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その七十五
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「……美久? 何ふざけてるの?」
スッと恩田社長の目が、まるで暗殺者のように光を失い鋭くなる。俺はその視線にビクっとするけど、柊さんはそれでも、俺の腕を離そうとしない。
「ふざけてなんかいません。だって武智君、私の彼氏なんですから」
明らかにわざとらしくニッコリ満面の笑みでそう答える柊さん。……それ、明らかに挑発してんじゃん。
「え、えと……。柊さん?」「武智君、ちょっと黙っててね」
あ、はい、と柊さんの迫力に気圧され小さく返事する俺。……つか、柊さんってこんな強い子だったっけ? それはともかく、柊さんはしっかと俺の腕を掴んで離そうとしない。あ、柔らかいものが当たってて心地いい……って言ってる場合じゃないんだけど、気持ちいいものは仕方ない。
「美久、いい加減に離しなさい。本当に怒るわよ」「嫌です。離しません」
恩田社長の怒気のこもった静かな声に気圧される事もなく、更にギュッと俺の腕にしがみつく柊さん。ああ、柔らかいなあそれ。いや、俺の理性しっかりしろ。今はそれどころじゃないだろ。
そしてしばしの沈黙。柊さんと恩田社長はお互い見つめ合ったまま目を離そうとしない。雄介や安川さん、更にヒロ君までもが、これからどうなるんだろうと固唾を飲んで見守ってる。明らかに恩田社長から怒りのオーラが立ち込てるのが見て取れる。何で見えるのか分かんないけど。しかもまるで般若のような、鬼のような形相になってて、怒りでわなわなと全身が震えてる。
「こっの~~~!! 美久ぅぅぅ!!! 彼氏だなんて許せるわけ無いでしょ!! あなた自分の言ってる事が分かってるの!!!!」
恩田社長が我慢ならないと言った感じでそう大声で叫んだ瞬間、俺はふと気配を感じた。柊さんに腕を組まれながらその方へ向き直ると、日向と呼ばれたグラサンの男の人が、柊さんが掴んでる腕の反対側の俺の腕を掴もうとしてた。速い!
「あぶねっ」すんでのところで躱し身構える俺。
「ほう。さすがに速いな。とりあえず、美久を離せ。これ以上社長を怒らせると、俺も抑えられるかわからないから、美久から離れて貰わないと困る」と言いながら、再度俺の腕を掴もうとする。俺は柊さんを出来る限り振り回さないようそれをもう一度躱す。……ってその体捌き、多分柔道か合気道だな。掴もうとするって事は投げ技だ。しかもきっと、段持ちで結構やり手だ。捕まったらいくら俺でも対処が難しい。
「柊さん、ちょっとまずいから一旦離れよう?」「……嫌だ」
「へ?」「だって武智君、今かっこいいんだもん。だからこうしてたい」
ちょっと柊さん? このタイミングでそんな事言うんですかい? いやまあ嬉しいけどさ。今じゃないよね? とにかく、俺一人なら何とかなるけど、柊さんに腕掴まれたままだとさすがに厳しいんですけど?
ちょっとやばいなと思う俺。つい、額からツーと汗がながれていく。なので仕方なく、柊さんが掴んでないもう片方の腕で上段構えを作る。日向って人も俺の様子を見て身構えた。
「……武智君。君が強いのは分かってる。きっと美久に掴まれたままでもそれなりに動けるんだろう。別に俺は喧嘩したいわけじゃない。このまま美久が君にくっついてたら、恩田社長の怒りが収まらないんだよ」
日向さん。あなたの仰る通りです。だから俺も離れた方が良いと思ってるんですけどね。でも柊さんがギューッと掴んで離さないんですよ。しかも柔らかいソレを物凄く押し付けながら。本人きっとこれ自覚ないな。
……つか、この人俺が強いの知ってるって言ったよね?
「日向さん、でしたっけ? もしかして俺の事知ってるんですか?」「まあね。美久が君に興味あると言ってたらしいから、調べていたからね。……清田先生とか学校のファンクラブからの情報でね」
え? 清田やファンクラブの連中、恩田社長と繋がってたの? 清田が柊さんを監視してたのは校長の指示だと思ってたのに。実は恩田社長の指示だったのかよ。
そして日向って人と俺が対峙してると、その間に恩田社長がツカツカと歩いてきて、俺と柊さんの前に立った。それから柊さんの腕を引き離そうと強引にグイっと引っ張る。でも柊さんは抵抗して離そうとしない。
「離れなさい! ふざけるのもいい加減にしなさい! 彼氏だなんてそんな事、絶対許さないわよ!」
我慢ならないという感じで顔を真っ赤にして怒鳴る恩田社長。
「恩田さんに許される必要なんかない! 私は私の意思で行動するって決めた!」
「この~~~!! 美久ーーーー!!!」手を大きく振り上げ柊さんをまたも叩こうとする恩田社長。
だけど、その手が柊さんに届く前に、俺はパシイ、とその手を止める。当然だよね。させるわけがない。そして俺は、その振り下ろされ受け止めた腕をしっかと掴んで離さなかった。恩田社長は引き離そうとジタバタするけど、いくら大人の女性とはいえ、空手部で鍛えてる男の俺に力で敵うはずはない。
「こ、このっ! 離せ! 離しなさい!」「だって離したら、また柊さんを叩くでしょ?」
「そもそもあなたが離れればいい話じゃない!」「そう言われましても、柊さんが離したくないというので」
「はい! そこまでー!」
そこで突如、安川さんが急に大きな声を上げる。不意を突かれたように恩田社長と日向って人がふと安川さんの方を向く。その声を合図に、俺は一旦恩田社長の手を離す。
「へっへっへー。これなんでしょー」そんな二人にニヤニヤしながら安川さんは、(録音)と表示されたスマホを見せた。
「今のやり取り、ぜーんぶ録音しちゃったからねー。ねえねえこれ、マスコミとかに売ったらいいお金になりそうじゃん?」「! あなた! 何言ってるのか分かってるの? 私を脅すつもり?」
「……あのねぇ。アタシ被害者なんだけど? アタシに怒鳴る前に言う事あるんじゃないの?」
「クッ……。このっ! 小生意気なガキが!」「社長、落ち着いて下さい」
今にも安川さんに殴りかかりそうになる恩田社長を何とか引き止める日向って人。
そう。実は俺達、恩田社長が来る前に、録音してやろうって打ち合わせしてた。見事恩田社長は、安川さんにヒロ君をけしかけたって明かした。それだけだったなら大した問題じゃなかっただろうけど、このヒロ君は安川さんを拉致誘拐し、襲おうとしてたんだから、もし公に発表されれば恩田社長も関係ないでは済まないはずだ。
恩田社長は賢いから、きっとのらりくらりとかわされ、しかもお付きの人に無かった事にされるだろう、そう柊さんが言ってたから、じゃあ証拠を残そうと言う事になって、安川さんがスマホを録音状態にしてポケットに入れてたってわけ。
とにかくうまくいったな。……まあ、柊さんがあんなにキレたのと、俺との関係を明かすのは想定外だったけど。
「これが落ち着いていられるか! そうだわ日向! あのスマホ奪ってきなさい!」「おーっとそうはさせっかよ」
恩田社長の叫び声を聞いた雄介が、すかさず安川さんの前に立ち塞がり、空手上段の構えを作る。日向と呼ばれた人はその所作を見て、彼も空手経験者か、と小さく呟いた。どうやら警戒して動けないみたいだな。……そっか、雄介の事は知らないんだ。さっき恩田社長もそんな感じだったし。
「で? 恩田社長さん? アタシに言うべき事あるっしょ?」「……」
安川さんのやや高圧的な言葉に、まさか見下してた俺達ガキにはめられるとは思ってなかったみたいで、ギリリと歯ぎしりしながら、物凄い形相で安川さんを睨む恩田社長。安川さんはそんな恩田社長を見て、ひゃっと声出して雄介の影に隠れ、再びそーっと覗いてる。いやその弱気な態度、まずいんじゃないの?
「……恩田さん。責任ある大人なら、それなりの対応をすべきじゃないんですか?」「美久! ……あなたまで私に恥をかかせるつもりなの?」
未だ俺の腕にくっついてる柊さんが、諭すように恩田社長に言葉をかけたけど、それでも恩田社長、素直に受け入れられないみたいだ。
「そもそも、恩田さんが悪いんじゃないですか。恥をかく羽目になったのは恩田さん自身のせい。私達はただ、明歩が間一髪危ないところだったのを助けただけです」
「……」柊さんの言葉を聞いても、一向に態度を改めない恩田社長。さすがに安川さんもイラッとしたみたいで、「じゃーいいや! 警察に連絡しますねー」とスマホを操作しようとする。
「社長! さすがにまずいですよ」「……こんな子ども達に脅されるなんて」
日向って人にも諭される恩田社長。……そんな事言ってる場合じゃないと思うんだけどなあ。さすがに俺もイライラしてきた。つか、よほどプライド高いんだな。よほど自分に自信あるんだ。だから素直に謝らないんだな。自分のせいで、もう少しで一人の女子高校生が危険な目にあったかも知れないってのに。しかもその被害者に対して、自分は関係ないって白を切りそうだったし。
そして少しの沈黙。暫くして、恩田社長が大きくはあ~、とため息を吐いておでこに手を当て首を振った。
「全くもう。分かった! 分かったわよ! 私が悪かったわ」「……ねえあんたさあ、大人なんでしょ? アタシ達と違って責任ある立場なんでしょ? じゃあ謝罪の仕方も分かってんじゃないの?」
さすがに安川さんキレてる。当事者じゃない俺だってイラついてんだからそりゃそうだよな。
「社長。ここは引き下がったほうが……」「分かってるわよ!」
日向って人に小声で言われる恩田社長。そして再度、はあ~、と大きなため息。
「安川さん。危ない目にあわせてしまって悪かったわ。ごめんなさい」
そう言って、恩田社長は頭を下げた。途端、ニマ~と物凄い笑顔になる安川さん。どこか勝ち誇ったような顔。
「反省したようで良かった良かった! じゃあさ、アタシのお願い、一個聞いてよね!」「え? お願い?」
怪訝な顔をする恩田社長。……そんな事打ち合わせしてないぞ? 俺と雄介、更に柊さんまでついキョトンとしてしまう。そんな俺達に構わず、安川さんは言葉を続ける。
「たけっちーと美久の交際、認めてよね!」
スッと恩田社長の目が、まるで暗殺者のように光を失い鋭くなる。俺はその視線にビクっとするけど、柊さんはそれでも、俺の腕を離そうとしない。
「ふざけてなんかいません。だって武智君、私の彼氏なんですから」
明らかにわざとらしくニッコリ満面の笑みでそう答える柊さん。……それ、明らかに挑発してんじゃん。
「え、えと……。柊さん?」「武智君、ちょっと黙っててね」
あ、はい、と柊さんの迫力に気圧され小さく返事する俺。……つか、柊さんってこんな強い子だったっけ? それはともかく、柊さんはしっかと俺の腕を掴んで離そうとしない。あ、柔らかいものが当たってて心地いい……って言ってる場合じゃないんだけど、気持ちいいものは仕方ない。
「美久、いい加減に離しなさい。本当に怒るわよ」「嫌です。離しません」
恩田社長の怒気のこもった静かな声に気圧される事もなく、更にギュッと俺の腕にしがみつく柊さん。ああ、柔らかいなあそれ。いや、俺の理性しっかりしろ。今はそれどころじゃないだろ。
そしてしばしの沈黙。柊さんと恩田社長はお互い見つめ合ったまま目を離そうとしない。雄介や安川さん、更にヒロ君までもが、これからどうなるんだろうと固唾を飲んで見守ってる。明らかに恩田社長から怒りのオーラが立ち込てるのが見て取れる。何で見えるのか分かんないけど。しかもまるで般若のような、鬼のような形相になってて、怒りでわなわなと全身が震えてる。
「こっの~~~!! 美久ぅぅぅ!!! 彼氏だなんて許せるわけ無いでしょ!! あなた自分の言ってる事が分かってるの!!!!」
恩田社長が我慢ならないと言った感じでそう大声で叫んだ瞬間、俺はふと気配を感じた。柊さんに腕を組まれながらその方へ向き直ると、日向と呼ばれたグラサンの男の人が、柊さんが掴んでる腕の反対側の俺の腕を掴もうとしてた。速い!
「あぶねっ」すんでのところで躱し身構える俺。
「ほう。さすがに速いな。とりあえず、美久を離せ。これ以上社長を怒らせると、俺も抑えられるかわからないから、美久から離れて貰わないと困る」と言いながら、再度俺の腕を掴もうとする。俺は柊さんを出来る限り振り回さないようそれをもう一度躱す。……ってその体捌き、多分柔道か合気道だな。掴もうとするって事は投げ技だ。しかもきっと、段持ちで結構やり手だ。捕まったらいくら俺でも対処が難しい。
「柊さん、ちょっとまずいから一旦離れよう?」「……嫌だ」
「へ?」「だって武智君、今かっこいいんだもん。だからこうしてたい」
ちょっと柊さん? このタイミングでそんな事言うんですかい? いやまあ嬉しいけどさ。今じゃないよね? とにかく、俺一人なら何とかなるけど、柊さんに腕掴まれたままだとさすがに厳しいんですけど?
ちょっとやばいなと思う俺。つい、額からツーと汗がながれていく。なので仕方なく、柊さんが掴んでないもう片方の腕で上段構えを作る。日向って人も俺の様子を見て身構えた。
「……武智君。君が強いのは分かってる。きっと美久に掴まれたままでもそれなりに動けるんだろう。別に俺は喧嘩したいわけじゃない。このまま美久が君にくっついてたら、恩田社長の怒りが収まらないんだよ」
日向さん。あなたの仰る通りです。だから俺も離れた方が良いと思ってるんですけどね。でも柊さんがギューッと掴んで離さないんですよ。しかも柔らかいソレを物凄く押し付けながら。本人きっとこれ自覚ないな。
……つか、この人俺が強いの知ってるって言ったよね?
「日向さん、でしたっけ? もしかして俺の事知ってるんですか?」「まあね。美久が君に興味あると言ってたらしいから、調べていたからね。……清田先生とか学校のファンクラブからの情報でね」
え? 清田やファンクラブの連中、恩田社長と繋がってたの? 清田が柊さんを監視してたのは校長の指示だと思ってたのに。実は恩田社長の指示だったのかよ。
そして日向って人と俺が対峙してると、その間に恩田社長がツカツカと歩いてきて、俺と柊さんの前に立った。それから柊さんの腕を引き離そうと強引にグイっと引っ張る。でも柊さんは抵抗して離そうとしない。
「離れなさい! ふざけるのもいい加減にしなさい! 彼氏だなんてそんな事、絶対許さないわよ!」
我慢ならないという感じで顔を真っ赤にして怒鳴る恩田社長。
「恩田さんに許される必要なんかない! 私は私の意思で行動するって決めた!」
「この~~~!! 美久ーーーー!!!」手を大きく振り上げ柊さんをまたも叩こうとする恩田社長。
だけど、その手が柊さんに届く前に、俺はパシイ、とその手を止める。当然だよね。させるわけがない。そして俺は、その振り下ろされ受け止めた腕をしっかと掴んで離さなかった。恩田社長は引き離そうとジタバタするけど、いくら大人の女性とはいえ、空手部で鍛えてる男の俺に力で敵うはずはない。
「こ、このっ! 離せ! 離しなさい!」「だって離したら、また柊さんを叩くでしょ?」
「そもそもあなたが離れればいい話じゃない!」「そう言われましても、柊さんが離したくないというので」
「はい! そこまでー!」
そこで突如、安川さんが急に大きな声を上げる。不意を突かれたように恩田社長と日向って人がふと安川さんの方を向く。その声を合図に、俺は一旦恩田社長の手を離す。
「へっへっへー。これなんでしょー」そんな二人にニヤニヤしながら安川さんは、(録音)と表示されたスマホを見せた。
「今のやり取り、ぜーんぶ録音しちゃったからねー。ねえねえこれ、マスコミとかに売ったらいいお金になりそうじゃん?」「! あなた! 何言ってるのか分かってるの? 私を脅すつもり?」
「……あのねぇ。アタシ被害者なんだけど? アタシに怒鳴る前に言う事あるんじゃないの?」
「クッ……。このっ! 小生意気なガキが!」「社長、落ち着いて下さい」
今にも安川さんに殴りかかりそうになる恩田社長を何とか引き止める日向って人。
そう。実は俺達、恩田社長が来る前に、録音してやろうって打ち合わせしてた。見事恩田社長は、安川さんにヒロ君をけしかけたって明かした。それだけだったなら大した問題じゃなかっただろうけど、このヒロ君は安川さんを拉致誘拐し、襲おうとしてたんだから、もし公に発表されれば恩田社長も関係ないでは済まないはずだ。
恩田社長は賢いから、きっとのらりくらりとかわされ、しかもお付きの人に無かった事にされるだろう、そう柊さんが言ってたから、じゃあ証拠を残そうと言う事になって、安川さんがスマホを録音状態にしてポケットに入れてたってわけ。
とにかくうまくいったな。……まあ、柊さんがあんなにキレたのと、俺との関係を明かすのは想定外だったけど。
「これが落ち着いていられるか! そうだわ日向! あのスマホ奪ってきなさい!」「おーっとそうはさせっかよ」
恩田社長の叫び声を聞いた雄介が、すかさず安川さんの前に立ち塞がり、空手上段の構えを作る。日向と呼ばれた人はその所作を見て、彼も空手経験者か、と小さく呟いた。どうやら警戒して動けないみたいだな。……そっか、雄介の事は知らないんだ。さっき恩田社長もそんな感じだったし。
「で? 恩田社長さん? アタシに言うべき事あるっしょ?」「……」
安川さんのやや高圧的な言葉に、まさか見下してた俺達ガキにはめられるとは思ってなかったみたいで、ギリリと歯ぎしりしながら、物凄い形相で安川さんを睨む恩田社長。安川さんはそんな恩田社長を見て、ひゃっと声出して雄介の影に隠れ、再びそーっと覗いてる。いやその弱気な態度、まずいんじゃないの?
「……恩田さん。責任ある大人なら、それなりの対応をすべきじゃないんですか?」「美久! ……あなたまで私に恥をかかせるつもりなの?」
未だ俺の腕にくっついてる柊さんが、諭すように恩田社長に言葉をかけたけど、それでも恩田社長、素直に受け入れられないみたいだ。
「そもそも、恩田さんが悪いんじゃないですか。恥をかく羽目になったのは恩田さん自身のせい。私達はただ、明歩が間一髪危ないところだったのを助けただけです」
「……」柊さんの言葉を聞いても、一向に態度を改めない恩田社長。さすがに安川さんもイラッとしたみたいで、「じゃーいいや! 警察に連絡しますねー」とスマホを操作しようとする。
「社長! さすがにまずいですよ」「……こんな子ども達に脅されるなんて」
日向って人にも諭される恩田社長。……そんな事言ってる場合じゃないと思うんだけどなあ。さすがに俺もイライラしてきた。つか、よほどプライド高いんだな。よほど自分に自信あるんだ。だから素直に謝らないんだな。自分のせいで、もう少しで一人の女子高校生が危険な目にあったかも知れないってのに。しかもその被害者に対して、自分は関係ないって白を切りそうだったし。
そして少しの沈黙。暫くして、恩田社長が大きくはあ~、とため息を吐いておでこに手を当て首を振った。
「全くもう。分かった! 分かったわよ! 私が悪かったわ」「……ねえあんたさあ、大人なんでしょ? アタシ達と違って責任ある立場なんでしょ? じゃあ謝罪の仕方も分かってんじゃないの?」
さすがに安川さんキレてる。当事者じゃない俺だってイラついてんだからそりゃそうだよな。
「社長。ここは引き下がったほうが……」「分かってるわよ!」
日向って人に小声で言われる恩田社長。そして再度、はあ~、と大きなため息。
「安川さん。危ない目にあわせてしまって悪かったわ。ごめんなさい」
そう言って、恩田社長は頭を下げた。途端、ニマ~と物凄い笑顔になる安川さん。どこか勝ち誇ったような顔。
「反省したようで良かった良かった! じゃあさ、アタシのお願い、一個聞いてよね!」「え? お願い?」
怪訝な顔をする恩田社長。……そんな事打ち合わせしてないぞ? 俺と雄介、更に柊さんまでついキョトンとしてしまう。そんな俺達に構わず、安川さんは言葉を続ける。
「たけっちーと美久の交際、認めてよね!」
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