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第四章 彷徨うウンディーネとシルフのガレット
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ちょっと!と目を丸める私が桜花を見ると、ふんふん右手をぐるぐると回しながら桜花もまた鼻息を荒くしている。
「うんうん。まずは琴音お姉ちゃんを守らなきゃ。桜花を助けてくれたんだから、まずは自分が助からなきゃダメ」
よしいこう。と桜花の手を引くミアスを必死に止めながら、私はなんだかすっと浮かび上がってしまうそうなほど体が軽くなっているのに気がついた。そしてどうしようもなくミーナさんとカフェ・ノードに集うみんなに会いたくなってもいた。
どっちが助けられているのかわからないと私は苦笑する。
「本当にありがとう!ふたりとも!でも大丈夫だから。こればっかりは・・・自分でなんとかしなきゃいけないと思うの。私はもうひとりじゃないから」
私の言葉でようやくミアスは足を止める。そしてゆっくりと私を振り向くと口を尖らせて非難の視線を向けた。なんだかミアスの仕草がとても可愛らしいと私は笑みをこぼす。桜花は私をすっと見上げるとまっすぐとした瞳でうなずいた。
「うん。なんだか元気がでた。ウチはひとりじゃないんやね。お姉ちゃんたちがいるし」
「そうだね。それに北区のカフェ・ノードっていう所にいけばもっとお友達ができると思う。学校だけがすべてじゃないからね」
うん。と桜花ちゃんはそう応える。最後のセリフはきっと自分自身にも向けた言葉だなと私は思った。
「ありがとう。今日は楽しかったし不思議な日だったね。ここからは桜花がひとりで帰れる」
じゃあね。と桜花は手を振りながら近くに見えるマンションへと駆けていった。私はその後ろ姿が見えなくなるまで手を振って見送る。
ありがとう。そんな言葉を添えて。
桜花がすっかりと見えなくなるとミアスは私の隣に立ち空を見上げる。どうしたの?と声をかけるとミアスは目を凝らして北へと視線を伸ばしている。
「この街は北へと向けて上り坂が続いている。高さを計算している」
ん?と小首をかしげる私に、これくらいでいいか。とミアスは満足そうに一度うなずくと私をぎゅっと抱き寄せる。どうしたことかと私は目を白黒とさせた。
「桜花がいたからさっきは使えなかったけど、ミアスはバスがうんざりだ。時間がかかる。だから水渡りの魔法でカフェ・ノードに戻ろう。ちゃんとミーナさんに報告しよう」
状況がまだうまくつかめていない私は、されるがままにミアスへと身を寄せる。ミアスは目を閉じ、息を吸い込むと右のつま先でそっと地面に触れる。
するとその地面が砂煙をあげながら波紋を広げていく。中央から波紋が広がるたびに高さを増していき徐々に、現れた水の柱が高さを増していく。そしてぐるぐると回転しつつ空気中の水を集めて太さが増していく。
ふたりの人が容易に入れるくらいの大きさになった時、バネのように一度縮むと水の柱が北の空へと向けて跳ねた。まるで水でできたとても大きな架け橋みたいに空の向こうに消えていく。
ミアスが私を抱いたまま足を踏み入れると水の流れに合わせて私の体も宙に浮いた。
いや・・・宙に浮いたというよりもその水が作った架け橋の中をすごい勢いで流れている。空を飛んでいる時とは違うその流れが、ぐんぐんと北の空へと私たちを流していった。しかし衣服が濡れるようすもなくどこかそれは暖かく感じる。
「ミアスはひとりでなんでもできると思っていた。ミアスは自分が好きだから、自分がよければそれでいいと思っていた。ミアスはとっても強いから」
北の空へと宙を流されながらミアスは独り言のように話し、私は耳をかたむける。
「でも琴音を見ていると違うと思った。桜花もまたそうだ。ひとりで何もできなくても、みんなで世界も自分も変えられる。そう思うとなんだかミアスももっと強くなった気がした。ひとりで強くならないといけないと思っていたから。琴音の言葉にはとても力がある」
「そんな力はないよ。私がダメダメなだけだよ。ミーナさんみたいにはなれない」
「ミーナになる必要がなぜあるんだ?琴音は琴音で自分を変えられる。自分だけじゃない、ミアスや周りの人を変えることができる。それは琴音が弱いからだとしても琴音は十分に強い。たが周りに似たような人がいなかっただけだ」
「そうかな?私は自分を変えられるかな?」
「そうだ。ミアスはそう思う。もしひとりで何もできなくなってもミアスがいる。今日のお礼にミアスのこれをあげる。いつも一緒にいる宝物だ」
そういってミアスはポケットの中から大きな涙のような形をした硬くて薄いプラスチックの塊を差し出す。
「これは?」
「これはギターのピックだ。ミアスがギターを始めていた時から使っていた。だから琴音にこれをやる。もう琴音はひとりじゃない」
そっか。とそれを両手で包み胸にぎゅっと抱きしめる。また宝物が増えてしまった。それに宝物は物だけではない。形がなくても私の中には宝物があふれている。
ありがとう。と私は言うとミアスは頬を緩めただけで何も言わなかった。でも心は伝わる。
「そろそろ。カフェが見えてきた。舌を噛まないように」
眼下にはすでに見慣れた街並みが流れている。ミーナさんたちと空を歩んだよりもずいぶんと低い。だけどずっと速度は速かった。
カフェ・ノードが見えると水の流れからミアスは飛び出し右手を地面へと向ける。地中から大きな水玉が膨れあげる私たちが店先に着地すると波紋を広げてそれは消えた。
ほんの半日くらいの旅だったのにとても長い間ここを離れていたような気がする。
カフェ・ノードを眺めているとホッとした。我が家に帰ってきた気分だ。
いやその気落ちはそれだけではないと思える。ここが自分ひとりじゃないと思える場所だからだと思った。
ちょっとだけ私も強くなれたのだろうか。
すぐにミーナさんがお店の中から出てきて私は手を振った。ミーナさんも優しくそれに手を振り返す。
もしかしてこうなることをわかっていてミーナさんは私をミアスと送り出したのだろうか。
ミアスがアッ声をあげてミーナさんへと視線を向ける。
「ミーナ。残念なお知らせだ。ミアスたちはどうやらお土産を忘れたらしい」
「そんな!楽しみにしていたのに・・・楽しみにしておやつは我慢していたのに」
がっくりと肩を落とすミーナさんを見て、もしや本当にお土産がほしかっただけではないかとも思えた。
まぁいいかと。がっかりするミーナを不器用な言葉で励ますミアスと共にカフェへと戻り簡単な夕食を取る。ポケットの中に入れたウンディーネのピックに私はこっそりと触れる。
切っ先の尖ったそれはとても暖かく、私も少しずつ前に進まなければならない。
少しずつでいい。季節の変わり目がもう、すぐ目の前まで迫ってきていた。
「うんうん。まずは琴音お姉ちゃんを守らなきゃ。桜花を助けてくれたんだから、まずは自分が助からなきゃダメ」
よしいこう。と桜花の手を引くミアスを必死に止めながら、私はなんだかすっと浮かび上がってしまうそうなほど体が軽くなっているのに気がついた。そしてどうしようもなくミーナさんとカフェ・ノードに集うみんなに会いたくなってもいた。
どっちが助けられているのかわからないと私は苦笑する。
「本当にありがとう!ふたりとも!でも大丈夫だから。こればっかりは・・・自分でなんとかしなきゃいけないと思うの。私はもうひとりじゃないから」
私の言葉でようやくミアスは足を止める。そしてゆっくりと私を振り向くと口を尖らせて非難の視線を向けた。なんだかミアスの仕草がとても可愛らしいと私は笑みをこぼす。桜花は私をすっと見上げるとまっすぐとした瞳でうなずいた。
「うん。なんだか元気がでた。ウチはひとりじゃないんやね。お姉ちゃんたちがいるし」
「そうだね。それに北区のカフェ・ノードっていう所にいけばもっとお友達ができると思う。学校だけがすべてじゃないからね」
うん。と桜花ちゃんはそう応える。最後のセリフはきっと自分自身にも向けた言葉だなと私は思った。
「ありがとう。今日は楽しかったし不思議な日だったね。ここからは桜花がひとりで帰れる」
じゃあね。と桜花は手を振りながら近くに見えるマンションへと駆けていった。私はその後ろ姿が見えなくなるまで手を振って見送る。
ありがとう。そんな言葉を添えて。
桜花がすっかりと見えなくなるとミアスは私の隣に立ち空を見上げる。どうしたの?と声をかけるとミアスは目を凝らして北へと視線を伸ばしている。
「この街は北へと向けて上り坂が続いている。高さを計算している」
ん?と小首をかしげる私に、これくらいでいいか。とミアスは満足そうに一度うなずくと私をぎゅっと抱き寄せる。どうしたことかと私は目を白黒とさせた。
「桜花がいたからさっきは使えなかったけど、ミアスはバスがうんざりだ。時間がかかる。だから水渡りの魔法でカフェ・ノードに戻ろう。ちゃんとミーナさんに報告しよう」
状況がまだうまくつかめていない私は、されるがままにミアスへと身を寄せる。ミアスは目を閉じ、息を吸い込むと右のつま先でそっと地面に触れる。
するとその地面が砂煙をあげながら波紋を広げていく。中央から波紋が広がるたびに高さを増していき徐々に、現れた水の柱が高さを増していく。そしてぐるぐると回転しつつ空気中の水を集めて太さが増していく。
ふたりの人が容易に入れるくらいの大きさになった時、バネのように一度縮むと水の柱が北の空へと向けて跳ねた。まるで水でできたとても大きな架け橋みたいに空の向こうに消えていく。
ミアスが私を抱いたまま足を踏み入れると水の流れに合わせて私の体も宙に浮いた。
いや・・・宙に浮いたというよりもその水が作った架け橋の中をすごい勢いで流れている。空を飛んでいる時とは違うその流れが、ぐんぐんと北の空へと私たちを流していった。しかし衣服が濡れるようすもなくどこかそれは暖かく感じる。
「ミアスはひとりでなんでもできると思っていた。ミアスは自分が好きだから、自分がよければそれでいいと思っていた。ミアスはとっても強いから」
北の空へと宙を流されながらミアスは独り言のように話し、私は耳をかたむける。
「でも琴音を見ていると違うと思った。桜花もまたそうだ。ひとりで何もできなくても、みんなで世界も自分も変えられる。そう思うとなんだかミアスももっと強くなった気がした。ひとりで強くならないといけないと思っていたから。琴音の言葉にはとても力がある」
「そんな力はないよ。私がダメダメなだけだよ。ミーナさんみたいにはなれない」
「ミーナになる必要がなぜあるんだ?琴音は琴音で自分を変えられる。自分だけじゃない、ミアスや周りの人を変えることができる。それは琴音が弱いからだとしても琴音は十分に強い。たが周りに似たような人がいなかっただけだ」
「そうかな?私は自分を変えられるかな?」
「そうだ。ミアスはそう思う。もしひとりで何もできなくなってもミアスがいる。今日のお礼にミアスのこれをあげる。いつも一緒にいる宝物だ」
そういってミアスはポケットの中から大きな涙のような形をした硬くて薄いプラスチックの塊を差し出す。
「これは?」
「これはギターのピックだ。ミアスがギターを始めていた時から使っていた。だから琴音にこれをやる。もう琴音はひとりじゃない」
そっか。とそれを両手で包み胸にぎゅっと抱きしめる。また宝物が増えてしまった。それに宝物は物だけではない。形がなくても私の中には宝物があふれている。
ありがとう。と私は言うとミアスは頬を緩めただけで何も言わなかった。でも心は伝わる。
「そろそろ。カフェが見えてきた。舌を噛まないように」
眼下にはすでに見慣れた街並みが流れている。ミーナさんたちと空を歩んだよりもずいぶんと低い。だけどずっと速度は速かった。
カフェ・ノードが見えると水の流れからミアスは飛び出し右手を地面へと向ける。地中から大きな水玉が膨れあげる私たちが店先に着地すると波紋を広げてそれは消えた。
ほんの半日くらいの旅だったのにとても長い間ここを離れていたような気がする。
カフェ・ノードを眺めているとホッとした。我が家に帰ってきた気分だ。
いやその気落ちはそれだけではないと思える。ここが自分ひとりじゃないと思える場所だからだと思った。
ちょっとだけ私も強くなれたのだろうか。
すぐにミーナさんがお店の中から出てきて私は手を振った。ミーナさんも優しくそれに手を振り返す。
もしかしてこうなることをわかっていてミーナさんは私をミアスと送り出したのだろうか。
ミアスがアッ声をあげてミーナさんへと視線を向ける。
「ミーナ。残念なお知らせだ。ミアスたちはどうやらお土産を忘れたらしい」
「そんな!楽しみにしていたのに・・・楽しみにしておやつは我慢していたのに」
がっくりと肩を落とすミーナさんを見て、もしや本当にお土産がほしかっただけではないかとも思えた。
まぁいいかと。がっかりするミーナを不器用な言葉で励ますミアスと共にカフェへと戻り簡単な夕食を取る。ポケットの中に入れたウンディーネのピックに私はこっそりと触れる。
切っ先の尖ったそれはとても暖かく、私も少しずつ前に進まなければならない。
少しずつでいい。季節の変わり目がもう、すぐ目の前まで迫ってきていた。
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