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その九十九
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※※※
「もー超やばいじゃーん! おめでとーって美久にも言いたーい!」「……はは」
俺達は自転車を押しながら歩いてるので、そう言いながらやるねー、やるねー、と何度も肘でツンツンしてくる安川さん。俺はそれを甘んじて受けてる。そう。あの夜の事を話した。そしたらこうなった。まあ分かるけど。
「でも、何とか出来ないかなあ? たけっちーとそんなラブラブになったんなら、尚更美久、周りに味方いなくて辛いと思う」「……本当、そうだね」
俺に何か出来ないのか? 例えば恩田社長に直談判しに行くとか? でも会ってくれるのか? そもそも直談判したところで受け入れてくれるとは到底思えないし。俺と付き合う事に反対してたんだから。
やっぱ大人じゃない、俺みたいな高校生のガキが出来る事って限られてしまう。本当子どもって無力だ。……以前恩田社長が言ってた通りかも知れない。
そんな事を考えてたら、安川さんが、東京までついてきた山本について話し出す。
「つーかさあ、その山本って後輩? 雄介から空手部のマネージャーやってるって聞いてるけど。その子何か地雷臭すんね」「地雷臭?」
「そう。何でたけっちーにそんなに纏わりつくんだろね。普通東京まで付いていく?」「うーん、まあ。あいつは転校生で友達いないからって言ってたからそれが理由なんじゃない? それに、俺とは何か変に縁があるんだよね」
「縁って?」「今俺、塾通ってんだけどそこにも山本いたんだよ。偶然ね」
……偶然、ねえ? そう呟いて何か考え込む安川さん。
「アタシ、前に美久の幼馴染に襲われかけたじゃん? その前に何度もあの取り巻きに襲われる偶然と、その幼馴染が助ける偶然があったんだよね。もしかして……」「山本が恩田社長の差し金って事? ハハハ、それはさすがにないと思うよ」
いくらあの恩田社長とは言え、わざわざ転校生寄越すなんて事あるか? さすがにそれはないだろう。それに塾で山本と偶然会った時、山本本気で驚いてし。で、あの時塾で山本をナンパしてた奴、それからも普通に通ってるの見かけてるから、そいつは本当にただの他人だろう。
でも、元々無かった空手部のマネージャーになるって言って、強引に顧問に交渉したのはちょっと気になるけど。
「じゃあもし、恩田社長の差し金じゃなかったとしたら、その子たけっちーに気があるって事じゃないの?」「へ? いやいや、それはもっとないと思う」
だって俺に彼女いるの、山本知ってるしね。まあ東京で会った時柊さんは疋田さんの格好してたから、本当の姿は知らないけど。
「あ、そうだ。俺家帰る前にバイトのシフトについてマスターと話したいから、喫茶店寄ってから帰るよ」「お? じゃあアタシもシフトの件、マスターと話する予定だったから一緒に行く!」
そして俺達は自転車にまたがり喫茶店へ向かうため漕ぎ出した。ちょうど昼のランチが終わり閑散時なので、今から行っても問題ないよな。
それから二人で少し走ってから喫茶店に着いて自転車を置き、俺と安川さんは慣れた感じで裏口から中に入った。
「マスターお疲れ様です」「おつっすー」
挨拶しながら店内に入ると、マスターは客席に座って誰かと話してる最中だった。相手は後ろ側なので誰か分からないけど、どうやら女の子?
「おー、二人とも。ちょうど良かった。ついさっきまでバイトの面接しててね、今度から来て貰う事になったんだ」
俺達が声をかけ手を挙げて答えるマスター。へえー。新しいバイトかあ。最近結構忙しかったしちょうど良かったかも。それに俺は卒業したらバイト辞めるから、今のうちにバイト補充しといて慣れてもらってたほうがいいだろうからね。
「じゃ、二人に挨拶してもらっていいかな?」「はい! ……え?」
「……え?」「え?」
固まる新しいバイトの女の子と俺。その俺の様子を見て隣で不思議そうにしてる安川さん。何でそうなったかって? だって、挨拶しようと元気よく立ち上がり、俺達の方に振り返った新しいバイトの子は、桃色っぽい茶髪のツインテールのあいつだったからだ。
※※※
「しっかしまさか、武智先輩があの喫茶店でバイトしてたなんてねー」
ニコニコ笑顔で脳天気に俺に話しかける山本を、俺はジト目で見てしまう。
「ん? 武智先輩どうしたんです? もしかして私に見惚れちゃったー?」「違うに決まってんだろ。……なあ。もしかして、俺があそこでバイトしてたの知ってた?」
「まっさか! 知るわけ無いじゃないですか。たまたまですよ」「……」
「なんですかそのジト目。……あー、もしかして、私が武智先輩を追ってバイトに来たとか思っちゃいました?」
「え? 違うの?」そこで安川さんが間に入る。
「安川先輩! 違いますよ! 本当に偶然ですってば!」「……ふーん」
俺同様に安川さんもジト目する。
「そもそも何で私が武智先輩を追ってバイトやらなきゃならないんですか? それじゃまるで、私が武智先輩を好きみたいじゃないですか」
慌てた様子で否定する山本。その慌てぶりを見て尚更安川さんは怪訝な顔をする。
「つっかあんたさぁ、たけっちー追いかけて東京まで行ったんっしょ? そういや塾も一緒らしいじゃん? それって完全にたけっちーの事追っかけてるよね? 明らかに好きじゃん?」「違いますって! そもそも武智先輩、彼女いるじゃないですか!」
「あ。そうだ思い出した。あんた当初雄介に気があったんしょ? 雄介から聞いてんだから」「雄介? 誰ですかそれ?」
「アタシの彼氏! 三浦雄介!」「あー! 三浦先輩の彼女って、安川さんだったんですか」
なーんだぁ、とすっとぼけた感じでニコニコしながら返事する山本。
「でも彼女いるって聞いてすぐ諦めましたよ?」「で、今はたけっちーがお気に入り、と」
「だーかーらー! 違いますって! 私みたいな超絶美少女だったら、もっとイケメン選びますって」「おいこら」
そこで俺が山本に釘を刺す。あ、いっけなーい、とか言いながら頭をポリポリかいてごめんねポーズする山本。そりゃ俺は確かにイケメンじゃないよ? でも本人の前ではっきり言う事ないだろ? ったく、調子いいなこいつ。
「そっかー。それなら確かにたけっちー選ぶ事ないかなー」「安川さん? そこ同意する必要ある?」
あ。アハハハ……、と、乾いた笑いでごまかす安川さん。……全く。こんな俺でも柊さんっていう超絶美少女が彼女なんだぞ!
「ま、でも、あの喫茶店でバイトするなら、アタシにとっても後輩って事か。……そういやアタシ、部活してなかったから後輩って初めてじゃん? おーこれ超テンションあがる!」「ほーほー。では、これから宜しくお願いしますよ、安川センパイ!」
センパイ! の部分を強調してニコニコしながら安川さんにすり寄る山本に、安川さんはまんざらでもないみたいでニヘラとしながら、お、おう、と緊張しつつ返事してる。……これ、籠絡されてんじゃないの?
そして俺は二人が自然と仲良くなってる横で、こっそりスマホで「山本は疋田美里さんにしか会ってないから、柊さんの事は知らないので気をつけてね」と安川さんにlineすると、安川さんはすぐにそのlineに気付いて指で丸を作ってOK、と俺に声に出さず口だけで伝えてきた。
……つか、結局山本が俺と結構な頻度で会う理由、追及するのウヤムヤになっちゃったな。
※※※
「あー危なかったぁ」
あの二人が見えなくなったのを確認して、私はふう、と大きく息を吐く。でもまさか、面接してる最中に来るとは思わなかった。本当びっくりしたぁ。
実は武智先輩があのバイト先にいるのは知ってた。だから面接に行ったんだしね。まあでも、あの様子ならその事バレてないよね? でもまさかお友達まであそこでバイトしてるなんて予想外だったよ。しかも三浦先輩の彼女だったなんて。
あの喫茶店に面接に行ったのは、ここK市に住んでて、恩田社長に指示されて色々ちょっかいかけてたけど失敗した奴がいる、と日向さんに紹介され、とある人物に連絡取って情報を得たからだったりする。その人物は大内ヒロ君。実は私、この人と以前会った事あるんだよね。
私が辞めた前の高校の知り合いが、芸能人目指してる超イケメンがいるからって言われて合コンに誘われたのがきっかけ。当時私はお母さんが連れてきた男が家にいるのが嫌で、帰りたくなかったからちょうど良かったと思って参加したんだよね。本当は乗り気じゃなかったけど。
で、会うなりすぐ私に目をつけて、隣りに座って口説こうとしてきたのがその大内ヒロ君だった。君も芸能人になりなよ、俺がなんとかしてやるから、とか言ってきたけど、別に当時は興味なかったし話半分で聞いてたんだよね。でもあまりにしつこいから連絡先だけ交換して、結局すぐ帰った。だって他のメンツ見てても、ここにいたらヤバい感じになる気がしたから。で、すぐ着拒した。
それがまさか、日向さんを通じて紹介してもらう事になるとは。でも日向さんに聞いたけど、どうやら大内ヒロ君、芸能事務所には入ってなくて、ただタレント養成所でレッスンしてるだけみたい。それも今は休んでるらしいけど。ま、どうでもいいけどね。
そういうわけで、武智先輩の情報を聞き出したくて日向さん経由でコンタクトを取ったわけ。でも、私に会うなり急に方に手を回してなれなれしくしてきたから、ムカついて平手打ちしてやったら前歯がポロっとこぼれ落ちちゃった。びっくりしたけどどうやら差し歯だったみたいで、慌てた様子で拾ってすぐ付けてたけど。
しかも私の平手打ちが相当効いた? のかよく分かんないけど、急に地面にへたり込んでガタガタ震えて「勘弁してくれぇ~」って泣き出すし。……何なのこいつ? 武智先輩とは大違いじゃん。
……って、なんでそこで武智先輩が出てくんの? 私は振り払うように頭をブンブンと振って、とりあえずこの残念なイケメンに、武智先輩の事をどれだけ知ってるか聞いた。
すると、今日面接に行った喫茶店でバイトしてるって聞いたから早速行ってみたんだよね。……しかし安川先輩か。どうもあの人要注意っぽい。三浦先輩の彼女ってのもあるしね。
「もー超やばいじゃーん! おめでとーって美久にも言いたーい!」「……はは」
俺達は自転車を押しながら歩いてるので、そう言いながらやるねー、やるねー、と何度も肘でツンツンしてくる安川さん。俺はそれを甘んじて受けてる。そう。あの夜の事を話した。そしたらこうなった。まあ分かるけど。
「でも、何とか出来ないかなあ? たけっちーとそんなラブラブになったんなら、尚更美久、周りに味方いなくて辛いと思う」「……本当、そうだね」
俺に何か出来ないのか? 例えば恩田社長に直談判しに行くとか? でも会ってくれるのか? そもそも直談判したところで受け入れてくれるとは到底思えないし。俺と付き合う事に反対してたんだから。
やっぱ大人じゃない、俺みたいな高校生のガキが出来る事って限られてしまう。本当子どもって無力だ。……以前恩田社長が言ってた通りかも知れない。
そんな事を考えてたら、安川さんが、東京までついてきた山本について話し出す。
「つーかさあ、その山本って後輩? 雄介から空手部のマネージャーやってるって聞いてるけど。その子何か地雷臭すんね」「地雷臭?」
「そう。何でたけっちーにそんなに纏わりつくんだろね。普通東京まで付いていく?」「うーん、まあ。あいつは転校生で友達いないからって言ってたからそれが理由なんじゃない? それに、俺とは何か変に縁があるんだよね」
「縁って?」「今俺、塾通ってんだけどそこにも山本いたんだよ。偶然ね」
……偶然、ねえ? そう呟いて何か考え込む安川さん。
「アタシ、前に美久の幼馴染に襲われかけたじゃん? その前に何度もあの取り巻きに襲われる偶然と、その幼馴染が助ける偶然があったんだよね。もしかして……」「山本が恩田社長の差し金って事? ハハハ、それはさすがにないと思うよ」
いくらあの恩田社長とは言え、わざわざ転校生寄越すなんて事あるか? さすがにそれはないだろう。それに塾で山本と偶然会った時、山本本気で驚いてし。で、あの時塾で山本をナンパしてた奴、それからも普通に通ってるの見かけてるから、そいつは本当にただの他人だろう。
でも、元々無かった空手部のマネージャーになるって言って、強引に顧問に交渉したのはちょっと気になるけど。
「じゃあもし、恩田社長の差し金じゃなかったとしたら、その子たけっちーに気があるって事じゃないの?」「へ? いやいや、それはもっとないと思う」
だって俺に彼女いるの、山本知ってるしね。まあ東京で会った時柊さんは疋田さんの格好してたから、本当の姿は知らないけど。
「あ、そうだ。俺家帰る前にバイトのシフトについてマスターと話したいから、喫茶店寄ってから帰るよ」「お? じゃあアタシもシフトの件、マスターと話する予定だったから一緒に行く!」
そして俺達は自転車にまたがり喫茶店へ向かうため漕ぎ出した。ちょうど昼のランチが終わり閑散時なので、今から行っても問題ないよな。
それから二人で少し走ってから喫茶店に着いて自転車を置き、俺と安川さんは慣れた感じで裏口から中に入った。
「マスターお疲れ様です」「おつっすー」
挨拶しながら店内に入ると、マスターは客席に座って誰かと話してる最中だった。相手は後ろ側なので誰か分からないけど、どうやら女の子?
「おー、二人とも。ちょうど良かった。ついさっきまでバイトの面接しててね、今度から来て貰う事になったんだ」
俺達が声をかけ手を挙げて答えるマスター。へえー。新しいバイトかあ。最近結構忙しかったしちょうど良かったかも。それに俺は卒業したらバイト辞めるから、今のうちにバイト補充しといて慣れてもらってたほうがいいだろうからね。
「じゃ、二人に挨拶してもらっていいかな?」「はい! ……え?」
「……え?」「え?」
固まる新しいバイトの女の子と俺。その俺の様子を見て隣で不思議そうにしてる安川さん。何でそうなったかって? だって、挨拶しようと元気よく立ち上がり、俺達の方に振り返った新しいバイトの子は、桃色っぽい茶髪のツインテールのあいつだったからだ。
※※※
「しっかしまさか、武智先輩があの喫茶店でバイトしてたなんてねー」
ニコニコ笑顔で脳天気に俺に話しかける山本を、俺はジト目で見てしまう。
「ん? 武智先輩どうしたんです? もしかして私に見惚れちゃったー?」「違うに決まってんだろ。……なあ。もしかして、俺があそこでバイトしてたの知ってた?」
「まっさか! 知るわけ無いじゃないですか。たまたまですよ」「……」
「なんですかそのジト目。……あー、もしかして、私が武智先輩を追ってバイトに来たとか思っちゃいました?」
「え? 違うの?」そこで安川さんが間に入る。
「安川先輩! 違いますよ! 本当に偶然ですってば!」「……ふーん」
俺同様に安川さんもジト目する。
「そもそも何で私が武智先輩を追ってバイトやらなきゃならないんですか? それじゃまるで、私が武智先輩を好きみたいじゃないですか」
慌てた様子で否定する山本。その慌てぶりを見て尚更安川さんは怪訝な顔をする。
「つっかあんたさぁ、たけっちー追いかけて東京まで行ったんっしょ? そういや塾も一緒らしいじゃん? それって完全にたけっちーの事追っかけてるよね? 明らかに好きじゃん?」「違いますって! そもそも武智先輩、彼女いるじゃないですか!」
「あ。そうだ思い出した。あんた当初雄介に気があったんしょ? 雄介から聞いてんだから」「雄介? 誰ですかそれ?」
「アタシの彼氏! 三浦雄介!」「あー! 三浦先輩の彼女って、安川さんだったんですか」
なーんだぁ、とすっとぼけた感じでニコニコしながら返事する山本。
「でも彼女いるって聞いてすぐ諦めましたよ?」「で、今はたけっちーがお気に入り、と」
「だーかーらー! 違いますって! 私みたいな超絶美少女だったら、もっとイケメン選びますって」「おいこら」
そこで俺が山本に釘を刺す。あ、いっけなーい、とか言いながら頭をポリポリかいてごめんねポーズする山本。そりゃ俺は確かにイケメンじゃないよ? でも本人の前ではっきり言う事ないだろ? ったく、調子いいなこいつ。
「そっかー。それなら確かにたけっちー選ぶ事ないかなー」「安川さん? そこ同意する必要ある?」
あ。アハハハ……、と、乾いた笑いでごまかす安川さん。……全く。こんな俺でも柊さんっていう超絶美少女が彼女なんだぞ!
「ま、でも、あの喫茶店でバイトするなら、アタシにとっても後輩って事か。……そういやアタシ、部活してなかったから後輩って初めてじゃん? おーこれ超テンションあがる!」「ほーほー。では、これから宜しくお願いしますよ、安川センパイ!」
センパイ! の部分を強調してニコニコしながら安川さんにすり寄る山本に、安川さんはまんざらでもないみたいでニヘラとしながら、お、おう、と緊張しつつ返事してる。……これ、籠絡されてんじゃないの?
そして俺は二人が自然と仲良くなってる横で、こっそりスマホで「山本は疋田美里さんにしか会ってないから、柊さんの事は知らないので気をつけてね」と安川さんにlineすると、安川さんはすぐにそのlineに気付いて指で丸を作ってOK、と俺に声に出さず口だけで伝えてきた。
……つか、結局山本が俺と結構な頻度で会う理由、追及するのウヤムヤになっちゃったな。
※※※
「あー危なかったぁ」
あの二人が見えなくなったのを確認して、私はふう、と大きく息を吐く。でもまさか、面接してる最中に来るとは思わなかった。本当びっくりしたぁ。
実は武智先輩があのバイト先にいるのは知ってた。だから面接に行ったんだしね。まあでも、あの様子ならその事バレてないよね? でもまさかお友達まであそこでバイトしてるなんて予想外だったよ。しかも三浦先輩の彼女だったなんて。
あの喫茶店に面接に行ったのは、ここK市に住んでて、恩田社長に指示されて色々ちょっかいかけてたけど失敗した奴がいる、と日向さんに紹介され、とある人物に連絡取って情報を得たからだったりする。その人物は大内ヒロ君。実は私、この人と以前会った事あるんだよね。
私が辞めた前の高校の知り合いが、芸能人目指してる超イケメンがいるからって言われて合コンに誘われたのがきっかけ。当時私はお母さんが連れてきた男が家にいるのが嫌で、帰りたくなかったからちょうど良かったと思って参加したんだよね。本当は乗り気じゃなかったけど。
で、会うなりすぐ私に目をつけて、隣りに座って口説こうとしてきたのがその大内ヒロ君だった。君も芸能人になりなよ、俺がなんとかしてやるから、とか言ってきたけど、別に当時は興味なかったし話半分で聞いてたんだよね。でもあまりにしつこいから連絡先だけ交換して、結局すぐ帰った。だって他のメンツ見てても、ここにいたらヤバい感じになる気がしたから。で、すぐ着拒した。
それがまさか、日向さんを通じて紹介してもらう事になるとは。でも日向さんに聞いたけど、どうやら大内ヒロ君、芸能事務所には入ってなくて、ただタレント養成所でレッスンしてるだけみたい。それも今は休んでるらしいけど。ま、どうでもいいけどね。
そういうわけで、武智先輩の情報を聞き出したくて日向さん経由でコンタクトを取ったわけ。でも、私に会うなり急に方に手を回してなれなれしくしてきたから、ムカついて平手打ちしてやったら前歯がポロっとこぼれ落ちちゃった。びっくりしたけどどうやら差し歯だったみたいで、慌てた様子で拾ってすぐ付けてたけど。
しかも私の平手打ちが相当効いた? のかよく分かんないけど、急に地面にへたり込んでガタガタ震えて「勘弁してくれぇ~」って泣き出すし。……何なのこいつ? 武智先輩とは大違いじゃん。
……って、なんでそこで武智先輩が出てくんの? 私は振り払うように頭をブンブンと振って、とりあえずこの残念なイケメンに、武智先輩の事をどれだけ知ってるか聞いた。
すると、今日面接に行った喫茶店でバイトしてるって聞いたから早速行ってみたんだよね。……しかし安川先輩か。どうもあの人要注意っぽい。三浦先輩の彼女ってのもあるしね。
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