昔々の幼なじみの

山法師

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20 なんか動いた

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「どーすっかなぁ……」

 いやどうも出来ないんだけどさぁ。
 ぶちぶち畑の雑草を抜きながら、ぐるぐると考える。

『お時間を頂いたからな。一旦じっくり考えなさい』

 そんな風に言われたけど、多分。

「その時間って、準備のためのものですよねー……」

 私から断る事は出来ない。そもそも断るなんて選択肢は存在しない。
 一方的に連れて行かれないだけマシなんだ。爪弾き者だもの。

「私になんて誰も手ぇ出さないと思ってたのにぃ……」

 聞いた話だけで嫁を決めるんじゃありませんよ。気に入らなかったらどうするつもりで?
 返品は受け付けてくれませんよ、この村。

「そしたら私は流浪の民に……あれ?」

 待てよ?

「……アリじゃない?」

 生きていくのが凄い大変になるけど。でも、誰かのモノになるよりずっと良い。

「……いや、いやいや。落ち着け」

 そんな簡単にいくなら、今まで苦労してないって。

「……。……はぁー…………」

 流されたくはないんだけど。だからってどうすればいいんだろ。

『────!』

 わあ。ちまちま取ってたのに、もう草の山が出来た。

『────、──!』『──!』

 しかもこれなんか動くー……うごく?

『『『────!!!』』』
「わあっ?!」

 勢いよく跳ねた?! しかもいくつも!

「ぶっ?!」

 顔面に当たっ……けど痛くないな。

『──、──』

 ぽろりと地面に落ちたそれを、まじまじと見つめる。

「なっ……な、ぁ……?」

 なに、これ。

『──!』『──?!』『──! ──!』

 緑の、丸い何かが。土の上で勝手に跳ねて転がって……それが幾つも……。
 これは何かな。幻覚かな。

「…………ちょっと休もうかな」
『──?』『……──!』

 立ち上がり、家に入ろうとすると、

『──!!』
「わっ」

 またぴょんと跳ねて、スカートの裾にくっつかれた。

『『『──! ──!』』』
「わ、まっ、ひぇっ……?!」

 どんどん他のもくっついてくる?! 何これホントなに?!
 この緑達は何をしようとして──

「……? 何かを、しようと?」
『──!』
『──!!』
『────!!!』

 それにこの、いつの間にか聞こえていた音。
 葉っぱが擦れるような、これ、音じゃなくてもしかして、緑達の……声?

『──!!』

 彼らは、何か意味があってスカートに? くっついた?

『──!!──!』

 今も、何かを伝えようとしてる?
 私に?

「……あの」
『!』

 緑達は一度大きくわさりと揺れて、静まった。

「私に、何か……?」

 裾を地面に付けるように屈むと、緑達はゆっくりと降りていく。

『──、──!』

 真ん中の緑が跳ねたけど、その言葉と動きの意味は取れない。

「ごめんなさい。分からない……って事も、そっちからじゃ分からない……?」

 どうしようこれ。

『──!』

 意思疎通が途轍もなく困難なんだけど……ぉ?

『──! ──!』

 何かを言ったと思ったら、緑のひと達が一斉に跳ねて、少し私から距離をとった。

「……?」

 そして何度かその場で跳ねて、こっちを窺ってからまた少し進む。

『──!』

 これは……、

「……ついて来い?」

 って事だよね? そういう意味だよね?

「なら」

 緑のひと達へ一歩近付く。

『『『『『────!!!!』』』』』

 緑のひと達が凄い沸き立った、感じでいっぱい飛び跳ねた。
 正解だ?!

「よし、それなら話は簡単……ちょっ?」

 跳ね進むスピードが急に上がったよ?!

「えっ待って?!」

 あれっ、そういえばそもそもどこ行くのかな?!


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