何故か超絶美少女に嫌われる日常

やまたけ

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その百十九

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 柊さんのその言葉を聞いた父さんはビックリした顔になる。一方で父さんに質問した母さんは対象的にやっぱりね、と言った表情。……って、母さん、その可能性を示唆して父さんに質問したの? あんたどこの名探偵だよ? 

 そして恩田社長はしまった、という顔。……て事はやっぱり、柊さんのお母さんは、過去父さんのほら話を吹聴したビラまきの手伝いをさせてた、恩田社長を慕ってるという後輩なんだ。……マジかよ。そんなとこでも繋がってたのかよ。

 俺が何だか色々呆れてると、隣で青い顔してた柊さんが怒りの表情に変わり、恩田社長に質問する。

「……恩田さん。どうなんですか?」「な、何がなのよ?」

「今更しらばっくれても無意味ですよね? うちのお母さん、恩田社長の元後輩なんですか? 答えて下さい」「……」

 静かな物言いながら、やはりというか怒りのこもった柊さんの声に、反応できず黙ってしまう恩田社長。それを見た柊さんは、バン、と机を叩き、向かい側に座ってる恩田社長に食い下がる。

「ちゃんと答えて下さい! どうなんですか!」「……」

「恩田さん!」

 柊さんが語気を強め名前を叫ぶと、恩田社長は、はあ、と諦め顔で頷いた。

「……そうよ。美久の言う通り。あなたの母親、津曲は私の後輩よ」

 恩田社長の返答に、体をビクっとさせ反応する柊さん。きっとそういう答えが返ってくるって分かってただろうけど、それでも驚きを隠せないと言った表情。

「……嘘。嫌だそんなの。信じられない。信じたくない。……だって、だって恩田さん、ずっと私のためって言ってたじゃないですか……。今までずっと、それが事実だと思って付いてきてたのに。色々あって恩田さんへの信頼が無くなってきたけど、それだけは間違いないって思ってたのに。……なのに、お母さんと一緒になって私を騙して芸能界入りさせようとしてたなんて」

「ち、違う! 違うわ美久! それは誤解よ!」

 涙を零しながらそう話す柊さんの言葉を遮るように、今度は恩田社長が声を張り上げる。

「確かに、津曲からあなたの事で相談があったのは事実よ。あの当時、中学生だったあなたは荒れていたから、芸能事務所を運営している私に力になってほしいって言ってきたのよ。美久は見た目がとても優れていて頭も良く運動神経もいいから、それなら芸能界入りさせた方が良いんじゃないかって。それからあなたの事を調べたら、ここK市内でも結構有名だっていうじゃない。だから将来有望株だと思って、あなたに近づいたのよ。その気持ちに嘘偽りはないわ」

「でも! うちのお母さん明らかに恩田さんの言いなりじゃないですか! それは間違いなく二人の過去の関係のせいでしょ!」「そ、それは……」

 柊さんの言葉に反論できない恩田社長は口をつぐんでしまう。柊さんからある程度聞いてたけど、確かに柊さんの親って恩田社長の言いなりだなあって思ってたんだよな。それは産まれてすぐ亡くなった、柊さんのお姉さんが関係してるだけだと思ってたけど。……それだけじゃなかったのか。

「……わけ分かんない。もう、何が何だか。……一体何を信じればいいの? 今まで私が恩田さんに言われるがまま頑張ってきた事って何だったの? お母さんまでそんなだったなんて。もう……もう……」

 そこまで言ってから柊さんは突然立ち上がり、リビングを出て走って出ていく。俺はすぐさま後を追おうと立ち上がり、母さんに顔を向ける。それで理解した母さんは、早く行きなさい、と言わんばかりにクイ、と顎をシャクった。

 俺が何をしようかと顔見ただけで判断出来るなんて……、いや母さんあんた、本当に何者? そんな疑問を持ちつつも、とりあえず俺は外に出ていく柊さんを追った。

 ※※※

「しかし恩田の後輩の津曲までも、このK市に住んでいたなんてね。本当ビックリだわ」「俺もさすがに驚いたよ。俺達が昔暮らしてた場所から、ここK市は結構離れてるのにな」

 私の言葉に父さんは頷きながらそう答えた。そして恩田はさっきからずっと、飛び出していった柊さんを気にする様子が伺えつつも小さくなったまま黙って座ってる。でも仕方ないわよね。私も怒鳴っちゃったから萎縮してるんだろうし。

 しかし、柊さんと悠斗の前でああやって恥かかされちゃったのは、恩田自身も痛いだろうに。まあ、自業自得なんだけど。

「しかし柊さん、何で突然あんなに叫んだり出ていったりしたんだ?」「うーん、どうもねあの子、親と余り上手くいってなかったらしいのよ。その原因の一端は恩田にあるみたいだけど。ねえ、恩田?」

 私の問いに、恩田は「は、はい」と小さくなったまま返事をする。

「どういう事なんだ?」

 怪訝な顔をしながら質問する父さんに、私は柊さんから聞いた話をまとめて伝える。

「えーとね。どうも柊さんの気持ちを度外視してあの子に芸能界に入るよう、恩田と柊さんの母親がレールを引いていたみたいなのよ。柊さんも親が言う事だし当時まだ子どもだったから、判別つかず恩田や親の言う通り素直に聞いてたみたい。でも最近、あの子も成長してきて本当にやりたい事はこれじゃない、と思うようになってきてたようでね。でも、津曲、要する柊さんの母親は、恩田に依存してるから、恩田の言う事全てそのまま受け入れて、柊さんの気持ちを聞こうともしないんだって」

「……成る程。じゃあ、そっちも解決してやらんといけないなあ」「え? そこまで関わっちゃうの? ……全く。マサ君って本当、お人好しなんだから」

「良く言うよ。俺より母さんの方が余程お人好しだろ? こんなにも柊さんの事、あれこれ構ってあげてるんだし」「……それはまあ、そうだけど」

「それにさ、ここまで来て後は放置ってなるのはさすがに気分が悪いよ。知らない相手じゃないしさ」「まあね。それは私も同意だわ」

「じゃあさっそく」「ええ」

 そして私と父さんがお互い顔を見合わせる。それを見ていた恩田が不思議そうな顔で私達を見る。

「ど、どうなさるおつもりですか?」

「そうだな。とりあえず津曲に電話して貰えるか?」

 ※※※

「柊さん!」「!」

 追いついた俺は逃すまいと柊さんの腕をガシっと掴む。俺に捕まった柊さんは、抵抗しようともせず、息を切らしながらその場で立ち止まった。

 やっぱり急いで出てきて正解だったよ。だって柊さん足速いんだもん。俺も足には自信があるけど、追いつけるかどうかギリギリだった。そして柊さん、今スマホ持ってないから連絡つかないし、既に夜九時前で辺り真っ暗だから、見失っちゃったら探すのかなり大変だっただろうから。本当追いついて良かった。

「あのさ、すぐ戻るのも気まずいだろうし、丁度ここの近くに公園あるから、そこで一旦休もっか?」「あ……。う、うん」

 涙目で俺を見つめながら小さくコクンと頷く柊さん。そして俺はすぐ近くの公園まで、掴んだ腕を引っ張って連れて行く。そうだこの公園、以前柊さんが家に来た時立ち寄ったとこだ。

「……ここ。懐かしいな」「あ、覚えてた?」

「勿論。だって私、生まれて始めて男の子の家に泊まった日だったもん」「あれ? 幼馴染のヒロ君の家に泊まった事はなかったの?」

「もう! またそういういじわる言うんだから! ヒロ君……じゃなかった。大内君の家に泊まった事は一度もないよ。一緒に遊んだりしただけだから」

 わざわざ幼馴染の名前を言い直しながら反論する柊さん。俺はその様子を見てクスリと笑ってしまう。実は前から気になってたんだよな。子どもの頃とは言え、俺の彼女である柊さんが、あんなクソ野郎の家に泊まった事あったらやっぱり気分悪いし。だからつい、このタイミングで聞いてみた。でもないみたいで良かった良かった。

「ちょっと冷えるね。近くの自販機でホットドリンク買ってくる。待ってて」「うん。ありがと」

 そう言って俺は暗い夜道をこうこうと照らす自販機の灯りまで向かい、缶のホットコーヒー二つを買い、ブランコに座る柊さんの元に戻った。柊さんはお礼を言いながら、俺からホットコーヒーを受け取り、少し赤みを帯びたその頬に当てる。

「ふう。あったかい」「そろそろ寒くなってくる季節だもんね」

 俺も柊さんの隣で風に揺れてたブランコに座る。コーヒーのプルタブを引いて開け、飲み口から小さな湯気の立つコーヒーを一口。うーん、何でコーヒーってこんな落ち着くんだろうなあ。

 柊さんもコーヒーに口をつけ、ふう、と息を吐く。どうやら少し落ち着いたかな?

「……ごめんね。いきなり飛び出してきちゃって」「気にしなくていいよ。あんだけ色んな事聞いたら、頭グチャグチャになるの理解出来るし」

「うん……。そうだね。頭の中本当グチャグチャ」

 そう言った後、柊さんは頭の中を整理しようとするかのように、押し黙って地面を見つめ続ける。俺は邪魔しないよう話しかけないようにしつつ、心配してるだろうと思って、母さんにスマホで(柊さんと近くの公園にいる)とline送信しておいた。

 少しして、柊さんがポツポツと話し始める。

「……お母さん、恩田さんの後輩だったなんて。いくら何でもおかしいと思ってたんだよね。恩田さんの言う事がいくら筋通ってると言っても、一切反論せずずっと言いなりになってたのって。でも今回、その謎が解けて納得できたかも」

「それに、恩田社長の過去の話もすごかったもんね」「……うん」

「……何であんなにムキになって武智君と私との関係を引き裂こうとしてたのか分かったけど、でも何かこの件はスッキリしないというか。……明歩の件も、高校生は子どもだから、そんな恋愛感情すぐ無くなる、なんて言ってたもんね。それって、恩田さんが過去一途に想ってた武智君のお父さんとの恋が上手くいかなかったから、ずっとそう思ってたんだね」

「……そうみたいだね」

「はあ……。私バカみたい。恩田さんって有名プロダクションの社長だから、言う通りにしていれば大丈夫だって勝手に思い込んでたところもあったけど、あんな話聞いちゃったら、もう信用出来ない」

 そうだろうなあ。俺は柊さんの言葉に同意してしまう。

 そこで突然、柊さんがグス、グスと鼻をすすり泣き始めた。俺は驚いてブランコを降りて柊さんの正面でしゃがむ。同じ顔の高さになった俺を涙目で見ながら、柊さんはごめんなさい、と小さく呟く。

「ごめんなさい。私また……、泣いちゃって……」「いいよ気にしてない。ていうか俺で良かったら何でも話して欲しい。柊さんの力になりたいから」

「……本当、優しいね」「そんなの当たり前じゃん。だって彼氏なんだからさ」

 そう言いながら俺がエッヘンと胸を張ると、零れそうになった涙を指で拭いながらクスリと笑う柊さん。やっぱ柊さんは泣いてるより笑顔のほうがいいね。

 そして柊さんは既に空になったコーヒーの缶を、残った温もりを感じるかのようにギュッと握りしめ、俺を見つめる。

「……何かね、武智君のご家族とうちとを比べちゃったら羨ましく思っちゃった。武智君のお父さんとお母さん、本当に良い人達で、私みたいな他人でもああやって色々言ってくれたりして凄く嬉しかったんだけど、それと同時にうちのお父さんお母さんと全然違うって思っちゃったら、凄く情けなくて悲しくなっちゃった。……私、自分の辛い事を親に相談出来ないんだって」

「……柊さん」

「しかもさっきのあの話でしょ? 前から恩田さんの言いなりだなあって思ってたけど、実は二人共関係者だったなんて。お父さんは元々お母さんにゾッコンだったから、お母さんの言う事には一切逆らわない人だから、それで同様に言いなりになってたんだろうけど。……はあ。何だかもう、色々バカバカしくなっちゃった。でも、そんな気持ち、私の親は理解してくれないだろうし」

 自虐的にそう言いながら、悲しい笑顔を見せる柊さん。俺はたまらなくなって未だ空き缶を握ってる柊さんの両手をギュッと握りしめた。

「俺が柊さんの傍にいるから。俺じゃダメかな? 俺がずっと、柊さんの愚痴聞くよ」

「……武智君」

「俺がこれからもずっと、柊さんの悲しい事や辛い事全部聞くから。柊さんを泣かす奴がいたら俺がぶっ飛ばす。俺が、俺が……」

 長いまつ毛の、とても綺麗な瞳で、でも頬に赤みを帯びた柊さんは、じっと俺を見つめてる。俺は自分の気持ちを込めるように、少し強めにギュッと空き缶を持つ柊さんの手を握る。

「俺が、柊さんの全部を受け止める」

 柊さんの力になりたい。この子が悲しむ姿を見たくない。この子がこれからもずっと、幸せでいれるよう、俺が支えになりたい。

 そんな思いの丈をぶつけるかのように、俺は真剣な眼差しを柊さんに向け話した。

 柊さんは俺の顔をじっと見つめる。だけど、

「……プッ! アハハハハ!」「え? な、何?」

 急に視線を反らし突然笑い出す柊さんに、俺はつい唖然としてしまう。え? 俺何かおかしな事言ったかな? 超真剣だったんだけど。

「アハハハ! あーもう笑っちゃうよ武智君」「え? な、何で?」

「だってまるでプロポーズみたいなんだもん」「そ、そうかな?」

 言われてみればそうかも知れない。柊さんの言葉に、俺は急に恥ずかしくなってきた。……ヤバいな。考えたら言う通りだ。あんな真面目に告白みたいな事したら、そう思われても仕方ないか。

「あーもうビックリした。でも笑っちゃってごめんね」「い。いや言う通りだと思うし……でも」

「うん。分かってる。私のためを思って言ってくれたんだよね」

 そう言って柊さんはブランコから立ち上がり、俺をギュッと抱きしめた。

「気持凄く伝わったよ。凄く嬉しかった。私の人生で一番かも」「そ、そう?」

「うん。あのね武智君」「うん」

「大好き」

 潤んだ瞳だけど一杯の笑顔で、でも頬を赤らめ恥ずかしそうな柊さんは、俺に優しいキスをした。






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