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第34話.告白③

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だんだん暗くなってきて、視覚から得られる情報が少なくなってもりえの話は続いた。

「高校に上がる直前、お母さんとお父さんが離婚するって話がまとまってね、嬉しかった。やっと解放されるんだって、そう思うと学校に行けたんだ。学校に行って、友達は作れなかったけど、楽しかった。みんなの前で自己紹介するのって緊張するんだね、緊張して、みんなの顔、見れなかったな」

楽しかったなら、来ればよかったのに。僕よりよっぽど学校生活を楽しめそうだ。でもそんなことは言えない。それを言ってしまうと、りえの選択を否定してしまうみたいで、口には出せなかった。

「私ね、覚えてるんだよ」
「たとえば?」
「いつも昼休みに寝たフリしてる幸一くん」
「あはは」
「でも、ダメだったなぁ」

また沈黙、話したくないことをわざわざ、嫌な思いしてまで話してくれなくてもいいのに。聞いているこっちまで胸が痛くなってくる。

「ちょうど1週間くらいだったかな、さっき言った通り、お父さんが飲酒運転で事故してね、あんなに殺したい! って思ってた相手でも、隣で人が死ぬのって、意外とショックでさ、なんか、思い出すと、胸が苦しくなって、動けなくなって」

それで最近やっと外に出られるようになった、らしい。

一言でいうと。

「壮絶だね」

それ以外に言葉が見つからない。良くも悪くも、同い年でこれだけのことを経験している人間なんて僕が知っている限りでは見たことも聞いたこともない。

むしろ「壮絶」 なんて言葉でその傷が表現されていいんだろうか。

りえの痛みはりえのものだ。僕のじゃないから分かることはない。なのになんで僕の心はこんなにも痛むんだろうか、この心は欠陥品じゃなかろうか。

「ごめん、謝っとく」
「なにを?」
「僕は同情しかできない」
「あはは、いいよそんなの」

それは“謝罪はいらない”という意味か、それとも“同情はいらない”の意味か。多分、両方なんだと思う。そんなものに価値がないのは僕も、おそらくりえも分かりきっている。

ピローンと、スマホの通知が鳴った。

「あ、ほら、あの人動画上げたみたいだよ」

「ここでちょっと見てから帰ろうか」
「うん」

泣く寸前、目が充血して鼻をすすっていたりえの表情が、少しだが、明るくなる。

今の僕が何を言っても表情を明るくするなんてできなかったと思う。多分、りえは今までも気持ちが沈んだ時にこんな感じで気持ちを紛らわしていたんじゃないかな。

『自分、プロハンよろしいか?』

「あはは、こういうところ面白いよね」
「うん、僕も、そう思う」

だいたい15分くらいの時間を僕らは共有して、どちらからともなく立ち上がって帰り道を歩き始めた。
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