何故か超絶美少女に嫌われる日常

やまたけ

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その七十四

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「余計な事って?」

 恩田社長はきっと、何の事を言ってるのか分かってて聞き返してるはずだ。それなのに慌てる事もなく淡々としてる。……余裕を感じるな。

「ヒロく……、大内君を使って、明歩と彼氏の三浦君を別れさせようとしてた事です」

 そんな恩田社長に対し、柊さんも冷静に返す。

「あら。やっぱりバレちゃったのねえ。ったく、大内君使えないわね。地元で同じ高校生だからって聞いたから、うまくやってくれると思ったのに」

 両手を広げやれやれ、というポーズを取る恩田社長。そこには全く反省の色は見えない。その事に、俺は少し苛立ちを感じた。

「それはそうとして、大内君達は何故そこに座らされているのかしら? 大内君ご自慢のお顔も頬が腫れ上がって真っ赤になってるけど。何があったの?」

「こいつらは、……明歩を拉致して襲ったんです。服を脱がせ、三浦君と別れるよう脅したんです。すんでのところで私達が助けに入って、それは未遂に終わりましたけど」

 恩田社長の問いに、今度は柊さん、強い口調になる。それでも、何とか怒りを抑えながら話してるのはよく分かった。

「……それ本当? 全く! 何やってんのよ! あなた、自信たっぷりに問題ないって言ってたじゃないのよ!」

 柊さんの話を聞いた恩田社長はヒロ君に向かって怒鳴る。その怒鳴り声にすっかりビビったヒロ君は、すみません、と小さく呟き下を向いた。

「私は確かに、安川さんと彼氏が別れるよう画策しろとは言ったけど、こんな事までやれだなんて言ってないわよ!」

「で、ですけど、失敗したら、俺、恩田プロモーションに入れないじゃないですか……」

「当たり前でしょ? というか、あなた。こんな事仕出かすようなら、性格的に問題ありよね。寧ろ画策が成功してうちに入る前に、あなたの本性が分かってよかったわよ」

「そ、そんなぁ……」

 恩田社長の容赦なく切り捨てるような言い方に、ますますシュンとするヒロ君。

「で? あなた達が助けに入った結果、大内君達はああなった、って事?」「そうです。もし私達がここに来なければ、明歩は今頃……」

 そこで恩田社長がツカツカとヒロ君の前まで歩いていき、目の前に止まり腰に手を当て仁王立ちする。その様子を見て、ビクっと身体を反応させササっとその場で正座するヒロ君。

「何て事しでかしてくれたの? 犯罪までしろだなんて私言ってないわよね?」「だ、だって恩田社長! たかがガキの恋心なんざ簡単にひっくり返るから、って言ってたのに、無理だったんすよ! じゃあもう、脅すしか方法ないじゃないですか!」

「……浅はかねぇ。そんな性格だから、いくら経っても養成所でのたまってるのよ。そりゃオーディションも落ちまくるわけね」「そ、それとこれとは別でしょ?」

 二人がそんなやり取りしているさなか、ふと柊さんが恩田社長の元に歩いていき、ヒロ君との間に入った。

「……何なの? 美久」恩田社長とヒロ君が、柊さんのいきなりの行動のせいか、共に怪訝な顔をする。

 そしていきなり、

 パァーン、と、柊さんが思い切り恩田社長の頬を叩いた。

「「「「……」」」」

 恩田社長は物凄くびっくりした顔で、叩かれた頬を手で抑えながら柊さんを見てる。そして日向って呼ばれてたグラサンの人も、更にヒロ君や俺達全員も突然の事にびっくりして唖然としてしまった。

「……な、な、何を……。美久、あなた、何をするの?」

 絞り出すような声を出す恩田社長。まだ何が起こったかわからないと言った、ちょっと混乱してるような、そんな表情だ。一方の柊さんは、もう我慢ならないといった怒りの表情。

「何をするの? じゃない! 恩田さんこそ、私の大事な友達に彼らを使って何て事したんですか! さっきも言ったけど、もし私達の発見が遅れたら、明歩、こいつらに襲われてたんですよ? 彼らが勝手にやった事? そうじゃない! そもそも恩田さんが、明歩と三浦君の仲を割こうとしたのが原因じゃないですか!」

 涙目で叫ぶ柊さん。その鬼気迫る言い方に、恩田社長も迫力負けしてるのか、柊さんを見つめたまま黙って話を聞いてる。

「明歩を手に入れるために別れさせる? 意味分かんない! 明歩は既に芸能事務所に入るの断ってたはずでしょ! 明歩の意思を尊重せず、勝手な事やった恩田さんにも責任はあるじゃないですか!」

「やかましい!」今度は恩田さんが柊さんを突然パァーン、と引っ叩いた。だが、それでも柊さんはキッと恩田社長を睨み返す。

「しゃ、社長、顔はまずいですよ」「おだまり日向!」

 そこで突如、日向と呼ばれたグラサンの男の人が恩田社長に注意するも、今度は恩田社長が怒り心頭のようで怒鳴り返した。そして柊さんをキッと睨みながら向き直る。

「子どものくせに生意気言うんじゃない! 安川さんとそこの彼氏の恋なんて所詮おままごとなのよ! 下らない恋心にほだされて、せっかくの才能を無下にするだなんて、私は許せないのよ! 美久同様、安川さんも逸材だと思ったからこそ、こっちは本気で獲得しようとしただけよ!」

「かっ、勝手な事言うなああ!!」

 恩田社長の大声にも負けじと、柊さんが更に大きな声でやり返す。

「たかがガキの恋心? それの何が悪い! それでもお互いガキなりに真剣に想い合ってる! 好き合ってる! それを邪魔する権利は誰にもない!」

 はあ、はあ、と、柊さんが息をつく。一方の恩田社長は、急に肩の力が抜けたかのように、突如はあ~、と大きなため息を吐いた。

「……呆れた。美久、あなたもっと賢いと思ってたわ。とてもとても残念よ」

「な、何が残念なんですか!」「あーもう本当、青臭いんだから」

 今度は心底呆れた顔になる恩田社長。

「あなた達みたいなお子様の恋心って、邪魔でうっとうしくて、病気みたいなものなの。美久、あなたが大人になれば分かるわよ」

「人を好きになるのに子どもも大人も関係ない!」

「そうそう。そういうのがとても面倒なのよ。あのね? 大人は結婚を意識して恋人を作るの。だから収入や社会的地位も考えてお付き合いする。だけどあなた達高校生はどう? 何の責任も考えず、惚れたはれたって騒いでるだけでしょ? そんなお遊びの恋心で、せっかくの才能を埋もれさせるのが勿体無いのよ」

 そこで恩田社長は奥にいる安川さんを見る。目が合った安川さんはビクっと反応してる。

「ねえ安川さん。大内君があなたを誘った時、気持ち揺らがなかったのかしら? そう自信を持って言える?」

 恩田社長の言葉に即答出来ずうつむいてしまう安川さん。それを見た恩田社長は、フッと小馬鹿にしたように笑う。

「ほぉらね? やっぱり揺らいだんじゃない。結局、あなた達子どもの恋愛感情なんてお遊びの範疇を越えないの。まあだから、大内君には期待してたんだけどねぇ」

「……」安川さんが悔しそうな、でもどことなく申し訳なさそうに目に涙を溜め恩田社長を黙って見てる。

 ……そりゃ確かに、俺達はまだ社会を知らない子どもだ。大人みたいな責任もない。でも、俺達はこの歳から本当の恋を知り、そしてそれを糧に成長していくもんじゃないのか? 

 俺が柊さんの事を好きなのは本気だ。その気持ちには自信がある。収入や結婚とかは……、そりゃ高校生だからよく分かんないけど、柊さんを想う気持ちは本物だ。それを大人の理屈で否定されるのはやっぱり納得いかない。

「で? 武智君、君はどうしてここにいるのかしら?」

 そこで次は恩田社長、俺に声をかけてきた。

 ……いろんな事あって忘れてたけど、そうだ俺、本当はここにいちゃいけないんだった。以前柊さんといた時にも注意されたんだし。なんて言い訳したらいいんだろ? 俺は柊さんの彼氏だけど、きっと恩田社長はその事を知らないだろう。なら、俺が余計な事言って、柊さんを困らせたくない。

 俺は言葉に困りふと柊さんをチラリと見る。

 それに気づいた柊さん、ニッコリ俺に笑いかけながら、何と俺の腕に絡みついてきた。


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