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山本勇の場合
母の想い②
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「え?」
あまりにあっさりと母は東京行きを一蹴した。あんなに楽しみにしていたのになぜ? と考えを巡らせたが、こんなにあっさり諦めるような原因はどれだけ頭の中を巡らせても思いつかない。一体どういうことだろう。
「い、行かんでくれると?」
「なんね、やっぱり行ってよかとね?」
「い、いや! 行かんでよかよ! まだ頭も痛かし一人で留守番は無理ばい!」
想像の何倍も、何十倍も簡単に母が東京行きを取り下げたので思わず疑問がそのまま口に出てしまったのですぐに取り消した。
すると、母は笑って
「良かけん寝とかんね、お粥でも作ってやろだい」
そう言って台所の方へと歩いて行った。
本当に、母は生きているのだろうか・・・・・・?
第二の疑問が出てきた俺は、気付けば便所に立つふりをして母の様子を窺った。
母はよそ行きの格好から割烹着に着替えて、グツグツと音を立てる鍋と格闘しているところだった。
よかった。
俺は母を救ったんだ。
急にその実感が湧いてきた俺を、白い光が包んだ。
あぁ、これで良かったんだ。そうおぼろげに思いながら意識が遠のいていった。
あまりにあっさりと母は東京行きを一蹴した。あんなに楽しみにしていたのになぜ? と考えを巡らせたが、こんなにあっさり諦めるような原因はどれだけ頭の中を巡らせても思いつかない。一体どういうことだろう。
「い、行かんでくれると?」
「なんね、やっぱり行ってよかとね?」
「い、いや! 行かんでよかよ! まだ頭も痛かし一人で留守番は無理ばい!」
想像の何倍も、何十倍も簡単に母が東京行きを取り下げたので思わず疑問がそのまま口に出てしまったのですぐに取り消した。
すると、母は笑って
「良かけん寝とかんね、お粥でも作ってやろだい」
そう言って台所の方へと歩いて行った。
本当に、母は生きているのだろうか・・・・・・?
第二の疑問が出てきた俺は、気付けば便所に立つふりをして母の様子を窺った。
母はよそ行きの格好から割烹着に着替えて、グツグツと音を立てる鍋と格闘しているところだった。
よかった。
俺は母を救ったんだ。
急にその実感が湧いてきた俺を、白い光が包んだ。
あぁ、これで良かったんだ。そうおぼろげに思いながら意識が遠のいていった。
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