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その百十四
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※※※
「玲奈ー! 次この料理おねがーい!」「はーい!」
「あ、玲奈ー! ついでに隣の席のお皿下げてきてー!」「了解でーす!」
そうお互いコミュニケーションを取りながら二人してウインクし合ってる。何だこの二人? 凄えコンビネーションいいな。つか、超仲良くなってね? まあ以前から仲は良かったけど、ここ最近は特に距離が近い気がする。
最近、俺だけじゃなく安川さんもキッチンに入ってマスターのサポートをするようになり、店が以前より一層うまく回るようになってきた。更に安川さんと山本の中の良さも相まって、動きに無駄がなくなって回転率が向上してる。なので忙しいのは相変わらずだけど、以前よりストレスなく仕事が回るようになって、結構楽になってきた。
それは良かったけど、あの二人、何かあったんだろうか?
「ほら武智先輩! ボーッとしてないであっちの席のオーダー聞いてきて下さい!」「あ、はい」
後輩で俺より経験の浅い山本に注意されてしまった。でも山本の言う通りなのでそそくさとオーダーを聞きに行く。あの、山本のマンションでの一件があった直後は、お互い何だか気まずかったけど、あれから既に二週間は経過してるのもあってか、最近は以前のように話出来てる。
俺はあの日から一度も山本と帰ってないし、塾も一緒に行ってない。そういや山本からのlineも無くなった。当初は気になったけど、山本が何も言わないならまあいいか、と思って敢えて聞かないようにしてる。
そんな風にここ最近の事を振り返りつつも、聞いてきたオーダーをマスターに通す。今日も大忙しの喫茶店。……そうだここ喫茶店だった。なのにずっと夕方から夜までの間めちゃくちゃ忙しいからその事忘れてたよ。とにかく俺と安川さん、それと山本やマスター含め、今日もひっきりなしにやってくるお客さんの対応にてんてこ舞いになってた。
そして皆して疲労感たっぷりの中、各々閉店作業をしてる最中、安川さんが俺の傍にやってきた。
「たけっちー、今日玲奈と三人で話したいから、付き合ってくんない?」「え?」
「……大丈夫。もう玲奈を送って帰ってない事は知ってるから。玲奈とは二人きりにしないし」「……分かった」
何やら意味深な感じで俺にそう伝えた後、今度は山本に何やら耳打ちしてる安川さん。それを聞いた山本の表情が真面目な顔になり、分かりました、と口が動くのが分かった。何だか大事な話みたいだな。つか、俺が既に山本を送って帰ってない事、安川さん知ってるのか。そういう話するくらい、この二人って仲良くなってんだな。
※※※
「やっぱ夜は冷えるねー」「確かに。もう十月もそろそろ終わるし」「コートとか防寒着いるかもですねー」
俺達三人はバイトでの疲労感を抱えながら、ぼちぼち寒くなってきた夜道を自転車押しながら歩いて帰ってる。でも、何だか二人共妙に気を使ってると言うか、様子が変だ。俺に話あるって言ってたから、その事が関係してんだろうけど。
「近くの公園でも行く?」確か帰り道途中に小さい公園があったはず。俺がそう提案すると、そうしよっか、と安川さんが同意し、山本も黙って頷く。それからその公園の前に三人揃って自転車を止め、俺は近くの自販機でホットのドリンクを人数分買う。安川さんはコーヒーで山本はミルクティー。既に何度も一緒に帰ってるから、二人の好みは知ってたりする。
そして俺自身はホットカフェオレを買い、二人の元に持っていって手渡す。そして公園のベンチに三人並んで座ったタイミングで、山本が口を開いた。
「実は、武智先輩に伝えなきゃいけない事がありまして。安川先輩には全て話してたんですけど」
神妙な顔してそう語る山本と、それを真面目な顔して黙って聞いてる安川さん。……一体何を言われるんだろ? 俺は固唾を飲んで山本の言葉を待つ。
余程大事な事に違いない。内容は分からないが俺も真剣な顔で山本の表情を伺う。どこか緊張してるようだ。
山本はクイとホットミルクティーを口に含み、はあ、と若干の白い息を吐き、夜空を見上げる。俺もつられて空を見る。冬が近づいて空気が乾燥してるからか、結構な数の星がきらめいているのが見えた。
そして何だか覚悟したような表情で俺の方に顔を戻す。その際フワリと両おさげがなびく。
それからふう、と一息、山本が息を吐き、俺の目を見て……。
「実は私……、武智先輩の事が、好きでした」
と、突然告白した。
「……え?」
俺が呆気に取られると、山本は俺の表情を見てニコっと微笑む。でも次の瞬間、頬が赤くなったのが、公園を照らすちっぽけなライトだけでもすぐ分かった。
……そっか。やっぱりそうだったのか。
俺みたいな平凡な人間に、山本みたいな超絶美少女が惚れるわけないって思ってたし、そもそも今まで、好意を持たれた経験もないから、心のどこかであり得ないって思ってた。でも、山本の俺に対する一連の行動を振り返ったら、やっぱりか、という気持ちも沸いてくる。
俺は黙って立ち上がり、山本の前に立つ。そして頭を下げた。
「ごめん。俺には……」「分かってますよ。本当、生真面目ですよね」
そう言いながらクスクス笑う山本。でもその瞳は若干潤んでる気がするけど。
「これは単なる私のけじめです。そもそも、告白するのに安川先輩が一緒なのもおかしな話でしょ?」
そう言いながら笑顔で安川さんの方を振り向く山本。その動作を視線で追った先に見えた安川さん、その表情は固まってた。……て事は、安川さんは今ここで山本が告白するって事、知らなかったのか。
「うん、超びっくりした。だって玲奈の気持ちは知ってたけど、たけっちーには伝えないだろうって思ってたから。しかも今このタイミングで、ってあり得ないし」
やっぱり知らなかったんだな。山本が勝手にやらかしたって事か。
「つか玲奈さぁ、そういうのはたけっちーと二人の時にやるもんじゃないの?」「だって武智先輩、多分もう、私と二人きりじゃ会ってくれないって思ったんで。それに、二人になったら、私また決心鈍っちゃいそうだったし」
テヘヘ、と、どこか誤魔化すような、それでいて照れたようにも見える笑いを見せながらそう話す山本に、まあそーかもね、と返事安川さん。……いやまあ、確かに山本と二人きりってのは、マンションでのあの一件以来避けてたけど。告白なんていう大事な事なら勿論受け付けるよ? ……まあでも、結果は同じだっただろうけど。
「じゃあ今日誘われたのは、別の用件?」「当然。たけっちーに大事な話がしたくてね」
そう言って安川さんは俺に向き直る。山本もそのタイミングで真面目な顔になった。
※※※
「……マジか」「うんマジなんだそれが」「マジなんです」
信じられないといった俺の反応に、二人揃ってコクコク頷く。
……恩田社長、そこまでするか? 余程柊さんと離れさせたいらしいな。いや、それくらい柊さんが大事なんだろうけどさ。
たかが一高校生を誘惑するために、わざわざ一人の女の子を転校させるだなんて。たまたま山本が空いてたから出来たのかも知れないけどさ。いくら何でもやりすぎだろ。
「……当然柊さんはこの事知らないよな?」「そりゃそうでしょ。アタシ美久とはもう一ヶ月以上喋ってないし。この件玲奈から聞いたのつい最近だし」
そっか、と呟いてから大きくはあ、とため息を吐いてしまう俺。そこで山本がベンチから立ち上がり、今度は俺の目の前に立って頭を下げた。
「私も知らなかったとは言え、騙しててごめんなさい」
「……うんまあ、正直気持ちは複雑だけど、山本も利用されてたわけだから、別にいいよ」
「有難う御座います。本当武智先輩って優しいですね」
頭を上げた山本はニッコリ微笑みながらそう返す。面と向かって優しいって言われると照れるな。俺は気にしないでくれ、と手をひらひらさせ、何だか恥ずかしかったので顔を下に背けた。
でも振り返ってみたら、山本が空手部のマネージャーになったり、東京についてきたりしてたのも、全て誘惑しようと目論んでいたからなんだなあ。結構強引だとは思ってたけど、成る程、全て合点がいくな。無理やり接点作ろうとしたり、俺の彼女である柊さんについて知ろうとしてたって事だもんな。
「とにかく、あのオバちゃん……じゃなくて、恩田社長の目論みをたけっちーにも知ってて欲しかったんだ。それに、玲奈がたけっちーを騙してるのが辛いって言ってたから」「……そっか」
俺が山本の方を見ると再度ごめんなさい、と言いながらペコリと頭を下げてる。
「好きになった人を騙すなんて、私が許せなかったんです」「好きって……。いや山本、そこはもうちょっとオブラートに包もうか」
「フン、だ。どうせ成就しない恋ですからね。もう開き直ってますし、それくらいの事いくらでも言っちゃいますよーだ」
アカンベーしておどける山本。全く調子いいなこいつ。でも、基本山本は良い奴なんだよな。一緒にバイトしてても、お客さんやマスターや俺達への気遣いを見てても、山本の性格の良さは分かるし、前までは塾も一緒に行ってて、色々話してたから知ってる。しかもかなり可愛いし。山本も芸能人になれるんじゃ? ってルックスだもんな。
……だからこそ、山本とはそれなりに距離を置かないとダメだ。柊さんと中々連絡取れない今、余計な感情が邪魔をする可能性があるから。
「で、これからの事なんだけどさ。玲奈は日向って人と連絡取れるんだって。だから……」「そこから、情報を得る事が出来るって事?」
そう、と真面目な顔で頷く安川さん。
「でも、山本はそれでいいのか? だって……」「いいんですよ。ずっと武智先輩や安川先輩を騙してた贖罪みたいなもんです。だから、これまでの事はチャラにしてくださいね」
人差し指を俺に向け、ね? と可愛らしく念押しする山本に、俺はフッとつい笑いが溢れてしまった。俺は山本の想いを断った上、山本は俺と柊さんとの関係がうまくいくよう、協力するって事になるのに。でもその心配は、山本の抜かり無い提案で払拭されたみたいだ。
文化祭まで後一月。俺は必ず柊さんに会う。そして……。
「玲奈ー! 次この料理おねがーい!」「はーい!」
「あ、玲奈ー! ついでに隣の席のお皿下げてきてー!」「了解でーす!」
そうお互いコミュニケーションを取りながら二人してウインクし合ってる。何だこの二人? 凄えコンビネーションいいな。つか、超仲良くなってね? まあ以前から仲は良かったけど、ここ最近は特に距離が近い気がする。
最近、俺だけじゃなく安川さんもキッチンに入ってマスターのサポートをするようになり、店が以前より一層うまく回るようになってきた。更に安川さんと山本の中の良さも相まって、動きに無駄がなくなって回転率が向上してる。なので忙しいのは相変わらずだけど、以前よりストレスなく仕事が回るようになって、結構楽になってきた。
それは良かったけど、あの二人、何かあったんだろうか?
「ほら武智先輩! ボーッとしてないであっちの席のオーダー聞いてきて下さい!」「あ、はい」
後輩で俺より経験の浅い山本に注意されてしまった。でも山本の言う通りなのでそそくさとオーダーを聞きに行く。あの、山本のマンションでの一件があった直後は、お互い何だか気まずかったけど、あれから既に二週間は経過してるのもあってか、最近は以前のように話出来てる。
俺はあの日から一度も山本と帰ってないし、塾も一緒に行ってない。そういや山本からのlineも無くなった。当初は気になったけど、山本が何も言わないならまあいいか、と思って敢えて聞かないようにしてる。
そんな風にここ最近の事を振り返りつつも、聞いてきたオーダーをマスターに通す。今日も大忙しの喫茶店。……そうだここ喫茶店だった。なのにずっと夕方から夜までの間めちゃくちゃ忙しいからその事忘れてたよ。とにかく俺と安川さん、それと山本やマスター含め、今日もひっきりなしにやってくるお客さんの対応にてんてこ舞いになってた。
そして皆して疲労感たっぷりの中、各々閉店作業をしてる最中、安川さんが俺の傍にやってきた。
「たけっちー、今日玲奈と三人で話したいから、付き合ってくんない?」「え?」
「……大丈夫。もう玲奈を送って帰ってない事は知ってるから。玲奈とは二人きりにしないし」「……分かった」
何やら意味深な感じで俺にそう伝えた後、今度は山本に何やら耳打ちしてる安川さん。それを聞いた山本の表情が真面目な顔になり、分かりました、と口が動くのが分かった。何だか大事な話みたいだな。つか、俺が既に山本を送って帰ってない事、安川さん知ってるのか。そういう話するくらい、この二人って仲良くなってんだな。
※※※
「やっぱ夜は冷えるねー」「確かに。もう十月もそろそろ終わるし」「コートとか防寒着いるかもですねー」
俺達三人はバイトでの疲労感を抱えながら、ぼちぼち寒くなってきた夜道を自転車押しながら歩いて帰ってる。でも、何だか二人共妙に気を使ってると言うか、様子が変だ。俺に話あるって言ってたから、その事が関係してんだろうけど。
「近くの公園でも行く?」確か帰り道途中に小さい公園があったはず。俺がそう提案すると、そうしよっか、と安川さんが同意し、山本も黙って頷く。それからその公園の前に三人揃って自転車を止め、俺は近くの自販機でホットのドリンクを人数分買う。安川さんはコーヒーで山本はミルクティー。既に何度も一緒に帰ってるから、二人の好みは知ってたりする。
そして俺自身はホットカフェオレを買い、二人の元に持っていって手渡す。そして公園のベンチに三人並んで座ったタイミングで、山本が口を開いた。
「実は、武智先輩に伝えなきゃいけない事がありまして。安川先輩には全て話してたんですけど」
神妙な顔してそう語る山本と、それを真面目な顔して黙って聞いてる安川さん。……一体何を言われるんだろ? 俺は固唾を飲んで山本の言葉を待つ。
余程大事な事に違いない。内容は分からないが俺も真剣な顔で山本の表情を伺う。どこか緊張してるようだ。
山本はクイとホットミルクティーを口に含み、はあ、と若干の白い息を吐き、夜空を見上げる。俺もつられて空を見る。冬が近づいて空気が乾燥してるからか、結構な数の星がきらめいているのが見えた。
そして何だか覚悟したような表情で俺の方に顔を戻す。その際フワリと両おさげがなびく。
それからふう、と一息、山本が息を吐き、俺の目を見て……。
「実は私……、武智先輩の事が、好きでした」
と、突然告白した。
「……え?」
俺が呆気に取られると、山本は俺の表情を見てニコっと微笑む。でも次の瞬間、頬が赤くなったのが、公園を照らすちっぽけなライトだけでもすぐ分かった。
……そっか。やっぱりそうだったのか。
俺みたいな平凡な人間に、山本みたいな超絶美少女が惚れるわけないって思ってたし、そもそも今まで、好意を持たれた経験もないから、心のどこかであり得ないって思ってた。でも、山本の俺に対する一連の行動を振り返ったら、やっぱりか、という気持ちも沸いてくる。
俺は黙って立ち上がり、山本の前に立つ。そして頭を下げた。
「ごめん。俺には……」「分かってますよ。本当、生真面目ですよね」
そう言いながらクスクス笑う山本。でもその瞳は若干潤んでる気がするけど。
「これは単なる私のけじめです。そもそも、告白するのに安川先輩が一緒なのもおかしな話でしょ?」
そう言いながら笑顔で安川さんの方を振り向く山本。その動作を視線で追った先に見えた安川さん、その表情は固まってた。……て事は、安川さんは今ここで山本が告白するって事、知らなかったのか。
「うん、超びっくりした。だって玲奈の気持ちは知ってたけど、たけっちーには伝えないだろうって思ってたから。しかも今このタイミングで、ってあり得ないし」
やっぱり知らなかったんだな。山本が勝手にやらかしたって事か。
「つか玲奈さぁ、そういうのはたけっちーと二人の時にやるもんじゃないの?」「だって武智先輩、多分もう、私と二人きりじゃ会ってくれないって思ったんで。それに、二人になったら、私また決心鈍っちゃいそうだったし」
テヘヘ、と、どこか誤魔化すような、それでいて照れたようにも見える笑いを見せながらそう話す山本に、まあそーかもね、と返事安川さん。……いやまあ、確かに山本と二人きりってのは、マンションでのあの一件以来避けてたけど。告白なんていう大事な事なら勿論受け付けるよ? ……まあでも、結果は同じだっただろうけど。
「じゃあ今日誘われたのは、別の用件?」「当然。たけっちーに大事な話がしたくてね」
そう言って安川さんは俺に向き直る。山本もそのタイミングで真面目な顔になった。
※※※
「……マジか」「うんマジなんだそれが」「マジなんです」
信じられないといった俺の反応に、二人揃ってコクコク頷く。
……恩田社長、そこまでするか? 余程柊さんと離れさせたいらしいな。いや、それくらい柊さんが大事なんだろうけどさ。
たかが一高校生を誘惑するために、わざわざ一人の女の子を転校させるだなんて。たまたま山本が空いてたから出来たのかも知れないけどさ。いくら何でもやりすぎだろ。
「……当然柊さんはこの事知らないよな?」「そりゃそうでしょ。アタシ美久とはもう一ヶ月以上喋ってないし。この件玲奈から聞いたのつい最近だし」
そっか、と呟いてから大きくはあ、とため息を吐いてしまう俺。そこで山本がベンチから立ち上がり、今度は俺の目の前に立って頭を下げた。
「私も知らなかったとは言え、騙しててごめんなさい」
「……うんまあ、正直気持ちは複雑だけど、山本も利用されてたわけだから、別にいいよ」
「有難う御座います。本当武智先輩って優しいですね」
頭を上げた山本はニッコリ微笑みながらそう返す。面と向かって優しいって言われると照れるな。俺は気にしないでくれ、と手をひらひらさせ、何だか恥ずかしかったので顔を下に背けた。
でも振り返ってみたら、山本が空手部のマネージャーになったり、東京についてきたりしてたのも、全て誘惑しようと目論んでいたからなんだなあ。結構強引だとは思ってたけど、成る程、全て合点がいくな。無理やり接点作ろうとしたり、俺の彼女である柊さんについて知ろうとしてたって事だもんな。
「とにかく、あのオバちゃん……じゃなくて、恩田社長の目論みをたけっちーにも知ってて欲しかったんだ。それに、玲奈がたけっちーを騙してるのが辛いって言ってたから」「……そっか」
俺が山本の方を見ると再度ごめんなさい、と言いながらペコリと頭を下げてる。
「好きになった人を騙すなんて、私が許せなかったんです」「好きって……。いや山本、そこはもうちょっとオブラートに包もうか」
「フン、だ。どうせ成就しない恋ですからね。もう開き直ってますし、それくらいの事いくらでも言っちゃいますよーだ」
アカンベーしておどける山本。全く調子いいなこいつ。でも、基本山本は良い奴なんだよな。一緒にバイトしてても、お客さんやマスターや俺達への気遣いを見てても、山本の性格の良さは分かるし、前までは塾も一緒に行ってて、色々話してたから知ってる。しかもかなり可愛いし。山本も芸能人になれるんじゃ? ってルックスだもんな。
……だからこそ、山本とはそれなりに距離を置かないとダメだ。柊さんと中々連絡取れない今、余計な感情が邪魔をする可能性があるから。
「で、これからの事なんだけどさ。玲奈は日向って人と連絡取れるんだって。だから……」「そこから、情報を得る事が出来るって事?」
そう、と真面目な顔で頷く安川さん。
「でも、山本はそれでいいのか? だって……」「いいんですよ。ずっと武智先輩や安川先輩を騙してた贖罪みたいなもんです。だから、これまでの事はチャラにしてくださいね」
人差し指を俺に向け、ね? と可愛らしく念押しする山本に、俺はフッとつい笑いが溢れてしまった。俺は山本の想いを断った上、山本は俺と柊さんとの関係がうまくいくよう、協力するって事になるのに。でもその心配は、山本の抜かり無い提案で払拭されたみたいだ。
文化祭まで後一月。俺は必ず柊さんに会う。そして……。
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