落書き置き場

山法師

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アサミとキョウカ

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「ねぇ、今日何してた?」

 なんとなく暇だから、とアサミは旧知の友人キョウカに電話をかけてみた。キョウカの声はそれに一呼吸置いて、勿体ぶるようにして響いてくる。

「……宇宙人と交流」
「はいきたー」

 アサミは思わず呆れ声を出す。

「ちょ、ちょっと待って早くない? 引くの早くない?」
「あんたいっつもそんな事言ってんだもん。言うならもうちょいましな事言えや」
「きっつ……」

 キョウカは意気消沈した声を出し、しかしなおも言い募る。

「ホントなのに……猫っぽい宇宙人だったんだよ? 地球の言語にも詳しいとか言って流暢に日本語で喋ったし」
「なんだその設定」
「私にね、能力も授けてくれた」
「……」

 ここまで来たならせめてオチまで聞いてやろう。
 そう思って、アサミは頭をかきながら

「じゃ、その能力って何?」

 と、介錯の気持ちで聞いてやった。

「瞬間移動」

 おい言いやがったな。

「じゃあそれでウチまで来れる?」

 言ってから、しまった、と思った。いつもならそこまで追い詰めないのに。
 なんだか得意げなキョウカの声に、イライラしてしまったらしい。

「いや、ごめ──」
「いいよ?」
「は?」
「着いたよ?」
「は?」

 玄関から、インターホンの音が響いた。

『開けてー』

 スマホからと、玄関から。二重で声が聞こえてくる。
 開けると、本当にキョウカが立っていた。

「……は?」

 呆けた顔にしかならず、アサミはドアを開けたまま立ち尽くす。

「あ、部屋からそのまま来たから靴履き忘れてた」

 足元に目を向ければ、言ったとおりに素足だった。

「……いや、いやいや」

 本当に瞬間移動した? キョウカのいる栃木から、この東京まで?

「……分かった、何かのドッキリでしょ?」
「え?」
「どこかに隠れてたんでしょ?」
「違うよ! さっきまで家にいたって! ……ほら!」

 少し怒ったような顔をしたキョウカが、目の前から消えた。

「は?」
「後ろ」
「……は?」

 その通り、後ろから声がして、アサミは慌てて振り返る。
 得意げににんまりと笑うキョウカが、そこにいた。

「……まじで?」
「まじで。信じてくれた?」

 私が宇宙人に会った事。

「……あ、ああ、そうだったわ。瞬間移動に気がいってた」
「ひどい! 宇宙人重要だよ?」
「ごめん……?」

 アサミはやっとそれだけ答えた。


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