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2章 森の危機

2-5 魔王軍の戦士

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 森の北には、ツタがからむ、くずれた古い石の塔があったのです。

 中に入るとそこには、テイルと同じ森に住む妖精人類のエルフたちが集まっており、彼らの視線は、リザードマンやオークがわきを固める奥の壇上だんじょうの上にいるよろいと赤いマントを着込んだ黒髪のショートヘアーのエルフの男に集まっていました。壇上のエルフの戦士が語り掛けます。

同志どうし諸君しょくん!おれは魔王アガレスひきいる魔王軍の幹部かんぶ『ダークトライアド』が一人、レイドだ!我々エルフは、人間どもに住みかを追われてきた!

 その人間どもは今、我々の領域りょういきに土足で上がり込み、好き放題にらしまわている!こんな暴挙ぼうきょが許されていいのだろうか!?」

 これに、「許されてなるものか!」と言う声があちこちで上がります。

「我々に従えば、もう、人間どもにおびやかされない生活を約束しよう!さぁ、我々に続け!人間どもに思い知らせてやるのだ!戦いだ!」会場から歓声かんせいが上がると、エルニスたちがおどり出ました。

「待て!そんなことはさせない!」これに、聴衆ちょうしゅうの視線が一気にエルニスたちに注がれます。

「なんだ!?お前たちは?我々のジャマをするのか!?」これに、テイルが名乗り出ました。
「父さん!こんなことはやめて!」それを聞いたエルニスとキャンベルはおどろきを隠せません。

「えっ!?あいつがテイルのお父さん!?」これにテイルはうなずきます。
「そう、生き別れた私の実の父よ!」レイドはテイルに向き直ります。

「ほう、テイルか!?クレアと共に森を去ってからずいぶん時がたったな、そうか、お前は人間どもの手下に成り下がったってわけか!?」これに、テイルは首を横に振ります。

「私は誰の手先にもなった覚えはないわ!そんなことをしたら、互いに犠牲ぎせいが出るだけよ!」
「それは覚悟の上!どうしても我々を止めたいのなら、おれと一対一の決闘をしろ!」

 仕方なく、テイルは勝負を受けて立つことにしました。テイルは右手に格闘用かくとうようの手甲を付けると、間もなく、両者の対決が始まります。

 レイドが剣でなぎ払うと、テイルはしゃがみ込んでレイドに足払いをかけ、バランスを崩したところにボディーブローを放ちます。

「うぐぅ・・・!やはり腕を上げたな!ならば!」レイドは風の気を体にまとうと、さっきとは段違いのスピードになり、嵐のように迫りくる剣に、テイルはかわし切れず、体に次々に赤いすじが出来ていきます。

「くっ・・・!」

「やはり、人間の手下になり果てたヤツは弱い!」テイルは後ろに飛びのいて、距離きょりをとります。

「これで決めてやる!」レイドが剣をかまえ、一気に向かっていったかと思うと、テイルの周りにも、風の気が渦巻きます。

「まさか、テイルも風の属性の気を!?」
「私、魔法はできないけど、気を操る技は得意なのよ!こういう風にね!」

 テイルが手刀で空を払うと、そこからかまいたちが巻き起こり、レイドを大きくよろめかせます。そのスキに、テイルは一気に接近し、拳の連打を浴びせまくり、レイドのそく頭部とうぶに回し蹴りを叩き込んで打ち倒します。

「勝負あったわね!」

「くっ・・・!こうなったら、この塔に封印されている古の悪魔をよみがえらせてくれる!」レイドは壇上の後ろにある日本の柱のうちの一つを動かすと、壇上の奥にある石の扉が左右に大きく開き、中から、ライオンの頭部を持つ人間の体に、コウモリのつばさを生やした悪魔が現れたのです。

「おお!これがかつて、このイーストメイン大陸全土を手中に収めたとされる悪魔タイラントか!?」
 
 タイラントが雄たけびを上げると、その場にいた者たちは震え上がります。
「ぐぅおおおおっ!よく寝たわい!」タイラントはレイドに向き直ります。

「お前がオレ様をよみがえらせてくれたのか!?ならば礼として、お前をオレ様の生贄いけにえにしてやろう!」

「なにっ!?よるな!」タイラントの前にエルニスが立ちはだかります。

「なんだお前は!?邪魔じゃまするなら、貴様から喰ってやる!」
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