都会の夢幻

弾風京作

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甘い誘惑

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「仲が良いんだねぇ」
 熱さに我慢が出来ず、先に水風呂で熱さを逃がしていると、
オレ達の他の客二人の中の一人がすぐ後から入って来て、そう声を掛けられた。
サウナ室で二人の姿を見て、ガタイのイイ感じに『眺めがいいな』と満足していたが、
まさか声を掛けられるとは思ってなかったので焦ってしまった。
オレとその客人、デカい二人が入れば少し窮屈なそこの水がイッキに溢れる。
向かい合う形になった彼をよく見ると、ラウンド髭の短髪、
太い眉とキリッとした目は鋭く見えた。
所長に勝るとも劣らないガタいに浅黒い肌。
腕や太股から下の毛並みが少し濃かった。
「えぇ、事務所の上司で、良くしてもらってます。」
腕に水を掛けながら、そんな風に答えた。
「そっかぁ。そういう上司に恵まれて、仕事も楽しいだろうなぁ。
二人を見てるとイイ関係なのがわかるよ。」
そう言って微笑んだ。その笑顔にドキッとさせられた。
鋭く見えた目の存在が優しさ溢れる顔になった。
所長より年上だろうか・・この髭面がこんなに可愛くなるのか。
目を交わす時間がちょっと長かったので、照れ隠しで頭まで水風呂に沈めた。
顔を出すと、所長ともう一人の客人が出て来たのが見えた。

オレが動いた事で、お互いの足が触れ合う形になった。
彼は離れようとはせず、密着を深めたように感じた。少し戸惑ったオレは、
「あの、所長と話されてたみたいですけど、知り合いの方ですか。」
そう会話の流れを持っていった。
「うん、実は、ここでたまにね。」
そっか、みんな仕事帰りにここを利用してるんだ。
そう簡単に納得した。
そういえば所長はどうしてるんだろ。
所長の姿を探す振りをした。
ざっと見渡すと、どうやらここに残って居るのは我々四人だけのようである。
にしても、照明が暗いよなぁ。そんな風に思って所長を再び探すが見当たらない。
『あれ・・ 出ちゃったのかな』
そのオレの様子に向かいの彼が
「大丈夫。あっちに居るよ。」
あごが指す方向に首を回して見ると、シャワーを掛けている上半身が見えた。
そっか、水風呂を占領しちゃっているからシャワーを浴びてるのか。
最初はそんな風に思ったので、
「オレ、ここに長く入り過ぎちゃってるかな。」
そう言って立ち上がろうとした。
すると、向かいの彼に軽く止められた。
「いや、いいんじゃないかな。心配することないよ。」
優しくいなされて、さりげなく静止されたような形になり、再び水に浸った。

薄暗い中、シャワーを浴び終えた所長の上半身がある一ヶ所で止まり、
たたずむ姿がそこから動かなかった。
いや、微かに胸が動き、顔も動いている。
凝らして見ると、両腕で何かを押さえているようだった。
『何をしてるんだろう?』
酔いと熱さの頭で少し様子を見てると、今度は所長の向かいから、
もう一人の客人が立ち上がり、今度は所長が下に姿を隠した。
そして、男の胸には所長の腕であろうものが現れ、男の乳首を弄っているようである。
男は少し見える所長の頭を押さえ、大きく息を漏らした。
『えっ・・』
二人の行為を理解するのにさほど時間はかからなかった。
微かに口からの音が淫らに聞こえた。
信じられなかった。所長には家族があるし、まさかこんな事を?
そう思いながらも再び目を凝らした。
男の腰が大きく前後する。
オレの下半身は薄明かりの中のその行為に反応していた。

「気にするな。こんな事もあるって。」
向かいの男はそう言った。
『気にするな』と言われても、行なわれてる現状は把握出来ても所長の行為は理解し難かった。
当然オレが居るのを知ってての事である。何故だ。
「キミの下半身の具合、キミも嫌いじゃ無さそうだね。
それと、先輩に対しての嫉妬かな?」
気が付けば水風呂の縁で様子を伺っていたオレの背後から彼は近づき耳元でそう囁いた。
そしてオレの下半身を優しく握った。
次にその腕を回され抱き締められた。
『あっ』
突然の行為に声が出た。
水風呂で冷やされた体であったが、すぐに体温が上がった。
首筋に唇が優しく這う。下半身を大きく扱かれる。
『ここでこんな事していいのかな。誰かが来たら気まずいよ。
何より、所長に見られたらヤバイ。』
少し抵抗して
「ダメですよ。」
とやんわり否した。
だが、逃げられたらそう出来たはずなのに男の腕の中は心地良く、
それ以上の行為を求め始めていた。
「大丈夫。もう誰も入って来ないよ。
他の客が出てったら、店を閉めるよう頼んであるから。」
『えっ?』
どういう事なのか呑み込めない。
ここで所長はいつもこんなコトしてるのかな?
酔ってはいたが、水風呂で頭を働かせてみる。
が、ダメだ。弄ばれてる体は気持ち良さで拒絶もせず、身を委ねてしまっていた。
オレの体は水の中で回され、また彼と向き合う形になった。
そして浮力でケツを持ち上げられ、潜望鏡のようにオレの下半身が水面から現れた。
オレの腕が風呂の縁で体を支えているので、隠す事が出来ない。
次の展開が簡単に想像出来た。それはオレの望みだった。
察したように彼は口に包み込んだ。
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