ミニスカを穿いているから覗かれても触られても仕方ないとかふざけるな

翠山都

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自己嫌悪

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 予想はしていたのだけれど、はるなの話を聞いて、かすみは何とも言えない暗い気持ちになった。
 そこまでか。そこまでするのか。
 集団でのいじめがエスカレートしやすいものだというのはかすみにもわかる。だがよもや学校という場で、ここまでの行為に及んでしまうまでタガが外れるのだとは思いもよらなかった。かすみは心のどこかでまだ、人間の善性を信じていたのだ。
 もしも発覚したときにどんな事態になってしまうか、想像はできなかったのだろうか。できなかったのだろうが、ただそれだけではないと思う。これは後年、かすみも気づいたことだが、学校で乱暴することは、そのほかの場所で乱暴する場合に比べ、はるかに安全なのだ。なぜなら、学校は乱暴があったという事実をできるだけ隠蔽しようとする。そして、隠蔽しようとするということは、外部に向けて知られないようにするよう学校全体が働きかけるということだ。このことは加害者たちに大いなる益をもたらす。のちに発覚したとしても証拠集めは難しくなり、大きな罪が課せられる可能性は激減する。
 ここまでではなくとも、あの場にいた何人かはおそらく、そこまで考えた上でことに及んだのだろうと、のちにかすみは思い当たる。そしてそれは、大きく間違ってはいないはずだった。
 人は人として生きるつもりがないならば、どこまでもクズになれるのだ。
 はるなを慰めながら、でも自分だって同類だと思う。はるながいじめの標的になっていると知りながら、必要以上に手を差し伸べなかった。友人よりも、自分の学校生活の方が大事だった。だから、こんな結果になってしまったのだ。
 そして今になってもなお、かすみは自分を犠牲にすることをためらっている。
「……どうする? 先生に言う?」
 だから、そんな言葉を発してしまう。先生に言ったところで何一つ好転しないことは、かすみはもちろんはるなだってわかっている。案の定はるなは首を横に振る。その反応を引き出すために、わざと問うたようなものだ。自分は気遣ったという免罪符が欲しかっただけだ。
 最低だな、わたし。
 自己嫌悪にとらわれながらもはるなを支えて、かすみははるなを自宅まで送った。
「……明日から、学校、どうする?」
「いけない。いきたくない」
 かすみでも同じように考えるだろう。本来なら安全な場所のはずの学校は、はるなにとってもはや、安全な場所ではなくなった。そんな場所に、平気な顔で通えるはずがないのだ。
「ご両親には話をして、相談した方がいいと思う。それから、今後どうするか考えよ」
「……うん」
 かすみははじめてはるなの家へ赴き、はるなの母親に今日あったことを話して、はるなを引き渡した。
 はるなは最後まで、かすみへ感謝の言葉は述べなかった。

 数日後、はるなが学校を移ったと、担任の先生からかすみは聞かされた。
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