24 / 26
????の場合
スカーレット・カッパ・ヴィルギニス
しおりを挟む
あかねさす紫野行き、と額田王が詠んだ時に思い浮かべたのは、きっとこんな綺麗な茜の空だったに違いない。今私がこの歌を詠めば彼はどう返すだろうか? 高校の頃から博識だった彼のことだから、紫草のにほへる妹を、と返してくれるだろうか、それとも拗ねて黙り込んでしまうだろうか。そんな想像をしてしまうくらい綺麗な夕焼けに胸が締め付けられる。
あの後私たちの母校周辺を適当に散歩して、いつもの喫茶店でマロニエの並木を見ながら思い出を語り合って、夕焼けが反射する茜の海辺へと来ていた。
当時もここに来たんだったっけ?
あまり覚えていない。もしかしたら私の言動に当時と小さな差異があって少しだけ運命が変わったのかもしれない。
なるべく、当時と同じように振る舞ったつもりだったが・・・・・・。
昼は暖かかったとは言え、宵の時間になると流石に冷える。昼間とは違い、私はカーディガンを、彼はジャンパーをそれぞれ羽織っていた。まだ夜風になりきれてない渇いた風が頬を撫でて行く、彼が寒そうに肩を丸めた。その仕草一つ一つが愛おしくてたまらない。
「夕陽って、赤いよね」
ねえ、なんで夕陽が赤いのか、君は知ってる? 太陽が発してるたくさんの光の中でも、赤が一番遠くまで届くからなんだって。それってまるで君みたいじゃない? 死んでからも私を縛り付ける鎖。別に悪い意味じゃないよ、あなたに縛られて生きて、私は幸せだったよ。
私は知ってた。あなたが私に抱いていた想いを。
私は知ってた。あなたが私の前からいなくなった理由を。
でも、残念だったね。君の思惑通りにはいかなかったよ。君と離れてからも私は君に縛られてたし、君もきっと私に縛られてたんでしょ? 一生お互いを苦しめて・・・・・・・そんな生き方嫌でしょ?
私たちは傷つけ合うために生まれてきたんじゃないって、私が証明してみせるよ。
「ね、鷹斗くん、あそこまで歩こうよ」
そう言ってテトラポッドのさきを指差した。昔の記憶が定かではないけど、ロマンチックな雰囲気が大好きな私はきっとこんなことを言うはずだ。あの先まで歩いたら、当時の自分をなぞるのはもうやめよう。君への想いを、包み隠さず全て話そう。
君は戸惑うかな。戸惑うよね。別の人と結婚するはずの人間がいきなり告白してきて戸惑わない人なんていないよね。でもそれが私の後悔だから・・・・・・。それを晴らさないっていう選択肢は私にはないんだよ。
私はやっぱり、あなたと生きてみたかった。
あの後私たちの母校周辺を適当に散歩して、いつもの喫茶店でマロニエの並木を見ながら思い出を語り合って、夕焼けが反射する茜の海辺へと来ていた。
当時もここに来たんだったっけ?
あまり覚えていない。もしかしたら私の言動に当時と小さな差異があって少しだけ運命が変わったのかもしれない。
なるべく、当時と同じように振る舞ったつもりだったが・・・・・・。
昼は暖かかったとは言え、宵の時間になると流石に冷える。昼間とは違い、私はカーディガンを、彼はジャンパーをそれぞれ羽織っていた。まだ夜風になりきれてない渇いた風が頬を撫でて行く、彼が寒そうに肩を丸めた。その仕草一つ一つが愛おしくてたまらない。
「夕陽って、赤いよね」
ねえ、なんで夕陽が赤いのか、君は知ってる? 太陽が発してるたくさんの光の中でも、赤が一番遠くまで届くからなんだって。それってまるで君みたいじゃない? 死んでからも私を縛り付ける鎖。別に悪い意味じゃないよ、あなたに縛られて生きて、私は幸せだったよ。
私は知ってた。あなたが私に抱いていた想いを。
私は知ってた。あなたが私の前からいなくなった理由を。
でも、残念だったね。君の思惑通りにはいかなかったよ。君と離れてからも私は君に縛られてたし、君もきっと私に縛られてたんでしょ? 一生お互いを苦しめて・・・・・・・そんな生き方嫌でしょ?
私たちは傷つけ合うために生まれてきたんじゃないって、私が証明してみせるよ。
「ね、鷹斗くん、あそこまで歩こうよ」
そう言ってテトラポッドのさきを指差した。昔の記憶が定かではないけど、ロマンチックな雰囲気が大好きな私はきっとこんなことを言うはずだ。あの先まで歩いたら、当時の自分をなぞるのはもうやめよう。君への想いを、包み隠さず全て話そう。
君は戸惑うかな。戸惑うよね。別の人と結婚するはずの人間がいきなり告白してきて戸惑わない人なんていないよね。でもそれが私の後悔だから・・・・・・。それを晴らさないっていう選択肢は私にはないんだよ。
私はやっぱり、あなたと生きてみたかった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
義理姉がかわいそうと言われましても、私には関係の無い事です
渡辺 佐倉
恋愛
マーガレットは政略で伯爵家に嫁いだ。
愛の無い結婚であったがお互いに尊重し合って結婚生活をおくっていければいいと思っていたが、伯爵である夫はことあるごとに、離婚して実家である伯爵家に帰ってきているマーガレットにとっての義姉達を優先ばかりする。
そんな生活に耐えかねたマーガレットは…
結末は見方によって色々系だと思います。
なろうにも同じものを掲載しています。
ほとりのカフェ
藤原遊
キャラ文芸
『ほとりのカフェ - 小川原湖畔に紡がれる物語』
静かな湖畔に佇む小さなカフェ。
そこには、人々の心をそっと解きほぐす温かな時間が流れている。
都会に疲れた移住者、三沢基地に勤めるアメリカ軍人、
そして、地元に暮らす人々──
交差する人生と記憶が、ここでひとつの物語を紡ぎ出す。
温かなコーヒーの香りとともに、
あなたもこのカフェで、大切な何かを見つけてみませんか?
異文化交流と地方の暮らしが織りなす連作短編集。
誰も知らない幽霊カフェで、癒しのティータイムを。【完結】
双葉
キャラ文芸
【本作のキーワード】
・幽霊カフェでお仕事
・イケメン店主に翻弄される恋
・岐阜県~愛知県が舞台
・数々の人間ドラマ
・紅茶/除霊/西洋絵画
+++
人生に疲れ果てた璃乃が辿り着いたのは、幽霊の浄化を目的としたカフェだった。
カフェを運営するのは(見た目だけなら王子様の)蒼唯&(不器用だけど優しい)朔也。そんな特殊カフェで、璃乃のアルバイト生活が始まる――。
舞台は岐阜県の田舎町。
様々な出会いと別れを描くヒューマンドラマ。
※実在の地名・施設などが登場しますが、本作の内容はフィクションです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
夫達の裏切りに復讐心で一杯だった私は、死の間際に本当の願いを見つけ幸せになれました。
Nao*
恋愛
家庭を顧みず、外泊も増えた夫ダリス。
それを寂しく思う私だったが、庭師のサムとその息子のシャルに癒される日々を送って居た。
そして私達は、三人であるバラの苗を庭に植える。
しかしその後…夫と親友のエリザによって、私は酷い裏切りを受ける事に─。
命の危機が迫る中、私の心は二人への復讐心で一杯になるが…駆けつけたシャルとサムを前に、本当の願いを見つけて─?
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります)
【完結】天使のスプライン
ひなこ
キャラ文芸
少女モネは自分が何者かは知らない。だが時間を超越して、どの年代のどの時刻にも出入り可能だ。
様々な人々の一生を、部屋にあるファイルから把握できる。
モネの使命は、不遇な人生を終えた人物の元へ出向き運命を変えることだ。モネの武器である、スプライン(運命曲線)によって。相棒はオウム姿のカノン。口は悪いが、モネを叱咤する指南役でもある。
モネは持ち前のコミュ力、行動力でより良い未来へと引っ張ろうと頑張る。
そしてなぜ、自分はこんなことをしているのか?
モネが会いに行く人々には、隠れたある共通点があった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる