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その七十八
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※※※
「はーい了解でーす。しっかし日向さんから連絡貰うの、久々ですねー」『そうだったか? それはともかく、今回の件は玲奈にとってもチャンスだと思う。宜しく頼む』
はーい、そう返事してから、私は恩田プロモーションで働いてる日向さんとの電話を切った。
私、山本玲奈は高校に行ってたら二年生。そう。今はいわゆる中退してて学校に通ってない。だから日向さんからの今回の申し出は、私にとってとても有り難いものだった。だって公立の高校に二年生から編入できるんだもん! しかもK市のその高校って、調べてみたら結構偏差値高い学校みたいだし! ……でも、勉強ついていけるかなあ? もう学校辞めてから半年以上経つし塾行った方が良いかも。
母子家庭の家で育った私、父親は産まれた時からずっといなかった。だから顔を知らない。兄弟姉妹もいないから、お母さんと私の二人暮らしでずっと生活してた。で、私を産んだ時、お母さんはまだ十六歳だった。
お母さんはある時から夜の商売で生計を立てるようになった。その事も関係してるのか、お母さんは絶えず男をとっかえひっかえ家に連れてきた。まあ、子どもの私が言うのも何だけど、若いだけじゃなく結構美人だったから、周りの男も放っておかないんだろう。その血を引いてたからのか、私の容姿も相当いい方だし。
そんな生活してたからか、お母さんはどうも依存体質になってたみたいで、連れてくる男にいつも相当甘えてた。小さい頃からそんなお母さんを見てるのは正直嫌だったけど、そんなでもお母さんは、一応私に対しては最低限の世話をしてくれてた。
だけど……。
高校一年生の頃、当時うちに入り浸ってた男が、お母さんがいない時を見計らって、私を襲った。
その時は何とか家から飛び出して逃げる事が出来たけど、家に帰ってからその事をお母さんに伝えたら、あの人がそんな事するわけない! とか逆上して一杯お母さんに叩かれた。それをキッカケに、私は家を飛び出しちゃった。
家出したのはいいけど、これからどうすればいいのか。あの男がいる家に帰るのは怖い出来ない。じゃあこれから私一人、学校にもいかずに生活していくしか無いのかな? あれこれ色々困っちゃってたの、今でも覚えてる。
コンビニとかでバイトするにも家がないから履歴書に書けないから出来ないだろうし。……じゃあ、「売り」でもやるしかない、か。私容姿には自信あるから、お金持ってるおじさんとかなら、うまく家に転がり込んで養って貰えるかも知れないし。
そう思って覚悟を決めて、思い切って声をかけたのが日向さんだった。日向さんは疎い私でも名前を聞いた事がある、あの有名な芸能事務所、恩田プロモーションで働いてるって聞いてびっくり。その上私に説教したんだよね。安直に若さを売るなって。お前ほどの美貌でそんな事しちゃ勿体無いとか褒めながら諭すように。
で、何だかんだ私はその時結構一杯一杯だったから、その場でワンワン泣いちゃって。その日あったばかりで他人の日向さんに、自分の事情を全部話しちゃった。そしたら、住まいが必要になるなら俺が保証人になってやるって言ってくれた。ただ、生活するために必要なお金は自分で稼げ、当面必要な分だけは用意はしてやる、と言われた。
家があるならバイト出来るじゃん。万が一大人が必要なら日向さんにお願いして保証人とかになって貰えるだろうし。と思ったんだけど、せっかくあの恩田プロモーションで働いてる日向さんと知り合いになれたんだから、これはチャンス、と思って、恩田プロモーションのお世話になりたいって日向さんに言ったんだよね。
けど、いきなり稼げるほど芸能界は甘くない、歌唱力や演技力等々、身につけてからだ、とけんもほろろに言われてしまい。いや別に、掃除とかお手伝いとかでも良いんだよって言ってみたけど、芸能人ならともかく、高校生働かせてると世間にバレたらまずいからダメなんだって。なんで? バイトならいいじゃん、って思ったけど。
だから結局、コンビニバイトとかでも良いかな? て最初思ったけど、正直大した額にならない。でも、体売ると日向さんに怒られるし、水商売も年齢的に出来ない。
そこで思いついたのがユーチューバー。最初はスマホで何となしにつまらない会話だけやってたんだけど、何故か凄く人気出ちゃって。それから日向さんに、ユーチューバーうまくいきそうだから、デスクトップPCを買って欲しい、稼げるようになったらお金返すからってお願いして買って貰い、元々好きだったMMORPGの実況をし始めた途端、一気にアクセス数がうなぎ登り。いやまあ実は、あざとく胸チラやももチラするような際どい服着てたのも理由だけどね。私結構可愛いし、そういうのは利用しないとね。
ユーチューバーは一時しのぎにしかならない事もよく分かってる。でもこれを活かして、うまく画面の向こうのファンを騙すよう演技したり、人に見られる事に慣れたり、実況する事で饒舌に話せるスキル磨いたりして、自分のスキルを向上させてるつもり。いつか恩田プロモーションにお世話になりたいって思ってるから。そしたら私も将来困る事ないと思うし。日向さんと知り合った縁を最大限利用しないとね。
で、そういう決意で頑張った結果、結構有名なユーチューバーになっちゃった。だから今では金銭的に結構余裕あって、既に日向さんには借りてたお金返済ずみ。家賃や生活費どころか、オシャレな服買えるまでは懐あったまっちゃった。最近は時々外出して、インスタ映えする動画とか撮って、更にファン増やしたりしてる。だから今は、家出して悲観してた時より、もっと言えば、お母さんと暮らしてた時より相当順調だ。
……でも。
オシャレ決め込んで外に出て、映えする動画撮って帰ってきた私の家には、誰もいない。高校の頃も家庭環境のせいで、友達一人も作れなかったし。
だから私はずっと一人。これが私の運命だって分かってても、……寂しい。
お母さんはこんな寂しさを埋めるために、ああやって男を連れ帰ってきたのかなあ。でも、私には出来ない。それは何だか虚しいから。売りやろうとか、水商売しようとか思ってたくせに未経験だしね。そういうのはやっぱり大好きな人と結ばれたいじゃん。誰でもいいわけないんだから、出会い系やって男連れ込むってのだって抵抗あったし。勿論女友達も欲しいけど、そんなきっかけなかったし。
彼氏がいれば違うんだろうけど、そんなの知り合うキッカケもない。画面の向こうには沢山ファンがいるけど、チヤホヤされるのは気分がいいけど、でも、そういうのとはちょっと違う。
だから日向さんからもう一回高校に行けるって聞いて、私は心底喜んだ。青春ってやつ、やっていいんだって。友達作れるかもしれないって。彼氏も出来るかも知れないって。
ただ、妙な依頼も聞いた。その高校にいる武智悠斗って人について。高校三年生って言ってたから、私からすれば先輩にあたるけど、その人を誘惑してくれって。理由とかきくの忘れちゃったけど、なんでそんな事するのか良く分かんないけどその程度なら全然やるよ。もしその武智悠斗先輩がカッコいいなら、彼氏候補にしてもいいしね。
そのためにK市に引っ越しないといけないけど、そのお金は出してくれるみたい。まあ今の私ならその程度出せるんだけど。
とにかく! 今の私はハッピーだ。今度こそ高校生活を満喫しよー!
「はーい了解でーす。しっかし日向さんから連絡貰うの、久々ですねー」『そうだったか? それはともかく、今回の件は玲奈にとってもチャンスだと思う。宜しく頼む』
はーい、そう返事してから、私は恩田プロモーションで働いてる日向さんとの電話を切った。
私、山本玲奈は高校に行ってたら二年生。そう。今はいわゆる中退してて学校に通ってない。だから日向さんからの今回の申し出は、私にとってとても有り難いものだった。だって公立の高校に二年生から編入できるんだもん! しかもK市のその高校って、調べてみたら結構偏差値高い学校みたいだし! ……でも、勉強ついていけるかなあ? もう学校辞めてから半年以上経つし塾行った方が良いかも。
母子家庭の家で育った私、父親は産まれた時からずっといなかった。だから顔を知らない。兄弟姉妹もいないから、お母さんと私の二人暮らしでずっと生活してた。で、私を産んだ時、お母さんはまだ十六歳だった。
お母さんはある時から夜の商売で生計を立てるようになった。その事も関係してるのか、お母さんは絶えず男をとっかえひっかえ家に連れてきた。まあ、子どもの私が言うのも何だけど、若いだけじゃなく結構美人だったから、周りの男も放っておかないんだろう。その血を引いてたからのか、私の容姿も相当いい方だし。
そんな生活してたからか、お母さんはどうも依存体質になってたみたいで、連れてくる男にいつも相当甘えてた。小さい頃からそんなお母さんを見てるのは正直嫌だったけど、そんなでもお母さんは、一応私に対しては最低限の世話をしてくれてた。
だけど……。
高校一年生の頃、当時うちに入り浸ってた男が、お母さんがいない時を見計らって、私を襲った。
その時は何とか家から飛び出して逃げる事が出来たけど、家に帰ってからその事をお母さんに伝えたら、あの人がそんな事するわけない! とか逆上して一杯お母さんに叩かれた。それをキッカケに、私は家を飛び出しちゃった。
家出したのはいいけど、これからどうすればいいのか。あの男がいる家に帰るのは怖い出来ない。じゃあこれから私一人、学校にもいかずに生活していくしか無いのかな? あれこれ色々困っちゃってたの、今でも覚えてる。
コンビニとかでバイトするにも家がないから履歴書に書けないから出来ないだろうし。……じゃあ、「売り」でもやるしかない、か。私容姿には自信あるから、お金持ってるおじさんとかなら、うまく家に転がり込んで養って貰えるかも知れないし。
そう思って覚悟を決めて、思い切って声をかけたのが日向さんだった。日向さんは疎い私でも名前を聞いた事がある、あの有名な芸能事務所、恩田プロモーションで働いてるって聞いてびっくり。その上私に説教したんだよね。安直に若さを売るなって。お前ほどの美貌でそんな事しちゃ勿体無いとか褒めながら諭すように。
で、何だかんだ私はその時結構一杯一杯だったから、その場でワンワン泣いちゃって。その日あったばかりで他人の日向さんに、自分の事情を全部話しちゃった。そしたら、住まいが必要になるなら俺が保証人になってやるって言ってくれた。ただ、生活するために必要なお金は自分で稼げ、当面必要な分だけは用意はしてやる、と言われた。
家があるならバイト出来るじゃん。万が一大人が必要なら日向さんにお願いして保証人とかになって貰えるだろうし。と思ったんだけど、せっかくあの恩田プロモーションで働いてる日向さんと知り合いになれたんだから、これはチャンス、と思って、恩田プロモーションのお世話になりたいって日向さんに言ったんだよね。
けど、いきなり稼げるほど芸能界は甘くない、歌唱力や演技力等々、身につけてからだ、とけんもほろろに言われてしまい。いや別に、掃除とかお手伝いとかでも良いんだよって言ってみたけど、芸能人ならともかく、高校生働かせてると世間にバレたらまずいからダメなんだって。なんで? バイトならいいじゃん、って思ったけど。
だから結局、コンビニバイトとかでも良いかな? て最初思ったけど、正直大した額にならない。でも、体売ると日向さんに怒られるし、水商売も年齢的に出来ない。
そこで思いついたのがユーチューバー。最初はスマホで何となしにつまらない会話だけやってたんだけど、何故か凄く人気出ちゃって。それから日向さんに、ユーチューバーうまくいきそうだから、デスクトップPCを買って欲しい、稼げるようになったらお金返すからってお願いして買って貰い、元々好きだったMMORPGの実況をし始めた途端、一気にアクセス数がうなぎ登り。いやまあ実は、あざとく胸チラやももチラするような際どい服着てたのも理由だけどね。私結構可愛いし、そういうのは利用しないとね。
ユーチューバーは一時しのぎにしかならない事もよく分かってる。でもこれを活かして、うまく画面の向こうのファンを騙すよう演技したり、人に見られる事に慣れたり、実況する事で饒舌に話せるスキル磨いたりして、自分のスキルを向上させてるつもり。いつか恩田プロモーションにお世話になりたいって思ってるから。そしたら私も将来困る事ないと思うし。日向さんと知り合った縁を最大限利用しないとね。
で、そういう決意で頑張った結果、結構有名なユーチューバーになっちゃった。だから今では金銭的に結構余裕あって、既に日向さんには借りてたお金返済ずみ。家賃や生活費どころか、オシャレな服買えるまでは懐あったまっちゃった。最近は時々外出して、インスタ映えする動画とか撮って、更にファン増やしたりしてる。だから今は、家出して悲観してた時より、もっと言えば、お母さんと暮らしてた時より相当順調だ。
……でも。
オシャレ決め込んで外に出て、映えする動画撮って帰ってきた私の家には、誰もいない。高校の頃も家庭環境のせいで、友達一人も作れなかったし。
だから私はずっと一人。これが私の運命だって分かってても、……寂しい。
お母さんはこんな寂しさを埋めるために、ああやって男を連れ帰ってきたのかなあ。でも、私には出来ない。それは何だか虚しいから。売りやろうとか、水商売しようとか思ってたくせに未経験だしね。そういうのはやっぱり大好きな人と結ばれたいじゃん。誰でもいいわけないんだから、出会い系やって男連れ込むってのだって抵抗あったし。勿論女友達も欲しいけど、そんなきっかけなかったし。
彼氏がいれば違うんだろうけど、そんなの知り合うキッカケもない。画面の向こうには沢山ファンがいるけど、チヤホヤされるのは気分がいいけど、でも、そういうのとはちょっと違う。
だから日向さんからもう一回高校に行けるって聞いて、私は心底喜んだ。青春ってやつ、やっていいんだって。友達作れるかもしれないって。彼氏も出来るかも知れないって。
ただ、妙な依頼も聞いた。その高校にいる武智悠斗って人について。高校三年生って言ってたから、私からすれば先輩にあたるけど、その人を誘惑してくれって。理由とかきくの忘れちゃったけど、なんでそんな事するのか良く分かんないけどその程度なら全然やるよ。もしその武智悠斗先輩がカッコいいなら、彼氏候補にしてもいいしね。
そのためにK市に引っ越しないといけないけど、そのお金は出してくれるみたい。まあ今の私ならその程度出せるんだけど。
とにかく! 今の私はハッピーだ。今度こそ高校生活を満喫しよー!
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