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起こった事件
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もやもやとしたものを抱えながらも時間は過ぎて、期末考査が過ぎ、夏休みが目前に迫っていた。
いじめに遭いながらも、はるなは上位の成績をキープしていたようで、素直にすごいとかすみは感じた。かすみも難しくなった授業内容に何とか食らいついて、はるなほどではないけれども上位の成績を保つことができたが、これから先今の成績を保つためには、塾通いも考慮に入れないといけないかもしれなかった。
考査期間中は休みだった部活動も再開されて、かすみは久々になぎなたを握った。そろそろ脱初心者として型の稽古に入れるかどうかという頃だったので、再開を楽しみにしていたのだ。
はじまる時間になってもはるなが道場にやってこなかったので、おかしいとは思っていた。近頃ずっと冴えない表情をしているはるなではあったが、部活動にはきっちり顔を出していたのだ。
「長割さん、及位から何か聞いてる?」
部長がかすみに確認してきた。
「いえ、特には何も。学校にも普通に出てきていましたし。部長にも、休むとかそういう連絡、来てないんですか?」
「そうなのよねぇ」
はるなの性格からして、休むのであれば何らかの連絡を入れるはずだ。それがないってことは、何か不測の事態でもあったのだろうか。
「私、ちょっと教室見てきます。鞄がなければ、帰ったってわかりますし」
「そうねぇ。お願いして、いいかしら」
かすみはなぎなたを置くと、道着姿のまま教室へと向かった。一年生の教室はすべて校舎の一階にあるから、さほどの距離でもない。
校舎に戻ると、辺りは閑散としていた。夏休みに入るまでのわずかな期間なので文化部の中には活動を休んでいるものも多く、用事のない生徒は早々に帰宅の途に就いている。廊下を歩いていると、クラスの前に女子が三人たむろしている。その中にリョーコの顔を見つけた。かすみに気づいたリョーコは、教室の中に何やら声を掛けたようだった。かすみは嫌な予感がした。
「カスミー。どしたん? 道着姿初めて見たけど、チョーイケてんじゃん」
リョーコが軽く声を掛けてくるので、何も気づいていないふうを装って返答した。
「ありがと。みんな、こんなとこで何やってんの?」
「んー。男子と打ち上げのカラオケ行こうかって言ってたじゃん。それで待ってんの」
「ああ、そっか」
「カスミーはなんで?」
「部長に言われて、及位さん探しに来たの」
部長に言われて、の部分を強調して言った。
「中にいてる?」
「あー。いてたかもー。ちょっち待ってねー」
私に教室内を覗かせないようにさえぎる形で三人が立っていて、リョーコがドアから室内へ声を掛ける。
「ハルナっちー。カスミーが部活に迎えに来たよー。早く準備しなよー」
その声が侮蔑を含んで笑っているようだったのは、かすみの思い過ごしではないだろう。
しばらくして、ゆっくりと教室内から現れた。鞄を胸の前に抱えている。制服が何だか乱れた感じがあって、まるで急いで着込んで出てきたような感じだった。
「二人とも、部活大変だよねー。がんばってー」
「あ、うん」
口を開かないはるなに「ほら、いこ」と何も気づいていない感じで声を掛けて、とにかくこの場を離れようと思った。
廊下を引き返す私の背中にはるなが無言でついてくる。ちら、と後ろをほんの少し振り返ると、教室から数人の男子が出てくるのを見た。
怒りで頭がかっと熱くなったけど、何とか抑えて、クラスメイト達の姿が見えなくなったところで、はるなの手を握った。
「もう大丈夫だから。とりあえず、道場に行こう。あそこなら、安心だから」
「うん……」
かすみははるなを道場へと連れてゆき、部長には簡単に事情を話して更衣室を貸してもらった。
「それではるな。いったい何があったの?」
「うん……」
はるなは、か細い声で何が起こったかを話しはじめた。
いじめに遭いながらも、はるなは上位の成績をキープしていたようで、素直にすごいとかすみは感じた。かすみも難しくなった授業内容に何とか食らいついて、はるなほどではないけれども上位の成績を保つことができたが、これから先今の成績を保つためには、塾通いも考慮に入れないといけないかもしれなかった。
考査期間中は休みだった部活動も再開されて、かすみは久々になぎなたを握った。そろそろ脱初心者として型の稽古に入れるかどうかという頃だったので、再開を楽しみにしていたのだ。
はじまる時間になってもはるなが道場にやってこなかったので、おかしいとは思っていた。近頃ずっと冴えない表情をしているはるなではあったが、部活動にはきっちり顔を出していたのだ。
「長割さん、及位から何か聞いてる?」
部長がかすみに確認してきた。
「いえ、特には何も。学校にも普通に出てきていましたし。部長にも、休むとかそういう連絡、来てないんですか?」
「そうなのよねぇ」
はるなの性格からして、休むのであれば何らかの連絡を入れるはずだ。それがないってことは、何か不測の事態でもあったのだろうか。
「私、ちょっと教室見てきます。鞄がなければ、帰ったってわかりますし」
「そうねぇ。お願いして、いいかしら」
かすみはなぎなたを置くと、道着姿のまま教室へと向かった。一年生の教室はすべて校舎の一階にあるから、さほどの距離でもない。
校舎に戻ると、辺りは閑散としていた。夏休みに入るまでのわずかな期間なので文化部の中には活動を休んでいるものも多く、用事のない生徒は早々に帰宅の途に就いている。廊下を歩いていると、クラスの前に女子が三人たむろしている。その中にリョーコの顔を見つけた。かすみに気づいたリョーコは、教室の中に何やら声を掛けたようだった。かすみは嫌な予感がした。
「カスミー。どしたん? 道着姿初めて見たけど、チョーイケてんじゃん」
リョーコが軽く声を掛けてくるので、何も気づいていないふうを装って返答した。
「ありがと。みんな、こんなとこで何やってんの?」
「んー。男子と打ち上げのカラオケ行こうかって言ってたじゃん。それで待ってんの」
「ああ、そっか」
「カスミーはなんで?」
「部長に言われて、及位さん探しに来たの」
部長に言われて、の部分を強調して言った。
「中にいてる?」
「あー。いてたかもー。ちょっち待ってねー」
私に教室内を覗かせないようにさえぎる形で三人が立っていて、リョーコがドアから室内へ声を掛ける。
「ハルナっちー。カスミーが部活に迎えに来たよー。早く準備しなよー」
その声が侮蔑を含んで笑っているようだったのは、かすみの思い過ごしではないだろう。
しばらくして、ゆっくりと教室内から現れた。鞄を胸の前に抱えている。制服が何だか乱れた感じがあって、まるで急いで着込んで出てきたような感じだった。
「二人とも、部活大変だよねー。がんばってー」
「あ、うん」
口を開かないはるなに「ほら、いこ」と何も気づいていない感じで声を掛けて、とにかくこの場を離れようと思った。
廊下を引き返す私の背中にはるなが無言でついてくる。ちら、と後ろをほんの少し振り返ると、教室から数人の男子が出てくるのを見た。
怒りで頭がかっと熱くなったけど、何とか抑えて、クラスメイト達の姿が見えなくなったところで、はるなの手を握った。
「もう大丈夫だから。とりあえず、道場に行こう。あそこなら、安心だから」
「うん……」
かすみははるなを道場へと連れてゆき、部長には簡単に事情を話して更衣室を貸してもらった。
「それではるな。いったい何があったの?」
「うん……」
はるなは、か細い声で何が起こったかを話しはじめた。
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