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第2部 セイ国編 アニマル・キングダム 後編 トモエVSセイ国決戦編

第12話 ダイト入城

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 リュウキ軍はさしたる抵抗も受けずに進軍を続けた。彼らは農村に踏み込むと敵の武器や食料などを漁ったが、目ぼしいものはあらかた避難の際に城内に運び込まれてしまっていた。
 唯一手つかずであったのが、田畑である。家畜や備蓄食料は持ち出せても、これだけは放置せざるを得なかった。リュウキ軍は槍や剣を鎌に持ち換えて、意気揚々とこれらの刈り取りを行った。
 そもそも魔族国家の領土は、元々人間たちのものである。特にエン州、セイ国、ソ国などの国々は、リュウキの父母、祖父母の代までは自分たちのものであったのだ。

 ――我々の国土にあるものを、我々が刈り取るのだ。それだけのことだ。

 そうした思いが、リュウキ軍将兵の中にはある。

 エン州の中頃まで差し掛かってくると、リュウキ軍の足が鈍ってきた。城壁をもたないエン州北部都市と違って中部および南部には古い城郭都市が並んでおり、それらに対する攻城戦に手間取ってしまったのである。
 それもそのはず、人間たちには城壁に籠った相手を攻めた経験が全くない。人間たちにとって戦争といえば、攻めてくる魔族軍を野戦で迎え撃つことを意味していたのだから当然である。城攻めのノウハウを持たないリュウキ軍が、高らかにそびえる城壁を前にしてどれほど当惑したかは想像に難くない。
 エン州を取り戻した所で、まだセイ国、ギ国、ソ国、そして魔族国家の盟主であるシン国は健在である。縦深をたのみに守りを固められれば、リュウキ軍はやがて疲労し隙を見せる。そこを大軍で包囲でもされればおしまいだ。
 一方で、守城戦において稚拙さを見せたのは、エン州軍も同様であった。彼らは敵軍に包囲されたことなどない。魔族国家が自国へ大軍の侵略を許したのは、セイ国軍が獣人族連合軍に大敗北を喫し、都市の殆どを落とされた時のみである。
 互いに稚拙な攻防を見せる弛緩した戦況を激変させたのが、トモエによるガクキ討伐であった。頭を失ったエン州軍は戦意を失って総崩れとなり、セイ国やギ国などへはしっていった。

 この時、リュウキ軍大勝利の報は北地の人間たちに雷電の如く駆け巡っていた。

「我が父祖の故地を今こそ取り戻すべきだ」

 そうした機運が沸いたことで、新たに歩騎あわせて八千の軍勢がリュウキ軍に加わった。まだまだ兵力の上では魔族国家と比べるべくもないとはいえ、兵力の増強は素直にありがたい。
 エン州国内の城郭都市は、ほとんどが放棄された。エン州に残った魔族たちはゲリラ戦でリュウキ軍を攪乱するようなこともできたはずである。そうせずに逃亡を選んだ辺り、もう彼らの戦意はすっかり枯れてしまったのだろう。
 これはリュウキ軍にとって非常に喜ばしいことであった。軍は無人の野を行くが如くにエン州内を進み、そのままダイトに入城した。ガクキの照灼たる晨光サニー・レイによって破壊された州刺史を除けば、城内はほぼ無傷であったため、リュウキはここに臨時の行政府を置いた。
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