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第11話 滅びよ、鮫辻
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林を超えた射地助は、ある場所を目指して走っていた。
彼が目指していた場所……それは、山の麓から斜面にかけて設置された、ソーラー発電所であった。
以前、鬼車之島について、凪義に聞いたことがある。「島の自然は美しいが、南岸から見えるソーラーパネルだけは嫌いだ。島の美しさを損ねている」と。
今から、そのソーラーパネルを壊すことになる。凪義は感謝してくれるかも知れない。
射地助の体力は、もう限界に近づいていた。気力で無理矢理脚を動かしているような状態である。それでも、射地助は走り続けた。
南岸に近い土地は、巨大鮫によって滅茶苦茶に荒らされていた。サメのせいで自分のような天涯孤独の子が増えるかと思うと、射地助の胸に怒りが湧いてくる。その怒りが、彼を走らせていた。
巨大鮫は、射地助の背を追っていた。その巨体が、とうとうソーラーパネルを押し潰した。
――巨体を襲ったのは、強烈な電流であった。ソーラーパネルは太陽の光がある限り発電しており、破損したパネルに触れれば当然感電する。しかも、巨体によって多数のパネルが破壊されたため、流れる電流も相当なものだ。
凪義が出発前に教えたプランB……それは、ソーラー発電所に誘い込み、敵を感電させることだ。出発前ではまだ敵の切り札の正体は分かっておらず、また誘い込むまでの被害も大きくなるだろうことから、あくまでプランBとしたのである。
爆発に耐えた巨大鮫も、電流には耐えられなかった。鮫辻が満を持して持ち出した悪魔巨鮫は、ここに絶命したのであった。
***
膝から崩れ落ちる凪義。鮫辻は彼の額に銃口を向けた。
「私は君の家族に感謝しているよ。君の弟たちはサメの餌となってくれた。母親は悪魔巨鮫の贄となった」
「母さんがあいつの……?」
「そうさ。お陰であいつはすくすくと育った。お前の母親はあれの血肉となったのだ」
その話を聞いた凪義は、何も言わなかった。ただ黙って、地面の土を握りしめていた。
「はは、悔しいか」
それを見た鮫辻は、凪義の行動をそう解釈した。鮫辻は引き金に指をかけ、力を込める。
「すぐに家族の所へ送ってやろう」
「……滅びるのはお前だ」
そこからの凪義の行動は、負傷しているとは思えないほど素早かった。左手に握った土を、鮫辻の顔面に浴びせたのだ。
「うおっ!」
「今だ!」
作った隙を、凪義は見逃さなかった。素早く鮫辻の右手を抑え、銃を取り落とさせることに成功した。
凪義の反撃は、流れるように続いた。鮫辻の右腕を掴んだ凪義は、背負い投げの要領で敵を放り投げたのだ。
仰向けに倒れた鮫辻は、すぐさま起き上がろうと地面に手をついた。だが、その目の前に、凪義が立ち塞がった。
凪義の手には、チェーンソーが握られていた。
「……悲しみの連鎖を断ち切るために、お前を滅ぼす」
凪義は最後の力を振り絞った。チェーンソーの刃が、垂直の角度で鮫辻の腹に突き入れられる。血管が裂かれ、肉が断たれ、内臓が攪拌される。
「あああああ! 痛い! 痛い! やめ……やめ……や……」
泣き叫ぶ鮫辻とは対照的に、無言で腹を縦に切り裂いた凪義。一旦チェーンソーを持ち上げると、次は顔面を切り裂いた。男の顔は、たちまち真っ二つに裂かれた。
絶対に、許すまじき相手。それを、凪義はとうとう討ち果たすことができたのだ。
鮫辻の息の根は、完全に止まっていた。凪義はふっと糸が切れたかのように、その場に倒れ伏した。
彼が目指していた場所……それは、山の麓から斜面にかけて設置された、ソーラー発電所であった。
以前、鬼車之島について、凪義に聞いたことがある。「島の自然は美しいが、南岸から見えるソーラーパネルだけは嫌いだ。島の美しさを損ねている」と。
今から、そのソーラーパネルを壊すことになる。凪義は感謝してくれるかも知れない。
射地助の体力は、もう限界に近づいていた。気力で無理矢理脚を動かしているような状態である。それでも、射地助は走り続けた。
南岸に近い土地は、巨大鮫によって滅茶苦茶に荒らされていた。サメのせいで自分のような天涯孤独の子が増えるかと思うと、射地助の胸に怒りが湧いてくる。その怒りが、彼を走らせていた。
巨大鮫は、射地助の背を追っていた。その巨体が、とうとうソーラーパネルを押し潰した。
――巨体を襲ったのは、強烈な電流であった。ソーラーパネルは太陽の光がある限り発電しており、破損したパネルに触れれば当然感電する。しかも、巨体によって多数のパネルが破壊されたため、流れる電流も相当なものだ。
凪義が出発前に教えたプランB……それは、ソーラー発電所に誘い込み、敵を感電させることだ。出発前ではまだ敵の切り札の正体は分かっておらず、また誘い込むまでの被害も大きくなるだろうことから、あくまでプランBとしたのである。
爆発に耐えた巨大鮫も、電流には耐えられなかった。鮫辻が満を持して持ち出した悪魔巨鮫は、ここに絶命したのであった。
***
膝から崩れ落ちる凪義。鮫辻は彼の額に銃口を向けた。
「私は君の家族に感謝しているよ。君の弟たちはサメの餌となってくれた。母親は悪魔巨鮫の贄となった」
「母さんがあいつの……?」
「そうさ。お陰であいつはすくすくと育った。お前の母親はあれの血肉となったのだ」
その話を聞いた凪義は、何も言わなかった。ただ黙って、地面の土を握りしめていた。
「はは、悔しいか」
それを見た鮫辻は、凪義の行動をそう解釈した。鮫辻は引き金に指をかけ、力を込める。
「すぐに家族の所へ送ってやろう」
「……滅びるのはお前だ」
そこからの凪義の行動は、負傷しているとは思えないほど素早かった。左手に握った土を、鮫辻の顔面に浴びせたのだ。
「うおっ!」
「今だ!」
作った隙を、凪義は見逃さなかった。素早く鮫辻の右手を抑え、銃を取り落とさせることに成功した。
凪義の反撃は、流れるように続いた。鮫辻の右腕を掴んだ凪義は、背負い投げの要領で敵を放り投げたのだ。
仰向けに倒れた鮫辻は、すぐさま起き上がろうと地面に手をついた。だが、その目の前に、凪義が立ち塞がった。
凪義の手には、チェーンソーが握られていた。
「……悲しみの連鎖を断ち切るために、お前を滅ぼす」
凪義は最後の力を振り絞った。チェーンソーの刃が、垂直の角度で鮫辻の腹に突き入れられる。血管が裂かれ、肉が断たれ、内臓が攪拌される。
「あああああ! 痛い! 痛い! やめ……やめ……や……」
泣き叫ぶ鮫辻とは対照的に、無言で腹を縦に切り裂いた凪義。一旦チェーンソーを持ち上げると、次は顔面を切り裂いた。男の顔は、たちまち真っ二つに裂かれた。
絶対に、許すまじき相手。それを、凪義はとうとう討ち果たすことができたのだ。
鮫辻の息の根は、完全に止まっていた。凪義はふっと糸が切れたかのように、その場に倒れ伏した。
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