ミニスカを穿いているから覗かれても触られても仕方ないとかふざけるな

翠山都

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不穏な気配

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 入部してすぐは、身体づくりのための基礎練習ばかりが続いた。競技なぎなたとはいえ一応は武道だから、怪我をしないような身体づくりをするのは当然のことだった。
 練習用のなぎなたを実際に持ってみると、思っていたよりも重量がある。それを構えたまま保持するには足腰や腕の筋力、それも動かさずに留めておくための、いわゆるインナーマッスルを鍛える必要がある。
 入部したばかりの同級生は毎日続く基礎練習に不満をこぼしていたが、かすみはさほど嫌ではなかった。
「かすみちゃんは、基礎、熱心だよね」
「むしろこっちが目的だったからね」
 こういう鍛錬方法を知りたくて入部したかすみには、すべてがミニスカートを穿いたときの立ち姿に繋がると思えると、自然力が入るものだ。
 それを隣で見るはるなもまた、基礎練習に真面目に取り組むのだった。

 部活ではよく話をする二人だったが、クラス内ではさほど接点がない。所属しているグループが違うし、それぞれの友だち同士が仲良くなかったりするので、互いに了解の上で、微妙な距離感を心がけていた。
 だが中間テストを過ぎたくらいから、クラス内でのミニスカ派とノーマル派の対立がひどくなってきた。
 小学校から中学校に上がった際に、急に学校の授業についてゆけなくなる生徒が増える。特に理数系のレベルが上がると、基本的な四則計算まではできても、数字に対するセンスに欠けている生徒は、突然理解が難しくなり、壁にぶち当たる。
 そうなると、かなり力を入れて勉学に励まなければ追いつけないのだが、小学生時代にあまり真面目に勉強という行為に取り組んでこなかった者は、こういった事態に直面しても、どのように勉強すればいいのかがわからない。
 そういった問題が現実となって表れてくるのが中学はじめの中間テストであり、そこで自分でも信じられない結果を目にした生徒は、大いにストレスをため込むことになる。
 幸い、かすみはそこそこいいと思える成績を維持することができた。はるなを含めたノーマル組は小学校時代から真面目に勉学に取り組んできた生徒が多いから、大きく成績を落とした子は数少ないようだ。
 反面、かすみのいるグループも含めたミニスカ派には、成績に不安を抱く子らが多いようだった。
 クラス内の対立は、そういったストレスがかたちになって噴出したものだったのだろうと、後年かすみは気づいたのだが、当時は自分も中学生だったかすみは、それほどには人の機微を理解はできなかった。
 だから、仲間たちが何となくイライラしてるなあ、とは思ってはいても、その原因にまでは思い至れなかった。
 苛ついているものの一人が井標いじめりょうこという女子で、すらっとした細身の美人だ。かすみたちは普段リョーコと呼んでいる。
 ロングの髪を茶髪に染め、そこから覗く耳にはピアスが光っている。制服も気崩していて、かなり派手目の女子だ。クラス内でもリーダーのようにふるまっているから、発言力も強い。
 そのリョーコが中心となって、一部の生徒を攻撃しはじめていた。

 なぎなた部に入部してから二か月ほどが経って、かすみたちはようやく型の稽古をつけてもらえるようになった。
 姿勢の美しさを磨くことが第一の目的であるかすみだが、それでも部室で先輩たちが演武の稽古をしているのを毎日目にしていると、欲が出てくるものだ。今では美しい姿勢で美しい演武を行いたいという、新たな目標を立てていた。
 たった二か月であっても毎日の欠かさぬ鍛錬の効果は素晴らしく、今では木製のなぎなたを構えても、物打や切先を震わせることなくぴたりと留めることができるようになった。もともとやや猫背でぽっちゃり体型だったはるなも、何だか身体が引き締まって、美しい立ち姿になってきた。こうして努力の成果が外見の変化として表れることに、かすみは大きな喜びを感じる。
 ただその日は、はるなの様子がおかしかった。なんだか普段より動きにくそうにしているのだ。
 しばらく様子を見ていると、理由に気付いた。かすみははるなの耳元に寄って行って、小さく囁いた。
「はるな。もしかして、ブラ、壊れちゃったの?」
 はるなが、道着の下に肌着しか身に着けていないことに、かすみは気が付いたのだ。
「う、うん。そうなの……」
「やっぱり。ブラなしだと道着、痛いでしょ? 動きに変な癖がついてもいけないし、今日は切り上げて帰らせてもらったら?」
「……うん。そうする」
 はるなは小走りで部長のもとへ行って、早く上がることを告げたようだった。このときのかすみはまだ、はるなの身に何が起こっているのかわからなくて、はるなって思ったより胸大きかったんだなあ、なんて暢気なことを思っていたりしていたのだ。
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