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その百九
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※※※
もう既に季節は九月下旬。暑さも大分和らいできて時々涼しい風を感じる今日この頃。そろそろ冬服の準備をしなきゃと考えながら教室の中から窓の外の澄み渡った青空を見る。
柊さんも同じ空を見てるのかな? なんて、詩人みたいな事を考えたりしながら。
山本とのあの件があってからというもの、俺は若干警戒しながらも、塾は行きとバイトは帰りに送るのを止めてない。でもそれもそろそろ終わりにしないといけないから、そのうち山本には伝えようとは思うけど、どうも踏ん切りつかないというか。
一方山本はあれから特に変わった様子もなく、相変わらず自意識過剰な感じで接してくる。ただ、以前に比べ距離が近くなっった気がする。時折安川さんが間に入って遮ってくれたりするんだけど。
そして柊さんからの電話も、週一くらいのペースで受ける事が出来てる。山本はあれからは夜電話する事が一切無くなった。代わりにlineは送ってくるけど。で、柊さんも時間がないからか、それからは以前電話出来なかった事を聞く事はなく、その日あった出来事とか他愛のない話だけして切るって感じ。
きっと声さえ聞ければいいんだろう。内容は何でもいいんだよな。俺がそうだから。まあ柊さんの場合は一人で寂しいから、とにかく限られた時間で出来るだけ話したいだけだろうけど。
だから、山本に電話するな、と伝えた事は本当に良かった。
先生が板書したのを写しながらそんな事を考えてると、不意に昼休みを告げるチャイムが鳴った。教室のみんなはそれを合図に各々昼飯の準備をし始める。俺もかばんから母さんに作って貰った弁当を取り出した。今日も一人で弁当を食うけど、今日みたいな気持ちいい天気の日は、外で食うのもいいな。
よし。そうするか。そう思って弁当片手に教室から出ようとしたところで、雄介が声をかけてきた。
「悠斗。ちょっといいか? 今日一緒に飯食おうぜ」「え? お、おう」
普段なら安川さんと毎回昼飯食ってんのに、俺誘うなんて珍しいな。つか、飯食うだけなら教室内でもいいんじゃねーの? 俺みたくいい天気だから、外で食おうって思ったのか?
不思議に思いながらとりあえず雄介についていく。そして行き着いたのは体育館の傍のベンチ。そこは藤棚になっていて日除け出来てる。木製の長椅子に長テーブルが複数置かれていて、その一つには安川さんが座ってた。……え~? このカップルと一緒に飯食うの? 目の前でイチャイチャしてるの見ながら飯食わなきゃいけないのかよ。
「雄介ありがとー」「おう」
俺がげんなりしてるのを気にせず、二人はお互いご機嫌な様子で挨拶し、そして雄介は安川さんの横に自然と座る。しかし本当この二人仲いいよなあ。ゴールデンウィークの時の遊園地デートでは、雄介偉そうな態度してたのが嘘みたいに、隠そうともせず安川さんとイチャイチャしてるし。
「……で? 二人のイチャイチャを見せつけるために呼んだんじゃないよな?」
俺がちょっと嫌味っぽい言葉を吐いても、二人の密接度は変わらないし、何もこたえてないっぽい。
「これがイチャイチャだって? これが俺らの日常だぞ?」「そーそー。こんなん普通だよ」
あーはいはいそうですか。ごちそうさま。
「あっそ。じゃあ俺行くわ」「いやいや待てよ」「そうだよ! たけっちーに用事あったから雄介に呼んできてもらったのにー」
そう俺を引き留めるも、決して離れない二人。……これもう夫婦だろ。
俺は小さくため息を吐きながら、仕方なく二人の対面に座り直す。そして二人に断り無く勝手に、持ってきた弁当を開いて食べ始めた。
「……いや悠斗お前。飯食う前に俺らに何か一言あるだろ。マイペースだな」「なーんかいつものたけっちーっぽくないねー。ま、いっか。雄介、アタシ達もご飯食べよ」
おう、とニコニコしながら安川さんが二人分の弁当をかばんから取り出す。……愛妻弁当ですか。
そういや夏休み前、屋上で柊さんと弁当食ってたんだよな。柊さんが作ってきてくれた事もあったなあ。あの時は何だか青春してるって感じで楽しかった。……振り返ってみたら、今よりあの時の方がカップルみたいな事してた気がするな。
そう思うと、目の前で仲良く弁当を食ってる二人が、心底羨ましく思ってしまう。俺だって雄介と安川さんみたいに、高校生活の間にカップルっぽい事してみたいもんな。彼女いるってそういうのも醍醐味だと思ってたし。
……何時でも会える女子が彼女だったら、か。
雄介達の仲睦まじい様子をぼんやり見ながらそんな事を考えつつ、好物の卵焼きに箸を持っていったところで、おもむろに雄介が話しかけてきた。
「悠斗を呼んだのは、山本の事について俺と明歩が話聞きたかったからなんだよ」「は? 何で山本?」
「前、バイトの帰りに、玲奈が毎晩たけっちーに電話してたって聞いちゃったからねー。しかも塾も一緒に行ってるって言ってたじゃん」
「電話は、安川さんも知ってると思うけどあいつ一人暮らしで夜寂しいって言うから付き合ってただけ。今はもう電話してきてないよ。それに、塾一緒に行ってるのは、あいつに絡む奴から守るためだよ」
「……それさあ、玲奈に下心ないって思う?」「下心って?」
「悠斗の事が好きだから、そういう理由作って接触してるって事だよ」
雄介の念押しの言葉に、俺は手を左右に振って無い無いとジェスチャーする。
「そんなわけあるわけないじゃん。だってさ……」
だけど、俺は雄介に反論しようとしてその続きが言えなかった。
「……心当たり、あるんだな?」「……」
雄介が片眉を上げ質問するも、返答できず黙ってしまう俺。そんな俺の様子を見た安川さんは、さっきまで雄介とイチャイチャして緩んでたのが、途端に真面目な顔に変わる。
「そっか。玲奈、何かやっちゃったんだ」
安川さんは山本の気持ちを知ってたような口ぶりでそう呟くと、はあ、と小さくため息を吐いた。
俺はそもそも雄介みたいなイケメンじゃない。だから女の子に惚れられるって経験が殆どない。ってか、恋愛経験自体乏しい。疋田美里さんに告白する勇気さえ中々出なかったくらいだし。
そんな俺なのに、更にラッキーな事に柊美久という超絶美少女の彼女がいる。そしてその事を山本は知ってる。だから尚更、山本みたいなこれまた超絶美少女が、俺に気があるなんてあるわけないって心底思ってた。
だけど、雄介と安川さんから改めて山本の一連の行動は俺に気があるからやってる、って言われるとそうかも知れない、って思ってしまった。だってあいつ、前に俺に抱きついたり思わせぶりな事言ったりしたんだから。あれから山本の態度は以前のままだけど、それでもバイトや塾では何かに付けて話かけてくるし、電話はないにしろ夜毎日必ずlineを送ってくるし。
「とにかく、お前は柊さんの彼氏なんだからしっかりしないとダメじゃねーか。ブレちゃダメだろ? そりゃ勿論、お前の気持ちが最優先だけど。まさか悠斗、山本の事……」
「え? 山本の事好きかだって? ないない! それはない!」
「じゃあ、余り思わせぶりな事してやるなよ。山本も可愛そうだろ?」
「うんうん。本当それ。アタシは玲奈の先輩でもあるから、あの子の事も大事だけど、美久もマブダチだからとても大事。だからこそ、たけっちーははっきりしてないとダメだと思う。中途半端な優しさは罪だよ」
「優しさは……、罪、か」
安川さんの言葉に、胸を貫かれたような感覚を覚える。
まさか山本が俺に気がある、なんて思ってなかったから、そんな風に考えた事さえしなかった。そもそも他人から好意を向けられる経験自体、俺のこれまでの人生で殆ど無かったし。でも、二人から話を聞いて俺がちゃんと線引きして向き合わないとダメだよな。
俺は柊さんの彼氏なんだから。そして、俺の中途半端な思いやりのせいで、山本にも迷惑かけちゃダメだ。
……ただ、山本が言ったあの言葉。
沢山会える女子の方がいい。その言葉がずっと、心残りのように胸の中にくすぶってた。
※※※
「雄介、ありがとね」「いや、俺も気になってたから丁度良かった」
そっか、とアタシは言いながら雄介に微笑む。たけっちーはトイレに行くってんで先に戻ってった。
やっぱアタシだけじゃなく雄介も誘って三人で話して良かったよ。アタシとたけっちーだけだと説得力に欠けるかもだから。まあ何にしろ、アタシ達と話した事で、たけっちー何か感じたみたいだから良かったかな。
「悠斗はああ見えて面倒見いいからな。で、あいつは恋愛経験が殆どないから、山本の気持ちに気づけなかったんだろう。だからこそ、あいつの優しさが山本の余計な想いを起こさせてしまったんだろうな」
本当、雄介ってたけっちーの事良く見てるよね。そして良く分かってる。雄介に相談して良かった。
「まあでも、アタシとしては悩みどころでもあるんだよね。勿論、美久は超大事だけど、玲奈だって大事な後輩だからさー」
「でも、恋愛ってのは縁と運とタイミングだろ? 残念ながら山本にはそれがなかったって事だ」
「ドライだね」
「恋ってのは病気だからな。ドライに考えた方がシンプルだし正解だと思うぞ。だから明歩もさっさと割り切れ。それが山本のためだって思えばいいんだよ」
そう言いながらアタシの頭を優しく撫でる雄介。はぁ~、雄介超カッコいい。温かい眼差しにキュンキュンする~。
って、アタシが雄介に見惚れてると、コツンとげんこつで軽く叩かれちゃった。
「さっきまでの真面目モードがもう終わってんぞ」「雄介のせいだもーん」
と、おどけたところで昼休み五分前のチャイムが鳴った。それを合図にアタシと雄介はお弁当を片付ける。
「ま、明歩もはっきりさせとけよ。山本を大事に思うならな」「うん。頑張る」
そして片手を上げ先に去っていく雄介を見送りながら、アタシも玲奈とキチンと話しようと決意した。
もう既に季節は九月下旬。暑さも大分和らいできて時々涼しい風を感じる今日この頃。そろそろ冬服の準備をしなきゃと考えながら教室の中から窓の外の澄み渡った青空を見る。
柊さんも同じ空を見てるのかな? なんて、詩人みたいな事を考えたりしながら。
山本とのあの件があってからというもの、俺は若干警戒しながらも、塾は行きとバイトは帰りに送るのを止めてない。でもそれもそろそろ終わりにしないといけないから、そのうち山本には伝えようとは思うけど、どうも踏ん切りつかないというか。
一方山本はあれから特に変わった様子もなく、相変わらず自意識過剰な感じで接してくる。ただ、以前に比べ距離が近くなっった気がする。時折安川さんが間に入って遮ってくれたりするんだけど。
そして柊さんからの電話も、週一くらいのペースで受ける事が出来てる。山本はあれからは夜電話する事が一切無くなった。代わりにlineは送ってくるけど。で、柊さんも時間がないからか、それからは以前電話出来なかった事を聞く事はなく、その日あった出来事とか他愛のない話だけして切るって感じ。
きっと声さえ聞ければいいんだろう。内容は何でもいいんだよな。俺がそうだから。まあ柊さんの場合は一人で寂しいから、とにかく限られた時間で出来るだけ話したいだけだろうけど。
だから、山本に電話するな、と伝えた事は本当に良かった。
先生が板書したのを写しながらそんな事を考えてると、不意に昼休みを告げるチャイムが鳴った。教室のみんなはそれを合図に各々昼飯の準備をし始める。俺もかばんから母さんに作って貰った弁当を取り出した。今日も一人で弁当を食うけど、今日みたいな気持ちいい天気の日は、外で食うのもいいな。
よし。そうするか。そう思って弁当片手に教室から出ようとしたところで、雄介が声をかけてきた。
「悠斗。ちょっといいか? 今日一緒に飯食おうぜ」「え? お、おう」
普段なら安川さんと毎回昼飯食ってんのに、俺誘うなんて珍しいな。つか、飯食うだけなら教室内でもいいんじゃねーの? 俺みたくいい天気だから、外で食おうって思ったのか?
不思議に思いながらとりあえず雄介についていく。そして行き着いたのは体育館の傍のベンチ。そこは藤棚になっていて日除け出来てる。木製の長椅子に長テーブルが複数置かれていて、その一つには安川さんが座ってた。……え~? このカップルと一緒に飯食うの? 目の前でイチャイチャしてるの見ながら飯食わなきゃいけないのかよ。
「雄介ありがとー」「おう」
俺がげんなりしてるのを気にせず、二人はお互いご機嫌な様子で挨拶し、そして雄介は安川さんの横に自然と座る。しかし本当この二人仲いいよなあ。ゴールデンウィークの時の遊園地デートでは、雄介偉そうな態度してたのが嘘みたいに、隠そうともせず安川さんとイチャイチャしてるし。
「……で? 二人のイチャイチャを見せつけるために呼んだんじゃないよな?」
俺がちょっと嫌味っぽい言葉を吐いても、二人の密接度は変わらないし、何もこたえてないっぽい。
「これがイチャイチャだって? これが俺らの日常だぞ?」「そーそー。こんなん普通だよ」
あーはいはいそうですか。ごちそうさま。
「あっそ。じゃあ俺行くわ」「いやいや待てよ」「そうだよ! たけっちーに用事あったから雄介に呼んできてもらったのにー」
そう俺を引き留めるも、決して離れない二人。……これもう夫婦だろ。
俺は小さくため息を吐きながら、仕方なく二人の対面に座り直す。そして二人に断り無く勝手に、持ってきた弁当を開いて食べ始めた。
「……いや悠斗お前。飯食う前に俺らに何か一言あるだろ。マイペースだな」「なーんかいつものたけっちーっぽくないねー。ま、いっか。雄介、アタシ達もご飯食べよ」
おう、とニコニコしながら安川さんが二人分の弁当をかばんから取り出す。……愛妻弁当ですか。
そういや夏休み前、屋上で柊さんと弁当食ってたんだよな。柊さんが作ってきてくれた事もあったなあ。あの時は何だか青春してるって感じで楽しかった。……振り返ってみたら、今よりあの時の方がカップルみたいな事してた気がするな。
そう思うと、目の前で仲良く弁当を食ってる二人が、心底羨ましく思ってしまう。俺だって雄介と安川さんみたいに、高校生活の間にカップルっぽい事してみたいもんな。彼女いるってそういうのも醍醐味だと思ってたし。
……何時でも会える女子が彼女だったら、か。
雄介達の仲睦まじい様子をぼんやり見ながらそんな事を考えつつ、好物の卵焼きに箸を持っていったところで、おもむろに雄介が話しかけてきた。
「悠斗を呼んだのは、山本の事について俺と明歩が話聞きたかったからなんだよ」「は? 何で山本?」
「前、バイトの帰りに、玲奈が毎晩たけっちーに電話してたって聞いちゃったからねー。しかも塾も一緒に行ってるって言ってたじゃん」
「電話は、安川さんも知ってると思うけどあいつ一人暮らしで夜寂しいって言うから付き合ってただけ。今はもう電話してきてないよ。それに、塾一緒に行ってるのは、あいつに絡む奴から守るためだよ」
「……それさあ、玲奈に下心ないって思う?」「下心って?」
「悠斗の事が好きだから、そういう理由作って接触してるって事だよ」
雄介の念押しの言葉に、俺は手を左右に振って無い無いとジェスチャーする。
「そんなわけあるわけないじゃん。だってさ……」
だけど、俺は雄介に反論しようとしてその続きが言えなかった。
「……心当たり、あるんだな?」「……」
雄介が片眉を上げ質問するも、返答できず黙ってしまう俺。そんな俺の様子を見た安川さんは、さっきまで雄介とイチャイチャして緩んでたのが、途端に真面目な顔に変わる。
「そっか。玲奈、何かやっちゃったんだ」
安川さんは山本の気持ちを知ってたような口ぶりでそう呟くと、はあ、と小さくため息を吐いた。
俺はそもそも雄介みたいなイケメンじゃない。だから女の子に惚れられるって経験が殆どない。ってか、恋愛経験自体乏しい。疋田美里さんに告白する勇気さえ中々出なかったくらいだし。
そんな俺なのに、更にラッキーな事に柊美久という超絶美少女の彼女がいる。そしてその事を山本は知ってる。だから尚更、山本みたいなこれまた超絶美少女が、俺に気があるなんてあるわけないって心底思ってた。
だけど、雄介と安川さんから改めて山本の一連の行動は俺に気があるからやってる、って言われるとそうかも知れない、って思ってしまった。だってあいつ、前に俺に抱きついたり思わせぶりな事言ったりしたんだから。あれから山本の態度は以前のままだけど、それでもバイトや塾では何かに付けて話かけてくるし、電話はないにしろ夜毎日必ずlineを送ってくるし。
「とにかく、お前は柊さんの彼氏なんだからしっかりしないとダメじゃねーか。ブレちゃダメだろ? そりゃ勿論、お前の気持ちが最優先だけど。まさか悠斗、山本の事……」
「え? 山本の事好きかだって? ないない! それはない!」
「じゃあ、余り思わせぶりな事してやるなよ。山本も可愛そうだろ?」
「うんうん。本当それ。アタシは玲奈の先輩でもあるから、あの子の事も大事だけど、美久もマブダチだからとても大事。だからこそ、たけっちーははっきりしてないとダメだと思う。中途半端な優しさは罪だよ」
「優しさは……、罪、か」
安川さんの言葉に、胸を貫かれたような感覚を覚える。
まさか山本が俺に気がある、なんて思ってなかったから、そんな風に考えた事さえしなかった。そもそも他人から好意を向けられる経験自体、俺のこれまでの人生で殆ど無かったし。でも、二人から話を聞いて俺がちゃんと線引きして向き合わないとダメだよな。
俺は柊さんの彼氏なんだから。そして、俺の中途半端な思いやりのせいで、山本にも迷惑かけちゃダメだ。
……ただ、山本が言ったあの言葉。
沢山会える女子の方がいい。その言葉がずっと、心残りのように胸の中にくすぶってた。
※※※
「雄介、ありがとね」「いや、俺も気になってたから丁度良かった」
そっか、とアタシは言いながら雄介に微笑む。たけっちーはトイレに行くってんで先に戻ってった。
やっぱアタシだけじゃなく雄介も誘って三人で話して良かったよ。アタシとたけっちーだけだと説得力に欠けるかもだから。まあ何にしろ、アタシ達と話した事で、たけっちー何か感じたみたいだから良かったかな。
「悠斗はああ見えて面倒見いいからな。で、あいつは恋愛経験が殆どないから、山本の気持ちに気づけなかったんだろう。だからこそ、あいつの優しさが山本の余計な想いを起こさせてしまったんだろうな」
本当、雄介ってたけっちーの事良く見てるよね。そして良く分かってる。雄介に相談して良かった。
「まあでも、アタシとしては悩みどころでもあるんだよね。勿論、美久は超大事だけど、玲奈だって大事な後輩だからさー」
「でも、恋愛ってのは縁と運とタイミングだろ? 残念ながら山本にはそれがなかったって事だ」
「ドライだね」
「恋ってのは病気だからな。ドライに考えた方がシンプルだし正解だと思うぞ。だから明歩もさっさと割り切れ。それが山本のためだって思えばいいんだよ」
そう言いながらアタシの頭を優しく撫でる雄介。はぁ~、雄介超カッコいい。温かい眼差しにキュンキュンする~。
って、アタシが雄介に見惚れてると、コツンとげんこつで軽く叩かれちゃった。
「さっきまでの真面目モードがもう終わってんぞ」「雄介のせいだもーん」
と、おどけたところで昼休み五分前のチャイムが鳴った。それを合図にアタシと雄介はお弁当を片付ける。
「ま、明歩もはっきりさせとけよ。山本を大事に思うならな」「うん。頑張る」
そして片手を上げ先に去っていく雄介を見送りながら、アタシも玲奈とキチンと話しようと決意した。
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