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6 「人間は暇なのか?」
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「──ああ、名前。そういえば名乗ってなかったわね。ごめんなさい、頭から抜けていたわ」
夜明け前。ベッドから起き上がって伸びをしたシェリーは、椅子に座っていたユルロに名を問われ、頭を振りながらそう答えた。
「シェリー。シェリー・アルルドよ。コルシアン王国、アルルド伯爵家の娘で、王立騎士団に所属してる。炎の大隊長補佐を務めてるわ。歳は……言ったわね、昨日」
「ああ。十九だと言っていたな」
「ええ」
シェリーは立ち上がり、あくびをしながら扉へと向かう。
「どこへ行く?」
「井戸に顔を洗いに行くのよ。……あ、そっか。取り憑いてるんだから、一緒に行かなきゃならないのね。ユルロ、ブローチになって」
「またか。そのままでは駄目なのか?」
「駄目に決まってるじゃない。あなた、半透明なのよ? 人にどう説明する気? それに、宿の人が見覚えのないあなたを宿内で見たら、泥棒か幽霊か悪魔か何かかと思うかも知れないわ。面倒事は避けたいの。ほら」
手を出したシェリーの、その手と顔を見比べて、
「……ハァ……分かった」
ユルロは一瞬にしてブローチに変わり、シェリーの手の中へ。
「そうそう。ありがとう。あ、タオル」
シェリーはユルロをポケットに入れると、旅行カバンからタオルを取り出し、部屋の扉を開け、閉め、鍵をかけ、井戸へと向かった。
◆
「……思うんだが」
「なに?」
部屋に戻ってきたシェリーが着替えていると、シェリーに背を向け壁を見ていたユルロが渋い声を出す。
「お前、もう少し危機感を持てないか? 一定以上離れられないとはいえ、男と同室でそんなに堂々と着替えるものなのか? 最近の人間の女は」
「……危機感、ね。人並みには持っているつもりよ? ただ、あなた、私に全く欲情していないでしょう」
新しい下着に着替えながら、シェリーは言う。
「……なぜ、そう思う」
「分かるのよ。分かるというか、分からせられたというか。私、誰にも愛されないでしょう? けど、性欲って愛とは切り離せるみたいなのよ」
シェリーはシャツのボタンを留めながら、続ける。
「仕草、視線、口調、気配。この七年で、嫌というほど分からせられたわ。だから、そういう人とは距離を置くようにしてるの。でも、昨日から今まで、あなたからは、そういうものを感じない」
ズボンを穿き、ベルトを締め、
「現に今も、私を気遣ってくれてる。こちらを見ようともしない。あなたが誠実な証拠ね。さ、着替え終わったわ。どうぞ、こっち向いて大丈夫よ」
「……」
ユルロがゆっくりと振り向くと、シェリーはベッドに座り、髪を梳かしていた。
「……それなら、こっちの身にもなってくれ。部屋に戻ったと思ったら、急にシャツのボタンに手をかけて外し始める女など、どう対処すればいいか混乱する」
「とても誠実な対応をしてくれたと思うわ。一瞬でポケットから出て、私から距離を取り、背を向けて、動かない。見事ね」
髪を梳かし終えたシェリーは、簡素な髪紐で、その波打つ豊かな長い金髪を纏めて結く。
「愛に飢えた神様とは思えないわ」
「だから、愛に飢えてなどいない」
「じゃあ、どうしてそう伝わってるの? 何かそういう……人間がそういう風に想像を膨らませられるような行動を、したんでしょ?」
上着を着ながら聞くシェリーに、ユルロは仏頂面を返す。
「……そういったものとは縁遠かったものでな。生憎覚えがない」
「じゃあ、狼に襲われそうになった女性を助けて、その女性を口説いて、最後には神の居場所に連れ帰ろうとしたけど、断られて嵐を起こした話は?」
「……恐らく、兄だな。そういう話を、酒の席で兄から聞いたことがある」
「じゃ、森で偶然出会った少女を見初めて、少女と強引に関係を作ろうとした話は?」
「森……森、は、皆が行っている。誰の話か見当がつかん」
「じゃあ──」
「まだあるのか。どれだけあるんだ、その神話とやらは」
「そうね……」
シェリーは、旅行カバンや袋の中身を確認しながら、
「高さが五十センチくらい、幅は二十五センチくらい、そして厚みが八センチくらいの本。それが、聖ジュール教の聖典。冊数は四十三。神話の長さはそれくらいね」
「……」
「あ、あと、中の文字がすっごく小さいわ。だから文章量は、外見から想像出来るのの五倍くらいあるんじゃないかしら」
「……人間は、暇なのか?」
「それ、周りの人に言わないでよ? 怒るか嘆くか卒倒しちゃうから。……忘れ物、は、ないわね」
カバンを閉め、袋の口を閉じ、部屋をぐるりと見回したシェリーは、そう言って。
「じゃあ、帰るから──」
腰に剣を佩き、コートを羽織り、袋を入れた旅行カバンを背負い、
「ブローチになってくれるかしら」
手を出した。
「……俺はいちいち、お前のポケットに入れられなければならないのか」
「そうね。半透明なあなたを人に見られるのは避けたいし、揉め事の種は少ない方がいいから」
「……半透明……」
ユルロは渋い顔をして、「なら」と、口を開く。
「実体があればいいのか?」
「うん?」
その言葉にシェリーが首をひねるのと、ユルロの体が普通の人間のように景色を通さなくなったのは、同時だった。
「……どういう原理?」
「お前のせいで、俺は受肉しかけた。だから、理から外れていても、現世に肉体を形成できる」
「……そう。でも、問題が二つあるわ」
「二つ?」
「一つは、あなたが人として扱われると、道中の宿代が二倍になること。二つ目は、あなたの見た目ね」
「……俺は、悪魔のような風体をしていないが」
「高そうで珍しい形の服、整った顔と、筋肉がなさそうな細身の体型。野盗とかに襲われそう。二つの意味で」
「……」
ユルロは、実に嫌そうな顔をして、次に大きく溜め息を吐いた。
「……分かった。大人しくしていよう。……実に、不本意だが」
「ええ、お願い」
そして、ユルロは水色のブローチとなって、シェリーが再び差し出した手の中に収まった。
「ありがとう。助かるわ」
シェリーは躊躇いなくブローチをコートのポケットに突っ込む。
「……なあ。一つ、いいか」
「なにかしら」
「俺を仕舞うのではなく、身に付けられないか。自分が不憫に思えてならない」
「そうね。王都に戻ったらそれも出来るでしょうけど……道中は止めといた方がいいと思うわ。あなた、高そうには見えないけど、それでも装飾品だもの。身に付けて狙われる確率は下げたいの」
「……分かった。……俺の今の姿は、そんなに貧相か?」
「姿? ブローチの? そうね……色は綺麗な水色だけど、形はただの楕円形だし。そういうのが好きな人にはいいと思うけど、お金持ちが買いそうには見えないわね」
「……そうか……」
「あ、それと、あまり喋らないでね。私一人なのに二人分の声が聞こえるなんて、変だと思われるでしょ?」
「……分かった……」
諦め混じりの声のユルロに、シェリーは明るく言う。
「これも王都までの辛抱よ。王都に着いたらちゃんと身に着けるから」
「……その、王都とやらまでは、どの程度だ」
「約半月。順調に行けばね」
「……」
◆
「さあ、着いたわよ。ここがコルシアンの王都。大体予定通りに戻れたわね」
王都を囲む塀にある検問の詰め所から解放され、都内に足を踏み入れたシェリーは、人がごった返す町並みを見ながら、小声でそう言った。
「大雨で二日、その雨による土砂崩れで四日。国境を越えるための手続きの不備──しかもあちら側の不備で七日。十三日超過して、予定通りと言えるのか?」
げんなりと小声で言うユルロに、シェリーもまた、小声で答える。
「あら、これくらい普通よ。旅なんて、最悪生きて帰れれば問題ないの」
シェリーは言いながら、胸ポケットからブローチを取り出し、襟元に留める。
「ほら、あなたの要望通り、身に着けたわ。これでいい?」
「……ああ、もう、いい。なんだかもうどうでもいい」
「そう。諦めって、時に人生を前向きにするわよね」
「……」
「あ、王都の観光とかは出来ないから、そこのところごめんなさいね。たぶん、休んでいた間に仕事が山のように積み上がってると思うから、一直線に帰らきゃいけないの」
「そうか。……頑張れよ、シェリー」
ユルロの言葉に、シェリーは歩き出そうとした足を一瞬止め、
「……ええ、ありがとう」
夜明け前。ベッドから起き上がって伸びをしたシェリーは、椅子に座っていたユルロに名を問われ、頭を振りながらそう答えた。
「シェリー。シェリー・アルルドよ。コルシアン王国、アルルド伯爵家の娘で、王立騎士団に所属してる。炎の大隊長補佐を務めてるわ。歳は……言ったわね、昨日」
「ああ。十九だと言っていたな」
「ええ」
シェリーは立ち上がり、あくびをしながら扉へと向かう。
「どこへ行く?」
「井戸に顔を洗いに行くのよ。……あ、そっか。取り憑いてるんだから、一緒に行かなきゃならないのね。ユルロ、ブローチになって」
「またか。そのままでは駄目なのか?」
「駄目に決まってるじゃない。あなた、半透明なのよ? 人にどう説明する気? それに、宿の人が見覚えのないあなたを宿内で見たら、泥棒か幽霊か悪魔か何かかと思うかも知れないわ。面倒事は避けたいの。ほら」
手を出したシェリーの、その手と顔を見比べて、
「……ハァ……分かった」
ユルロは一瞬にしてブローチに変わり、シェリーの手の中へ。
「そうそう。ありがとう。あ、タオル」
シェリーはユルロをポケットに入れると、旅行カバンからタオルを取り出し、部屋の扉を開け、閉め、鍵をかけ、井戸へと向かった。
◆
「……思うんだが」
「なに?」
部屋に戻ってきたシェリーが着替えていると、シェリーに背を向け壁を見ていたユルロが渋い声を出す。
「お前、もう少し危機感を持てないか? 一定以上離れられないとはいえ、男と同室でそんなに堂々と着替えるものなのか? 最近の人間の女は」
「……危機感、ね。人並みには持っているつもりよ? ただ、あなた、私に全く欲情していないでしょう」
新しい下着に着替えながら、シェリーは言う。
「……なぜ、そう思う」
「分かるのよ。分かるというか、分からせられたというか。私、誰にも愛されないでしょう? けど、性欲って愛とは切り離せるみたいなのよ」
シェリーはシャツのボタンを留めながら、続ける。
「仕草、視線、口調、気配。この七年で、嫌というほど分からせられたわ。だから、そういう人とは距離を置くようにしてるの。でも、昨日から今まで、あなたからは、そういうものを感じない」
ズボンを穿き、ベルトを締め、
「現に今も、私を気遣ってくれてる。こちらを見ようともしない。あなたが誠実な証拠ね。さ、着替え終わったわ。どうぞ、こっち向いて大丈夫よ」
「……」
ユルロがゆっくりと振り向くと、シェリーはベッドに座り、髪を梳かしていた。
「……それなら、こっちの身にもなってくれ。部屋に戻ったと思ったら、急にシャツのボタンに手をかけて外し始める女など、どう対処すればいいか混乱する」
「とても誠実な対応をしてくれたと思うわ。一瞬でポケットから出て、私から距離を取り、背を向けて、動かない。見事ね」
髪を梳かし終えたシェリーは、簡素な髪紐で、その波打つ豊かな長い金髪を纏めて結く。
「愛に飢えた神様とは思えないわ」
「だから、愛に飢えてなどいない」
「じゃあ、どうしてそう伝わってるの? 何かそういう……人間がそういう風に想像を膨らませられるような行動を、したんでしょ?」
上着を着ながら聞くシェリーに、ユルロは仏頂面を返す。
「……そういったものとは縁遠かったものでな。生憎覚えがない」
「じゃあ、狼に襲われそうになった女性を助けて、その女性を口説いて、最後には神の居場所に連れ帰ろうとしたけど、断られて嵐を起こした話は?」
「……恐らく、兄だな。そういう話を、酒の席で兄から聞いたことがある」
「じゃ、森で偶然出会った少女を見初めて、少女と強引に関係を作ろうとした話は?」
「森……森、は、皆が行っている。誰の話か見当がつかん」
「じゃあ──」
「まだあるのか。どれだけあるんだ、その神話とやらは」
「そうね……」
シェリーは、旅行カバンや袋の中身を確認しながら、
「高さが五十センチくらい、幅は二十五センチくらい、そして厚みが八センチくらいの本。それが、聖ジュール教の聖典。冊数は四十三。神話の長さはそれくらいね」
「……」
「あ、あと、中の文字がすっごく小さいわ。だから文章量は、外見から想像出来るのの五倍くらいあるんじゃないかしら」
「……人間は、暇なのか?」
「それ、周りの人に言わないでよ? 怒るか嘆くか卒倒しちゃうから。……忘れ物、は、ないわね」
カバンを閉め、袋の口を閉じ、部屋をぐるりと見回したシェリーは、そう言って。
「じゃあ、帰るから──」
腰に剣を佩き、コートを羽織り、袋を入れた旅行カバンを背負い、
「ブローチになってくれるかしら」
手を出した。
「……俺はいちいち、お前のポケットに入れられなければならないのか」
「そうね。半透明なあなたを人に見られるのは避けたいし、揉め事の種は少ない方がいいから」
「……半透明……」
ユルロは渋い顔をして、「なら」と、口を開く。
「実体があればいいのか?」
「うん?」
その言葉にシェリーが首をひねるのと、ユルロの体が普通の人間のように景色を通さなくなったのは、同時だった。
「……どういう原理?」
「お前のせいで、俺は受肉しかけた。だから、理から外れていても、現世に肉体を形成できる」
「……そう。でも、問題が二つあるわ」
「二つ?」
「一つは、あなたが人として扱われると、道中の宿代が二倍になること。二つ目は、あなたの見た目ね」
「……俺は、悪魔のような風体をしていないが」
「高そうで珍しい形の服、整った顔と、筋肉がなさそうな細身の体型。野盗とかに襲われそう。二つの意味で」
「……」
ユルロは、実に嫌そうな顔をして、次に大きく溜め息を吐いた。
「……分かった。大人しくしていよう。……実に、不本意だが」
「ええ、お願い」
そして、ユルロは水色のブローチとなって、シェリーが再び差し出した手の中に収まった。
「ありがとう。助かるわ」
シェリーは躊躇いなくブローチをコートのポケットに突っ込む。
「……なあ。一つ、いいか」
「なにかしら」
「俺を仕舞うのではなく、身に付けられないか。自分が不憫に思えてならない」
「そうね。王都に戻ったらそれも出来るでしょうけど……道中は止めといた方がいいと思うわ。あなた、高そうには見えないけど、それでも装飾品だもの。身に付けて狙われる確率は下げたいの」
「……分かった。……俺の今の姿は、そんなに貧相か?」
「姿? ブローチの? そうね……色は綺麗な水色だけど、形はただの楕円形だし。そういうのが好きな人にはいいと思うけど、お金持ちが買いそうには見えないわね」
「……そうか……」
「あ、それと、あまり喋らないでね。私一人なのに二人分の声が聞こえるなんて、変だと思われるでしょ?」
「……分かった……」
諦め混じりの声のユルロに、シェリーは明るく言う。
「これも王都までの辛抱よ。王都に着いたらちゃんと身に着けるから」
「……その、王都とやらまでは、どの程度だ」
「約半月。順調に行けばね」
「……」
◆
「さあ、着いたわよ。ここがコルシアンの王都。大体予定通りに戻れたわね」
王都を囲む塀にある検問の詰め所から解放され、都内に足を踏み入れたシェリーは、人がごった返す町並みを見ながら、小声でそう言った。
「大雨で二日、その雨による土砂崩れで四日。国境を越えるための手続きの不備──しかもあちら側の不備で七日。十三日超過して、予定通りと言えるのか?」
げんなりと小声で言うユルロに、シェリーもまた、小声で答える。
「あら、これくらい普通よ。旅なんて、最悪生きて帰れれば問題ないの」
シェリーは言いながら、胸ポケットからブローチを取り出し、襟元に留める。
「ほら、あなたの要望通り、身に着けたわ。これでいい?」
「……ああ、もう、いい。なんだかもうどうでもいい」
「そう。諦めって、時に人生を前向きにするわよね」
「……」
「あ、王都の観光とかは出来ないから、そこのところごめんなさいね。たぶん、休んでいた間に仕事が山のように積み上がってると思うから、一直線に帰らきゃいけないの」
「そうか。……頑張れよ、シェリー」
ユルロの言葉に、シェリーは歩き出そうとした足を一瞬止め、
「……ええ、ありがとう」
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