32 / 130
その三十二
しおりを挟む
「箔がつくのに恋心が邪魔なんすか」「ええ」
そう言って既に氷が解けたアイスコーヒーに口を付ける恩田社長。
「芸能界は跳梁跋扈。魑魅魍魎が住み着く世界。熱愛報道が大好きなゴシップ誌が、常日頃鼻を利かせているわけ。これからデビューしようとしている俳優に、そんな噂話が出回ってしまったら、それだけですぐに商品価値が落ちてしまうわ」
成る程~。言ってる事は何となく分かる。
「人って良い話より悪い話の方が大好きだから、そういうネタはすぐにSNSで拡散されてしまう。その上沈静化しても、その拡散した痕跡は誰も消せないし消さない」
そう言って改めてアタシをジッと見る恩田社長。うっわ、真剣な目チョー怖いんだけど。
「ねえ。その彼氏君とは……」「別れませんよ」はっきりと言い切ったアタシ。マジな顔になったと思ったらそんな事言うか? 当ったり前じゃん。雄介はアタシの命より大事なんだから別れるわけないじゃん。
「そうよねえ。あなたの年頃の恋心って、真っすぐで純情でひたむきで。でも自分勝手で融通がきかない。だから手に負えないのよね」はあ、とため息つく恩田社長。
そこでアタシはある事に気づいた。もしかして……。
「あの、武智悠斗君って知ってます?」「え? ええ、知ってるわよ」
「……どうして知ってるんですか?」「どうしてって……。ああ、そうよね。毎朝美久があんな事してたら、疑問に思うのも当然よね。で、安川さんはどこまで美久から聞いてるの?」質問に質問返しされた。それにちょっとムッとしてしまう。聞いてんのこっちなんだけど?
「それは言えませんが、美久に武智君を嫌うようにしてるのって……」
「そうよ。私が指示したの。あの子実は、その武智って子に余計な感情を持とうとしたのよねえ」
はあ、やれやれ、と言った感じで首を振る恩田社長。やっぱ美久の気持ち知ってたんか。
「それがもし、武智君とやらの勘違いを産んで、彼がもし美久を気になって、美久も悪い気せず近づいたら、それこそスキャンダルの種だわ。だから、今後女優としてやっていくに当たって、自分の感情を押し殺し、嫌われるようになれば、きっと成長出来ると思ってね。あの子の余計な恋心を利用したのよ。どうせ付き合えやしないんだし」
そこでつい、我慢できなくなってバン、と机を思い切り叩いて立ち上がってしまった。この人、美久の想いを利用してたんだ。それだけじゃない。美久の想いを堰き止めてたんだ。美久の苦しみを増長させてたんだ。
「あら。何か怒らせるような事言ったかしら? ああ、もしかして彼氏の件? もう付き合ってしまってるなら仕方ないわね。じゃあスカウトの件、別れてからまた考えてくれたらいいわ」
……別れてから? 何言ってんのこの人? 何でそんな簡単そうに言うの?
「別れたらって……なんでそんな冷静なんすか?」「そりゃあ、大人ですもの」
立ち上がったまま怒り心頭のアタシを、どこか冷めた表情で見ながら、話し続ける恩田社長。
「あなたはまだ若いから分からないのよ。今の恋が大人になってまで続くだなんて事が妄想だって事をね。でも、それでいいのよ。子どもはね」
……何かムカつく。何その上から目線?
「それに美久の事だけど、あの子は大事な商品なの。あの子はこれから芸能界で大きく羽ばたき、素晴らしい栄光が待っている。それを青い恋心にほだされて、無駄にして欲しくないのよ……って、何言ってるのか分からないって顔してるわね」
淡々と話す恩田社長に、アタシは怒りで頭が沸騰しそうになっちゃった。もうブチ切れそう。
「お話終わったようなので失礼します」「そうね。理解して貰えなかったようで残念だけど。まあ、興味があったら、そこの名刺に書いてあるところへ連絡くれるといいわ。勿論、親御さんとも相談してね。私の名刺が貰えるって、結構貴重なのよ」
きっとアタシの怒りは顔に出てるはず。しかもアタシ、我慢できずに睨んじゃってるし。なのにこの人、涼しい表情でニコニコしてる。
これ以上一緒にいると、この人に殴り掛かりそう。だからもう立ち去ろうと思った。そしてあからさまにお茶した分の伝票持ってさっさとレジに来ちゃった。……あー、もったいない! カッコつけちゃって失敗したあ! ここは子どもらしく奢って貰えばよかったかも。でも何だか、この人に奢って貰うの腹立つししゃーないかあ。
ファミレスから出たら、ヒュウと夏風がアタシを吹きつけた。それで少し頭が覚めたからか、あの人の言ってる事を振り返る。……確かにあの人の言ってる事は正論だ。でも、正論だけじゃ割り切れない想いってあるじゃん? それって結構重要じゃん? その正論のせいで、美久はあんなに泣いたんだから。
※※※
「えっと、この公式を使うんだよね?」「いや、これはこっちの方がいいよ」
成る程、といいながら、柊さんに指摘されたところを修正していく俺。早めに昼飯食って、もうそろそろ始まる定期テストのための勉強会を、建物そばの日陰でやってる最中だ。
上を見れば快晴で夏空が広がってる。既にセミがうるさく鳴いていて、日差しもかなりきつくて暑い。今年も猛暑になるって天気予報で言ってたなあ。本当はエアコンの効いた校舎の中で涼みたいんだけど。そしてさすがにこの時期、あの色んな道具が置いてある建物の中に入るのは無理。きっと蒸し風呂状態だ。でも、その建物の影が、時々風が通り抜けるのもあって、思ったより心地よかったりする。ここ、結構過ごしやすいな。
「しっかしもう夏だなあ」「フフ。どうしたの急に?」
「いやあ、テスト終わったらさあ、今度は空手の大会があるんだよな」「あ、そっか。忙しいんだね」
もう六月も下旬に近づいてきた頃だから、このテストが終われば、空手部の練習がより一層ハードになる。それでも、バイトはいつも通り行くんだけどな。夏休み終わったらバイト辞めるから、マスターにはずっとお世話になってた事もあって、出来るだけ休みたくないんだよね。
「……観に行きたいな」「え?」
「空手の試合。そういうの観た事ないから」「あ、そ、そう?」
びっくりした。俺を観に行きたいのかと一瞬思ってしまったよ。ハハ、まあそんなわけないわな。最近かなり気を許してしまってるから、気をつけないと。最近は朝の嫌われ演技も、もう阿吽の呼吸みたいになってて、すぐ返せるようになってきてんだよな。
「それに……。武智君が、観てみたいかな」「え?」
顔を真っ赤にしながら俺を見つつ、とんでもない事言った柊さん。びっくりしてつい「なんで?」と聞いてしまった。そりゃそうだ。
「それは……、内緒」顔が赤いままフフっといたずらっぽく笑う柊さん。ああもう。またも心臓がバックンと跳ね上がっちゃったよ。本当もうこの人、心臓に悪い。とにかく可愛すぎる。
「へいへーい、ちょっと良いかいそこのカップル!」「「え?」」そこへ突如、聞き慣れた声。……安川さん?
※※※
「カップルなんて言わないでほしいんだけど。柊さん迷惑だろうし」「んー? 美久迷惑だった?」
「え? あ……」と言ったまま俯いて黙る柊さん。おいこらちょっと! 黙ってないで否定してくれよ! 勘違いされるから!
どうやら安川さんは一人で屋上まで来たようだけど、いつもセットの雄介が見当たらない。どうしたんだろ?
「まあとにかくさあ。ちょっと美久と話あんの」「あ、そう? じゃあ俺退散するわ」
「いや。たけっちーもここにいて」「え? あ、はい」たけっちー? いつからそんな呼び方されるようになったんだ?
まあ、俺も居なくちゃいけないらしいので座り直す。つか安川さん、腰に手を当て仁王立ちでふんぞり返って、何だか怒ってる?で、その様子を見た柊さんは、どうやら安川さんが何故怒ってるか分かってるっぽい。
「明歩。怒ってるね」「うん。怒ってるね」
「分かってるよ。恩田さんに会ったんでしょ? 本当は、私から説明しなきゃいけなかったんだけど」「そこはどうでもいい」
そして安川さんはガッと柊さんの肩を力強く掴んだ。何だか目が潤んでる? ……オンダさん? って誰だろ?
「美久さあ、あんた本当に苦しかったでしょ? 恩田社長から全部聞いたよ? アタシ、力になってあげれなくてごめんね」そう言って柊さんをギュッと抱きしめた安川さん。え? どういう事? オンダ社長? とか言ってた?
「明歩……。いいのよ気にしてない」「いいや! アタシは美久のダチだから!」
そしてグス、ヒックと泣き出しながら安川さんはずっとごめん、ごめんと言ってる。柊さんも徐々に目を潤ませてるし。……これは一体どういう状況なんだろ? 何だか二人で分かち合ってるっぽいし。つか、俺要らなくね?
「ねえ美久。もうたけっちーに話しちゃいな」「え? で、でも……」
「あんたの気持ち、どうすんの? このままでいいの?」「え? そ、その事?」
「じゃあその事はいいから、演技の事くらいは話しな」「……」
涙目の安川さんが真剣な顔で柊さんを説得するように見つめながら話してる。柊さんは安川さんの目が見れないようで、俯いちゃった。……朝の嫌われ演技の事、教えてくれるって事なのか。でもなんで、二人して泣いてんだろ?
そう言って既に氷が解けたアイスコーヒーに口を付ける恩田社長。
「芸能界は跳梁跋扈。魑魅魍魎が住み着く世界。熱愛報道が大好きなゴシップ誌が、常日頃鼻を利かせているわけ。これからデビューしようとしている俳優に、そんな噂話が出回ってしまったら、それだけですぐに商品価値が落ちてしまうわ」
成る程~。言ってる事は何となく分かる。
「人って良い話より悪い話の方が大好きだから、そういうネタはすぐにSNSで拡散されてしまう。その上沈静化しても、その拡散した痕跡は誰も消せないし消さない」
そう言って改めてアタシをジッと見る恩田社長。うっわ、真剣な目チョー怖いんだけど。
「ねえ。その彼氏君とは……」「別れませんよ」はっきりと言い切ったアタシ。マジな顔になったと思ったらそんな事言うか? 当ったり前じゃん。雄介はアタシの命より大事なんだから別れるわけないじゃん。
「そうよねえ。あなたの年頃の恋心って、真っすぐで純情でひたむきで。でも自分勝手で融通がきかない。だから手に負えないのよね」はあ、とため息つく恩田社長。
そこでアタシはある事に気づいた。もしかして……。
「あの、武智悠斗君って知ってます?」「え? ええ、知ってるわよ」
「……どうして知ってるんですか?」「どうしてって……。ああ、そうよね。毎朝美久があんな事してたら、疑問に思うのも当然よね。で、安川さんはどこまで美久から聞いてるの?」質問に質問返しされた。それにちょっとムッとしてしまう。聞いてんのこっちなんだけど?
「それは言えませんが、美久に武智君を嫌うようにしてるのって……」
「そうよ。私が指示したの。あの子実は、その武智って子に余計な感情を持とうとしたのよねえ」
はあ、やれやれ、と言った感じで首を振る恩田社長。やっぱ美久の気持ち知ってたんか。
「それがもし、武智君とやらの勘違いを産んで、彼がもし美久を気になって、美久も悪い気せず近づいたら、それこそスキャンダルの種だわ。だから、今後女優としてやっていくに当たって、自分の感情を押し殺し、嫌われるようになれば、きっと成長出来ると思ってね。あの子の余計な恋心を利用したのよ。どうせ付き合えやしないんだし」
そこでつい、我慢できなくなってバン、と机を思い切り叩いて立ち上がってしまった。この人、美久の想いを利用してたんだ。それだけじゃない。美久の想いを堰き止めてたんだ。美久の苦しみを増長させてたんだ。
「あら。何か怒らせるような事言ったかしら? ああ、もしかして彼氏の件? もう付き合ってしまってるなら仕方ないわね。じゃあスカウトの件、別れてからまた考えてくれたらいいわ」
……別れてから? 何言ってんのこの人? 何でそんな簡単そうに言うの?
「別れたらって……なんでそんな冷静なんすか?」「そりゃあ、大人ですもの」
立ち上がったまま怒り心頭のアタシを、どこか冷めた表情で見ながら、話し続ける恩田社長。
「あなたはまだ若いから分からないのよ。今の恋が大人になってまで続くだなんて事が妄想だって事をね。でも、それでいいのよ。子どもはね」
……何かムカつく。何その上から目線?
「それに美久の事だけど、あの子は大事な商品なの。あの子はこれから芸能界で大きく羽ばたき、素晴らしい栄光が待っている。それを青い恋心にほだされて、無駄にして欲しくないのよ……って、何言ってるのか分からないって顔してるわね」
淡々と話す恩田社長に、アタシは怒りで頭が沸騰しそうになっちゃった。もうブチ切れそう。
「お話終わったようなので失礼します」「そうね。理解して貰えなかったようで残念だけど。まあ、興味があったら、そこの名刺に書いてあるところへ連絡くれるといいわ。勿論、親御さんとも相談してね。私の名刺が貰えるって、結構貴重なのよ」
きっとアタシの怒りは顔に出てるはず。しかもアタシ、我慢できずに睨んじゃってるし。なのにこの人、涼しい表情でニコニコしてる。
これ以上一緒にいると、この人に殴り掛かりそう。だからもう立ち去ろうと思った。そしてあからさまにお茶した分の伝票持ってさっさとレジに来ちゃった。……あー、もったいない! カッコつけちゃって失敗したあ! ここは子どもらしく奢って貰えばよかったかも。でも何だか、この人に奢って貰うの腹立つししゃーないかあ。
ファミレスから出たら、ヒュウと夏風がアタシを吹きつけた。それで少し頭が覚めたからか、あの人の言ってる事を振り返る。……確かにあの人の言ってる事は正論だ。でも、正論だけじゃ割り切れない想いってあるじゃん? それって結構重要じゃん? その正論のせいで、美久はあんなに泣いたんだから。
※※※
「えっと、この公式を使うんだよね?」「いや、これはこっちの方がいいよ」
成る程、といいながら、柊さんに指摘されたところを修正していく俺。早めに昼飯食って、もうそろそろ始まる定期テストのための勉強会を、建物そばの日陰でやってる最中だ。
上を見れば快晴で夏空が広がってる。既にセミがうるさく鳴いていて、日差しもかなりきつくて暑い。今年も猛暑になるって天気予報で言ってたなあ。本当はエアコンの効いた校舎の中で涼みたいんだけど。そしてさすがにこの時期、あの色んな道具が置いてある建物の中に入るのは無理。きっと蒸し風呂状態だ。でも、その建物の影が、時々風が通り抜けるのもあって、思ったより心地よかったりする。ここ、結構過ごしやすいな。
「しっかしもう夏だなあ」「フフ。どうしたの急に?」
「いやあ、テスト終わったらさあ、今度は空手の大会があるんだよな」「あ、そっか。忙しいんだね」
もう六月も下旬に近づいてきた頃だから、このテストが終われば、空手部の練習がより一層ハードになる。それでも、バイトはいつも通り行くんだけどな。夏休み終わったらバイト辞めるから、マスターにはずっとお世話になってた事もあって、出来るだけ休みたくないんだよね。
「……観に行きたいな」「え?」
「空手の試合。そういうの観た事ないから」「あ、そ、そう?」
びっくりした。俺を観に行きたいのかと一瞬思ってしまったよ。ハハ、まあそんなわけないわな。最近かなり気を許してしまってるから、気をつけないと。最近は朝の嫌われ演技も、もう阿吽の呼吸みたいになってて、すぐ返せるようになってきてんだよな。
「それに……。武智君が、観てみたいかな」「え?」
顔を真っ赤にしながら俺を見つつ、とんでもない事言った柊さん。びっくりしてつい「なんで?」と聞いてしまった。そりゃそうだ。
「それは……、内緒」顔が赤いままフフっといたずらっぽく笑う柊さん。ああもう。またも心臓がバックンと跳ね上がっちゃったよ。本当もうこの人、心臓に悪い。とにかく可愛すぎる。
「へいへーい、ちょっと良いかいそこのカップル!」「「え?」」そこへ突如、聞き慣れた声。……安川さん?
※※※
「カップルなんて言わないでほしいんだけど。柊さん迷惑だろうし」「んー? 美久迷惑だった?」
「え? あ……」と言ったまま俯いて黙る柊さん。おいこらちょっと! 黙ってないで否定してくれよ! 勘違いされるから!
どうやら安川さんは一人で屋上まで来たようだけど、いつもセットの雄介が見当たらない。どうしたんだろ?
「まあとにかくさあ。ちょっと美久と話あんの」「あ、そう? じゃあ俺退散するわ」
「いや。たけっちーもここにいて」「え? あ、はい」たけっちー? いつからそんな呼び方されるようになったんだ?
まあ、俺も居なくちゃいけないらしいので座り直す。つか安川さん、腰に手を当て仁王立ちでふんぞり返って、何だか怒ってる?で、その様子を見た柊さんは、どうやら安川さんが何故怒ってるか分かってるっぽい。
「明歩。怒ってるね」「うん。怒ってるね」
「分かってるよ。恩田さんに会ったんでしょ? 本当は、私から説明しなきゃいけなかったんだけど」「そこはどうでもいい」
そして安川さんはガッと柊さんの肩を力強く掴んだ。何だか目が潤んでる? ……オンダさん? って誰だろ?
「美久さあ、あんた本当に苦しかったでしょ? 恩田社長から全部聞いたよ? アタシ、力になってあげれなくてごめんね」そう言って柊さんをギュッと抱きしめた安川さん。え? どういう事? オンダ社長? とか言ってた?
「明歩……。いいのよ気にしてない」「いいや! アタシは美久のダチだから!」
そしてグス、ヒックと泣き出しながら安川さんはずっとごめん、ごめんと言ってる。柊さんも徐々に目を潤ませてるし。……これは一体どういう状況なんだろ? 何だか二人で分かち合ってるっぽいし。つか、俺要らなくね?
「ねえ美久。もうたけっちーに話しちゃいな」「え? で、でも……」
「あんたの気持ち、どうすんの? このままでいいの?」「え? そ、その事?」
「じゃあその事はいいから、演技の事くらいは話しな」「……」
涙目の安川さんが真剣な顔で柊さんを説得するように見つめながら話してる。柊さんは安川さんの目が見れないようで、俯いちゃった。……朝の嫌われ演技の事、教えてくれるって事なのか。でもなんで、二人して泣いてんだろ?
0
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説
百合系サキュバス達に一目惚れされた
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
ONE WEEK LOVE ~純情のっぽと変人天使の恋~
mizuno sei
青春
永野祐輝は高校3年生。プロバスケットの選手を目指して高校に入学したが、入学早々傷害事件を起こし、バスケット部への入部を拒否されてしまった。
目標を失った彼は、しばらく荒れた生活をし、学校中の生徒たちから不良で怖いというイメージを持たれてしまう。
鬱々とした日々を送っていた彼に転機が訪れたのは、偶然不良に絡まれていた男子生徒を助けたことがきっかけだった。その男子生徒、吉田龍之介はちょっと変わってはいたが、優れた才能を持つ演劇部の生徒だった。生活を変えたいと思っていた祐輝は、吉田の熱心な勧誘もあって演劇部に入部することを決めた。
それから2年後、いよいよ高校最後の年を迎えた祐輝は、始業式の前日、偶然に一人の女子生徒と出会った。彼女を一目見て恋に落ちた祐輝は、次の日からその少女を探し、告白しようと動き出す。
一方、その女子生徒、木崎真由もまた、心に傷とコンプレックスを抱えた少女だった。
不良の烙印を押された不器用で心優しい少年と、コンプレックスを抱えた少女の恋にゆくへは・・・。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
どうしてもモテない俺に天使が降りてきた件について
塀流 通留
青春
ラブコメな青春に憧れる高校生――茂手太陽(もて たいよう)。
好きな女の子と過ごす楽しい青春を送るため、彼はひたすら努力を繰り返したのだが――モテなかった。
それはもうモテなかった。
何をどうやってもモテなかった。
呪われてるんじゃないかというくらいモテなかった。
そんな青春負け組説濃厚な彼の元に、ボクッ娘美少女天使が現れて――
モテない高校生とボクッ娘天使が送る青春ラブコメ……に見せかけた何か!?
最後の最後のどんでん返しであなたは知るだろう。
これはラブコメじゃない!――と
<追記>
本作品は私がデビュー前に書いた新人賞投稿策を改訂したものです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
コミュ障な幼馴染が俺にだけ饒舌な件〜クラスでは孤立している彼女が、二人きりの時だけ俺を愛称で呼んでくる〜
青野そら
青春
友達はいるが、パッとしないモブのような主人公、幸田 多久(こうだ たく)。
彼には美少女の幼馴染がいる。
それはクラスで常にぼっちな橘 理代(たちばな りよ)だ。
学校で話しかけられるとまともに返せない理代だが、多久と二人きりの時だけは素の姿を見せてくれて──。
これは、コミュ障な幼馴染を救う物語。
毎日更新します。
冬の水葬
束原ミヤコ
青春
夕霧七瀬(ユウギリナナセ)は、一つ年上の幼なじみ、凪蓮水(ナギハスミ)が好き。
凪が高校生になってから疎遠になってしまっていたけれど、ずっと好きだった。
高校一年生になった夕霧は、凪と同じ高校に通えることを楽しみにしていた。
美術部の凪を追いかけて美術部に入り、気安い幼なじみの間柄に戻ることができたと思っていた――
けれど、そのときにはすでに、凪の心には消えない傷ができてしまっていた。
ある女性に捕らわれた凪と、それを追いかける夕霧の、繰り返す冬の話。
Hand in Hand - 二人で進むフィギュアスケート青春小説
宮 都
青春
幼なじみへの気持ちの変化を自覚できずにいた中2の夏。ライバルとの出会いが、少年を未知のスポーツへと向わせた。
美少女と手に手をとって進むその競技の名は、アイスダンス!!
【2022/6/11完結】
その日僕たちの教室は、朝から転校生が来るという噂に落ち着きをなくしていた。帰国子女らしいという情報も入り、誰もがますます転校生への期待を募らせていた。
そんな中でただ一人、果歩(かほ)だけは違っていた。
「制覇、今日は五時からだから。来てね」
隣の席に座る彼女は大きな瞳を輝かせて、にっこりこちらを覗きこんだ。
担任が一人の生徒とともに教室に入ってきた。みんなの目が一斉にそちらに向かった。それでも果歩だけはずっと僕の方を見ていた。
◇
こんな二人の居場所に現れたアメリカ帰りの転校生。少年はアイスダンスをするという彼に強い焦りを感じ、彼と同じ道に飛び込んでいく……
――小説家になろう、カクヨム(別タイトル)にも掲載――
黄昏は悲しき堕天使達のシュプール
Mr.M
青春
『ほろ苦い青春と淡い初恋の思い出は・・
黄昏色に染まる校庭で沈みゆく太陽と共に
儚くも露と消えていく』
ある朝、
目を覚ますとそこは二十年前の世界だった。
小学校六年生に戻った俺を取り巻く
懐かしい顔ぶれ。
優しい先生。
いじめっ子のグループ。
クラスで一番美しい少女。
そして。
密かに想い続けていた初恋の少女。
この世界は嘘と欺瞞に満ちている。
愛を語るには幼過ぎる少女達と
愛を語るには汚れ過ぎた大人。
少女は天使の様な微笑みで嘘を吐き、
大人は平然と他人を騙す。
ある時、
俺は隣のクラスの一人の少女の名前を思い出した。
そしてそれは大きな謎と後悔を俺に残した。
夕日に少女の涙が落ちる時、
俺は彼女達の笑顔と
失われた真実を
取り戻すことができるのだろうか。
田中天狼のシリアスな日常
朽縄咲良
青春
とある県の平凡な県立高校「東総倉高等学校」に通う、名前以外は平凡な少年が、個性的な人間たちに翻弄され、振り回され続ける学園コメディ!
彼は、ごくごく平凡な男子高校生である。…名前を除けば。
田中天狼と書いてタナカシリウス、それが彼の名前。
この奇妙な名前のせいで、今までの人生に余計な気苦労が耐えなかった彼は、せめて、高校生になったら、平凡で平和な日常を送りたいとするのだが、高校入学後の初動に失敗。
ぼっちとなってしまった彼に話しかけてきたのは、春夏秋冬水と名乗る、一人の少女だった。
そして彼らは、二年生の矢的杏途龍、そして撫子という変人……もとい、独特な先輩達に、珍しい名を持つ者たちが集まる「奇名部」という部活への起ち上げを誘われるのだった……。
・表紙画像は、紅蓮のたまり醤油様から頂きました!
・小説家になろうにて投稿したものと同じです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる