早乙女駿、朝起きると体が... ⚠誤字脱字等、めちゃくちゃあります

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

処理中です...