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第一章 そこは竜の都

二十五話

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 どうせならと、三人でまた玄関からやり直してみた。

「……開きます!」

 最初と違い、重さも何も感じさせず、滑らかに扉は開く。

「凄い、凄いです! なんでこんなに違うんだろ!」

 微動だにしなかったあれは何だったのかと、アイリスは何度も扉を開閉させる。

「アイリス、勢いはあまり付けない方が」
「あっすみません!」

 アイリスは高揚したまま、玄関に入った。
 華奢で小ぶりなシャンデリアが淡く輝き出す。

「!」
「問題なく反応するな」
「ええ、大丈夫そうね」

 続いて入ったヘイルとブランゼンは、それを見て軽く頷いた。

「アイリス、さっきは先導したが、見たい所へ行ってみろ。説明は都度しよう」

 振り返ったアイリスに、ヘイルは奥を示す。

「そう広くもないし危ない物もないしな」
「分かりました!」

 跳ねるような声で言って、アイリスはさっきと違う扉に手をかけた。


   ◆


 キッチンにて。

「触っただけで! 水が! 出ます!」
「直に触らずとも出せるぞ。方向で温度が変わる」

 自在に流れる水に驚き。

「どうやってこんなに均一な炎を……」
「内側で均してるの。近付くと火傷するから離れてね」

 美しく輪のようになった炎に魅入り。

「ここは……」
「貯蔵室ね。今は空っぽだけど」
「ここだけはもう少し広くても良かったが……」
「え」

 ダンスホールに使えそうなほど広々とした空間を、呆けるように見上げた。

 バスルームでも、一度入った応接間でも、階段や二階の部屋を見る時も。

「アイリス、大丈夫?」

 歓声を上げながら、歩き回って隅々まで観察するように見て回ったアイリスは、

「大丈夫です……」

 少しだけ息切れを起こしていた。
 庭に出てすぐ、細く背の高い木に手をついて、アイリスは呼吸を整える。

屋内なかは見れたし、ちょっと休みましょう。ほら、こっち」
「ありがとうございます……」

 ブランゼンに促され、横に置かれた瀟洒な椅子に腰掛ける。椅子はついさっき念入りに磨かれたように、陽の光を反射していた。
 座ると、小柄な事も手伝ってか、アイリスの足は宙に浮く。

「貴方用だから大きいわね」
「……そうだな」

 風が頬を撫で、二人の話を聞いていたアイリスの意識が庭の奥に向いた。

(お庭、というより小さな森かしら)

 木々が多く植わり、この辺り──家の近くだけ開けている。それほど広くはないはずなのに、奥は吸い込まれるような濃い緑。それは何故か、深く古い森を連想させる。

(……惑いの森に、似ている……?)


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