となりの音鳴さん

翠山都

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お年寄りたち

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 猫や鳩へのエサやりは、私たちアパートの住人だけでなく、周囲の住人も迷惑がかかるので、当然のように禁止されている。うちのアパートにもエサやり、置き餌を禁止する貼り紙が貼ってあるし、よくみれば近隣にも同様の貼り紙がいくつも見受けられた。もしもこれを読んでいるあなたが新しい住居を探しているのであれば、可能であるなら一度周囲をぐるっと回って、この手の貼り紙や注意書きがないか探してみるといい。それがいくつも発見できたなら、その地域には間違いなく野良猫や鳩のコロニーがあるし、必ず一人、エサやりをしている人間が住んでいるはずだ。
 だが一階に住むお年寄りたちは、そんなものを守らない。これまでにも何度かアパートの住人や周辺地域の住人から注意を受けているが、そのたびに逆切れというか激昂して怒鳴り散らすのだそうだ。私も今までに何度も見てきたから、その場が想像できる。
 エサやりをしているあの人たちは、基本的に自分たちが悪いことをしているとは思っていない。むしろいいことをしているとさえ思っている節がある。だからどれだけ理を説いて、それがどういった事態に繋がるのかを説明しても、聞く耳を持とうとはしない。
 自分たちが正義だと、盲信しているからだ。
 管理会社にも苦情やクレームが何度も入っているはずだ。私も引っ越してきてからすぐに、一度苦情を申し入れたことがある。その際の対応が何というか、よくわかっている、という感じだったので、管理会社も把握している問題なのだと悟り、早々に電話を切り上げた。
 把握しているからといって、管理会社が何かできるとは限らない。貼り紙を掲示しているくらいだからおそらく注意もしているのだろうが、それ以上の対応は難しいのだろう。迷惑な住人なら追い出してしまえばいい、というのは簡単だが、実際にはそう容易な問題ではないし、何人もが協合しているとなればさらに難しいだろう、というのは想像がつく。
 でも自分たちが正義だと思っているなら、後始末くらいしろよ、と私は思う。自分で飼うでもなく、エサをやり、かわいがるという自分のやりたいことだけをやって、あとの世話は他人任せにする。自分のしたことの責任を取ろうともしない。それなのに自分はいいことをしているのだと宣う。
 これまでずっとそうやって自分勝手に生きてきて、社会全体に甘やかされて、周囲に指摘してくれる人が誰一人いない、そんな人生を送ってきたのだろう。彼らの世代がこの国の民度を大きく下げたんだな、というのが本当によくわかる。
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