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第三章
別れの決意
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「サラ、これから二人で帝国に行けるよう手配する。少し時間はかかるが、必ず迎えに行く。それまで待っててくれる?」
帰り際、リックさんの提案に私は頷いた。
「さあ、行こう。」
私とリックさんは手を繋いで帰り道を歩いた。彼の手は温かく、私に勇気をくれた。
劇団まではあっという間だった。
リックさんと別れる時、何だかもう会えないような気持ちになり、涙ぐんでしまった。
「頑張れ、サラ。大丈夫、ちゃんと謝ればわかってくれるよ。」
「ありがとう。頑張ってくる。」
ちょうど劇団の前に着いた時、中からエレナが出てきた。
「サラ!帰ってこないから心配したのよ!」
エレナがぎゅっと抱きついてきて、花の香りに包まれた。
「ごめんなさい。」
「この方は?」
「助けてもらったの。」
エレナが離れてリックさんを見た。
「サラがお世話になりました。よかったらお茶でもどうですか?」
そう言ってエレナはリックさんを中へ誘導し、劇場の応接室へ案内した。
「サラは先にみんなに顔を見せてあげて。男性たちは昨日探しに行ってくれたのよ。この方にはお茶をお出しするわ。」
「うん。ありがとう、エレナ。」
私はみんなの元へと向かった。
上演がなくなって各自トレーニングなどをしており、暇を持て余しているようだった。
リハーサル室に行くとみんなが駆け寄ってきた。
「サラ!」
その表情を見て本当に心配をかけていたのだと実感した。
「みんな、心配かけてごめんなさい。そして探してくれてありがとう。」
私は深々と頭を下げた。
「無事でよかったよ。」
みんなはとても優しかった。
「リオネルが一番探してたんだ。顔は見せたかい?」
私が首を横に振ると急いで会いに行くように促された。
リオネルは団長室にいた。
私が中に入るとリオネルが駆け寄ってきた。
「サラ!」
リオネルに抱きしめられた。
リックさんとは違う男性の香り。
「リオネル、心配かけてごめんなさい。」
「帰ってきてよかった。誰かと一緒だったのか?」
リオネルは本当に心配していたようでほっとした表情をしていた。
「リックさんに助けてもらったの。彼のおかげで無事に帰ってこられたのよ。」
「あの酒場の男か。なぜ彼と一緒にいたんだ?」
リオネルの問いに、私は深呼吸してから答えた。
「昨日、あなたに相談したことは覚えてる?考えがまとまらなくて、広場で女神像を見ていたら暗くなってしまったの。その時に、彼が心配して声をかけてくれたの。」
「そうか。彼にはお礼を言わないといけないな。」
リオネルの表情は晴れなかった。
「それで、私、考えたの。上演も中止になってしまったし、ここにいるよりも、私にすべきことを探したいって。だから、ここを辞めようと思うの。」
「そんな!サラがいなくなるなんて考えられない。俺は君が大切だって何度も伝えてきたつもりだ。」
「リオネルには感謝してるの。私の居場所を作ってくれたことに。私には演技しかできないから。」
「だったらなぜ!?今を乗り切れば上演だってできる。少しの我慢なんだ。俺は君の居場所はここだと思ってる。これからも俺たちと一緒にいるべきだ。」
「リオネル、あなたが大切にしている劇団に私を招いてくれたことは感謝しているの。この世界で生きていけるのはあなたのおかげだもの。でも、私は自分の道を進みたいの。」
リオネルは言葉を失い、しばらく沈黙が続いた。
その時、ドアがノックされ、リックさんが入ってきた。
「失礼します。こちらにサラがいると聞いたのですが。」
「リックさん!」
「昨日はサラがお世話になった。お礼を言う。」
礼を言うと言いながらも、リオネルの表情は強張っていて、こんな顔は見たことがなかった。
「泣いてる女性は放っておけない主義なんだ。気にしないでくれ。」
「サラ、泣いたのか?」
私はうつむきながら言った。
「私だって泣きたくなる時もあるわよ。」
リオネルは一瞬言葉を詰まらせた。
「泣きたくなるほど辛かったんだな。俺はそれにも気づかず……。何やってんだろうな。」
「あなたには、あなたの立場があるもの。私はあなたに甘えたりできないの。ルールがあるって知ったあの時から、私の中であなたは大切な仲間であり、団長なの。私はあなたを尊敬してる。でも、今は自分の道を探したいの。」
リックさんが口を開いた。
「サラが決めたことなら、俺も応援するよ。リオネルさん、サラの決意を尊重してあげてくれないか。」
リオネルはしばらく黙っていたが、やがて深く息をついた。
「サラ、君がどこへ行っても俺たちは君の家族だ。いつでも帰ってきていい。」
「ありがとう、リオネル。本当に感謝してる。」
こうして私は劇団を退団することになった。
帰り際、リックさんの提案に私は頷いた。
「さあ、行こう。」
私とリックさんは手を繋いで帰り道を歩いた。彼の手は温かく、私に勇気をくれた。
劇団まではあっという間だった。
リックさんと別れる時、何だかもう会えないような気持ちになり、涙ぐんでしまった。
「頑張れ、サラ。大丈夫、ちゃんと謝ればわかってくれるよ。」
「ありがとう。頑張ってくる。」
ちょうど劇団の前に着いた時、中からエレナが出てきた。
「サラ!帰ってこないから心配したのよ!」
エレナがぎゅっと抱きついてきて、花の香りに包まれた。
「ごめんなさい。」
「この方は?」
「助けてもらったの。」
エレナが離れてリックさんを見た。
「サラがお世話になりました。よかったらお茶でもどうですか?」
そう言ってエレナはリックさんを中へ誘導し、劇場の応接室へ案内した。
「サラは先にみんなに顔を見せてあげて。男性たちは昨日探しに行ってくれたのよ。この方にはお茶をお出しするわ。」
「うん。ありがとう、エレナ。」
私はみんなの元へと向かった。
上演がなくなって各自トレーニングなどをしており、暇を持て余しているようだった。
リハーサル室に行くとみんなが駆け寄ってきた。
「サラ!」
その表情を見て本当に心配をかけていたのだと実感した。
「みんな、心配かけてごめんなさい。そして探してくれてありがとう。」
私は深々と頭を下げた。
「無事でよかったよ。」
みんなはとても優しかった。
「リオネルが一番探してたんだ。顔は見せたかい?」
私が首を横に振ると急いで会いに行くように促された。
リオネルは団長室にいた。
私が中に入るとリオネルが駆け寄ってきた。
「サラ!」
リオネルに抱きしめられた。
リックさんとは違う男性の香り。
「リオネル、心配かけてごめんなさい。」
「帰ってきてよかった。誰かと一緒だったのか?」
リオネルは本当に心配していたようでほっとした表情をしていた。
「リックさんに助けてもらったの。彼のおかげで無事に帰ってこられたのよ。」
「あの酒場の男か。なぜ彼と一緒にいたんだ?」
リオネルの問いに、私は深呼吸してから答えた。
「昨日、あなたに相談したことは覚えてる?考えがまとまらなくて、広場で女神像を見ていたら暗くなってしまったの。その時に、彼が心配して声をかけてくれたの。」
「そうか。彼にはお礼を言わないといけないな。」
リオネルの表情は晴れなかった。
「それで、私、考えたの。上演も中止になってしまったし、ここにいるよりも、私にすべきことを探したいって。だから、ここを辞めようと思うの。」
「そんな!サラがいなくなるなんて考えられない。俺は君が大切だって何度も伝えてきたつもりだ。」
「リオネルには感謝してるの。私の居場所を作ってくれたことに。私には演技しかできないから。」
「だったらなぜ!?今を乗り切れば上演だってできる。少しの我慢なんだ。俺は君の居場所はここだと思ってる。これからも俺たちと一緒にいるべきだ。」
「リオネル、あなたが大切にしている劇団に私を招いてくれたことは感謝しているの。この世界で生きていけるのはあなたのおかげだもの。でも、私は自分の道を進みたいの。」
リオネルは言葉を失い、しばらく沈黙が続いた。
その時、ドアがノックされ、リックさんが入ってきた。
「失礼します。こちらにサラがいると聞いたのですが。」
「リックさん!」
「昨日はサラがお世話になった。お礼を言う。」
礼を言うと言いながらも、リオネルの表情は強張っていて、こんな顔は見たことがなかった。
「泣いてる女性は放っておけない主義なんだ。気にしないでくれ。」
「サラ、泣いたのか?」
私はうつむきながら言った。
「私だって泣きたくなる時もあるわよ。」
リオネルは一瞬言葉を詰まらせた。
「泣きたくなるほど辛かったんだな。俺はそれにも気づかず……。何やってんだろうな。」
「あなたには、あなたの立場があるもの。私はあなたに甘えたりできないの。ルールがあるって知ったあの時から、私の中であなたは大切な仲間であり、団長なの。私はあなたを尊敬してる。でも、今は自分の道を探したいの。」
リックさんが口を開いた。
「サラが決めたことなら、俺も応援するよ。リオネルさん、サラの決意を尊重してあげてくれないか。」
リオネルはしばらく黙っていたが、やがて深く息をついた。
「サラ、君がどこへ行っても俺たちは君の家族だ。いつでも帰ってきていい。」
「ありがとう、リオネル。本当に感謝してる。」
こうして私は劇団を退団することになった。
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