何故か超絶美少女に嫌われる日常

やまたけ

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その六

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「ヒソヒソ」「ヒソヒソ」

「はあ。やっぱりこうなっちまったか」あちこちから俺に怪訝な視線を送ってくるクラスメイト達。

「なあ悠斗。もしかして……」

「ああ。言い返しちまった」

 俺の返事を聞いた雄介はあちゃー、と手のひらをおでこに当ててやっちまったなぁ~、てポーズを取る。

「俺も一杯一杯だったんだよ。それでも結構頑張ったほうだぞ?」

「そうだな。確か半年前くらいだっけ? 始まったの」

 そんなもんだな、と雄介に返事しながら、未だ俺を見ながら周辺でヒソヒソやってる奴らから、視線を逸らすように机にうつ伏せる俺。

 そこへ、俺達のいる教室に数人の男女含めた奴らがずかずかと入ってきた。あー、もう来たのかよ。せめて昼飯時だと思ってたのに。始業前に行動するかあ? 素早すぎんだろ。

「おい。ちょっとツラ貸せや」その中のうちのガタイのいい野郎が、俺に偉そうに声を掛けてくる。俺は昨日の事があってそっとしといてほしいのにさ。だから流石にイラっとして立ち上がって睨み返した。

「これから授業始まんのに、ツラ貸せってどういう事だよ?」

「授業? んなもん関係あるか」そう言いながら机の角をガンと蹴るガタイのいい男。ふーん、俺に喧嘩売ってんのかこいつ。

「あーもうやめとけやめとけ!」そこで雄介が仲裁に入る。そしてガタイのいい男を雄介がチラリと見ながら、

「お前さあ、こいつがあの武智悠斗って知っててそんな態度とってんの?」と、そっと耳打ちしてる雄介。俺に丸聞こえだし、そもそもその制止の仕方はどうなんだ?

「え! こ、こいつ武智なのかよ?」そこでざわつく入ってきた奴ら。

「二年生で空手の県大会で準優勝した、あの?」その中の一人の女子が、俺の過去の大会の成績を呟いた。

 おい、不味いぞ、でもよおこのまま放っておくわけには、で、どうするんの? と、何やらやいやいやりあってるけど、どっちにしろこれから授業始まるんだからさっさと出てって欲しい。クラスの皆も無駄に注目してやがるし。あーもう、仕方ないなあ。

「話あんなら俺から行ってやる。今は帰ったほうがいいんじゃねーの?」ため息交じりで俺がそう言ったところで、担任の先生が入ってきた。

「後で俺達の部室へ来い。約束破んなよ」舌打ちしながらそう言って、奴らは教室から退散していった。

「悠斗大丈夫かよ」「さあな」

 暴力沙汰は勘弁してほしいが、まあ、俺を相手にそんなバカな事はやらかさないだろうし。なるようになるだろ。

 ※※※

「はーあぁ」とある部室の入り口前で、深い深いため息を吐く俺。約束したものの、なんで俺わざわざここに来てんだろ? 入ったところでどうせトラブルになるの分かってるし。正直相当面倒臭ぇ。ここに来るせいで、今日の部活も遅れる事になったし。

「さっさと済ませた方がいいか」そう独り言を呟いて、意を決して入り口をトントン、とノックする。入り口には「アイドル研究部」の張り紙。

「どうぞ」中から声が聞こえたので、ガララと引き戸の入り口を開け中に入った。今朝うちのクラスにやって来た全員が揃ってるっぽい。

「さすが空手部県大会準優勝の武智君だな。約束通り来たじゃねーか」

 嫌味ったらしく声かけるガタイのいい、こいつは確かラグビー部主将の飯塚だったような? ……そういやこいつ、なんでここにいんの? つーか、そもそも空手部とか県大会準優勝とか、約束守るのに関係ねーだろ。

「ここに呼ばれた理由分かってるわよね?」メガネをくいと上げながら、ポニーにした黒髪をファサァとなびかせ、腕組みして偉そうに語るこの女子生徒は、確か生徒会長の綾邉だ。って、なんでこいつもここにいんの?

「つか、二人共ここの部員なのか?」ここは確かアイドル研究部の部室。入り口にそう張り紙が貼ってあったから間違いない。そして俺達の高校では部活を二個以上やっちゃいけない事になってる。生徒会は確か、部活免除されてるはずだし。

 他にも、適当に並べられた椅子に座っている男女が総勢八人程いるが、皆確か何処かの部活所属のはず。

「武智知らないの? アイドル研究部は実質廃部状態なのよ。だからこの部は存在していないのと同じようなもんよ」不思議そうな顔をしている俺に、綾邉が説明したが、益々「???」となってしまう俺。

「察しの悪い奴だな。この部室は単に俺達の拠点として使ってるだけなんだよ。のメンバーの拠点としてな」

 あー、そういう事ね。飯塚の説明で納得した俺。アイドル研究部はカモフラージュなのか。


 ※※※

「そもそも、美久様にああやって毎日絡まれている事自体、相当羨ましいのに、今日のあの態度は何なの?」

「知らねぇよ」美久様って……。綾邉同い年だろ?

「んだとぉ? おい武智。お前ちょっと強ぇからって調子乗ってんなよ?」

「調子に乗ってねぇし」そんなムキになるなよな……。ああん? て顎しゃくるな鬱陶しい。

 他からもやいやい言われてウザイなあと思ってる俺。因みにこいつら柊美久ファンクラブは、この学校では新一年生含め知らない奴はいない程有名だ。

 柊美久。彼女はここK市一の美少女として有名だ。容姿端麗成績優秀、スポーツ万能という、どこかのラノベのヒロインのような、非現実な存在。それが柊さんだ。こんな彼女だから当たり前のように学校でファンクラブが結成され、その動向を写真に収めたり、柊さんの友達を捕まえてインタビューして広報誌作ったりと、正にファンクラブさながらの活動をしてる。しかも人数は百人を越えてるとか聞いた事がある。……もう既にアイドルみたいなもんだ。

 あれだけの美貌なので、芸能事務所からのオファーも普通にあって、彼らも柊さんの動向を知るべく、このファンクラブからあれこれ情報を貰ってるって噂は聞いた事がある。……そんな訳あるかよ、と普通なら思うけど、柊さんならあり得そうだと思えるのがまた恐ろしいと言うか。それくらい現実離れしてんだよな。

 学校としてはそんなクラブ当然許可出来るわけもないから、このファンクラブは学校非公認。だが、このアイドル研究部をカモフラージュとして使ってたみたいだな。俺も今初めて知った。一応アイドル研究部正規の部員もいるようだけど、さっきから様子見てたら、メインとなって動いてるのはこの飯塚と綾邉のようだな。

「まあ、今日呼び出したのは他にも聞きたい事があったのよ」一通り俺への罵声が済んだ後、綾邉がおもむろに俺に話しかけた。

「あんた、なんであんなに美久様に構って貰えてるの?」羨ましい、と小さく怨念のように呟きながら。

「構って貰ってるってより、嫌われてんだろ? やたら絡んでくるしさ」

「だから、その絡んでくる理由は何だって聞いてんだよ!」ドン、と苛立つように机を叩く飯塚。そんな怒る事かよ……。

「知らねぇよ」

「そんな訳あるか」

「本当に知らねぇんだよ」

「何か隠してるんじゃないだろうな?」

「あのなぁ、言っとくけど俺、柊さんに何の興味もないからな」

 その一言で、皆一斉にええ~、とさざ波のように引いて行く。バカじゃないの、あり得ない、お前は人か、等々、さっきとは違う罵声が始まる。興味があったらあったで文句言うくせに、ないって言ったらこれかよ。どうしろってんだ。

「そもそも俺には、す、好きな子がいるんだよ」言ってる途中で恥ずかしくなった。なんで赤の他人のこいつらにこんな告白してんだ?

 ……しかも失恋したとこなのに。

 俺の告白を聞いて一瞬シーンとなる部室内。それも恥ずかしいが、綾邉がコホンと咳払いして沈黙を破る。

「とにかく、美久様に構って貰ってるあんたは、これまで通り対応しなさい」

「言われなくてもそうする」

 だって、そうしないと大変な事になるの、知ってるからな。

 俺の告白のお陰か、今日はこれで解放して貰えた。もっと揉めるかと思ったけどとりあえずホッとした。

「つーか、正直相当面倒臭ぇ」アイドル研究部の部室を出た後、俺は本音を呟いて、急いで空手部の部室へ急いだ。
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