4 / 11
第二の襲撃
しおりを挟む
「おい知ってるか? 今村が殺されたの」
「今朝先生が言ってた。平田のクラスだろ、今村」
「それなんだけど、死体がヤバイことになってたらしい」
金曜日の夜遅くのこと、平田はベッドに寝転がりながらスマホを眺め、友人たちとメッセージアプリで雑談をしていた。いつもは他愛もない話をしているが、この日は違う。昨晩、平田の友人であった今村が遺体となって発見されたからだ。
学校側はただ「死亡した」とだけ生徒に伝えたが、一部の生徒たちは「今村はどうやら異様な死に方をしたらしい」ということを知っていた。当然、それは午前中の内に平田の耳にも入っている。今村の遺体は胸を切り裂かれた上に、物凄い力によって首の骨をへし折られたのだという。凄惨な暴力を受けた痕跡があるということで、事件性があるものとみて間違いはない。
平田はいつになく張り詰めた表情で、スマホの画面を眺めていた。
――もしかして、秋野の奴が復讐しに来たのかも。
平田の頭に、ちらとそんな考えがよぎった。
「……バカらしい」
平田は虚空に向かって呟き、自分の考えを笑い飛ばした。秋野はあの時、死んだのだ。死んだ人間が、復讐なんかできっこない。
スマホを枕元に伏せた平田は、疲れた目をそのまま閉じた。
***
「うわぁ~疲れたなぁ」
「ほんと、今日の練習もキツかったぜ」
野球部の練習を終えた須永と吉井は、夕暮れ時の帰り道を歩いていた。同じ部活で帰り道も被っているとあって、この二人は一緒に帰ることが多い。
「今村って吉井のクラスだろ。怖くねぇか? あの事件」
「あんな死に方はしたくねぇ。ゾッとするわ」
今村の異様な死にざまは、ここでも話題になっていた。吉井は今村と一緒に平田のグループに属していたから、少なからずショックを受けていた。それだけではない。次にやられるのは、もしかして自分ではないのか……という思いが、この少年――吉井の頭の中に漂っている。
曲がり角を曲がると、二人の目に強い西日が差しこんできた。あまりの眩しさに目を細めた二人は、正面に一つの人影を認めた。逆光になっていて、正面の人影はまるで影絵のように見えた。それはだんだんと、こちらに近づいてくる。
人影がはっきりと見えるような距離にまで近づいてきた時、二人の頭は一気に驚きと恐怖で支配された。
鷲のような頭を持つ怪人が、大きな目玉をぎょろりと剥いてじっとこちらを見ている……二人はじっとりとかいた汗が、急激に冷えていくのを感じた。
「うわぁ!」
「バケモンだ!」
鷲頭の怪人はばさぁっと大きな翼を広げ、須永に向かって飛びかかると、くわっとかぎ爪を開き、その腕を振りかぶった。
ぱっ、と血しぶきが飛び散った。鋭い爪によって、須永の喉笛が掻っ切られたのだ。これだけでも十分に致命傷だが、鷲人間は追撃の手を緩めない。血で濡れた爪を須永の両目に突っ込んだ。
ぐちゅり……
鷲人間は、須永の目玉を爪でほじくるようにしてくり抜いたのだ。
「ひっ……」
部活仲間を目の前で惨たらしく殺された吉井は、すっかり腰を抜かして地面にへたり込んでしまった。逃げ出そうにも、足に力が入らない。理不尽な暴力を目の当たりにした吉井の恐怖は、最高潮に達していた。
鷲人間は、ゆっくりと吉井の方を向いた。その右手の爪には、ぐちゃりと潰れた白いもの――くり抜かれた須永の眼球が突き刺さっている。
鷲人間は、恐怖で逃げることさえままならない吉井の頭を、文字通り鷲掴みにした。そして近くに立っていた電柱に、思い切り吉井の頭をぶつけた。「ぐっ……」という声が、吉井の口から発せられた。彼の高い鼻は潰れ、鼻の穴からはだらだらと血が垂れている。
頭を持って電柱にぶつけたのは、一度ではなかった。鷲人間は二度、三度、四度、五度……と、何度もしつこく電柱に頭をぶつけた。最初は悲鳴をあげていた吉井も、しばらくすると何も言わなくなった。
電柱には、吉井の流した血がべっとりとついていた。血は電柱の根本まで流れ、赤い水溜まりを作っている。鷲人間は吉井の体を地面に放り出すと、その首を思い切り踏んづけて潰したのであった。
「今朝先生が言ってた。平田のクラスだろ、今村」
「それなんだけど、死体がヤバイことになってたらしい」
金曜日の夜遅くのこと、平田はベッドに寝転がりながらスマホを眺め、友人たちとメッセージアプリで雑談をしていた。いつもは他愛もない話をしているが、この日は違う。昨晩、平田の友人であった今村が遺体となって発見されたからだ。
学校側はただ「死亡した」とだけ生徒に伝えたが、一部の生徒たちは「今村はどうやら異様な死に方をしたらしい」ということを知っていた。当然、それは午前中の内に平田の耳にも入っている。今村の遺体は胸を切り裂かれた上に、物凄い力によって首の骨をへし折られたのだという。凄惨な暴力を受けた痕跡があるということで、事件性があるものとみて間違いはない。
平田はいつになく張り詰めた表情で、スマホの画面を眺めていた。
――もしかして、秋野の奴が復讐しに来たのかも。
平田の頭に、ちらとそんな考えがよぎった。
「……バカらしい」
平田は虚空に向かって呟き、自分の考えを笑い飛ばした。秋野はあの時、死んだのだ。死んだ人間が、復讐なんかできっこない。
スマホを枕元に伏せた平田は、疲れた目をそのまま閉じた。
***
「うわぁ~疲れたなぁ」
「ほんと、今日の練習もキツかったぜ」
野球部の練習を終えた須永と吉井は、夕暮れ時の帰り道を歩いていた。同じ部活で帰り道も被っているとあって、この二人は一緒に帰ることが多い。
「今村って吉井のクラスだろ。怖くねぇか? あの事件」
「あんな死に方はしたくねぇ。ゾッとするわ」
今村の異様な死にざまは、ここでも話題になっていた。吉井は今村と一緒に平田のグループに属していたから、少なからずショックを受けていた。それだけではない。次にやられるのは、もしかして自分ではないのか……という思いが、この少年――吉井の頭の中に漂っている。
曲がり角を曲がると、二人の目に強い西日が差しこんできた。あまりの眩しさに目を細めた二人は、正面に一つの人影を認めた。逆光になっていて、正面の人影はまるで影絵のように見えた。それはだんだんと、こちらに近づいてくる。
人影がはっきりと見えるような距離にまで近づいてきた時、二人の頭は一気に驚きと恐怖で支配された。
鷲のような頭を持つ怪人が、大きな目玉をぎょろりと剥いてじっとこちらを見ている……二人はじっとりとかいた汗が、急激に冷えていくのを感じた。
「うわぁ!」
「バケモンだ!」
鷲頭の怪人はばさぁっと大きな翼を広げ、須永に向かって飛びかかると、くわっとかぎ爪を開き、その腕を振りかぶった。
ぱっ、と血しぶきが飛び散った。鋭い爪によって、須永の喉笛が掻っ切られたのだ。これだけでも十分に致命傷だが、鷲人間は追撃の手を緩めない。血で濡れた爪を須永の両目に突っ込んだ。
ぐちゅり……
鷲人間は、須永の目玉を爪でほじくるようにしてくり抜いたのだ。
「ひっ……」
部活仲間を目の前で惨たらしく殺された吉井は、すっかり腰を抜かして地面にへたり込んでしまった。逃げ出そうにも、足に力が入らない。理不尽な暴力を目の当たりにした吉井の恐怖は、最高潮に達していた。
鷲人間は、ゆっくりと吉井の方を向いた。その右手の爪には、ぐちゃりと潰れた白いもの――くり抜かれた須永の眼球が突き刺さっている。
鷲人間は、恐怖で逃げることさえままならない吉井の頭を、文字通り鷲掴みにした。そして近くに立っていた電柱に、思い切り吉井の頭をぶつけた。「ぐっ……」という声が、吉井の口から発せられた。彼の高い鼻は潰れ、鼻の穴からはだらだらと血が垂れている。
頭を持って電柱にぶつけたのは、一度ではなかった。鷲人間は二度、三度、四度、五度……と、何度もしつこく電柱に頭をぶつけた。最初は悲鳴をあげていた吉井も、しばらくすると何も言わなくなった。
電柱には、吉井の流した血がべっとりとついていた。血は電柱の根本まで流れ、赤い水溜まりを作っている。鷲人間は吉井の体を地面に放り出すと、その首を思い切り踏んづけて潰したのであった。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
逢魔ヶ刻の迷い子3
naomikoryo
ホラー
——それは、閉ざされた異世界からのSOS。
夏休みのある夜、中学3年生になった陽介・隼人・大輝・美咲・紗奈・由香の6人は、受験勉強のために訪れた図書館で再び“恐怖”に巻き込まれる。
「図書館に大事な物を忘れたから取りに行ってくる。」
陽介の何気ないメッセージから始まった異変。
深夜の図書館に響く正体不明の足音、消えていくメッセージ、そして——
「ここから出られない」と助けを求める陽介の声。
彼は、次元の違う同じ場所にいる。
現実世界と並行して存在する“もう一つの図書館”。
六人は、陽介を救うためにその謎を解き明かしていくが、やがてこの場所が“異世界と繋がる境界”であることに気付く。
七不思議の夜を乗り越えた彼らが挑む、シリーズ第3作目。
恐怖と謎が交錯する、戦慄のホラー・ミステリー。
「境界が開かれた時、もう戻れない——。」
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/horror.png?id=d742d2f035dd0b8efefe)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/horror.png?id=d742d2f035dd0b8efefe)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/horror.png?id=d742d2f035dd0b8efefe)
逢魔ヶ刻の迷い子2
naomikoryo
ホラー
——それは、封印された記憶を呼び覚ます夜の探索。
夏休みのある夜、中学二年生の六人は学校に伝わる七不思議の真相を確かめるため、旧校舎へと足を踏み入れた。
静まり返った廊下、誰もいないはずの音楽室から響くピアノの音、職員室の鏡に映る“もう一人の自分”——。
次々と彼らを襲う怪異は、単なる噂ではなかった。
そして、最後の七不思議**「深夜の花壇の少女」**が示す先には、**学校に隠された“ある真実”**が眠っていた——。
「恐怖」は、彼らを閉じ込めるために存在するのか。
それとも、何かを伝えるために存在しているのか。
七つの怪談が絡み合いながら、次第に明かされる“過去”と“真相”。
ただの怪談が、いつしか“真実”へと変わる時——。
あなたは、この夜を無事に終えることができるだろうか?
ファムファタールの函庭
石田空
ホラー
都市伝説「ファムファタールの函庭」。最近ネットでなにかと噂になっている館の噂だ。
男性七人に女性がひとり。全員に指令書が配られ、書かれた指令をクリアしないと出られないという。
そして重要なのは、女性の心を勝ち取らないと、どの指令もクリアできないということ。
そんな都市伝説を右から左に受け流していた今時女子高生の美羽は、彼氏の翔太と一緒に噂のファムファタールの函庭に閉じ込められた挙げ句、見せしめに翔太を殺されてしまう。
残された六人の見知らぬ男性と一緒に閉じ込められた美羽に課せられた指令は──ゲームの主催者からの刺客を探し出すこと。
誰が味方か。誰が敵か。
逃げ出すことは不可能、七日間以内に指令をクリアしなくては死亡。
美羽はファムファタールとなってゲームをコントロールできるのか、はたまた誰かに利用されてしまうのか。
ゲームスタート。
*サイトより転載になります。
*各種残酷描写、反社会描写があります。それらを増長推奨する意図は一切ございませんので、自己責任でお願いします。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/horror.png?id=d742d2f035dd0b8efefe)
ホラフキさんの罰
堅他不願(かたほかふがん)
ホラー
主人公・岩瀬は日本の地方私大に通う二年生男子。彼は、『回転体眩惑症(かいてんたいげんわくしょう)』なる病気に高校時代からつきまとわれていた。回転する物体を見つめ続けると、無意識に自分の身体を回転させてしまう奇病だ。
精神科で処方される薬を内服することで日常生活に支障はないものの、岩瀬は誰に対しても一歩引いた形で接していた。
そんなある日。彼が所属する学内サークル『たもと鑑賞会』……通称『たもかん』で、とある都市伝説がはやり始める。
『たもと鑑賞会』とは、橋のたもとで記念撮影をするというだけのサークルである。最近は感染症の蔓延がたたって開店休業だった。そこへ、一年生男子の神出(かみで)が『ホラフキさん』なる化け物をやたらに吹聴し始めた。
一度『ホラフキさん』にとりつかれると、『ホラフキさん』の命じたホラを他人に分かるよう発表してから実行しなければならない。『ホラフキさん』が誰についているかは『ホラフキさん、だーれだ』と聞けば良い。つかれてない人間は『だーれだ』と繰り返す。
神出は異常な熱意で『ホラフキさん』を広めようとしていた。そして、岩瀬はたまたま買い物にでかけたコンビニで『ホラフキさん』の声をじかに聞いた。隣には、同じ大学の後輩になる女子の恩田がいた。
ほどなくして、岩瀬は恩田から神出の死を聞かされた。
※カクヨム、小説家になろうにも掲載。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる