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誤解しているかもしれないから、説明しておこう
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放課後は、はじめてのカップル登校に続いて、はじめてのカップル下校である。偽装だとわかっていても、恥ずかしいし、緊張する。
何だか、私たちを見て、ひそひそ囁き合ってる人たちもいるし……。ああいうわかりやすい冷やかしって、本当にする人たち、いるんだ……。
「行くぞ」
「あ、はい。よろしくお願いします」
「気に病む必要はない。迷惑をかけているのは、こちらだからな」
「そ、そんなことありません。私こそ、わざわざこんなことまでしてもらって、申し訳なくて……」
「……そうだな。誤解しているかもしれないから、説明しておこう。護衛役を買って出たのは、君が心配なのもあるが、それだけではない。単純に、僕の好奇心を満足させる意味もある」
先輩が私を誘う。帰りながら話をしようということのようだ。確かにここにいれば、色んな意味で耳目を集めてしまう。
「先日も述べたが、君が大事件に遭遇する確率は、統計から大きく外れている。こういった例外はどのようなデータにもつきもので悩みの種であるのだが、事実は事実として認めねば先には進めない」
歩いて話をしつつも、先輩が周囲に気を配っているのがわかる。こういう技術も、仕事で身に着けたんだろうか。
「で、失礼を承知で言うが、今僕は、その例外的事実を観測できる機会を手に入れた。これは、何ものにも代え難い経験なんだ」
「そういうもんなんですか?」
先輩は頷く。つまり、珍しい事例として、私を間近で観察したいということなのだ。
「実際早速一つの事件に巻き込まれたわけだが。この先本当に君の周囲でああいった事件が頻発するのか。僕はそれを確認したい」
「でも、こうして護衛してもらったら、本来遭うはずだった事件に遭わなくなっちゃうのでは?」
「それならそれで構わない。警戒すれば防げるものだった、という結果が得られるわけだからな」
だが、と先輩は言葉を続ける。
「これまで君が関わった事件をすべて調べさせてもらった。確かに警戒していれば防げた案件も少なくないが、ニュースになったような大事件はどれも、警備のプロでもない一般人が警戒したところで防げたとは思えない事例ばかりだ。つまり、本当の大きな事件に関しては、何をどれほど気を配ろうと、巻き込まれるのだ、という結果が導き出される」
「……駄目なんですか」
私はちょっぴりがっかりして肩を落とす。先輩がこうして警護してくれることで、平穏な日常が手に入るなら。そんなことをひっそり期待していた自分が、心の奥底にいた。
「あくまで、これまでのデータを見る限りでは、という話だ。そこのところをこそ、僕は確かめたいのだ」
だからこうして個人的に警護の任についている、ということなのだ。
「だから、君が気に病む必要は、まったくない」
「……はい」
気持ちとしては複雑ではあるけれども、私が一方的に迷惑をかけているのでないなら、よかったとは思う。
だが、それが別のイベントを連れてくるとまでは、想像できなかったわけで。いや、むしろ想像しておいてしかるべきであったわけで。
屋敷の前まで帰り着くと、正門のところに父母が立って待っていた。
何だか、私たちを見て、ひそひそ囁き合ってる人たちもいるし……。ああいうわかりやすい冷やかしって、本当にする人たち、いるんだ……。
「行くぞ」
「あ、はい。よろしくお願いします」
「気に病む必要はない。迷惑をかけているのは、こちらだからな」
「そ、そんなことありません。私こそ、わざわざこんなことまでしてもらって、申し訳なくて……」
「……そうだな。誤解しているかもしれないから、説明しておこう。護衛役を買って出たのは、君が心配なのもあるが、それだけではない。単純に、僕の好奇心を満足させる意味もある」
先輩が私を誘う。帰りながら話をしようということのようだ。確かにここにいれば、色んな意味で耳目を集めてしまう。
「先日も述べたが、君が大事件に遭遇する確率は、統計から大きく外れている。こういった例外はどのようなデータにもつきもので悩みの種であるのだが、事実は事実として認めねば先には進めない」
歩いて話をしつつも、先輩が周囲に気を配っているのがわかる。こういう技術も、仕事で身に着けたんだろうか。
「で、失礼を承知で言うが、今僕は、その例外的事実を観測できる機会を手に入れた。これは、何ものにも代え難い経験なんだ」
「そういうもんなんですか?」
先輩は頷く。つまり、珍しい事例として、私を間近で観察したいということなのだ。
「実際早速一つの事件に巻き込まれたわけだが。この先本当に君の周囲でああいった事件が頻発するのか。僕はそれを確認したい」
「でも、こうして護衛してもらったら、本来遭うはずだった事件に遭わなくなっちゃうのでは?」
「それならそれで構わない。警戒すれば防げるものだった、という結果が得られるわけだからな」
だが、と先輩は言葉を続ける。
「これまで君が関わった事件をすべて調べさせてもらった。確かに警戒していれば防げた案件も少なくないが、ニュースになったような大事件はどれも、警備のプロでもない一般人が警戒したところで防げたとは思えない事例ばかりだ。つまり、本当の大きな事件に関しては、何をどれほど気を配ろうと、巻き込まれるのだ、という結果が導き出される」
「……駄目なんですか」
私はちょっぴりがっかりして肩を落とす。先輩がこうして警護してくれることで、平穏な日常が手に入るなら。そんなことをひっそり期待していた自分が、心の奥底にいた。
「あくまで、これまでのデータを見る限りでは、という話だ。そこのところをこそ、僕は確かめたいのだ」
だからこうして個人的に警護の任についている、ということなのだ。
「だから、君が気に病む必要は、まったくない」
「……はい」
気持ちとしては複雑ではあるけれども、私が一方的に迷惑をかけているのでないなら、よかったとは思う。
だが、それが別のイベントを連れてくるとまでは、想像できなかったわけで。いや、むしろ想像しておいてしかるべきであったわけで。
屋敷の前まで帰り着くと、正門のところに父母が立って待っていた。
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