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第三章 生誕祭
十二話
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「アイリス、大変な事になったね」
シャオンは軽く言いながら、アイリス達の座るソファの後ろから、その背もたれ部分、ヘイルとアイリスの間のそこに手をついた。
ちなみに、シャオンはずっとヘイル達のソファの後ろに立っていた。護衛の定位置はそこだそうで、プツェンの護衛三竜も、同じくプツェンとルウォーネの座っているソファの後ろに立っている。
「た、大変、なんですか……なんか、まだ、事実が飲み込めてないと言いますか……」
不安が混じるアイリスの表情を見て、シャオンは明るい声を発した。
「その辺は大丈夫だよ。そのうち飲み込めるから」
「お前な……」
ヘイルが呆れた声で振り返ると、
「だってさ、何があろうとアイリスは招かれる側でしょ? それも祝の席だ。芸を披露しろだとか、論文を発表しろだとか、そんな変な無茶振りとかはされないでしょ」
「だがな、そもそも」
「周りの竜が黙ってない、でしょ?」
シャオンの口の端は上がっているが、その目は笑っていなかった。
「……ああ、そうだ」
ヘイルは低く、そして苦々しく、それを肯定する。
(周りの竜が、黙ってない……)
アイリスは、この都は他と違って少々特殊だという事を、思い出す。
人間を忌避しない事、差別しない事。人間に寛容、もしくは好意的な態度を取ってくれる事。
裏を返せば、ごく普通の竜は、その逆の態度を取るのだと、理解が及ぶ。
「私は反対よ。どうにかしてアイリスを、ここに留めておく理由とか判断とか、出来ないの? ヘイル」
厳しく、それでいてアイリスを心配する心の内が零れるような、そんな声と顔で、ブランゼンが言う。
が。
「無理だろうな。動けないほどの大病を患っただとか、全身複雑骨折でもすれば、辞退出来るんだろうが……そんな事、させたくもない。それに、何かしらで欺こうとでもすれば、それは弱みに変わり、逆に相手を喜ばせてしまうだろう。……あいつは、そういう事はすぐ気付く」
そう言うと、ヘイルは溜め息を吐いて、アイリスを見、プツェンを見た。
「俺達に教えに来てくれたくらいだ。プツェン、その気はあるんだろう? こっちに一枚噛んでくれ」
それにプツェンは、満面の笑みで。
「ええ、もちろん。そのつもりよ。で、何からする?」
「まずはアイリスに、諸々の説明をするところからだ」
◆
アイリスは、読んでいた本を閉じ、顔を上げた。
「えっと、ルーンツェナルグの大まかな歴史と、直系の家系図は、なんとか頭に入ったと思います。なので、ちょっと……えっと、シャオンさん。私に、ルーンツェナルグについての問題を出してみてくれませんか?」
「俺? んー、じゃあ、金華の長の長男の子供の名前は?」
「おい」
「なに? ヘイル」
「問題が難しくないか。アイリスは今、資料を読み終えたばかりだぞ」
ヘイルがシャオンにそう言えば、ブランゼンも厳しい顔つきで。
「私もそう思うわ。金華の長の長男、ならともかく、その子供だなんて。これ、ひっかけでしょう」
「だ、大丈夫です、ヘイルさん、ブランゼンさん。分かります。答えられますので。……えっと、答えは、長男のネーベル・ノベリウス・ルーンツェナルグ、歳は百十二歳。と、次男のサトゥーペ・ノベリウス・ルーンツェナルグ、五十一歳。……合ってますか?」
「おお、正解。合ってる合ってる。ちゃんと二竜答えられたね。てか、年まで言うとは。さすがアイリスだ」
パチパチと、笑顔で拍手をするシャオン。そして、驚いた顔をしたブランゼン、ヘイルと。
「すごいわね。名前どころか年齢まで正確に当てちゃったわ。この小一時間で、全部ものにしちゃった? アイリスさん」
面白いものを見つけた、とでも言いたげな顔つきで、飲んでいた紅茶のカップをソーサーに戻し、プツェンが言った。
シャオンは軽く言いながら、アイリス達の座るソファの後ろから、その背もたれ部分、ヘイルとアイリスの間のそこに手をついた。
ちなみに、シャオンはずっとヘイル達のソファの後ろに立っていた。護衛の定位置はそこだそうで、プツェンの護衛三竜も、同じくプツェンとルウォーネの座っているソファの後ろに立っている。
「た、大変、なんですか……なんか、まだ、事実が飲み込めてないと言いますか……」
不安が混じるアイリスの表情を見て、シャオンは明るい声を発した。
「その辺は大丈夫だよ。そのうち飲み込めるから」
「お前な……」
ヘイルが呆れた声で振り返ると、
「だってさ、何があろうとアイリスは招かれる側でしょ? それも祝の席だ。芸を披露しろだとか、論文を発表しろだとか、そんな変な無茶振りとかはされないでしょ」
「だがな、そもそも」
「周りの竜が黙ってない、でしょ?」
シャオンの口の端は上がっているが、その目は笑っていなかった。
「……ああ、そうだ」
ヘイルは低く、そして苦々しく、それを肯定する。
(周りの竜が、黙ってない……)
アイリスは、この都は他と違って少々特殊だという事を、思い出す。
人間を忌避しない事、差別しない事。人間に寛容、もしくは好意的な態度を取ってくれる事。
裏を返せば、ごく普通の竜は、その逆の態度を取るのだと、理解が及ぶ。
「私は反対よ。どうにかしてアイリスを、ここに留めておく理由とか判断とか、出来ないの? ヘイル」
厳しく、それでいてアイリスを心配する心の内が零れるような、そんな声と顔で、ブランゼンが言う。
が。
「無理だろうな。動けないほどの大病を患っただとか、全身複雑骨折でもすれば、辞退出来るんだろうが……そんな事、させたくもない。それに、何かしらで欺こうとでもすれば、それは弱みに変わり、逆に相手を喜ばせてしまうだろう。……あいつは、そういう事はすぐ気付く」
そう言うと、ヘイルは溜め息を吐いて、アイリスを見、プツェンを見た。
「俺達に教えに来てくれたくらいだ。プツェン、その気はあるんだろう? こっちに一枚噛んでくれ」
それにプツェンは、満面の笑みで。
「ええ、もちろん。そのつもりよ。で、何からする?」
「まずはアイリスに、諸々の説明をするところからだ」
◆
アイリスは、読んでいた本を閉じ、顔を上げた。
「えっと、ルーンツェナルグの大まかな歴史と、直系の家系図は、なんとか頭に入ったと思います。なので、ちょっと……えっと、シャオンさん。私に、ルーンツェナルグについての問題を出してみてくれませんか?」
「俺? んー、じゃあ、金華の長の長男の子供の名前は?」
「おい」
「なに? ヘイル」
「問題が難しくないか。アイリスは今、資料を読み終えたばかりだぞ」
ヘイルがシャオンにそう言えば、ブランゼンも厳しい顔つきで。
「私もそう思うわ。金華の長の長男、ならともかく、その子供だなんて。これ、ひっかけでしょう」
「だ、大丈夫です、ヘイルさん、ブランゼンさん。分かります。答えられますので。……えっと、答えは、長男のネーベル・ノベリウス・ルーンツェナルグ、歳は百十二歳。と、次男のサトゥーペ・ノベリウス・ルーンツェナルグ、五十一歳。……合ってますか?」
「おお、正解。合ってる合ってる。ちゃんと二竜答えられたね。てか、年まで言うとは。さすがアイリスだ」
パチパチと、笑顔で拍手をするシャオン。そして、驚いた顔をしたブランゼン、ヘイルと。
「すごいわね。名前どころか年齢まで正確に当てちゃったわ。この小一時間で、全部ものにしちゃった? アイリスさん」
面白いものを見つけた、とでも言いたげな顔つきで、飲んでいた紅茶のカップをソーサーに戻し、プツェンが言った。
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