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第二章 竜の文化、人の文化
三十九話
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「言われれば……抱き上げた時など、軽いとは思ったが」
ヘイルはそう呟き、
「……ごめんなさい、アイリス……今まで気付かなくって……小柄だからとか、人間を見慣れてないからとか、言い訳にしかならないわよね……」
ブランゼンは愕然としている。
二竜とも、アイリスの〈痩せ過ぎ〉な点を、とても気にかけているようだった。
「そっ、そんなお二竜とも! そんなに気にしないで下さい! 現に、今の食生活を続ければ健康になっていくって、ウェイレ先生も仰っているじゃないですか! そうですよね? ウェイレ先生!」
「うん、そうだね。……でも」
ウェイレは頷いてから、顎に手をやり真剣な表情になる。
「ボクとしては、これで終わりじゃなくて、定期健診をしたいなぁ。少なくとも隔週か、週一か……痩身な点以外にも、竜とは違うその体が今後どうなっていくか、いかないか。きちんと記録を取るべきだと、ボクは思うよ」
ウェイレの言葉に、アイリスは納得と共に申し訳無さを感じた。
「そんな、定期健診なんて、……そう仰っしゃられるなら、必要、だとは、思いますが……そこまでお手を煩わせる訳には……」
「いやぁ、ボク自身はいいんだけどね。立場がね。一応これでも、この玻璃の城の侍医を任されてるもんだから、そんなにアイリスちゃんのとこにも行けないし。かと言って、アイリスちゃんにわざわざ来てもらうのも大変だろうし。どうしたもんかねぇ、ヘイル?」
ウェイレが言いながら顔を向ければ、ヘイルは腕を組み、考え込むように目を細めていた。
「……そうだな。ウェイレの言う通り、定期の健診は必要だろう。……本当なら、もっと早くにこうするべきだった。アイリス、気付いてやれなくて済まなかった」
「いえ?! そんな、全然!」
本当に済まなそうな顔をするヘイルに、アイリスは慌てて首を振る。
「でも、そうすると、アイリスの健診は誰か別の医師に頼む事になるの? 私は、出来ればウェイレに診てもらうか、……もしくは、ファスティ……そうよ! ファスティがいるじゃない!」
首をひねっていたブランゼンが、声を張り上げる。
「ねえファスティ。あなたなら、医師の資格も持ってるし、人間の資料を渡しても問題ないでしょうし、なによりアイリスの傍にいられるわ!」
ブランゼンの言葉に、ファスティは少し微笑んで、
「そうですねぇ。その通りではございましょうが」
その顔を、ヘイルへと向け、
「坊ちゃま、ブランゼンお嬢様のご提案、如何でございましょう?」
「そうだな。今のところ、それが最良に思える。だが、ファスティの健診だけでなく、やはりウェイレにも、都合をつけて診て貰いたい」
ヘイルの言葉に、ウェイレはこくんと頷く。
「いいよー。というか、診せてもらえるなら万万歳だよ。けど、その都合、つけるのはヘイルだからね?」
「分かってる」
(み、見る間に……物事が決まっていく……)
ヘイル達のやりとりに口を挟めなかったアイリスは、その光景にぽかんとしながらも、特に不満もない事もあって、黙って話を聞いていた。
「したら、健診についてだけど。ファスティさんが傍にいられるってことなら、二日にいっぺんの頻度で記録を付けてもらって、ボクが診るのは月一ぐらいのが、城の都合もつけやすいかな?」
どう? と、周りを見回すウェイレ。アイリスは判断がつけられず黙ったままだったが、ヘイルとブランゼンはそれに頷く。
「そうだな。それがいいと思う。ファスティ、いいか?」
「畏まりました」
ファスティはそれを受け、改まったように礼をした。
ヘイルはそう呟き、
「……ごめんなさい、アイリス……今まで気付かなくって……小柄だからとか、人間を見慣れてないからとか、言い訳にしかならないわよね……」
ブランゼンは愕然としている。
二竜とも、アイリスの〈痩せ過ぎ〉な点を、とても気にかけているようだった。
「そっ、そんなお二竜とも! そんなに気にしないで下さい! 現に、今の食生活を続ければ健康になっていくって、ウェイレ先生も仰っているじゃないですか! そうですよね? ウェイレ先生!」
「うん、そうだね。……でも」
ウェイレは頷いてから、顎に手をやり真剣な表情になる。
「ボクとしては、これで終わりじゃなくて、定期健診をしたいなぁ。少なくとも隔週か、週一か……痩身な点以外にも、竜とは違うその体が今後どうなっていくか、いかないか。きちんと記録を取るべきだと、ボクは思うよ」
ウェイレの言葉に、アイリスは納得と共に申し訳無さを感じた。
「そんな、定期健診なんて、……そう仰っしゃられるなら、必要、だとは、思いますが……そこまでお手を煩わせる訳には……」
「いやぁ、ボク自身はいいんだけどね。立場がね。一応これでも、この玻璃の城の侍医を任されてるもんだから、そんなにアイリスちゃんのとこにも行けないし。かと言って、アイリスちゃんにわざわざ来てもらうのも大変だろうし。どうしたもんかねぇ、ヘイル?」
ウェイレが言いながら顔を向ければ、ヘイルは腕を組み、考え込むように目を細めていた。
「……そうだな。ウェイレの言う通り、定期の健診は必要だろう。……本当なら、もっと早くにこうするべきだった。アイリス、気付いてやれなくて済まなかった」
「いえ?! そんな、全然!」
本当に済まなそうな顔をするヘイルに、アイリスは慌てて首を振る。
「でも、そうすると、アイリスの健診は誰か別の医師に頼む事になるの? 私は、出来ればウェイレに診てもらうか、……もしくは、ファスティ……そうよ! ファスティがいるじゃない!」
首をひねっていたブランゼンが、声を張り上げる。
「ねえファスティ。あなたなら、医師の資格も持ってるし、人間の資料を渡しても問題ないでしょうし、なによりアイリスの傍にいられるわ!」
ブランゼンの言葉に、ファスティは少し微笑んで、
「そうですねぇ。その通りではございましょうが」
その顔を、ヘイルへと向け、
「坊ちゃま、ブランゼンお嬢様のご提案、如何でございましょう?」
「そうだな。今のところ、それが最良に思える。だが、ファスティの健診だけでなく、やはりウェイレにも、都合をつけて診て貰いたい」
ヘイルの言葉に、ウェイレはこくんと頷く。
「いいよー。というか、診せてもらえるなら万万歳だよ。けど、その都合、つけるのはヘイルだからね?」
「分かってる」
(み、見る間に……物事が決まっていく……)
ヘイル達のやりとりに口を挟めなかったアイリスは、その光景にぽかんとしながらも、特に不満もない事もあって、黙って話を聞いていた。
「したら、健診についてだけど。ファスティさんが傍にいられるってことなら、二日にいっぺんの頻度で記録を付けてもらって、ボクが診るのは月一ぐらいのが、城の都合もつけやすいかな?」
どう? と、周りを見回すウェイレ。アイリスは判断がつけられず黙ったままだったが、ヘイルとブランゼンはそれに頷く。
「そうだな。それがいいと思う。ファスティ、いいか?」
「畏まりました」
ファスティはそれを受け、改まったように礼をした。
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