何故か超絶美少女に嫌われる日常

やまたけ

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その八十七

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「……」「え? なに?」

「武智君って、安川さんみたいな子が好みなの?」「へ? なんで?」

「だってジロジロ見てるよ」

 ずっとジト目の疋田さんが何だか膨れながら俺の隣を歩く。前には雄介の腕に絡みながら明らかにイチャイチャしている安川さん。って、いやいや疋田さん、それは壮大な勘違いだ!

「違う違う。雄介があんな風に女の子と一緒に歩くの、初めて見るから驚いてただけだよ」

「……ふ~ん」「いや、ほんとだって!」

 って、なんで俺言い訳してんの? 疋田さんが何だかご機嫌斜めだから? というか、なんでご機嫌斜めなの?

「ああいう事してほしい?」「ひょへぃ?」

「アハハ! 何その返事」そして笑い出す疋田さん。突然とんでもない事言うから変な声出ちゃった。さっきの電車の中でもそうだけど、時々大胆な事したり言ったりするんだよね? きっと経験皆無の俺をからかってんだろうけど。

 ……ん? そういや疋田さんって、恋愛経験ってどうなんだろ? 聞いた事ないや。まあ俺チキンだし? 聞けるわけないんだけどね。いやそこは頑張れよって? ……はい、仰る通りです。

 そして疋田さんに腕を組まれるってのをちょっと妄想してみる俺。こんな可愛い子が俺に縋り付く訳だろ? やばいな。色々やばいよな。よく知らないけど、確か気持ちいいのが当たるんだろ? ……ああ、是非お願いしたい。正直、雄介が相当羨ましい。あれがカップルっていう関係なんだなあ。こうやってじっくり見る機会ないから知らなかったけど。

 そんな妄想してたら、ふと、前を歩く雄介と安川さんとの話し声が聞こえてきた。

「分かってるよね? 今日は明歩って下の名前で呼ぶの」「わぁーってるよ」

「あいつのためにな。お前のためじゃねー」「そこ! いちいち言わなくていいじゃん! ほら、呼んでみ呼んでみ?」

「……明歩」「キャー! もう一回もう一回!」

「うっせぇ。もう終わりだ」「ちぇー、ケチ。でも今日は嬉しい! 雄介とデートデート!」

 明らかにイチャイチャしてんなあ。声が丸聞こえなの気付いてなさそう。てか、普段はあの二人、上の名前で呼びあうんだ。カップルってそういうものなん?

 で、二人の様子を後ろから見つつついて行ってたら、雄介が首だけこっちに向けて声かけてきた。

「おい悠斗。どうするよ?」「え? ああ、そうだな。何か乗るか」

 そうだった。俺達遊園地に来てんだ。何か乗らないとな。何にするかなあ。女の子と一緒に遊園地で遊ぶってどうすればいいのか。そうやって悩んでると、安川さんの一声。

「はーい! アタシは雄介とウォータースプラッシュ乗りまーす!」「おい、勝手に決めんな」

 雄介の反応に、えー、いいじゃん、とむくれる安川さんだが、いいんじゃない? 最初の乗り物としては。

「じゃあそれにするか」「え? でも服濡れない?」

「この遊園地、濡れ防止用のポンチョ貸してくれるんだって」疋田さんが気になってたので説明する俺。なんで来た事ないくせにそんな事知ってるんだって? ふふん、実は事前にネットで調べておいたのだ! 女の子と一緒に遊ぶ方法は雄介に任せるとしても、それくらいなら俺でも出来るからね。 

「じゃあ、乗ってみようかな」それを聞いた疋田さんも興味ありげに答える。

「悠斗が行くなら行くか」「ちょっとー? アタシが提案したの!」

 あーうっせー、とか文句言いながらも遊園地の地図を広げ場所を探し、安川さんをエスコートする雄介。つか、あいつ何だか俺といる時と雰囲気違うな。男らしい? それもちょっと違うな。寧ろ何だか偉そうだ。

「どうしたの?」「うーん、雄介が俺の知ってる雄介じゃない」

 そうなの? と不思議そうな顔をする疋田さん。そういや疋田さん、雄介とは余り面識なかったな。こないだバイト先に来たのが初対面だもんな。

 とりあえず俺達は、ウォータースプラッシュがある場所へ向かう事にした。

 ※※※

「結構乗り物好きなんだね」「ごめんね。あんなに楽しいとは思わなくて」

 手を合わせてごめんねポーズをする疋田さん。そんな可愛い仕草、どうやって身につけたんですかね? しかし言う通り、確かに疋田さんは珍しくキャッキャ騒いでた。普段おとなしいのにあんなはしゃぐんだな。ウォータースプラッシュに乗ったその後も、定番のジェットコースター、まあこれは本格的な縦横二回転とかするのはさすがに怖いって言うんで、ミニコースターだったけど、それでもキャッキャ言いながら乗ってた疋田さん。他にこれも定番のコーヒーカップ。あれ、あんな速く回るの? ちょっと酔っちゃって気持ち悪くなったよ。疋田さんは平気っぽかったけど。

 とにかく、あんな無邪気にはしゃぐ疋田さん、初めて見た。とてもキラキラしてて、でもとても可愛くて、本当楽しそうで。普段のおとなしい雰囲気もいいけど。素の疋田さんを見てるみたいで……惚れ直しちゃった。

 そして今は昼時なので、遊園地内にある、外に席が沢山あるフードコートみたいなところで、皆で昼食を食べ終わったところ。

「ねえねえ。写メ撮ってよ」「え? あ、了解」

 突如向かいに雄介と並んで座る安川さんに声を掛けられ、スマホを受け取る俺。当然雄介とのツーショットだ。

「おい雄介。態度悪いぞ」「え? そうか?」

 なんでかふんぞり返ってる雄介。俺といる時はこんな格好しないのに。なんでだ?

「つーかお前、なんでそんな偉そうなん?」「いや、まあ……」

「そーそー! 武智君もっと言ってよー!」そう叫ぶ安川さんと、面倒臭そうな顔をする雄介を見る。ははーん、分かったぞ、こいつ。

「安川さん、こいつ照れてんだよ」「え? そうなの?」

 びっくり顔の安川さん。対象的に俺に指摘され顔を真っ赤にするイケメン三浦君。やっぱり図星だったか。

「おい悠斗。お前余計な事言うなよ」「おー怖っ。俺にそんな突っかかる雄介初めて見たぞ」

 チッ、と舌打ちする雄介。普段はこんな風に俺に突っかかって来る事ないんだけどな。もし喧嘩になったとしても俺に勝てないの分かってるからね。まあならないけど。だからこんな態度取るのは、雄介が恥ずかしがり屋のカッコつけだからだとすぐに分かった。俺も今日初めて知ったけど。こいつ、女の子いるとこんな態度取るんだな。女慣れしてるから、ていう訳じゃなさそう。

 雄介の新しい一面を見れて、ちょっと面白いと思った俺。でも、照れ隠しとは言え、なんでこんな態度取るんだろ?

「とりあえず写メ撮ってしまえば?」横で様子を見ていた疋田さんが、そこで声を掛けた。それを聞いた雄介は仕方なさそうに安川さんに寄る。安川さんも嬉しそうに顔を寄せる。パシャリと数枚写メを撮ってから、

「んじゃ武智君、スマホ貸して」「え?」

「え? じゃないでしょ。二人も撮ってあげる」

 え? え? いや、疋田さんと俺? つい驚いて見合わせる俺達。そこでイケメン三浦君がニヤリ。

「ほら悠斗。疋田さんに恥かかせる気かよ。もっと寄れよ」

 いいからほら、と立ち上がり俺達のところまでやってきてグイ、と寄せる雄介。しまった、つい狼狽えてしまい隙だらけで抵抗できなかった。疋田さんと距離が近くなってしまう。そんな状況になっちゃったので、疋田さんも恥ずかしそうに顔を真っ赤にして俯いてる。

「雄介やめろよ。疋田さんに迷惑だろ」「え? 疋田さん、迷惑か?」

「……迷惑、じゃないよ」ポツリと小さな声で返事する疋田さん。迷惑じゃないって言ってくれた。良かった。嫌じゃないんだ。

 ほぉら見ろ、とニヤニヤしやがる雄介。その笑顔が無性に腹立つが正直心の中では感謝してるから言い返せない。今度は安川さんが、はい撮るよー、と声を掛け、俺のスマホでパシャリと撮った。

 ※※※

「やっぱこうなるよなあ」「アハハ……」

 やや諦め顔な俺と疋田さん。。雄介と安川さんは観覧車のゴンドラの前で並んでいるので、俺達はその後ろで順番待ち。

 もう閉園間近なので、遊園地デートの定番中の定番、観覧車に乗ろうとなって並んでいる最中。今日は遊園地で散々遊んだ。も一つ定番のお化け屋敷も行った。疋田さんが俺にくっついて離れなかったんだ。きっと無意識だったんだろうけど、俺はそうじゃない。意識しまくりで心臓バクバクでお化けどころじゃなかった。まあ、お化け屋敷、怖いと思った事ないんだけどね。あれが嫌なのは不意打ちでびっくりさせるとこなだけだし。

 ゴーカートも乗ったけど、助手席には疋田さん。そりゃそうだ。だって雄介は安川さんとずっと一緒で離れないし。そしたら俺達が自然にペアになるわけだ。更に俺達に遠慮せずイチャイチャする安川さん。よくもまあ、俺達これだけ無視できるよな、と感心したけど、そのおかげで、疋田さんとも相当距離が近くなったと思う。

 何にせよ至福の時間だった。それがもう終わろうとしてる。

「綺麗……」うっとりした表情で、遠く山あいの奥に落ちていく夕日を眺める疋田さん。そうだね、と答えながら俺も同じ場所を見つめる。辺りは徐々にオレンジ色に染まっていく。

「んじゃ、お先にー」と嬉しそうに安川さんが、相変わらず雄介の腕に絡みつきつつ観覧車のゴンドラに乗っていった。安川さんは雄介と二人きりになりたいからってそう提案した。まあ言われなくてもそうなるだろうと思ってたけどね。て事は、当然俺は、疋田さんと二人きりでゴンドラに乗る事になる。あの狭い空間に疋田さんと二人切。今日最も緊張してしまう俺。


「き、緊張しちゃう」「ハハ、実は俺も」

 疋田さんも緊張してるのか。俺だけかと思った。そしてすぐに観覧車のゴンドラがやってくる。後ろには他のお客さんもいるから、グズグズするわけには行かないし、二人して照れながらいそいそと乗り込んだ。




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