落書き置き場

俺の家の宗教の話

　まず、『紫の極上華』という花がある。
　それは世界の端であり、また中心とされる場所にしか無いとされ、たった一株、たった一輪しか咲かないとされる。
　その花の芽吹きから枯れるまでが世界の始まりと終わりを示し、癒し──つまり休眠期間を経てまた芽吹く。世界がまた始まるらしい。
　世界はその花の中で完成され、そこからこぼれるものは世界から消滅する、そして無かった事にされる。
　ここまで言うとこの花が小さいんだかデカいんだか分からなくなるが、『どちらも正しく、またどちらも間違いである』というのが正確な答えとなるそうな。
　その紫の極上華だが、今はちょうど枯れかけで、要するに世界は終焉に向かっているらしい。そしてその終焉を迎える準備とらやが、これまた難解というかつかみ所がないというか。
　なんでも、正しく終わりに近付いているかどうかを確かめなきゃならないんだと。紛争やら恐慌やら全体的に見れば世界情勢やら。
　そしてそれが歪んでいると判断すれば、正しく導き直さなければならない。

　どう導くか？

　俺は下っ端で殆ど関わりなんかないから良く知らないが、やっぱり金やら人脈やらたくさん使っているようだ。けれどそれでも正しく導ききれない事もある。俺たちは世界を形作るものでない、形作られた側なんだから限度はある。
　そうなると最後の手段、途中で話に出した、『花からこぼれたものは無かった事になる』。あれを、その正しくない事象に用いて『正しくする』。『間違いを消す』と言った方が正しいか？　まあ、どっちでも良いか。
　そうして最後の最後まで尽力して、美しく素晴らしい終わりを迎え、また静かに新たな始まり──世界の芽吹きへとお導きする。

　そんな事を、代々やってきているらしい。