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その百五
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※※※
あの一件の日以降、俺は暫くの間山本を家の近くまで送る事となった。今も二人で帰ってる。まあ多分、奴らはもう二度とちょっかいかける事はないだろうけど、山本がまだ不安に感じてるみたいだからね。しかも山本は一人暮らしだし、万が一の事があっちゃいけないからね。まあ、途中までは安川さんも一緒に帰ってるから、俺が送らなくても引き続き安川さんと二人で帰るようになるだろうから、一ヶ月くらい付き合う感じかな?
でもあれからどうも、山本の様子がおかしい。以前なら「私みたいな超可愛い子と一緒に帰れて、武智先輩も幸せ者ですよねー」とか、調子いい事言いそうなんだけど。
「あのさあ、山本」「へっ? は、はい! な、何ですか?」
俺が声かけた途端、ビクっと反応する山本。……最近ずっとこんな感じなんだよなあ。
「何か凄ぇよそよそしいよな? 俺何かしたっけ?」「い、いや、先輩は何もしてない、です……」
徐々に声を小さくしながら顔を真っ赤にしてうつむいてしまう山本。……この通り、めっきり大人しくなっちゃったんだよなあ。何と言うか、あの自意識過剰な憎まれ口がないのも、何か寂しいと言うか。調子狂うな。
「あの件の連中ならきっともう大丈夫だと思うぞ? 安川さんも言ってたけど、あの喫茶店俺の後輩達も通ってるし。まあ当然山本も知ってるだろうけど。何ならあいつら頼ったらいいし」
俺といるのが嫌ならそうすればいいしね。しかもあいつらにその話したら寧ろ喜んで協力するだろうし。でも俺がそう言うと山本はブンブン、と首を横に振る。
「武智先輩……、が、いいです」
そしてボソッと呟く山本。そして顔を真っ赤にして、あ、言っちゃった、とか呟いてる。……俺がいいってどういう事?
「ああ、そうか。山本とはバイトだけじゃなく塾も一緒に行ったりして付き合い長いし、ましてや俺は彼女いるから、他の連中に比べたら信用できる。俺がいいってそういう意味なんだな」「へ? い、いや、まあ、その……」
「ご指名されて悪い気分じゃないし。まあ俺で良かったら付き合ってやるよ」「は、はい……」
何か歯切れ悪いな。そして何故かツーンとあっち向いてしまうし。俺何かやらかしたか?
でも少ししてから、これからも宜しくおねがいします、と改まってペコリと律儀に頭を下げる。……うーん、何かこんな素直な反応する山本、ちょっと気持ち悪いな。
「なあ? 何か最近おかしくないか? その、性格が変わったっていうかさあ」「そ、そうですか?」
「なんつーか、他人行儀なんだよなあ。今まではさあ、遠慮せずグイグイ来てたのに」「そ、そうでしたっけ……」
そしてまた黙ってうつむく山本。……一体何だ? この変わりよう?
※※※
「はあ……」
バタン、と自分の住んでるマンションの玄関ドアを閉め、その場でズズズ、とドアを背もたれにして座り込む私。
はあ、今日も緊張したあ。どうしよう……。武智先輩への気持ちに気付いちゃってから、ずっとまともに顔見れないし普段通り会話が出来なくなっちゃってる。
武智先輩と二人きりだと変に意識しちゃって、恥ずかしさともどかしさで私が私じゃない! もー何なのこれ!
ああでも、一緒にいるととてもハッピーな気分なんだよなあ。胸の奥が温かくてほわほわするというか。これが人を好きになるって事なんだ。さっきまで武智先輩と二人きりだった……。ふふ、超幸せ。
最初、日向さんに写真見せて貰った時は、何この特徴ない平凡な人? って思ってたけど、実は凄く優しくて気遣いが出来て、強くて頼りがいがあって、かっこよくて。人って見かけによらないんだね。
そう言えば私、バイトだけじゃなく塾も一緒だから、結構な頻度で武智先輩に会える。……キャー! 超やばい! 嬉しすぎる! 誰もいないのに何だか嬉し恥ずかしくて、その場で顔を手で隠してしまう私。
……でも、武智先輩、彼女いるんだよね。
そう考えるとやっぱり気分が落ちる。テンション下がる。何でそれが私じゃないんだろう? ……いや分かってるよ。何もアプローチしてないから当然なのは。
武智先輩の彼女は柊美久だって知ってるけど、どれくらいの付き合いなんだろ? ちょっと探ってみないと。私の付けいる隙を探さないとね。
どうせ柊美久は東京に行ってて武智先輩とは中々会えないはずだから、いないうちに私が目一杯アプローチして奪っちゃえばいいんだ。私だって柊美久に負けず劣らず超可愛いんだし。
もし私が武智先輩の彼女になったら……ムフフ、ニヤニヤが止まらない。てか、こんな超絶美少女なんだから、武智先輩だってきっと嬉しいはずだよね!
……でも私、武智先輩を騙してるんだよね。黙ってる事あるんだよね。恩田社長の事とか、柊美久を知ってるとか、そもそも、武智先輩を誘惑しろって言われてる事とか。それを思うと胸の奥がチクリとする。いつか本当の事が言える日がくればいいんだけどなあ。好きな人を騙してるって、気分悪いから。
「……ずっと玄関先にいても仕方ない」とりあえず中に入って、マスターから今日も頂いた賄いのオムライスをレンチンしようと取り出したところで、私のスマホがバイブした。……武智先輩だったり?
……って。なあーんだ、安川先輩だった。ちょっとがっかりしながら私は片付けしながら電話に出た。
※※※
『もしもーし?』「あー玲奈ー? 今電話大丈夫ー?」
『はーい、大丈夫ですよー、って、何か用があるならlineでも良かったんじゃ? そもそもさっきまで一緒に帰ってたじゃないですか』「いや、ちょっと大事な事聞きたいから電話した」
『大事な事?』「……今日もたけっちーと一緒に帰ったんだ?」
『え? そうですよ! 武智先輩と沢山お話しながら帰ったんです。でもそれも後少ししたら終わりかも、なんですよね。寂しいなあ。でも武智先輩とは塾も一緒に行ってるし、終わってからも私が待ってたら挨拶してくれるし。あ! そうだ! 帰りも一緒出来るかな? そうすればもっと武智先輩といれるかなあ? って』
「玲奈ストップ」『それから……って、あ』
ようやく自分が話しすぎてたのに気付いたみたい。そしてごめんなさい、って恥ずかしそうに電話口でアタシに謝罪する。玲奈。その反応でアタシはとある事を確信した。
「玲奈、あんたさあ、たけっちーの事が好きなんでしょ」『え! そ、その、それは、その……』
「違うなら速攻否定するよね-? そうやってどもるって事がもう正解だって言ってるようなもんだよ」『あうう……』
「で、否定しないんだ?」『……』
言葉に窮する玲奈。まあそりゃ、バイト中もずっとたけっちーを目で追ってるし、途中まで帰り一緒だけど、最近はたけっちーとばっか話ししてるから、誰が見たって分かるけどね。
『ダメ、ですか?』「え?」
『私が、その、武智先輩の事……、好き、なら、ダメ、なんですか?』「いや、ダメなんて言ってない。でも知っての通りたけっちーには……」
アタシの言葉を遮るように、玲奈が先に話し始める。
『彼女、いるの分かってます。でも、もうどうしようもないんです。私これが初めての恋で、どうやって気持ちを抑えたらいいか分からないんです。それにこの想い、私は大事にしたい』「玲奈……」
何だか決意を感じるような、真面目なトーンでそう語る玲奈。正直アタシは何て返せばいいか悩んでしまう。
玲奈はたけっちーに彼女いるの知ってて好きだって言ってる。そして、玲奈はたけっちーの彼女が美久とは知らず、喫茶店で働いてた疋田美里だと思ってるはず。
美久はアタシの大事な友達。そして玲奈はアタシの大事な後輩。本音言えばどっちも応援したいけど。
『武智先輩とその彼女、どのくらいの付き合いか知ってます?』「それ聞いてどーすんの?」
『確か彼女って、今東京にいるんですよね? じゃあ私が頑張れば、私が……』「それはアタシが許さないよ」
つい、強めの口調で言ってしまうアタシ。しまった。ついハッとして手のひらで口を抑えてしまうアタシ。それじゃ脅しみたいじゃん。そんな言い方したら玲奈が可愛そうじゃん。でも、美久の事考えたら、美久のいない間に横取りみたいな感じでたけっちーと玲奈がくっつくのも許せなくて。
『許さない? その言い方だと何か知ってるんですね?』「……たけっちーの彼女とアタシは友達なんよ」
『え? ……そう、だったんですか。ハハ、じゃあ安川先輩は私の味方じゃないんですね』「……玲奈」
玲奈は良い子だ。自意識過剰なとこはあるけど、素直で仕事もできるから、ぶっちゃけアタシは玲奈の事好き。だけど、美久だって大事な友達。その友達の彼氏が奪われるって考えると……。
「あーもー! なんでたけっちーなんだよ! 同学年の、ほら、例えば空手部の誰かとかどーなんよ!」
『ええ? いきなり大きな声出して何なんですか? てか、そんな事言われたって、好きな相手って選べないじゃないですか』
うん。玲奈の言う通り。アタシも訳分かんない事言ってる自覚はある。
「とにかく! 玲奈がたけっちーの事好きかどうか確認したかったから電話したの!』「だから何で怒ってるんですか?』
「怒ってんじゃない! 困ってんの!」『……変な先輩』
「まあでもとにかく! 今の玲奈みたいにウジウジしてちゃたけっちー、気を使って余計避けんじゃないの? 前の自意識過剰で生意気な玲奈の方がいいと思う! それも言いたかったの!」
そう。今日電話した理由はもう一つ。玲奈の態度が急変しおとなしくなっちゃったんで、たけっちーだけでなく、マスターも心配してたから確認したかったんだよね。
『アハハ。先輩有難う御座います。確かにそうだ。初めての経験で困ってたけど、まずは私らしくいないと。やっぱ先輩、可愛い後輩のためにアドバイスしたかったんですね! 感謝しますよ!』「え? あ、え、えーと……」
『よし! 決めました。私は私らしく武智先輩に目一杯アプローチします! 背中押してくれて有難う御座います!』
そう言って玲奈は何やらテンション高めに電話切っちゃった。……ええー! アタシ後押ししちゃったの? いや、そんなつもりなかったのに! 美久に申し訳ないじゃん! あーもう、連絡つかないって不便過ぎる!
……後で雄介に相談しよ。
あの一件の日以降、俺は暫くの間山本を家の近くまで送る事となった。今も二人で帰ってる。まあ多分、奴らはもう二度とちょっかいかける事はないだろうけど、山本がまだ不安に感じてるみたいだからね。しかも山本は一人暮らしだし、万が一の事があっちゃいけないからね。まあ、途中までは安川さんも一緒に帰ってるから、俺が送らなくても引き続き安川さんと二人で帰るようになるだろうから、一ヶ月くらい付き合う感じかな?
でもあれからどうも、山本の様子がおかしい。以前なら「私みたいな超可愛い子と一緒に帰れて、武智先輩も幸せ者ですよねー」とか、調子いい事言いそうなんだけど。
「あのさあ、山本」「へっ? は、はい! な、何ですか?」
俺が声かけた途端、ビクっと反応する山本。……最近ずっとこんな感じなんだよなあ。
「何か凄ぇよそよそしいよな? 俺何かしたっけ?」「い、いや、先輩は何もしてない、です……」
徐々に声を小さくしながら顔を真っ赤にしてうつむいてしまう山本。……この通り、めっきり大人しくなっちゃったんだよなあ。何と言うか、あの自意識過剰な憎まれ口がないのも、何か寂しいと言うか。調子狂うな。
「あの件の連中ならきっともう大丈夫だと思うぞ? 安川さんも言ってたけど、あの喫茶店俺の後輩達も通ってるし。まあ当然山本も知ってるだろうけど。何ならあいつら頼ったらいいし」
俺といるのが嫌ならそうすればいいしね。しかもあいつらにその話したら寧ろ喜んで協力するだろうし。でも俺がそう言うと山本はブンブン、と首を横に振る。
「武智先輩……、が、いいです」
そしてボソッと呟く山本。そして顔を真っ赤にして、あ、言っちゃった、とか呟いてる。……俺がいいってどういう事?
「ああ、そうか。山本とはバイトだけじゃなく塾も一緒に行ったりして付き合い長いし、ましてや俺は彼女いるから、他の連中に比べたら信用できる。俺がいいってそういう意味なんだな」「へ? い、いや、まあ、その……」
「ご指名されて悪い気分じゃないし。まあ俺で良かったら付き合ってやるよ」「は、はい……」
何か歯切れ悪いな。そして何故かツーンとあっち向いてしまうし。俺何かやらかしたか?
でも少ししてから、これからも宜しくおねがいします、と改まってペコリと律儀に頭を下げる。……うーん、何かこんな素直な反応する山本、ちょっと気持ち悪いな。
「なあ? 何か最近おかしくないか? その、性格が変わったっていうかさあ」「そ、そうですか?」
「なんつーか、他人行儀なんだよなあ。今まではさあ、遠慮せずグイグイ来てたのに」「そ、そうでしたっけ……」
そしてまた黙ってうつむく山本。……一体何だ? この変わりよう?
※※※
「はあ……」
バタン、と自分の住んでるマンションの玄関ドアを閉め、その場でズズズ、とドアを背もたれにして座り込む私。
はあ、今日も緊張したあ。どうしよう……。武智先輩への気持ちに気付いちゃってから、ずっとまともに顔見れないし普段通り会話が出来なくなっちゃってる。
武智先輩と二人きりだと変に意識しちゃって、恥ずかしさともどかしさで私が私じゃない! もー何なのこれ!
ああでも、一緒にいるととてもハッピーな気分なんだよなあ。胸の奥が温かくてほわほわするというか。これが人を好きになるって事なんだ。さっきまで武智先輩と二人きりだった……。ふふ、超幸せ。
最初、日向さんに写真見せて貰った時は、何この特徴ない平凡な人? って思ってたけど、実は凄く優しくて気遣いが出来て、強くて頼りがいがあって、かっこよくて。人って見かけによらないんだね。
そう言えば私、バイトだけじゃなく塾も一緒だから、結構な頻度で武智先輩に会える。……キャー! 超やばい! 嬉しすぎる! 誰もいないのに何だか嬉し恥ずかしくて、その場で顔を手で隠してしまう私。
……でも、武智先輩、彼女いるんだよね。
そう考えるとやっぱり気分が落ちる。テンション下がる。何でそれが私じゃないんだろう? ……いや分かってるよ。何もアプローチしてないから当然なのは。
武智先輩の彼女は柊美久だって知ってるけど、どれくらいの付き合いなんだろ? ちょっと探ってみないと。私の付けいる隙を探さないとね。
どうせ柊美久は東京に行ってて武智先輩とは中々会えないはずだから、いないうちに私が目一杯アプローチして奪っちゃえばいいんだ。私だって柊美久に負けず劣らず超可愛いんだし。
もし私が武智先輩の彼女になったら……ムフフ、ニヤニヤが止まらない。てか、こんな超絶美少女なんだから、武智先輩だってきっと嬉しいはずだよね!
……でも私、武智先輩を騙してるんだよね。黙ってる事あるんだよね。恩田社長の事とか、柊美久を知ってるとか、そもそも、武智先輩を誘惑しろって言われてる事とか。それを思うと胸の奥がチクリとする。いつか本当の事が言える日がくればいいんだけどなあ。好きな人を騙してるって、気分悪いから。
「……ずっと玄関先にいても仕方ない」とりあえず中に入って、マスターから今日も頂いた賄いのオムライスをレンチンしようと取り出したところで、私のスマホがバイブした。……武智先輩だったり?
……って。なあーんだ、安川先輩だった。ちょっとがっかりしながら私は片付けしながら電話に出た。
※※※
『もしもーし?』「あー玲奈ー? 今電話大丈夫ー?」
『はーい、大丈夫ですよー、って、何か用があるならlineでも良かったんじゃ? そもそもさっきまで一緒に帰ってたじゃないですか』「いや、ちょっと大事な事聞きたいから電話した」
『大事な事?』「……今日もたけっちーと一緒に帰ったんだ?」
『え? そうですよ! 武智先輩と沢山お話しながら帰ったんです。でもそれも後少ししたら終わりかも、なんですよね。寂しいなあ。でも武智先輩とは塾も一緒に行ってるし、終わってからも私が待ってたら挨拶してくれるし。あ! そうだ! 帰りも一緒出来るかな? そうすればもっと武智先輩といれるかなあ? って』
「玲奈ストップ」『それから……って、あ』
ようやく自分が話しすぎてたのに気付いたみたい。そしてごめんなさい、って恥ずかしそうに電話口でアタシに謝罪する。玲奈。その反応でアタシはとある事を確信した。
「玲奈、あんたさあ、たけっちーの事が好きなんでしょ」『え! そ、その、それは、その……』
「違うなら速攻否定するよね-? そうやってどもるって事がもう正解だって言ってるようなもんだよ」『あうう……』
「で、否定しないんだ?」『……』
言葉に窮する玲奈。まあそりゃ、バイト中もずっとたけっちーを目で追ってるし、途中まで帰り一緒だけど、最近はたけっちーとばっか話ししてるから、誰が見たって分かるけどね。
『ダメ、ですか?』「え?」
『私が、その、武智先輩の事……、好き、なら、ダメ、なんですか?』「いや、ダメなんて言ってない。でも知っての通りたけっちーには……」
アタシの言葉を遮るように、玲奈が先に話し始める。
『彼女、いるの分かってます。でも、もうどうしようもないんです。私これが初めての恋で、どうやって気持ちを抑えたらいいか分からないんです。それにこの想い、私は大事にしたい』「玲奈……」
何だか決意を感じるような、真面目なトーンでそう語る玲奈。正直アタシは何て返せばいいか悩んでしまう。
玲奈はたけっちーに彼女いるの知ってて好きだって言ってる。そして、玲奈はたけっちーの彼女が美久とは知らず、喫茶店で働いてた疋田美里だと思ってるはず。
美久はアタシの大事な友達。そして玲奈はアタシの大事な後輩。本音言えばどっちも応援したいけど。
『武智先輩とその彼女、どのくらいの付き合いか知ってます?』「それ聞いてどーすんの?」
『確か彼女って、今東京にいるんですよね? じゃあ私が頑張れば、私が……』「それはアタシが許さないよ」
つい、強めの口調で言ってしまうアタシ。しまった。ついハッとして手のひらで口を抑えてしまうアタシ。それじゃ脅しみたいじゃん。そんな言い方したら玲奈が可愛そうじゃん。でも、美久の事考えたら、美久のいない間に横取りみたいな感じでたけっちーと玲奈がくっつくのも許せなくて。
『許さない? その言い方だと何か知ってるんですね?』「……たけっちーの彼女とアタシは友達なんよ」
『え? ……そう、だったんですか。ハハ、じゃあ安川先輩は私の味方じゃないんですね』「……玲奈」
玲奈は良い子だ。自意識過剰なとこはあるけど、素直で仕事もできるから、ぶっちゃけアタシは玲奈の事好き。だけど、美久だって大事な友達。その友達の彼氏が奪われるって考えると……。
「あーもー! なんでたけっちーなんだよ! 同学年の、ほら、例えば空手部の誰かとかどーなんよ!」
『ええ? いきなり大きな声出して何なんですか? てか、そんな事言われたって、好きな相手って選べないじゃないですか』
うん。玲奈の言う通り。アタシも訳分かんない事言ってる自覚はある。
「とにかく! 玲奈がたけっちーの事好きかどうか確認したかったから電話したの!』「だから何で怒ってるんですか?』
「怒ってんじゃない! 困ってんの!」『……変な先輩』
「まあでもとにかく! 今の玲奈みたいにウジウジしてちゃたけっちー、気を使って余計避けんじゃないの? 前の自意識過剰で生意気な玲奈の方がいいと思う! それも言いたかったの!」
そう。今日電話した理由はもう一つ。玲奈の態度が急変しおとなしくなっちゃったんで、たけっちーだけでなく、マスターも心配してたから確認したかったんだよね。
『アハハ。先輩有難う御座います。確かにそうだ。初めての経験で困ってたけど、まずは私らしくいないと。やっぱ先輩、可愛い後輩のためにアドバイスしたかったんですね! 感謝しますよ!』「え? あ、え、えーと……」
『よし! 決めました。私は私らしく武智先輩に目一杯アプローチします! 背中押してくれて有難う御座います!』
そう言って玲奈は何やらテンション高めに電話切っちゃった。……ええー! アタシ後押ししちゃったの? いや、そんなつもりなかったのに! 美久に申し訳ないじゃん! あーもう、連絡つかないって不便過ぎる!
……後で雄介に相談しよ。
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本作品は私がデビュー前に書いた新人賞投稿策を改訂したものです。
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