何故か超絶美少女に嫌われる日常

やまたけ

文字の大きさ
上 下
25 / 130

その二十五

しおりを挟む
 ※※※

「あ! 武智君! 来てくれたんだね」「そりゃ、約束してたしね」

 ありがとう、と超絶美少女スマイルで、とても嬉しそうに笑顔を振りまく柊さん。あーもう、その笑顔にまたもドキっとしてしまったよ。この人、朝の時とは完全に別人だなあほんと。こんなニコニコするんだもんなあ。

 今日は久々屋上で昼飯食う事になって雄介と共にやってきていた。なんと柊さん、雄介と安川さん、更に俺の分の弁当を作ってくれたそう。昨日、雄介から事前に聞いてたので、今日は弁当を持ってきていない。安川さんから雄介を経由して聞いたところによると、本来は俺だけに作りたかったみたいだけど、皆もいるからついでに皆の分も作るって言ってたらしい。

 どういう事? と俺は目が点になってしまったけど、雄介いわく、朝の儀式の件で迷惑かけてるから、そのお詫びなんだと。成る程ね。ちょっとびっくりした。

 ……いやいや。俺に気がある、なんて勘違いしないよ? ……うん、しないしない。あれだけの美人が、俺みたいな凡人に惚れるわけないから。

 とにかくこうやって屋上に集まる事ができたのも、テストが終わり日常が戻ってきたからだ。そしてもう少しすれば高校生の一大イベントの一つ、修学旅行が控えてる。でもまあ、俺は正直どうでもいい。この学校に好きな子いないしね。クラスメイトと馬鹿騒ぎして終わりだろう。一番仲いい雄介は、安川さんとずっと一緒にいそうだし、更に今以上に進展しそう。本当、羨ましい。

 因みにテスト結果は、俺が高校に入って初めてTOP20から落ちた。そりゃ疋田さんの事ずっと引きずってたんだから仕方ない。でもまあ母さんにはかなり怒られた。バイト辞めさせるだの、空手辞めて今から塾行けだの、やっぱり特進科行ってれば良かったのよ、等々。

 ……ま、正直バイトは辞めてもいいんだけどな。疋田さんいないし行っても楽しくないし。そもそも俺がバイトしてるのって、大学入った時の足しにしようと思って始めたんだけど、既に結構な金額貯めてるし。まあ、マスターには一度辞めると言って辞めなかった経緯もあって、日頃色々お世話になってる恩義もあるから、結局夏休みまで続けるだろうけど。

 特進科に行かなかったのは、授業時間が伸びるからだ。そうなりゃ空手やバイトが出来なくなるし、何より雄介がいないってのも大きい。それだけ理由が揃えば、俺にとっちゃ魅力ないもんな。

「武智君? 時間無くなっちゃうよ?」「あ、はい」

 しかしまあ、柊さんえらくご機嫌だな。そして今日も前回と同じく、申し訳ないけど柊さんの横に座る。向かい側には仲良く二人並んだカップルさん。見せつけてんの? せめて学校いる時くらいは遠慮しろよな。ったく。

 こっちは疋田さんから連絡くるかどうか分からず、悶々としてんのにさ。まあ、雄介にはまだ話してないからその事知らない。だから俺に対して気遣いないのは仕方ないんだけど。

 そんな事を考えてるうちに、柊さんが手際よく、準備していたらしい箸と紙皿を配って、それからお重箱を出した。……お重箱? それを見た雄介と安川さんも、さすがに目を丸くしてる。

「いや美久さあ。本気過ぎない?」「え? そうかな? 男の子二人いるし、結構食べるかなあ、と思ったらこれくらいになっちゃった」

 安川さんに突っ込まれ、テヘヘと舌をぺろっと出し、頭を掻く柊さん。また無駄にその様子も可愛らしい。ただの普通の仕草なのに、柊さんがやると全然違って見えるのが凄い。でもまあ、朝の柊さんより、今のほうが相当良いけどな。

「とにかく頂こうぜ」そう言って遠慮なく雄介が箸をつけたところで、皆も一斉に箸を伸ばした。

 ※※※

「柊さんってスーパーウーマンなの?」「え? 何それ?」

「いやだって、めちゃくちゃ美味かったよ?」「お口にあったみたいで良かった。でもそれとスーパーウーマンがどう繋がるの?」

「頭いいし、運動神経いいし、料理うまいし、美人だし」って、しまった、美人ってつい言っちゃった。それを聞いた柊さんが、フイとうつむき、小さな声でありがとう、と呟いたのが聞こえた。

「あ、えと、ごめん。やましい気持ちじゃなくって」「うん。分かってる。でもありがとう」そう言って顔を赤らめながら俺を見つめお礼を言う柊さん。……吸い込まれそうなやや切れ長の目に黒い瞳。そしてまたもやドキっとする俺。

 もうこの人美人すぎて嫌だ。そしてつい沈黙してしまう俺と柊さん。その様子を雄介と安川さんがニヤニヤしながら見てる。

「……何だよ?」「え? 何にも?」俺の気持ちを知らない雄介に、若干イラっとしながらもやや声を荒げてしまう俺。とにかく俺は、空いた皿や箸を片付け始める。いいよ置いといて、と柊さんが言うけど、何となく居たたまれなくなったから動いただけだったりする。まあ、後片付けはバイトで慣れてるから、自然に動いたのも事実だけど。

 そして片付け終わり、そろそろ昼休み終了五分前の鐘が鳴るかなあ、とか考えてたら、柊さんが俺の肩をちょんちょんとした。

「どうしたの?」「あ、あのね? またこうやってご飯食べれるかな?」

「雄介と安川さんがいいなら大丈夫なんじゃない?」「そ、そうだよね」

 何だかもじもじしている柊さん。その仕草も……ってもういいや。とにかく、美人は何しても絵になる事が良く分かった。

「ああそうだ。雄介さあ。修学旅行はやっぱり安川さんと一緒なんだろ?」「やっぱり言うな。まあそうだろうけどな」

 ほうらやっぱりそうじゃねーか。そして安川さんが嬉しそうに雄介の腕に絡まってる。わざと見せつけてんのかな? ちょっと安川さんにもイラっとしてしまったよ。

「柊さんは」「あ。私は多分、行けない……」

 そうなんだ、と言おうとしたら、明らかに悲しそうな顔をした柊さんを見て、それ以上何も言えなかった。きっと行きたいだろうに事情があるっぽい。

 柊さんって秘密多いけど、何だか一人であれこれ抱えているみたいで、ちょっと可哀想な気がした。

※※※

「よう、おはよう」「ああ」

「元気ねぇな。なんかあったか?」「……まあな」

 そうか、と呟いた後、それ以上は何も言わず黙ってしまった雄介。毎度の朝の自転車通学、こうして毎度の事だけど、雄介が俺に声を掛けてきたわけだが、俺は余り気分がよろしくない。

「じゃあ今日は昼飯一緒に食おうぜ」「え? 安川さんはいいのかよ?」

「一日くらいどうって事ないって。それに、おまえのそんな顔見てたらほっとけないしな」ニッコリ、イケメンスマイルを俺に浴びせながら、雄介は自転車のペダルに力を込め、先に行った。……最近幸せだからって、俺にまでそんな笑顔見せんなよ。でもまあ、ありがとな、雄介。

 ※※※

 久々に雄介と二人で弁当を食っているが、今日は教室ではなく体育館の側にあるベンチに座ってる。もうすぐ六月。さすがに日差しは強く暑い。そろそろ蝉の鳴き声が聞こえてきそうなくらいの勢いで、太陽が光り輝いてる。なので俺達は日差しを避けるために、日陰のあるベンチを選んでるわけだが。

そして俺は、飯を食いながら、疋田さんとのやり取りを雄介に話した。

「そんな事になってたのか。悠斗、ずっと辛い状況だったんだな。話聞いてやれなくて悪かったよ」

「いやいいよ。雄介は安川さんとうまくいってるみたいだし。良かったじゃん」

 まあな、と嬉しそうに答える雄介。正直羨ましい。でも雄介が嬉しいのは俺も嬉しい。それも本音だ。

「で、どうすんだ?」「疋田さんからの連絡を待って、ちゃんと会って気持ち伝えるつもり」

「……もし連絡来なかったら?」「それが返事って思うようにするよ」

 そうか、と視線を落とす雄介。

「なあ。お前、柊さんどう思うよ?」「は? 柊さん? どう思うって、そりゃあ……」超絶美少女だ、とは思ってるけど?

「まあ正直、全然知らないからなあ。何とも」

「明歩から聞いてんだけど、柊さんってああ見えて凄い純情なんだってよ。同じく純情な悠斗となら、うまくいくんじゃね?」

「はあ?」雄介何言ってんの?

「俺が釣り合うわけないだろ? つか、そもそも柊さんが俺なんか相手にするわけないだろ」

「そうかなあ? こないだ屋上で柊さんが弁当作って持ってきて一緒に食った時は、結構いい雰囲気だったぞ?」

 雄介。それはさすがに無神経だぞ。普段温厚な俺もイラッとしてしまった。

「あのなあ、疋田さんの事が未だはっきりしてないのな? なのに他の女の子の事、考えるわけねーだろ?」やや怒りが籠もった声で雄介をたしなめるように低い声で言う俺。

「そりゃそうだな。悪かった」「ああ。今のはお前が悪いな」

 雄介も俺の雰囲気に気づいたようで、頭を掻きつつ謝った。つか、いきなり何言い出すんだ雄介のやつ? ……まあでも、雄介はきっと、俺の事考えて言ってくれたんだろう。と言うか、柊さんと俺がいい雰囲気だった? そんな訳ないっつの。そもそも、柊さんが俺なんか相手にするはずないだろ。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

自称未来の妻なヤンデレ転校生に振り回された挙句、最終的に責任を取らされる話

水島紗鳥
青春
成績優秀でスポーツ万能な男子高校生の黒月拓馬は、学校では常に1人だった。 そんなハイスペックぼっちな拓馬の前に未来の妻を自称する日英ハーフの美少女転校生、十六夜アリスが現れた事で平穏だった日常生活が激変する。 凄まじくヤンデレなアリスは拓馬を自分だけの物にするためにありとあらゆる手段を取り、どんどん外堀を埋めていく。 「なあ、サインと判子欲しいって渡された紙が記入済婚姻届なのは気のせいか?」 「気にしない気にしない」 「いや、気にするに決まってるだろ」 ヤンデレなアリスから完全にロックオンされてしまった拓馬の運命はいかに……?(なお、もう一生逃げられない模様) 表紙はイラストレーターの谷川犬兎様に描いていただきました。 小説投稿サイトでの利用許可を頂いております。

勇者の日常!

モブ乙
青春
VRゲームで勇者の称号を持つ男子高校生の日常を描きます

食いしん坊な親友と私の美味しい日常

†漆黒のシュナイダー†
青春
私‭――田所が同級生の遠野と一緒に毎日ご飯を食べる話。

ONE WEEK LOVE ~純情のっぽと変人天使の恋~

mizuno sei
青春
 永野祐輝は高校3年生。プロバスケットの選手を目指して高校に入学したが、入学早々傷害事件を起こし、バスケット部への入部を拒否されてしまった。  目標を失った彼は、しばらく荒れた生活をし、学校中の生徒たちから不良で怖いというイメージを持たれてしまう。  鬱々とした日々を送っていた彼に転機が訪れたのは、偶然不良に絡まれていた男子生徒を助けたことがきっかけだった。その男子生徒、吉田龍之介はちょっと変わってはいたが、優れた才能を持つ演劇部の生徒だった。生活を変えたいと思っていた祐輝は、吉田の熱心な勧誘もあって演劇部に入部することを決めた。  それから2年後、いよいよ高校最後の年を迎えた祐輝は、始業式の前日、偶然に一人の女子生徒と出会った。彼女を一目見て恋に落ちた祐輝は、次の日からその少女を探し、告白しようと動き出す。  一方、その女子生徒、木崎真由もまた、心に傷とコンプレックスを抱えた少女だった。  不良の烙印を押された不器用で心優しい少年と、コンプレックスを抱えた少女の恋にゆくへは・・・。

海になった友達

小紕 遥
青春
主人公は、友達が実は海になったという信じがたい状況に出くわす。夜の海辺で再び彼と語り合うことになった主人公は友達の言葉に戸惑いながらも、その奇妙な会話に引き込まれていく。友達は本当に海になったのか?

コミュ障な幼馴染が俺にだけ饒舌な件〜クラスでは孤立している彼女が、二人きりの時だけ俺を愛称で呼んでくる〜

青野そら
青春
友達はいるが、パッとしないモブのような主人公、幸田 多久(こうだ たく)。 彼には美少女の幼馴染がいる。 それはクラスで常にぼっちな橘 理代(たちばな りよ)だ。 学校で話しかけられるとまともに返せない理代だが、多久と二人きりの時だけは素の姿を見せてくれて──。 これは、コミュ障な幼馴染を救う物語。 毎日更新します。

Hand in Hand - 二人で進むフィギュアスケート青春小説

宮 都
青春
幼なじみへの気持ちの変化を自覚できずにいた中2の夏。ライバルとの出会いが、少年を未知のスポーツへと向わせた。 美少女と手に手をとって進むその競技の名は、アイスダンス!! 【2022/6/11完結】  その日僕たちの教室は、朝から転校生が来るという噂に落ち着きをなくしていた。帰国子女らしいという情報も入り、誰もがますます転校生への期待を募らせていた。  そんな中でただ一人、果歩(かほ)だけは違っていた。 「制覇、今日は五時からだから。来てね」  隣の席に座る彼女は大きな瞳を輝かせて、にっこりこちらを覗きこんだ。  担任が一人の生徒とともに教室に入ってきた。みんなの目が一斉にそちらに向かった。それでも果歩だけはずっと僕の方を見ていた。 ◇ こんな二人の居場所に現れたアメリカ帰りの転校生。少年はアイスダンスをするという彼に強い焦りを感じ、彼と同じ道に飛び込んでいく…… ――小説家になろう、カクヨム(別タイトル)にも掲載――

処理中です...