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賢者の声
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──これは賢者の声だ。
誰かが言った。途端周りはざわつき始め、皆が皆、顔を見合わせる。
困惑の表情。しかし、
「ああ、でも、本当に」
だんだんと
「そうだ。これは賢者様のお声」
それを受け入れ始める。
辺り一帯に響く声──この声を、誰もが有り難がり始めた。
膝を突き、手を合わせ、そこに向かって頭を垂れる。額を地面につける者まで。
かの者から後光でも差しているかのように、その場にいる者達はひれ伏した。
「……えっと」
その中心、賢者と言われた者を抱き上げている者が、心底困ったといった声を出す。
「この子、賢者様なの?」
まだ首も座ってない我が子は、先ほどから顔を赤くするくらい思いっきり泣き声を上げていて、母親はなんとか泣きやませようと苦心していた。
そこに突然、『賢者様』と言われ。
母親はあやすのも忘れ、周りと我が子とを見比べる。
ぎゃおぎゃおと泣く赤子。
有り難きお言葉と唱え出す民衆。
「……おーよしよし、びっくりしましたねー」
自分の頭では情報を処理しきれないと割り切った母親は、そのままあやすのを再開した。
誰かが言った。途端周りはざわつき始め、皆が皆、顔を見合わせる。
困惑の表情。しかし、
「ああ、でも、本当に」
だんだんと
「そうだ。これは賢者様のお声」
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