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最終話 鮫滅の鋸
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「射地助クン、それに凪義サン、無事だったんデスね!」
体育館で鮫滅隊三人が一堂に会したのは、その日の夜のことであった。
ゼーニッツは、八面六臂の活躍で鮫人間を切り伏せた。だが何分気を失っている間の出来事であるため、本人はそのことを覚えておらず、赤木の口から聞いただけである。
「……これが無事に見えるのか?」
「オレだって大変だったんだぜ。デッカイのにぶっ飛ばされるしよぉ……」
体育館のギャラリーの上で、三人は夜空を眺めていた。漆黒の夜、その上には、ただひたすらに美しい星空が覆いかぶさっていた。
***
それから、暫く後――
鮫滅隊の拠点となっている木造家屋の二階で、怪我から復帰した凪義は一人、椅子に腰かけていた。腕をまくって見てみたが、ざらついた鮫肌はすっかり消えてしまっている。
鮫辻を倒し、悪魔巨鮫の血を飲んでから、サメ化はぱったりと止んでしまった。それがサメ化の完全な停止を意味しているのか、それとも一時的なものに過ぎないのかは分からない。鮫辻を討ったことで呪が解けていればいいのだが……そのようなうまい話があるのか、凪義は疑問に思っている。これから先、自分が鮫人間にならない保証などどこにもない。
……元々、凪義はあの戦いで鮫辻と刺し違えるつもりでいた。自分はもう鮫人間なのだから、生きている資格などない。ゆえに命を捨てる覚悟で戦ってきた。けれども結局、鮫辻は死に、自分は生き延びた。
自分の戦いは、人間がサメを殺すのではなく、サメがサメを殺すのと同じことだ。だからこそ、人間には背負えないような罪も背負うつもりで、なりふり構わず戦ってきた。自分は鮫人間で、許されざる生き物だ。これ以上自分が生き永らえることは、他ならぬ自らの信条が許さなかった。
だから……潔く自分の命に決着をつけよう。
凪義は小刀を抜き、それを首に当てようとした、その時であった。
ポケットに入っているスマホが鳴り出した。鮫滅隊の諜報員からの電話だ。
「何、頭が六つあるサメが火を噴いて暴れているだと」
まだ死ねなさそうだ……凪義はチェーンソーを掴み、階段を降りていった。
体育館で鮫滅隊三人が一堂に会したのは、その日の夜のことであった。
ゼーニッツは、八面六臂の活躍で鮫人間を切り伏せた。だが何分気を失っている間の出来事であるため、本人はそのことを覚えておらず、赤木の口から聞いただけである。
「……これが無事に見えるのか?」
「オレだって大変だったんだぜ。デッカイのにぶっ飛ばされるしよぉ……」
体育館のギャラリーの上で、三人は夜空を眺めていた。漆黒の夜、その上には、ただひたすらに美しい星空が覆いかぶさっていた。
***
それから、暫く後――
鮫滅隊の拠点となっている木造家屋の二階で、怪我から復帰した凪義は一人、椅子に腰かけていた。腕をまくって見てみたが、ざらついた鮫肌はすっかり消えてしまっている。
鮫辻を倒し、悪魔巨鮫の血を飲んでから、サメ化はぱったりと止んでしまった。それがサメ化の完全な停止を意味しているのか、それとも一時的なものに過ぎないのかは分からない。鮫辻を討ったことで呪が解けていればいいのだが……そのようなうまい話があるのか、凪義は疑問に思っている。これから先、自分が鮫人間にならない保証などどこにもない。
……元々、凪義はあの戦いで鮫辻と刺し違えるつもりでいた。自分はもう鮫人間なのだから、生きている資格などない。ゆえに命を捨てる覚悟で戦ってきた。けれども結局、鮫辻は死に、自分は生き延びた。
自分の戦いは、人間がサメを殺すのではなく、サメがサメを殺すのと同じことだ。だからこそ、人間には背負えないような罪も背負うつもりで、なりふり構わず戦ってきた。自分は鮫人間で、許されざる生き物だ。これ以上自分が生き永らえることは、他ならぬ自らの信条が許さなかった。
だから……潔く自分の命に決着をつけよう。
凪義は小刀を抜き、それを首に当てようとした、その時であった。
ポケットに入っているスマホが鳴り出した。鮫滅隊の諜報員からの電話だ。
「何、頭が六つあるサメが火を噴いて暴れているだと」
まだ死ねなさそうだ……凪義はチェーンソーを掴み、階段を降りていった。
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