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ラストは、と彼は言った
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「これからさ、この町は崩壊する」
町の中でも一等高いビルの屋上で、その町を見下ろしながら彼は言った。
「崩壊?」
「そう、崩壊」
「なんで?」
「そう決まってるからさ」
首を傾げて問いかけたら、にっこりと柔らかく笑顔を作りながら、ゆったりとした口調で返された。
「シナリオがある。まず、ここに人が入ってくる」
彼は下を指さす。
「ここは豊かな土地だ。交通の便もいい。人が住んで村が出来、その村は町となり、どんどんと大きくなる」
発展してゆく。
「人は増え、人工物も増え、外との交流が増え」
増え、増え、増えて。
「膨れ上がり、限界を迎える」
町に、限界なんてものがあるんだろうか。でも、彼が言うならあるんだろう。
「そして、限界を迎えたのが、“今”だ」
風が吹いてきた。少し寒い。
「さて、そこからどう崩壊していくか」
遠くで、何かのざわめきが聞こえた気がした。
「河川が壊れる」
あれは、川の方。
「土砂が流入してくる」
ざわめきが、悲鳴が、大きくなっていく。
「あそこにデカい工場があるね。あれが爆発する」
赤い炎と、真っ黒な煙が見えた。
「上手い具合に、地盤にも罅が入る。そして──」
町の中でも一等高いビルの屋上で、その町を見下ろしながら彼は言った。
「崩壊?」
「そう、崩壊」
「なんで?」
「そう決まってるからさ」
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