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国は告げている
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翌日の朝、私は珍しく、音鳴さんに出会った。
「おはようございます……」
「おはようございます。そういえば昨夜は部屋にいらっしゃったんでしたね」
「ええ……。しかし……確かに騒がしかったですねぇ……あそこ」
「でも、前回よりはだいぶましでしたよ。おじいさんのアレが利いたんじゃないかしら」
「前回は……もっと……騒がしかったんですか……?」
「ええ。眠っていたのに、叩き起こされちゃうくらい」
「それは……困りますねぇ……」
「ええ、ほんとに」
民泊施設の方をぼんやり眺める音鳴さんと別れて、私は階段を下りた。前の道路には、やはり大量のごみが散乱している。ああいう人たちの行動パターンってどうしてこうも共通するんだろうと思う。
こういった環境を変えようと思ったら、そこには大量の時間とエネルギーと、場合によってはお金も注ぎ込む必要がある。特に民泊の問題なんてのは政府も問題点をわかった上で推進していたのだから、いわば国から、現地で困っている人間たちが自分で時間とエネルギーとお金を割いて、自分たちで何とかしてくださいね、と言われているようなものだ。もちろん関係者たちは面と向かってそんなこと言わないだろうが、現実に即して落とし込むなら、そういうことになる。間接的に国そのものが、私たちにそうしろ、そうして生きろと告げているのだ。
こういうことがいくつもいくつも重なって、私たちは自分自身の人生というものが生きていきづらくなってゆく。国という組織には、私たちがまっとうに、自分自身の人生や日常生活を送れるようにして欲しい。一番に望むことはただそれだけなのに、そんなことはしてくれないし、選挙演説をする候補者たちも言わない。
これはもしかして、すごく大それた、難しい望みなんだろうか。そう思ってしまう。
つまり日常を守るってのは、大層で大変なことなのだろう。
そう結論づけると、私は朝も早くから憂鬱になって、結局その日一日はずっとそんな気持ちが続いたままだった。
「おはようございます……」
「おはようございます。そういえば昨夜は部屋にいらっしゃったんでしたね」
「ええ……。しかし……確かに騒がしかったですねぇ……あそこ」
「でも、前回よりはだいぶましでしたよ。おじいさんのアレが利いたんじゃないかしら」
「前回は……もっと……騒がしかったんですか……?」
「ええ。眠っていたのに、叩き起こされちゃうくらい」
「それは……困りますねぇ……」
「ええ、ほんとに」
民泊施設の方をぼんやり眺める音鳴さんと別れて、私は階段を下りた。前の道路には、やはり大量のごみが散乱している。ああいう人たちの行動パターンってどうしてこうも共通するんだろうと思う。
こういった環境を変えようと思ったら、そこには大量の時間とエネルギーと、場合によってはお金も注ぎ込む必要がある。特に民泊の問題なんてのは政府も問題点をわかった上で推進していたのだから、いわば国から、現地で困っている人間たちが自分で時間とエネルギーとお金を割いて、自分たちで何とかしてくださいね、と言われているようなものだ。もちろん関係者たちは面と向かってそんなこと言わないだろうが、現実に即して落とし込むなら、そういうことになる。間接的に国そのものが、私たちにそうしろ、そうして生きろと告げているのだ。
こういうことがいくつもいくつも重なって、私たちは自分自身の人生というものが生きていきづらくなってゆく。国という組織には、私たちがまっとうに、自分自身の人生や日常生活を送れるようにして欲しい。一番に望むことはただそれだけなのに、そんなことはしてくれないし、選挙演説をする候補者たちも言わない。
これはもしかして、すごく大それた、難しい望みなんだろうか。そう思ってしまう。
つまり日常を守るってのは、大層で大変なことなのだろう。
そう結論づけると、私は朝も早くから憂鬱になって、結局その日一日はずっとそんな気持ちが続いたままだった。
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