何故か超絶美少女に嫌われる日常

やまたけ

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その二十五

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 ※※※

「あ! 武智君! 来てくれたんだね」「そりゃ、約束してたしね」

 ありがとう、と超絶美少女スマイルで、とても嬉しそうに笑顔を振りまく柊さん。あーもう、その笑顔にまたもドキっとしてしまったよ。この人、朝の時とは完全に別人だなあほんと。こんなニコニコするんだもんなあ。

 今日は久々屋上で昼飯食う事になって雄介と共にやってきていた。なんと柊さん、雄介と安川さん、更に俺の分の弁当を作ってくれたそう。昨日、雄介から事前に聞いてたので、今日は弁当を持ってきていない。安川さんから雄介を経由して聞いたところによると、本来は俺だけに作りたかったみたいだけど、皆もいるからついでに皆の分も作るって言ってたらしい。

 どういう事? と俺は目が点になってしまったけど、雄介いわく、朝の儀式の件で迷惑かけてるから、そのお詫びなんだと。成る程ね。ちょっとびっくりした。

 ……いやいや。俺に気がある、なんて勘違いしないよ? ……うん、しないしない。あれだけの美人が、俺みたいな凡人に惚れるわけないから。

 とにかくこうやって屋上に集まる事ができたのも、テストが終わり日常が戻ってきたからだ。そしてもう少しすれば高校生の一大イベントの一つ、修学旅行が控えてる。でもまあ、俺は正直どうでもいい。この学校に好きな子いないしね。クラスメイトと馬鹿騒ぎして終わりだろう。一番仲いい雄介は、安川さんとずっと一緒にいそうだし、更に今以上に進展しそう。本当、羨ましい。

 因みにテスト結果は、俺が高校に入って初めてTOP20から落ちた。そりゃ疋田さんの事ずっと引きずってたんだから仕方ない。でもまあ母さんにはかなり怒られた。バイト辞めさせるだの、空手辞めて今から塾行けだの、やっぱり特進科行ってれば良かったのよ、等々。

 ……ま、正直バイトは辞めてもいいんだけどな。疋田さんいないし行っても楽しくないし。そもそも俺がバイトしてるのって、大学入った時の足しにしようと思って始めたんだけど、既に結構な金額貯めてるし。まあ、マスターには一度辞めると言って辞めなかった経緯もあって、日頃色々お世話になってる恩義もあるから、結局夏休みまで続けるだろうけど。

 特進科に行かなかったのは、授業時間が伸びるからだ。そうなりゃ空手やバイトが出来なくなるし、何より雄介がいないってのも大きい。それだけ理由が揃えば、俺にとっちゃ魅力ないもんな。

「武智君? 時間無くなっちゃうよ?」「あ、はい」

 しかしまあ、柊さんえらくご機嫌だな。そして今日も前回と同じく、申し訳ないけど柊さんの横に座る。向かい側には仲良く二人並んだカップルさん。見せつけてんの? せめて学校いる時くらいは遠慮しろよな。ったく。

 こっちは疋田さんから連絡くるかどうか分からず、悶々としてんのにさ。まあ、雄介にはまだ話してないからその事知らない。だから俺に対して気遣いないのは仕方ないんだけど。

 そんな事を考えてるうちに、柊さんが手際よく、準備していたらしい箸と紙皿を配って、それからお重箱を出した。……お重箱? それを見た雄介と安川さんも、さすがに目を丸くしてる。

「いや美久さあ。本気過ぎない?」「え? そうかな? 男の子二人いるし、結構食べるかなあ、と思ったらこれくらいになっちゃった」

 安川さんに突っ込まれ、テヘヘと舌をぺろっと出し、頭を掻く柊さん。また無駄にその様子も可愛らしい。ただの普通の仕草なのに、柊さんがやると全然違って見えるのが凄い。でもまあ、朝の柊さんより、今のほうが相当良いけどな。

「とにかく頂こうぜ」そう言って遠慮なく雄介が箸をつけたところで、皆も一斉に箸を伸ばした。

 ※※※

「柊さんってスーパーウーマンなの?」「え? 何それ?」

「いやだって、めちゃくちゃ美味かったよ?」「お口にあったみたいで良かった。でもそれとスーパーウーマンがどう繋がるの?」

「頭いいし、運動神経いいし、料理うまいし、美人だし」って、しまった、美人ってつい言っちゃった。それを聞いた柊さんが、フイとうつむき、小さな声でありがとう、と呟いたのが聞こえた。

「あ、えと、ごめん。やましい気持ちじゃなくって」「うん。分かってる。でもありがとう」そう言って顔を赤らめながら俺を見つめお礼を言う柊さん。……吸い込まれそうなやや切れ長の目に黒い瞳。そしてまたもやドキっとする俺。

 もうこの人美人すぎて嫌だ。そしてつい沈黙してしまう俺と柊さん。その様子を雄介と安川さんがニヤニヤしながら見てる。

「……何だよ?」「え? 何にも?」俺の気持ちを知らない雄介に、若干イラっとしながらもやや声を荒げてしまう俺。とにかく俺は、空いた皿や箸を片付け始める。いいよ置いといて、と柊さんが言うけど、何となく居たたまれなくなったから動いただけだったりする。まあ、後片付けはバイトで慣れてるから、自然に動いたのも事実だけど。

 そして片付け終わり、そろそろ昼休み終了五分前の鐘が鳴るかなあ、とか考えてたら、柊さんが俺の肩をちょんちょんとした。

「どうしたの?」「あ、あのね? またこうやってご飯食べれるかな?」

「雄介と安川さんがいいなら大丈夫なんじゃない?」「そ、そうだよね」

 何だかもじもじしている柊さん。その仕草も……ってもういいや。とにかく、美人は何しても絵になる事が良く分かった。

「ああそうだ。雄介さあ。修学旅行はやっぱり安川さんと一緒なんだろ?」「やっぱり言うな。まあそうだろうけどな」

 ほうらやっぱりそうじゃねーか。そして安川さんが嬉しそうに雄介の腕に絡まってる。わざと見せつけてんのかな? ちょっと安川さんにもイラっとしてしまったよ。

「柊さんは」「あ。私は多分、行けない……」

 そうなんだ、と言おうとしたら、明らかに悲しそうな顔をした柊さんを見て、それ以上何も言えなかった。きっと行きたいだろうに事情があるっぽい。

 柊さんって秘密多いけど、何だか一人であれこれ抱えているみたいで、ちょっと可哀想な気がした。

※※※

「よう、おはよう」「ああ」

「元気ねぇな。なんかあったか?」「……まあな」

 そうか、と呟いた後、それ以上は何も言わず黙ってしまった雄介。毎度の朝の自転車通学、こうして毎度の事だけど、雄介が俺に声を掛けてきたわけだが、俺は余り気分がよろしくない。

「じゃあ今日は昼飯一緒に食おうぜ」「え? 安川さんはいいのかよ?」

「一日くらいどうって事ないって。それに、おまえのそんな顔見てたらほっとけないしな」ニッコリ、イケメンスマイルを俺に浴びせながら、雄介は自転車のペダルに力を込め、先に行った。……最近幸せだからって、俺にまでそんな笑顔見せんなよ。でもまあ、ありがとな、雄介。

 ※※※

 久々に雄介と二人で弁当を食っているが、今日は教室ではなく体育館の側にあるベンチに座ってる。もうすぐ六月。さすがに日差しは強く暑い。そろそろ蝉の鳴き声が聞こえてきそうなくらいの勢いで、太陽が光り輝いてる。なので俺達は日差しを避けるために、日陰のあるベンチを選んでるわけだが。

そして俺は、飯を食いながら、疋田さんとのやり取りを雄介に話した。

「そんな事になってたのか。悠斗、ずっと辛い状況だったんだな。話聞いてやれなくて悪かったよ」

「いやいいよ。雄介は安川さんとうまくいってるみたいだし。良かったじゃん」

 まあな、と嬉しそうに答える雄介。正直羨ましい。でも雄介が嬉しいのは俺も嬉しい。それも本音だ。

「で、どうすんだ?」「疋田さんからの連絡を待って、ちゃんと会って気持ち伝えるつもり」

「……もし連絡来なかったら?」「それが返事って思うようにするよ」

 そうか、と視線を落とす雄介。

「なあ。お前、柊さんどう思うよ?」「は? 柊さん? どう思うって、そりゃあ……」超絶美少女だ、とは思ってるけど?

「まあ正直、全然知らないからなあ。何とも」

「明歩から聞いてんだけど、柊さんってああ見えて凄い純情なんだってよ。同じく純情な悠斗となら、うまくいくんじゃね?」

「はあ?」雄介何言ってんの?

「俺が釣り合うわけないだろ? つか、そもそも柊さんが俺なんか相手にするわけないだろ」

「そうかなあ? こないだ屋上で柊さんが弁当作って持ってきて一緒に食った時は、結構いい雰囲気だったぞ?」

 雄介。それはさすがに無神経だぞ。普段温厚な俺もイラッとしてしまった。

「あのなあ、疋田さんの事が未だはっきりしてないのな? なのに他の女の子の事、考えるわけねーだろ?」やや怒りが籠もった声で雄介をたしなめるように低い声で言う俺。

「そりゃそうだな。悪かった」「ああ。今のはお前が悪いな」

 雄介も俺の雰囲気に気づいたようで、頭を掻きつつ謝った。つか、いきなり何言い出すんだ雄介のやつ? ……まあでも、雄介はきっと、俺の事考えて言ってくれたんだろう。と言うか、柊さんと俺がいい雰囲気だった? そんな訳ないっつの。そもそも、柊さんが俺なんか相手にするはずないだろ。

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