94 / 130
その九十四
しおりを挟む
電話を終えると、カウンターキッチン越しで固まってる俺の顔を見て、柊さんはニコっと微笑む。
「今のは恩田さんじゃなくて、マネージャーの上杉さんだった。多分恩田さんだと私が出ないから、代わりに電話してきたんだと思う。心配させてると思うしとりあえず話してた。だから大丈夫ですって伝えてたの」
「い、いや、それより……、泊まるって言ってなかった?」
上杉ってマネージャーと話したって事より、そっちの言葉の方が重要だ。俺は柊さんの返答を待ちつつ、ごくんと生唾を飲み込んでしまう。
「え? ああ……。それはほら、あの、もう少し一緒にいたいから、ギリギリまでここにいて、ネカフェとかに、ね?」
柊さんも俺が固まってた理由を理解したみたいで、みるみる顔を赤くしながらそう答える。そ、そっか。そうだよな? さすがにここに泊まるわけじゃない、か。 あーびっくりした。……って思いながらも、正直残念だとも思ってたりするけど。
とりあえず洗い物は終わったんで、俺は手をタオルで拭いた後、机を挟んで柊さんの向かいに座る。泊まるってワードが引っかかったからか、何だか気まずい空気。音もなくシーンとしてるのも関係あるかも知れないな。
「な、何か静か過ぎるからテレビでも付けよっか。てか、何でずっと付けてなかったんだろ」
「あれ? 私が電話してたりしたから、かと思ってた。テレビの音が相手に聞こえたら不味いからって。まあでも多分、今日はもう電話かかってこないと思うから、今からなら大丈夫だと思う」
……成る程確かに言われてみればそうだった。正直そこまで考えてなかったけど。
そしてテレビを付けるとバラエティ番組が放送されてて、それを何となく二人で観る。……てか、今更だけど、俺、柊さんとこの部屋に二人っきりなんだよな。それに気づくとテレビの内容が頭に入ってこない。結構面白いはずなんだけど、何と言うか上手く笑えないというか、変に意識してしまう。さっきの泊まるって単語のせいかも知れない。
「あ、この人。前テレビ局ですれ違ったけど、付き添ってたマネージャーさんにすごく偉そうにしてた」「そうなん? 好感度ランキングNo1とかだったはずだけど」
とある有名テレビタレントを指差しながら、そんな裏情報を教えてくれる柊さん。そういうの聞くと、やっぱり俺とは違う世界にいるんだなあ、と改めて実感してしまう。
「そういやさっき買い出し行った時、お菓子でも買ってこれば良かったね」「確かに。口が寂しいな。じゃあちょっとコンビニ行こっか」
うん、と笑顔で返事しながら、柊さんが立ち上がるのと同時に俺も準備する。そういやさっきスーパーに買い出し行った時もそうだったけど、既に茶髪ボブのウイッグと黒縁メガネは付けてない。かなりリラックスしてるのかな? でもまあ、変装しっぱなしだったし、暑いだろうから仕方ないよね。それにこの辺りじゃ気づかれる事はまずないだろうし。
そしてこうやって二人でコンビニに買い出しに出かける。日も落ちて既に辺りは真っ暗。それもあってか、俺と柊さんは周りを気にする事もなく自然と手を繋ぐ。
「こうやって二人で歩いてると、カップルなんだなあって実感するね」
柊さんが恥ずかしそうに笑顔で俺にそう話しかける。その笑顔に心臓が飛び跳ねそうになるほどドキっとするけど、何事もないフリしてそうだね、とだけ返事する俺。……そっけなかったかな?
でも柊さんは気にした様子もなく、そのまま二人でコンビニに入る。そして適当にスイーツやお菓子を買った。コンビニを出たところで柊さんのスマホに着信があったようだ。俺は気を使って手を離し少し距離をとり、柊さんはごめんね、と手でゼスチャーして電話に出た。
だがすぐ、柊さんが驚いたような表情になり、通話を終えてすぐスマホをの画面を見て、それを見て今度は顔がこわばる。俺は気になって柊さんに近づき質問する。
「……どうしたの?」「……これ」そう言って柊さんが黙って俺にスマホを見せる。それはどうやらツイッターにアップされた画像っぽい。
「……え?」その画像を見て俺は絶句してしまう。
そこには何と、柊さんと俺の姿を撮った写真が掲載されていた。しかもこれって……。
「こ、これ! もしかして……」「多分、さっきスーパーに買い出し行った時の、だと思う」
やっぱりか! でも何で柊さんを撮ったんだ? 俺は慌てながら柊さんとその写真のツイート内容を確認する。
『CMで噂の謎の美少女発見? こんなへんぴなスーパーで買い出ししてたっぽい? 野菜とか買ってて超生活感あるwww』
……どこの誰か知らないけど、柊さんに気付いて隠し撮りしたみたいだ。てか、ツイート内容見るに、俺についてはスルーしてるから、ただ映り込んだ第三者って思ってるっぽいな。それはまあ良かったけど。
「これ……。マネージャーの上杉さんがついさっき送ってきたの。たまたまSNSで私が出てるCMでサーチしたら出てきたって言って」「……そうなんだ」
今も柊さんは変装してない。スーパーへ買い出し行った時とは違い今は暗いとは言え、このまま外に出てちゃ不味いかもな。他にも盗撮する奴が出てくるかも知れない。だって写真撮られたのってこの近くのスーパーだし。
なので俺と柊さんは、逃げるように姉貴の部屋に走って戻った。
※※※
二人急いで姉貴の部屋に帰ってきた俺達。ぜえ、ぜえ、はあ、はあ、とお互い息を切らしながら玄関口で一旦息を整えそれから中に入る。そして柊さんは入ってすぐ再度上杉さんというマネージャーに電話した。俺は声を立てないよう静かに傍らで電話してるのを聞いてる。勿論テレビは消してる。
『で、美久は何でそんなところにいるの?』「えーっと……」
上杉って人の声が横にいる俺にまで聞こえてくる。そして言葉に詰まってる柊さん。上杉さんが疑うのも無理はない。ここは住宅街だから、東京に知り合いのいない柊さんがこの辺りにいる事自体、おかしな事だからね。
更に上杉さんはどうやら俺の事を余り知らないらしい。どうやら日向さんや恩田社長とは違って、俺を写真でさえも見た事ないようで、柊さんの後ろに俺が映ってたけど気付いてないっぽいから。なので俺は既にK市に戻ってる、と思ってるかも。なので当然、俺がこの辺り、要する柊さんの傍にはいないとも思ってるだろう。だって上杉さん含め恩田社長達は、俺に姉貴がいて、その姉貴が上京してて、更に俺がその部屋に泊まるなんて知らないはずだからね。
だからか、上杉さんの口調も怒ってるというのではなくどちらかと言うと穏やかで、寧ろ柊さんを心配してるって感じだ。
「泊まる予定のネカフェ行くのに迷っちゃって……」『それならもう、泊まらず戻ってくれば?』
「でも、今日くらいは仕事を忘れてゆっくりしたいんです」
『あーまあ、それも仕方ないかなぁ……。ずっとレッスン続きだったもんねぇ。ま、武智君とやらと一緒じゃないなら恩田社長も日向さんも安心だろうし。しかしまあ、元々日向さんが一緒にいるから心配するなって言ってたのが、まさか彼氏君といたとはねえ』
「日向さん、そんな事言ってたんですか?」『そうよ。まあ今思えば、美久を逃がすための方便だったんだろうけど。何でそんな事したか敢えて聞いてないけどね。そして、私も別に美久を問いただす気はないよ』
どうやら日向さんは、柊さんと一緒に行動してるって恩田社長に嘘ついてたらしい。でも何故かバレちゃったんだよな。……何でバレたんだろ? 気が変わって言っちゃったとか?
「……有難う御座います」『ま、私も女だから、彼氏に会いたい気持ち分かるし? ……って、恩田社長も女だった』
そこで柊さんがフフフと笑い、上杉さんもアハハと電話口で笑ってる。結構仲いいみたいだな。
『ま、今はもう一緒じゃないみたいだし、余り心配させないようにね。外出の際は変装もちゃんとして。んじゃ、今日はゆっくりして明日は早めに帰っておいで』「……はい。ご迷惑おかけしました」
そして電話を切ってふう、とため息をつく柊さん。それから俺の方を見て、もう声出しても大丈夫だよ、と笑顔で伝える。俺も何だか緊張してたので、はあ、と息を吐いた。
「とにかく、俺と一緒に部屋にいるなんてバレなくてよかった」「うん、でも……。私今日外出るの怖いかな? 変装するなり、タクシー呼ぶなりすればいいんだろうけど」
「で、でも、今日はネカフェに泊まらないとダメなんじゃないの?」
俺がそう言うと、柊さんは赤くなってる顔を俺に向ける。その目はどこか決意がこもった眼差し。……どうしたんだろ。
そして柊さんは俺の正面に向き合い、コホン、と咳払いをする。
「……今日は、帰りたくない、かな?」
そう言って柊さんは、俺の目をじっと見つめる。まるで何かの答えを待ってるかのように。
「そ、それって……」
俺がその先の言葉を飲み込んでしまう。だって、それって……。要する……。
「……じ、じゃあ、ここに、泊まるって、事?」
俺が一言一言確認するように聞くと、柊さんは恥ずかしそうに小さくコクン、と頷いた。
「今のは恩田さんじゃなくて、マネージャーの上杉さんだった。多分恩田さんだと私が出ないから、代わりに電話してきたんだと思う。心配させてると思うしとりあえず話してた。だから大丈夫ですって伝えてたの」
「い、いや、それより……、泊まるって言ってなかった?」
上杉ってマネージャーと話したって事より、そっちの言葉の方が重要だ。俺は柊さんの返答を待ちつつ、ごくんと生唾を飲み込んでしまう。
「え? ああ……。それはほら、あの、もう少し一緒にいたいから、ギリギリまでここにいて、ネカフェとかに、ね?」
柊さんも俺が固まってた理由を理解したみたいで、みるみる顔を赤くしながらそう答える。そ、そっか。そうだよな? さすがにここに泊まるわけじゃない、か。 あーびっくりした。……って思いながらも、正直残念だとも思ってたりするけど。
とりあえず洗い物は終わったんで、俺は手をタオルで拭いた後、机を挟んで柊さんの向かいに座る。泊まるってワードが引っかかったからか、何だか気まずい空気。音もなくシーンとしてるのも関係あるかも知れないな。
「な、何か静か過ぎるからテレビでも付けよっか。てか、何でずっと付けてなかったんだろ」
「あれ? 私が電話してたりしたから、かと思ってた。テレビの音が相手に聞こえたら不味いからって。まあでも多分、今日はもう電話かかってこないと思うから、今からなら大丈夫だと思う」
……成る程確かに言われてみればそうだった。正直そこまで考えてなかったけど。
そしてテレビを付けるとバラエティ番組が放送されてて、それを何となく二人で観る。……てか、今更だけど、俺、柊さんとこの部屋に二人っきりなんだよな。それに気づくとテレビの内容が頭に入ってこない。結構面白いはずなんだけど、何と言うか上手く笑えないというか、変に意識してしまう。さっきの泊まるって単語のせいかも知れない。
「あ、この人。前テレビ局ですれ違ったけど、付き添ってたマネージャーさんにすごく偉そうにしてた」「そうなん? 好感度ランキングNo1とかだったはずだけど」
とある有名テレビタレントを指差しながら、そんな裏情報を教えてくれる柊さん。そういうの聞くと、やっぱり俺とは違う世界にいるんだなあ、と改めて実感してしまう。
「そういやさっき買い出し行った時、お菓子でも買ってこれば良かったね」「確かに。口が寂しいな。じゃあちょっとコンビニ行こっか」
うん、と笑顔で返事しながら、柊さんが立ち上がるのと同時に俺も準備する。そういやさっきスーパーに買い出し行った時もそうだったけど、既に茶髪ボブのウイッグと黒縁メガネは付けてない。かなりリラックスしてるのかな? でもまあ、変装しっぱなしだったし、暑いだろうから仕方ないよね。それにこの辺りじゃ気づかれる事はまずないだろうし。
そしてこうやって二人でコンビニに買い出しに出かける。日も落ちて既に辺りは真っ暗。それもあってか、俺と柊さんは周りを気にする事もなく自然と手を繋ぐ。
「こうやって二人で歩いてると、カップルなんだなあって実感するね」
柊さんが恥ずかしそうに笑顔で俺にそう話しかける。その笑顔に心臓が飛び跳ねそうになるほどドキっとするけど、何事もないフリしてそうだね、とだけ返事する俺。……そっけなかったかな?
でも柊さんは気にした様子もなく、そのまま二人でコンビニに入る。そして適当にスイーツやお菓子を買った。コンビニを出たところで柊さんのスマホに着信があったようだ。俺は気を使って手を離し少し距離をとり、柊さんはごめんね、と手でゼスチャーして電話に出た。
だがすぐ、柊さんが驚いたような表情になり、通話を終えてすぐスマホをの画面を見て、それを見て今度は顔がこわばる。俺は気になって柊さんに近づき質問する。
「……どうしたの?」「……これ」そう言って柊さんが黙って俺にスマホを見せる。それはどうやらツイッターにアップされた画像っぽい。
「……え?」その画像を見て俺は絶句してしまう。
そこには何と、柊さんと俺の姿を撮った写真が掲載されていた。しかもこれって……。
「こ、これ! もしかして……」「多分、さっきスーパーに買い出し行った時の、だと思う」
やっぱりか! でも何で柊さんを撮ったんだ? 俺は慌てながら柊さんとその写真のツイート内容を確認する。
『CMで噂の謎の美少女発見? こんなへんぴなスーパーで買い出ししてたっぽい? 野菜とか買ってて超生活感あるwww』
……どこの誰か知らないけど、柊さんに気付いて隠し撮りしたみたいだ。てか、ツイート内容見るに、俺についてはスルーしてるから、ただ映り込んだ第三者って思ってるっぽいな。それはまあ良かったけど。
「これ……。マネージャーの上杉さんがついさっき送ってきたの。たまたまSNSで私が出てるCMでサーチしたら出てきたって言って」「……そうなんだ」
今も柊さんは変装してない。スーパーへ買い出し行った時とは違い今は暗いとは言え、このまま外に出てちゃ不味いかもな。他にも盗撮する奴が出てくるかも知れない。だって写真撮られたのってこの近くのスーパーだし。
なので俺と柊さんは、逃げるように姉貴の部屋に走って戻った。
※※※
二人急いで姉貴の部屋に帰ってきた俺達。ぜえ、ぜえ、はあ、はあ、とお互い息を切らしながら玄関口で一旦息を整えそれから中に入る。そして柊さんは入ってすぐ再度上杉さんというマネージャーに電話した。俺は声を立てないよう静かに傍らで電話してるのを聞いてる。勿論テレビは消してる。
『で、美久は何でそんなところにいるの?』「えーっと……」
上杉って人の声が横にいる俺にまで聞こえてくる。そして言葉に詰まってる柊さん。上杉さんが疑うのも無理はない。ここは住宅街だから、東京に知り合いのいない柊さんがこの辺りにいる事自体、おかしな事だからね。
更に上杉さんはどうやら俺の事を余り知らないらしい。どうやら日向さんや恩田社長とは違って、俺を写真でさえも見た事ないようで、柊さんの後ろに俺が映ってたけど気付いてないっぽいから。なので俺は既にK市に戻ってる、と思ってるかも。なので当然、俺がこの辺り、要する柊さんの傍にはいないとも思ってるだろう。だって上杉さん含め恩田社長達は、俺に姉貴がいて、その姉貴が上京してて、更に俺がその部屋に泊まるなんて知らないはずだからね。
だからか、上杉さんの口調も怒ってるというのではなくどちらかと言うと穏やかで、寧ろ柊さんを心配してるって感じだ。
「泊まる予定のネカフェ行くのに迷っちゃって……」『それならもう、泊まらず戻ってくれば?』
「でも、今日くらいは仕事を忘れてゆっくりしたいんです」
『あーまあ、それも仕方ないかなぁ……。ずっとレッスン続きだったもんねぇ。ま、武智君とやらと一緒じゃないなら恩田社長も日向さんも安心だろうし。しかしまあ、元々日向さんが一緒にいるから心配するなって言ってたのが、まさか彼氏君といたとはねえ』
「日向さん、そんな事言ってたんですか?」『そうよ。まあ今思えば、美久を逃がすための方便だったんだろうけど。何でそんな事したか敢えて聞いてないけどね。そして、私も別に美久を問いただす気はないよ』
どうやら日向さんは、柊さんと一緒に行動してるって恩田社長に嘘ついてたらしい。でも何故かバレちゃったんだよな。……何でバレたんだろ? 気が変わって言っちゃったとか?
「……有難う御座います」『ま、私も女だから、彼氏に会いたい気持ち分かるし? ……って、恩田社長も女だった』
そこで柊さんがフフフと笑い、上杉さんもアハハと電話口で笑ってる。結構仲いいみたいだな。
『ま、今はもう一緒じゃないみたいだし、余り心配させないようにね。外出の際は変装もちゃんとして。んじゃ、今日はゆっくりして明日は早めに帰っておいで』「……はい。ご迷惑おかけしました」
そして電話を切ってふう、とため息をつく柊さん。それから俺の方を見て、もう声出しても大丈夫だよ、と笑顔で伝える。俺も何だか緊張してたので、はあ、と息を吐いた。
「とにかく、俺と一緒に部屋にいるなんてバレなくてよかった」「うん、でも……。私今日外出るの怖いかな? 変装するなり、タクシー呼ぶなりすればいいんだろうけど」
「で、でも、今日はネカフェに泊まらないとダメなんじゃないの?」
俺がそう言うと、柊さんは赤くなってる顔を俺に向ける。その目はどこか決意がこもった眼差し。……どうしたんだろ。
そして柊さんは俺の正面に向き合い、コホン、と咳払いをする。
「……今日は、帰りたくない、かな?」
そう言って柊さんは、俺の目をじっと見つめる。まるで何かの答えを待ってるかのように。
「そ、それって……」
俺がその先の言葉を飲み込んでしまう。だって、それって……。要する……。
「……じ、じゃあ、ここに、泊まるって、事?」
俺が一言一言確認するように聞くと、柊さんは恥ずかしそうに小さくコクン、と頷いた。
0
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説
百合系サキュバス達に一目惚れされた
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
コミュ障な幼馴染が俺にだけ饒舌な件〜クラスでは孤立している彼女が、二人きりの時だけ俺を愛称で呼んでくる〜
青野そら
青春
友達はいるが、パッとしないモブのような主人公、幸田 多久(こうだ たく)。
彼には美少女の幼馴染がいる。
それはクラスで常にぼっちな橘 理代(たちばな りよ)だ。
学校で話しかけられるとまともに返せない理代だが、多久と二人きりの時だけは素の姿を見せてくれて──。
これは、コミュ障な幼馴染を救う物語。
毎日更新します。
どうしてもモテない俺に天使が降りてきた件について
塀流 通留
青春
ラブコメな青春に憧れる高校生――茂手太陽(もて たいよう)。
好きな女の子と過ごす楽しい青春を送るため、彼はひたすら努力を繰り返したのだが――モテなかった。
それはもうモテなかった。
何をどうやってもモテなかった。
呪われてるんじゃないかというくらいモテなかった。
そんな青春負け組説濃厚な彼の元に、ボクッ娘美少女天使が現れて――
モテない高校生とボクッ娘天使が送る青春ラブコメ……に見せかけた何か!?
最後の最後のどんでん返しであなたは知るだろう。
これはラブコメじゃない!――と
<追記>
本作品は私がデビュー前に書いた新人賞投稿策を改訂したものです。
冬の水葬
束原ミヤコ
青春
夕霧七瀬(ユウギリナナセ)は、一つ年上の幼なじみ、凪蓮水(ナギハスミ)が好き。
凪が高校生になってから疎遠になってしまっていたけれど、ずっと好きだった。
高校一年生になった夕霧は、凪と同じ高校に通えることを楽しみにしていた。
美術部の凪を追いかけて美術部に入り、気安い幼なじみの間柄に戻ることができたと思っていた――
けれど、そのときにはすでに、凪の心には消えない傷ができてしまっていた。
ある女性に捕らわれた凪と、それを追いかける夕霧の、繰り返す冬の話。
ONE WEEK LOVE ~純情のっぽと変人天使の恋~
mizuno sei
青春
永野祐輝は高校3年生。プロバスケットの選手を目指して高校に入学したが、入学早々傷害事件を起こし、バスケット部への入部を拒否されてしまった。
目標を失った彼は、しばらく荒れた生活をし、学校中の生徒たちから不良で怖いというイメージを持たれてしまう。
鬱々とした日々を送っていた彼に転機が訪れたのは、偶然不良に絡まれていた男子生徒を助けたことがきっかけだった。その男子生徒、吉田龍之介はちょっと変わってはいたが、優れた才能を持つ演劇部の生徒だった。生活を変えたいと思っていた祐輝は、吉田の熱心な勧誘もあって演劇部に入部することを決めた。
それから2年後、いよいよ高校最後の年を迎えた祐輝は、始業式の前日、偶然に一人の女子生徒と出会った。彼女を一目見て恋に落ちた祐輝は、次の日からその少女を探し、告白しようと動き出す。
一方、その女子生徒、木崎真由もまた、心に傷とコンプレックスを抱えた少女だった。
不良の烙印を押された不器用で心優しい少年と、コンプレックスを抱えた少女の恋にゆくへは・・・。
黄昏は悲しき堕天使達のシュプール
Mr.M
青春
『ほろ苦い青春と淡い初恋の思い出は・・
黄昏色に染まる校庭で沈みゆく太陽と共に
儚くも露と消えていく』
ある朝、
目を覚ますとそこは二十年前の世界だった。
小学校六年生に戻った俺を取り巻く
懐かしい顔ぶれ。
優しい先生。
いじめっ子のグループ。
クラスで一番美しい少女。
そして。
密かに想い続けていた初恋の少女。
この世界は嘘と欺瞞に満ちている。
愛を語るには幼過ぎる少女達と
愛を語るには汚れ過ぎた大人。
少女は天使の様な微笑みで嘘を吐き、
大人は平然と他人を騙す。
ある時、
俺は隣のクラスの一人の少女の名前を思い出した。
そしてそれは大きな謎と後悔を俺に残した。
夕日に少女の涙が落ちる時、
俺は彼女達の笑顔と
失われた真実を
取り戻すことができるのだろうか。
田中天狼のシリアスな日常
朽縄咲良
青春
とある県の平凡な県立高校「東総倉高等学校」に通う、名前以外は平凡な少年が、個性的な人間たちに翻弄され、振り回され続ける学園コメディ!
彼は、ごくごく平凡な男子高校生である。…名前を除けば。
田中天狼と書いてタナカシリウス、それが彼の名前。
この奇妙な名前のせいで、今までの人生に余計な気苦労が耐えなかった彼は、せめて、高校生になったら、平凡で平和な日常を送りたいとするのだが、高校入学後の初動に失敗。
ぼっちとなってしまった彼に話しかけてきたのは、春夏秋冬水と名乗る、一人の少女だった。
そして彼らは、二年生の矢的杏途龍、そして撫子という変人……もとい、独特な先輩達に、珍しい名を持つ者たちが集まる「奇名部」という部活への起ち上げを誘われるのだった……。
・表紙画像は、紅蓮のたまり醤油様から頂きました!
・小説家になろうにて投稿したものと同じです。
全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―
入海月子
青春
佐伯優は高校1年生。カメラが趣味。ある日、高校の屋上で出会った超美形の先輩、久住遥斗にモデルになってもらうかわりに、彼の昼食を用意する約束をした。
遥斗はなぜか学校に住みついていて、衣食は女生徒からもらったものでまかなっていた。その報酬とは遥斗に抱いてもらえるというもの。
本当なの?遥斗が気になって仕方ない優は――。
優が薄幸の遥斗を笑顔にしようと頑張る話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる