何故か超絶美少女に嫌われる日常

やまたけ

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その五十二

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 ※※※

「クッソ、明歩どこだよ」

 俺、三浦雄介は、明歩と二人で夏祭りにやってきて、さっきまで一緒に花火を観るため、河川敷の土手にいたのはいいんだけど、どうやらスマホを落としたらしい。しかも明歩とはぐれてしまった。

 一応検索機能ついてるから、家帰ってからパソコンで検索すれば場所特定は出来るだろうけど、今はそれより、見失った明歩がどこにいるか探さないと。

 あいつから、以前バイトの面接行く時変な奴に絡まれたって聞いてる。彼氏の俺が言うのも何だが、明歩は結構いい女だ。俺といる時なら心配ないが一人だと目立ってしまう。また余計なトラブルに巻き込まれてるか気になって仕方がない。

「土手にはいないっぽいな」既に殆どの人がいなくなった河川敷の土手。というか、夜店がある辺りとは違い、かなり暗いがそれでもこれだけ人がまばらなら分かるはずだ。

「夜店通りに戻って、探すしかないか」あの人混みの中、明歩を見つけるのは至難の業だろう。でも行かないと。あいつに万が一があっちゃいけない。

 失くしたスマホを気にしつつも、優先順位は明歩だ。そう決めた俺は急いで、未だ夜店の灯りで明るい神社通りの方へ走った。

 ※※※

「ちょっと! 止めてよ!」「おー、おー。威勢いいねえ」

「変な事したら大声出す! 警察呼ぶ!」「何言ってんの? 俺ら何もしてねーじゃん」

「もう行くからどいてよ!」「行かせるわけねーだろ。せっかくまた会ったのにさあ」

 そう言ってアタシの行く方に立ち塞がり、逃げようとするのを邪魔をする三人。あーもう、雄介何やってんのよー!

「本当もう止めて! あんた達に興味ないし! そもそもアタシ、彼氏と来てんだし!」「その彼氏は? いねーじゃん。連絡すれば?」

「……」でも、そう言われて出来ないアタシ。だってさっきからずっと雄介は電話繋がらないんだもん。もしかしてスマホ落としたのかも。アタシがこんなに連絡しても出ないんだもん。きっとそうだ。もう! タイミング悪すぎ! 雄介のバカ!

「電話しねぇの?」「ほーらやっぱ嘘じゃん。嘘つきはお仕置きしないといけないってか?」「ギャハハ! お前それオッサン臭ぇ!」

 三人でゲラゲラ笑いながらも、アタシを決して逃がそうとしない。どうしよう……。このままどっか連れてかれるんの? ……雄介、怖いよう。警察に電話? でもこいつら見てる前でどうやって? 女のアタシ一人と男三人じゃ敵わないし。……ゆうすけぇ~、怖いよ~!

「じゃあカラオケいこーぜー」「おーいいねー。祭りもう飽きたしな」「おい、行くぞ。俺らと一杯いい事すんだからな」

 そう言いながら両腕を二人に掴まれ、逃げられないようにされてしまう。……どうしよう。どうしよう! いやだ、行きたくない!

「おいこいつ、震えてんぞ?」「あ? あんな威勢良かったのフェイクかよ」「へー、んじゃこいつマゾっ気あんじゃね? いいねえ。そういう女大好物」

 もう怖くて逆らえない。どうしよう、どうしよう。このまま拐われる? そうなったら……、嫌な予感しかしない。でも抵抗したら殴られる? 

 そう思って、もう怖くて何も出来なくなっちゃったアタシを、男達が半ば無理やり夜店とは反対側の、暗がりの方に引っ張っていこうとしたところで、

「おい! お前ら何やってんだ!」と声が聞こえた。……ゆ、雄介? 雄介来てくれたの?

「あ? 何だお前」「俺らこれからお楽しみなんだけど?」「うぜぇな、邪魔すんな」

 ……雄介じゃなかった。てか、この人見た事ある。

「明らかにその子嫌がってんじゃねーか。人呼んでくるぞ? それとも警察がいいか?」

「……ケッ」「ったく、いいとこだったのによぉ」「あーあ、ついてねぇなあ」

 その彼が若干脅すように男達に言ったら、アタシを掴んでた腕を離し、三人組は地面にツバを吐きながら立ち去った。瞬間、ヘナヘナ~、と地面にへたり込むアタシ。本当、今回はかなりヤバかった。怖かった。

「大丈夫? ……って、あれ? もしかして……、安川明歩さん?」「あ、は、はい。またもありがとうございます」

 そう。アタシを助けてくれたのは、前にバイトの面接に向かう時に助けてくれた、ヒロ君とか言う人だった。……名前は忘れた。

 そして爽やかなイケメンスマイルをアタシに向けて、手を差し伸べるヒロ君。助けてくれた手前、邪険にも出来ないし、実際腰抜けてるから仕方なく、アタシは出された手を掴み、立ち上がった。

「良かったね。もしかして、どこかに連れて行かれそうになってた?」「そ、そうなんです。ありがとうございます」

「俺たまたま、夜店通りの人混みに疲れて、ここの外れに来たんだけど、来て良かったよ」「そ、そうですね」

「今日で二回目か。何だか、運命感じちゃうな」「ハ、ハハ」

 乾いた笑いをするアタシに、まるで漫画みたいに白い歯をキラリーンさせ、笑顔を見せるイケメンヒロ君。アタシはちょっと引き気味ながらも、相変わらず雄介が気がかりで、ヒロ君に一言すみません、と声をかけ、もう何度目かの電話をしてみる。……でもやっぱり出ないなあ。

「落としたのかなー?」「どうしたの? 彼氏と連絡がつかない?」

「あ、はい。そうなんです」「じゃあ一緒に探してあげよう」

「い、いやいやそこまで面倒かけるわけには……」「気にしない気にしない。乗りかかった船だよ。こうやってまた助ける事が出来たのだって、きっと運命だしね」

 またもキラリーン、と白い歯を輝かせニッと笑うヒロ君。今確か夜なんだけど、どこに反射してんだろ? とか疑問が湧くアタシ。それはともかく、雄介を探さないと。

 そうだ! ……美久とたけっちーが一緒だ。美久に連絡して一緒に探して貰う? いや、そりゃダメだわ。あの二人、きっと今大事な時間だから、邪魔出来ない。

「とにかく、もう大丈夫なんで。ありがとうございます」「いいよいいよ。じゃあ一緒に探そう」

 そう言いながら、ヒロ君はアタシの手を握る? は? 何勝手な事してんのこいつ。アタシの手を気軽に握っていい男は雄介だけなんだけど? へたり込んでた時は仕方なかったけど、今ここで手握る必要ないよね? ……と、心の中でイラっとしたものの、助けてもらった手前拒否できないアタシ。つか、さっきの挨拶はさようならの意味なのに、一緒に探そう、とか言われるし。

「本当にもう、大丈夫なんで」「そう? それは残念だなあ。せっかくこうして会えたし、俺はもうちょっと安川さんと話したかったんだけど」

「そう言われても……」「せっかく二度も助けてあげたのになあ。これでおしまいってのは、ねえ?」

 恩着せがましい言い回し。要は助けてやったんだからお礼くらいしろよ、と言う事? ……でもまあ、助けて貰ったのは事実だし。

「じゃ、じゃあ、機会作って……」「本当? じゃあ連絡先教えてよ」

 アタシは逃げ口上のつもりだったのに、連絡先の交換? ……でも、早く雄介探したいし、教えないと行かせてくれそうにない。仕方なくアタシは、ヒロ君とline交換した。そこでヒロ君もスマホ取り出すためにアタシの手を離す。それにはホッとしたけど。

「ごめんね。本当は手伝いたかったけど、安川さん一人がいいって言うなら仕方ないよね。また奴らみたいなのに絡まれないよう、気をつけてね」「はい、ありがとうございます」

 じゃあ、連絡するね、と言いながら、手を振り夜店通りとは逆方向の暗がりへきえていくヒロ君。はあ、とつい、ため息が出てしまうアタシ。

 そして急いで明るい夜店通りの方へ戻る。雄介もアタシを探してるはず。しつこいけどもう一度電話してみる。……え? 繋がった!

「雄介! どこにいんの!」『あ。えーと、失礼。私は夏祭りを運営している神社の者なんですが、このスマホが拾得物として、つい先程届けられまして、私が手に取ったところ、丁度あなたから着信があったんです』

「あ……」つい大声で雄介の名前を呼んだ事が恥ずかしくなるアタシ。てか、やっぱ雄介スマホ落としてたんだ。

「えと、そのスマホの落とし主、アタシの知人なので、とりあえずそちらに向かいます」『分かりました』

 そして拾得物を預かってる場所を聞き、アタシは急いで向かった。

「雄介もその場所知って、向かってる可能性あるもんね」

 ※※※

「ういーっす、お疲れっす」「おう、今日もお疲れだったな」

「で、どうすか? いけそうっすか?」「どうだろうな。あの子、見た目に反して真面目なタイプっぽい。ありゃ身持ち堅いな」

「マジっすか。俺、そういう女無茶苦茶にすんの大好きなんすけど」「こらこら。俺が先だぞ」

「分かってるっすよ」「俺らはおこぼれでも、あんないい女なら全然オーケーっす」

「で、彼氏のスマホ、届けてきたんだな?」「バッチシっす。でもやっぱりパスワードロックかかってて、中身は見れませんでしたけどね」

「しかしまあ、よく二人いんの見つけましたね。花火の最中は集中してるから、スマホ盗るのも余裕だったし」

「まあな。今日は夏祭りだし来るのは予想できたしな。入口の鳥居辺りで張ってたら見つけたってわけだ。本当はもっと一緒にいて、あれこれ口説こうかと思ったんだけど。ま、連絡先交換したし、今日はこんなもんだろ」


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