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八章【望み】
8-11 見届ける者
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「おはよう、クリュミケール君‥‥ううん、リオ君。やっぱり来ちゃったね」
そんな声と共に、クリュミケールは目を開ける。そこは奇妙な場所だった。
ぐにゃりと空間が歪んでいて、自然や建物は何もない。ただ、黒と白がぐにゃぐにゃと入り乱れている。
「‥‥不死鳥と共にリオラを‥‥オレ、死んだのか?」
うつ伏せに倒れていたクリュミケールはそう言いながら、体を起こした。
「微妙なところだね。リオ君の魂はリオラさんを目覚めさせる為に体から抜けたの。リオ君の生きた魂がリオラさんの中に入って‥‥でも、もう必要がなくなったから、リオ君の魂はここに来た。引き寄せられてしまった」
その声の主ーーハトネがクリュミケールの前に立ちながらそう説明する。
「ハトネ‥‥!」
その姿を見て、クリュミケールは歓喜にも似た声で彼女の名前を呼んだ。
「ハトネ‥‥ごめんな、君を、救えなくて‥‥」
クリュミケールが謝ると、
「リオ君は何も悪くないよ。私が悪かったの‥‥私が神様だったなんて、本当にびっくりしちゃった‥‥それも、死んじゃってから気づくなんて‥‥」
そう言いながら、ハトネは苦笑いをする。
「でも、そんなことはいいの。このままじゃダメ‥‥リオラさんのしたことが、無駄になっちゃうの」
「‥‥?」
言葉の意味がわからなくてクリュミケールは首を傾げ、
「リオラは‥‥無事に目覚めたのか?彼女は‥‥それに、君がいるってことは、ここは‥‥」
「リオラさんは世界を生かす道を選んでくれたの」
ハトネはそう言い、クリュミケールを見つめて口を開いた。
◆◆◆◆◆
「リオラ‥‥私もサジャエルの手下として、シュイアに従ってきた。だから、わかる。彼はあんたの為に世界を敵に回し、あんたの為だけに生きた。そして今もずっと‥‥あんたを待っている」
ただ静かにクリュミケールを見つめることしかしないリオラに、リウスが訴えかける。
「立場は違うけど、私もあんたと同じ紛い物だからわかる。紛い物は‥‥何も手に入れられないまま消えるんだって‥‥でも、あんたは違う。【見届ける者】の力を持っているのなら、あんたは選べるんだ‥‥あんたは、会いたくないの?会いたい人に、会いたくないの‥‥?」
リウスの声が少しずつ遠退いていくような気がして、リオラは横目に彼女を見た。
「最期に頼みがあるの。私を必ず‥‥アドルの所に届けてほしい‥‥クリュミケールは約束してくれた。だから、あんたの中にクリュミケールがいるのなら‥‥お願い」
そう言ったリウスは微笑んでいて‥‥彼女の体は淡い光に包まれーー‥‥ぽとり‥‥と、床に落ちた。
ただの、小さな人形になって。
今まで目の前にいて、話していたのに、人間ではなかった彼女の本当の姿。
少し古びたように見える、ふっくらとした、手縫いの人間ーー女の子のぬいぐるみ。
それでも彼女は見つけたのだ、大切な者を、帰りたいと思える場所を。
「‥‥会いたい人に‥‥」
ぽつりとリオラは呟き、
「会いたいに、決まってるじゃない‥‥帰りたいに、決まってるじゃない‥‥シュイアの所にーー!でも‥‥憎しみが消えないの!世界なんかどうでもいいの!放っておけば、創造神の魂が喰われて今まで通りの世界が続くでしょう!?それをっ!私の力で壊すこともできる!」
リオラは立ち上がり、不死鳥を見上げる。
「私はシュイアと一緒にいたかっただけなの!他は、どうでもいい、関係ない!だって‥‥人間達は私を殺した!私は助けようとしたのに!私はクリュミケールとは違う!他人のことなんかもうどうでもいいのよ!」
キンッーー‥‥と、甲高い声でリオラは叫んだ。不死鳥は静かに彼女を見つめ、
「‥‥我ももう時期、消え去る‥‥あとはもう、貴女に委ねよう。世界を壊すも生かすも」
不死鳥の言葉に、
「だからっーー‥‥どうして私が‥‥!」
涙が零れ、キラキラと落ちていく。
「リオラよ‥‥我が主を、主の願いを、頼む。主は本当に無知だった。ただ、友を助けたいというだけで、ここまで来たのだ‥‥サジャエルの思い通りに運命を生かされ、だが、その呪縛を解き、リオはクリュミケールとしての人生を掴んだ。そして、貴女の過去を見て、自分のせいで貴女の人生を歪めてしまったと自覚している。その上で、貴女に幸せになってほしいと、主は願っているのだ」
リオラは力なく首を横に振り、
「‥‥それで、いいの?永遠の命を司る不死鳥が、そんな無知だった女を主として‥‥そして、消滅するのよ?」
それに対し、不死鳥は小さく笑い、
「何も変わらない。かつての主の方が無鉄砲な男だった。だが、二人とも大切な者を守る信念を強く持ち合わせていた。我は今度こそ、最期まで‥‥主と在れた。無知だった少女が剣を取り、己が道を歩んだ。こんな小さな体で、短い生で‥‥【見届ける者】など関係ない。守るべき者の為に、主は立派な剣士になった」
不死鳥の体がうっすらと透けていく。
「それに、主は恐らくまだ、死んではいない。肉体はここに在る‥‥だから、リオラよ。主の真意が知りたいのなら、その為に生きるという選択肢もある」
その言葉に、リオラは目を見開かせた。
不死鳥は目を閉じ、初めてリオと言葉を交わした日を思い出す。
頼りない顔をしていた、弱々しい体をしていた。それでも、強く光るエメラルド色の目をしていた‥‥
『‥‥私は、約束を守りたいんです』
『言葉だけじゃ、何も解決できない。だけど、壊すための力は欲しくない』
無知で無力な自分を変えろーーあの日、リオに出した試練だ。だが結局、リオは、クリュミケールは何も変わっていない。
約束を大事にし、言葉で解決しようとすることが多かった。
「‥‥ふ」
思わず、不死鳥の口から笑みがこぼれる‥‥
「エナン‥‥永く、待たせたな‥‥共に逝こう‥‥ようやく、共に‥‥」
ぶわっ‥‥と、炎が舞い上がり、不死鳥の体は炎で覆い隠れる。
激しい風を、リオラは腕で防いだ。
目を開けた時には、不死鳥の姿は消えてなくなっていたのだ。命を司る神が、自身の命の炎を燃やして消滅してしまった。
この場には、立ち尽くすリオラと、動かないクリュミケール、そして転がる人形だけが残され‥‥
「きゃあっ‥‥!」
激しい揺れに、リオラは体勢を崩す。
「くっ‥‥塔が崩れていく‥‥放っておいたら、創造神の魂がそろそろ喰われる‥‥」
リオラはそう言い、もう一度クリュミケールを見つめた。
「‥‥狡いわ、あなた。私をどうしたかったのか言わないまま、今度はあなたが眠るなんて‥‥あなたは私をどう思っていたの?同情したから生かそうとしたの?負い目を感じたの‥‥?ねえ、私はそれが、知りたい‥‥あなたと、話がしてみたい」
涙が流れて止まらない。
『不老の命なんてない世界にしたい。神も不老の命も必要ないんだ‥‥それぞれの種族はそれぞれの命の期限を生きることに意味がある』
先程、クリュミケールが語っていた言葉を思い出す。
「クリュミケール‥‥あなたの周りには、優しい人達ばかりだったのね‥‥羨ましいわ。いいえ、違うわね‥‥あなたが必死に生きて、縁を築いたからこそ‥‥そんな人達が集まったのね‥‥」
リオラは涙を拭い、意を決するようにエメラルド色の瞳を凛と輝かせて口を開き、そして呪文を唱えた‥‥
◆◆◆◆◆
ハトネは事の顛末を話終えた。
「リオラさんは世界を生かしてくれた‥‥でも、やはり【見届ける者】の器である彼女の力は完全じゃないの。今はね、ザメシアの呪縛が解け、リオラさんの半分程の命で世界が保たれている中途半端な状態なの」
「リオラの‥‥半分の命?」
クリュミケールは疑問を口にする。
「寿命と言った方がわかりやすいかな‥‥」
「そんな!?せっかくリオラは目覚めたのに!」
「‥‥うん。でも、しばらくはそれで世界は続く‥‥でも、足りないの。【世界の心臓】は‥‥今まで妖精達を喰っていた心臓は‥‥リオラの命半分じゃ、足りない」
ドクンッ‥‥ドクンッ‥‥
急に、空間が鼓動を鳴らせたような気がする。
近くに、聞こえる。
「心音‥‥?」
クリュミケールはぐにゃぐにゃと白黒に歪む空間を見回した。
「【世界の心臓】は、創造神である私の魂を‥‥そして、更にはリオラと同じ命の色をしたリオ君の魂も欲している。私達の命なら、妖精達の命の量を上回るわ。【世界の心臓】からしたらご馳走なの」
ハトネは冷や汗を流しながらせわしなく視線を動かし、
「でもね、私の魂で十分だから。だから、リオ君はまだ間に合う。リオ君の魂は守ってみせる!」
そうクリュミケールに言うが、
「君の魂が喰われるなんてダメだ!フィレアさん達もそれを望んでいなかった。それに、君を一人になんかしない!ましてや、犠牲になんかしない!」
クリュミケールは真剣な表情をしてそう叫ぶ。
「そうだ‥‥!キャンドルがな、君のこと、好きだったんだぜ!」
「えっ!?」
いきなりクリュミケールに言われて、ハトネは目を丸くした。
「キャンドルだけじゃない‥‥皆、君を想ってるんだ!ザメシア‥‥ラズだって」
「‥‥」
ハトネは俯き、目に涙を滲ませた。
「でも、ダメだよ‥‥どうすることも、出来ないよ‥‥だから、私の命で‥‥」
「ハトネ‥‥そんなのもう終わりにしよう?そうすることで、ザメシアはずっと、苦しんでいたんだろう?ならもう、苦しいのは、やめにしよう」
クリュミケールはハトネの手を取り、
「昔、オレが魔術を初めて目にした日、シュイアさんが言っていたんだ。この世界には何にも属さない、生まれるはずのない魔術があるかもしれないって。もしかしてそれが‥‥リオラが唱えた魔術、世界を動かす為の魔術なのか?」
クリュミケールの問いに、ハトネは頷く。
その瞬間、シュウゥゥゥゥゥ‥‥と、霧がクリュミケール達を取り囲んだ。
「っ!」
ハトネが体を大きく揺らし、怯えるような顔をした為、クリュミケールは彼女の視線の先を見る。
霧が晴れていき、徐々になんらかの形を明らかにしていく。
ドクンッ、ドクンッ‥‥
心音が、大きく聞こえてきた。
ーー‥‥心臓だ。
錆びた鎖に繋がれた大きな心臓が姿を見せた。
「なっ‥‥気味が悪い‥‥本物の、心臓!?脈を打ってやがる‥‥これが、【世界の心臓】なのか!?こんなものが、人の魂を喰って世界を保ってきたのか!?」
その心臓にはいくつもの‘口’が付いていて、そこから牙が剥き出しになり、唾液がダラダラと垂れ流されている‥‥
「この世界は創造神、私の力で保っていた。でも、命が増えていき、私一人の力で保つのは難しくなった。【世界の心臓】は私が作ったの‥‥膨大な魔力と命を喰わせ、世界を保つ歯車のようなもの‥‥」
「‥‥ちらっと、ザメシアから聞いたよ。最初は、神族の少女一人の命‥‥だったっけ?」
クリュミケールが聞くと、ハトネは頷いた。
「でも、その少女を愛してしまった人間がいたの。こんな仕組みは間違っているって、私たち神を否定した。歯車が狂い、世界の均衡は崩れ、私一人の力では崩壊を止めるのは間に合わなくて‥‥そんな時に、【紅の魔術師】が現れた。妖精族の大量の亡骸と、妖精王ザメシアを連れて‥‥妖精族の魔力は膨大で、これだけの命があれば、世界を永久に持続させる仕組みが簡単に出来る‥‥」
ハトネはギュッと目を閉じ、
「世界を守らなければいけなかった‥‥!だから【紅の魔術師】や人間達の行いを赦してしまった‥‥ザメシアがラズ君だったなんて、気づかなかった‥‥私は、私は彼を‥‥苦しめた元凶なの!彼らの命よりも、世界を取ってしまった‥‥ザメシアは私を恨み、サジャエルは私を助けようとしている内に狂ってしまった!私は、私が全部わるいの!私がっ‥‥」
頭を抱えて叫ぶハトネの背中を、バシッーー!と、クリュミケールが叩く。ハトネは恐る恐る顔を上げた。
「遠い過去‥‥なんだろう?オレは、ザメシアも創造神も知らないよ。オレが出会ったのは、ラズとハトネだ」
そうしてクリュミケールは心臓を真っ直ぐに見つめ、
「リオラが崩壊を止めてくれた、時間を作ってくれたんだ!だったら、オレが本物の【見届ける者】ならば‥‥!オレに出来ることを教えてくれ、ハトネ!」
しかし、それに応えたのは別のものだった。リウスに手渡された、赤い石に白い羽がついたペンダントの欠片。
ズボンのポケットに入っていたそれが、ふわふわとクリュミケールの眼前に浮かんだのだ。
それが、クリュミケールに何かを訴えかけてくる。
ほぎゃあ、ほぎゃあっーー‥‥赤ん坊の泣き声が頭の中に響いた。
そして、楽園である塔の中の一室が脳裏に浮かぶ。
『‥‥女の子が産まれたのね』
黒い長い髪をなびかせながら、ハトネが目を細め、笑って言って‥‥
『ええ‥‥名前は決まっているわ』
赤ん坊を抱き、そう言ったのは‥‥
『名前は‥‥リオよ。あの人がくれた、物語の主人公の名前よ』
穏やかに微笑むサジャエルであった。
「えっ‥‥?」
ペンダントの欠片は光を放ち、ふわふわと浮き続けている。
「リオ君‥‥!?」
ハトネの声にクリュミケールは振り向き、
「あっ‥‥ハトネ‥‥サジャエルって‥‥オレ、の‥‥」
クリュミケールの言葉と、目の前に浮かぶ英雄のペンダント。
それを見て、ハトネは何かを察するように目を閉じ、静かに頷いた。
それならば‥‥ザメシアは言っていた。
『‥‥今のが、過去の英雄の一人であり、かつての不死鳥の契約者ーーそして、サジャエルの恋人だった』
このペンダントの持ち主の、空色の髪と金の髪を持った少年‥‥彼は‥‥
クリュミケールは深く息を吐き、
「今は、考えなくていいか‥‥頭の中に、呪文が浮かぶんだ。このペンダントの欠片が、教えてくれているのか‥‥」
そっと、輝き続ける欠片に触れ、まるで、メロディーのように頭の中に流れてくる言葉を口にした。
『世界よ、闇を打ち砕き、光があらんことを。【遠い昔】より【トモダチ】と呼べる【繋がり】よ、【何処かで】一筋の【道標】となり【生きる証】を見つけ、【遠い約束】を思い返せ。我が【望み】よ、一筋の光よ、我が声を力とし、世界を奏でる。今こそーー無色の唄を‥‥』
その呪文の通りに、まるで唄のように、楽譜の線のように光が【世界の心臓】に向かって流れていく。
同時に、シャリン‥‥と、心臓に巻き付いた鎖が切れた。
ぶわっ‥‥と、禍々しい真っ黒な煙が心臓から放たれ、心臓の姿は覆い隠される。
どす黒いものが次から次に溢れて‥‥すると、クリュミケールの目の前に一人の少女が立っていた。
自分と同じ金髪の髪とエメラルド色の瞳をした、見知らぬ少女‥‥
その隣には、銀髪の青年が立っている。
二人はふわりと微笑み、寄り添うように消えていった‥‥
知らないはずの二人なのに、クリュミケールの目から涙が流れる。
振り向けば、ハトネも泣いていた。きっと、知っている誰かなのだろう‥‥
そうして、禍々しい【世界の心臓】も、その姿を消滅させた‥‥
「無色の唄‥‥今のが、生まれるはずのない魔術、か」
すると、クリュミケールの中から力が、魔力というものがなくなっていく感覚がして‥‥
しかし、考える暇も与えてはくれない。空間がひび割れ始めたのだ‥‥
「‥‥【世界の心臓】は消滅した‥‥贄が必要なくなったから、この空間が不要になったのね。リオ君‥‥もう大丈夫。あなたの、【見届ける者】の力で、世界は救われたわ‥‥もう二度と、壊れない」
「本当に‥‥?」
信じられないとクリュミケールはハトネを見つめ、
「じゃあ、一緒に帰ろう、ハトネ!皆の所へ」
クリュミケールは彼女に手を差し伸べるが、ハトネは首を横に振る。
「ほら、不死鳥があの場所で消滅したから、どの道‥‥神々は、私はもう消滅するの。今は【世界の心臓】に生かされていただけ‥‥」
「っ‥‥そう、か。じゃあ、オレも、消滅するのか」
ため息を吐き、クリュミケールはその場に座り込んだ。
「そうだなぁ‥‥ハトネ、君はずっと傍に居てくれた。だから今度はオレが返す番だな。一緒にいるよ。オレのこととリウスのことはきっと、リオラが伝えてくれるよな」
「リオ君‥‥」
ハトネは呆然とクリュミケールを見つめ、それから微笑み、後ろからクリュミケールを抱き締める。
「大好きだよ、リオ君‥‥私の王子様。世界を救った英雄‥‥皆、大好きだよ。シュイアさん、フィレアさん、ラズ君、カシルさん、アイムさん、カルトルート君、レムズさん、アドル君、キャンドルさん‥‥この時代で皆に会えて、本当に、嬉しかった‥‥こんな私が‥‥最後の時代に‥‥幸せに、なれた‥‥!」
ハトネはそう口にして、とても強く、満足そうに笑った。
ーー‥‥空間が無に還る。
ハトネの声と温もりが消えていく。
そしてーー。
そんな声と共に、クリュミケールは目を開ける。そこは奇妙な場所だった。
ぐにゃりと空間が歪んでいて、自然や建物は何もない。ただ、黒と白がぐにゃぐにゃと入り乱れている。
「‥‥不死鳥と共にリオラを‥‥オレ、死んだのか?」
うつ伏せに倒れていたクリュミケールはそう言いながら、体を起こした。
「微妙なところだね。リオ君の魂はリオラさんを目覚めさせる為に体から抜けたの。リオ君の生きた魂がリオラさんの中に入って‥‥でも、もう必要がなくなったから、リオ君の魂はここに来た。引き寄せられてしまった」
その声の主ーーハトネがクリュミケールの前に立ちながらそう説明する。
「ハトネ‥‥!」
その姿を見て、クリュミケールは歓喜にも似た声で彼女の名前を呼んだ。
「ハトネ‥‥ごめんな、君を、救えなくて‥‥」
クリュミケールが謝ると、
「リオ君は何も悪くないよ。私が悪かったの‥‥私が神様だったなんて、本当にびっくりしちゃった‥‥それも、死んじゃってから気づくなんて‥‥」
そう言いながら、ハトネは苦笑いをする。
「でも、そんなことはいいの。このままじゃダメ‥‥リオラさんのしたことが、無駄になっちゃうの」
「‥‥?」
言葉の意味がわからなくてクリュミケールは首を傾げ、
「リオラは‥‥無事に目覚めたのか?彼女は‥‥それに、君がいるってことは、ここは‥‥」
「リオラさんは世界を生かす道を選んでくれたの」
ハトネはそう言い、クリュミケールを見つめて口を開いた。
◆◆◆◆◆
「リオラ‥‥私もサジャエルの手下として、シュイアに従ってきた。だから、わかる。彼はあんたの為に世界を敵に回し、あんたの為だけに生きた。そして今もずっと‥‥あんたを待っている」
ただ静かにクリュミケールを見つめることしかしないリオラに、リウスが訴えかける。
「立場は違うけど、私もあんたと同じ紛い物だからわかる。紛い物は‥‥何も手に入れられないまま消えるんだって‥‥でも、あんたは違う。【見届ける者】の力を持っているのなら、あんたは選べるんだ‥‥あんたは、会いたくないの?会いたい人に、会いたくないの‥‥?」
リウスの声が少しずつ遠退いていくような気がして、リオラは横目に彼女を見た。
「最期に頼みがあるの。私を必ず‥‥アドルの所に届けてほしい‥‥クリュミケールは約束してくれた。だから、あんたの中にクリュミケールがいるのなら‥‥お願い」
そう言ったリウスは微笑んでいて‥‥彼女の体は淡い光に包まれーー‥‥ぽとり‥‥と、床に落ちた。
ただの、小さな人形になって。
今まで目の前にいて、話していたのに、人間ではなかった彼女の本当の姿。
少し古びたように見える、ふっくらとした、手縫いの人間ーー女の子のぬいぐるみ。
それでも彼女は見つけたのだ、大切な者を、帰りたいと思える場所を。
「‥‥会いたい人に‥‥」
ぽつりとリオラは呟き、
「会いたいに、決まってるじゃない‥‥帰りたいに、決まってるじゃない‥‥シュイアの所にーー!でも‥‥憎しみが消えないの!世界なんかどうでもいいの!放っておけば、創造神の魂が喰われて今まで通りの世界が続くでしょう!?それをっ!私の力で壊すこともできる!」
リオラは立ち上がり、不死鳥を見上げる。
「私はシュイアと一緒にいたかっただけなの!他は、どうでもいい、関係ない!だって‥‥人間達は私を殺した!私は助けようとしたのに!私はクリュミケールとは違う!他人のことなんかもうどうでもいいのよ!」
キンッーー‥‥と、甲高い声でリオラは叫んだ。不死鳥は静かに彼女を見つめ、
「‥‥我ももう時期、消え去る‥‥あとはもう、貴女に委ねよう。世界を壊すも生かすも」
不死鳥の言葉に、
「だからっーー‥‥どうして私が‥‥!」
涙が零れ、キラキラと落ちていく。
「リオラよ‥‥我が主を、主の願いを、頼む。主は本当に無知だった。ただ、友を助けたいというだけで、ここまで来たのだ‥‥サジャエルの思い通りに運命を生かされ、だが、その呪縛を解き、リオはクリュミケールとしての人生を掴んだ。そして、貴女の過去を見て、自分のせいで貴女の人生を歪めてしまったと自覚している。その上で、貴女に幸せになってほしいと、主は願っているのだ」
リオラは力なく首を横に振り、
「‥‥それで、いいの?永遠の命を司る不死鳥が、そんな無知だった女を主として‥‥そして、消滅するのよ?」
それに対し、不死鳥は小さく笑い、
「何も変わらない。かつての主の方が無鉄砲な男だった。だが、二人とも大切な者を守る信念を強く持ち合わせていた。我は今度こそ、最期まで‥‥主と在れた。無知だった少女が剣を取り、己が道を歩んだ。こんな小さな体で、短い生で‥‥【見届ける者】など関係ない。守るべき者の為に、主は立派な剣士になった」
不死鳥の体がうっすらと透けていく。
「それに、主は恐らくまだ、死んではいない。肉体はここに在る‥‥だから、リオラよ。主の真意が知りたいのなら、その為に生きるという選択肢もある」
その言葉に、リオラは目を見開かせた。
不死鳥は目を閉じ、初めてリオと言葉を交わした日を思い出す。
頼りない顔をしていた、弱々しい体をしていた。それでも、強く光るエメラルド色の目をしていた‥‥
『‥‥私は、約束を守りたいんです』
『言葉だけじゃ、何も解決できない。だけど、壊すための力は欲しくない』
無知で無力な自分を変えろーーあの日、リオに出した試練だ。だが結局、リオは、クリュミケールは何も変わっていない。
約束を大事にし、言葉で解決しようとすることが多かった。
「‥‥ふ」
思わず、不死鳥の口から笑みがこぼれる‥‥
「エナン‥‥永く、待たせたな‥‥共に逝こう‥‥ようやく、共に‥‥」
ぶわっ‥‥と、炎が舞い上がり、不死鳥の体は炎で覆い隠れる。
激しい風を、リオラは腕で防いだ。
目を開けた時には、不死鳥の姿は消えてなくなっていたのだ。命を司る神が、自身の命の炎を燃やして消滅してしまった。
この場には、立ち尽くすリオラと、動かないクリュミケール、そして転がる人形だけが残され‥‥
「きゃあっ‥‥!」
激しい揺れに、リオラは体勢を崩す。
「くっ‥‥塔が崩れていく‥‥放っておいたら、創造神の魂がそろそろ喰われる‥‥」
リオラはそう言い、もう一度クリュミケールを見つめた。
「‥‥狡いわ、あなた。私をどうしたかったのか言わないまま、今度はあなたが眠るなんて‥‥あなたは私をどう思っていたの?同情したから生かそうとしたの?負い目を感じたの‥‥?ねえ、私はそれが、知りたい‥‥あなたと、話がしてみたい」
涙が流れて止まらない。
『不老の命なんてない世界にしたい。神も不老の命も必要ないんだ‥‥それぞれの種族はそれぞれの命の期限を生きることに意味がある』
先程、クリュミケールが語っていた言葉を思い出す。
「クリュミケール‥‥あなたの周りには、優しい人達ばかりだったのね‥‥羨ましいわ。いいえ、違うわね‥‥あなたが必死に生きて、縁を築いたからこそ‥‥そんな人達が集まったのね‥‥」
リオラは涙を拭い、意を決するようにエメラルド色の瞳を凛と輝かせて口を開き、そして呪文を唱えた‥‥
◆◆◆◆◆
ハトネは事の顛末を話終えた。
「リオラさんは世界を生かしてくれた‥‥でも、やはり【見届ける者】の器である彼女の力は完全じゃないの。今はね、ザメシアの呪縛が解け、リオラさんの半分程の命で世界が保たれている中途半端な状態なの」
「リオラの‥‥半分の命?」
クリュミケールは疑問を口にする。
「寿命と言った方がわかりやすいかな‥‥」
「そんな!?せっかくリオラは目覚めたのに!」
「‥‥うん。でも、しばらくはそれで世界は続く‥‥でも、足りないの。【世界の心臓】は‥‥今まで妖精達を喰っていた心臓は‥‥リオラの命半分じゃ、足りない」
ドクンッ‥‥ドクンッ‥‥
急に、空間が鼓動を鳴らせたような気がする。
近くに、聞こえる。
「心音‥‥?」
クリュミケールはぐにゃぐにゃと白黒に歪む空間を見回した。
「【世界の心臓】は、創造神である私の魂を‥‥そして、更にはリオラと同じ命の色をしたリオ君の魂も欲している。私達の命なら、妖精達の命の量を上回るわ。【世界の心臓】からしたらご馳走なの」
ハトネは冷や汗を流しながらせわしなく視線を動かし、
「でもね、私の魂で十分だから。だから、リオ君はまだ間に合う。リオ君の魂は守ってみせる!」
そうクリュミケールに言うが、
「君の魂が喰われるなんてダメだ!フィレアさん達もそれを望んでいなかった。それに、君を一人になんかしない!ましてや、犠牲になんかしない!」
クリュミケールは真剣な表情をしてそう叫ぶ。
「そうだ‥‥!キャンドルがな、君のこと、好きだったんだぜ!」
「えっ!?」
いきなりクリュミケールに言われて、ハトネは目を丸くした。
「キャンドルだけじゃない‥‥皆、君を想ってるんだ!ザメシア‥‥ラズだって」
「‥‥」
ハトネは俯き、目に涙を滲ませた。
「でも、ダメだよ‥‥どうすることも、出来ないよ‥‥だから、私の命で‥‥」
「ハトネ‥‥そんなのもう終わりにしよう?そうすることで、ザメシアはずっと、苦しんでいたんだろう?ならもう、苦しいのは、やめにしよう」
クリュミケールはハトネの手を取り、
「昔、オレが魔術を初めて目にした日、シュイアさんが言っていたんだ。この世界には何にも属さない、生まれるはずのない魔術があるかもしれないって。もしかしてそれが‥‥リオラが唱えた魔術、世界を動かす為の魔術なのか?」
クリュミケールの問いに、ハトネは頷く。
その瞬間、シュウゥゥゥゥゥ‥‥と、霧がクリュミケール達を取り囲んだ。
「っ!」
ハトネが体を大きく揺らし、怯えるような顔をした為、クリュミケールは彼女の視線の先を見る。
霧が晴れていき、徐々になんらかの形を明らかにしていく。
ドクンッ、ドクンッ‥‥
心音が、大きく聞こえてきた。
ーー‥‥心臓だ。
錆びた鎖に繋がれた大きな心臓が姿を見せた。
「なっ‥‥気味が悪い‥‥本物の、心臓!?脈を打ってやがる‥‥これが、【世界の心臓】なのか!?こんなものが、人の魂を喰って世界を保ってきたのか!?」
その心臓にはいくつもの‘口’が付いていて、そこから牙が剥き出しになり、唾液がダラダラと垂れ流されている‥‥
「この世界は創造神、私の力で保っていた。でも、命が増えていき、私一人の力で保つのは難しくなった。【世界の心臓】は私が作ったの‥‥膨大な魔力と命を喰わせ、世界を保つ歯車のようなもの‥‥」
「‥‥ちらっと、ザメシアから聞いたよ。最初は、神族の少女一人の命‥‥だったっけ?」
クリュミケールが聞くと、ハトネは頷いた。
「でも、その少女を愛してしまった人間がいたの。こんな仕組みは間違っているって、私たち神を否定した。歯車が狂い、世界の均衡は崩れ、私一人の力では崩壊を止めるのは間に合わなくて‥‥そんな時に、【紅の魔術師】が現れた。妖精族の大量の亡骸と、妖精王ザメシアを連れて‥‥妖精族の魔力は膨大で、これだけの命があれば、世界を永久に持続させる仕組みが簡単に出来る‥‥」
ハトネはギュッと目を閉じ、
「世界を守らなければいけなかった‥‥!だから【紅の魔術師】や人間達の行いを赦してしまった‥‥ザメシアがラズ君だったなんて、気づかなかった‥‥私は、私は彼を‥‥苦しめた元凶なの!彼らの命よりも、世界を取ってしまった‥‥ザメシアは私を恨み、サジャエルは私を助けようとしている内に狂ってしまった!私は、私が全部わるいの!私がっ‥‥」
頭を抱えて叫ぶハトネの背中を、バシッーー!と、クリュミケールが叩く。ハトネは恐る恐る顔を上げた。
「遠い過去‥‥なんだろう?オレは、ザメシアも創造神も知らないよ。オレが出会ったのは、ラズとハトネだ」
そうしてクリュミケールは心臓を真っ直ぐに見つめ、
「リオラが崩壊を止めてくれた、時間を作ってくれたんだ!だったら、オレが本物の【見届ける者】ならば‥‥!オレに出来ることを教えてくれ、ハトネ!」
しかし、それに応えたのは別のものだった。リウスに手渡された、赤い石に白い羽がついたペンダントの欠片。
ズボンのポケットに入っていたそれが、ふわふわとクリュミケールの眼前に浮かんだのだ。
それが、クリュミケールに何かを訴えかけてくる。
ほぎゃあ、ほぎゃあっーー‥‥赤ん坊の泣き声が頭の中に響いた。
そして、楽園である塔の中の一室が脳裏に浮かぶ。
『‥‥女の子が産まれたのね』
黒い長い髪をなびかせながら、ハトネが目を細め、笑って言って‥‥
『ええ‥‥名前は決まっているわ』
赤ん坊を抱き、そう言ったのは‥‥
『名前は‥‥リオよ。あの人がくれた、物語の主人公の名前よ』
穏やかに微笑むサジャエルであった。
「えっ‥‥?」
ペンダントの欠片は光を放ち、ふわふわと浮き続けている。
「リオ君‥‥!?」
ハトネの声にクリュミケールは振り向き、
「あっ‥‥ハトネ‥‥サジャエルって‥‥オレ、の‥‥」
クリュミケールの言葉と、目の前に浮かぶ英雄のペンダント。
それを見て、ハトネは何かを察するように目を閉じ、静かに頷いた。
それならば‥‥ザメシアは言っていた。
『‥‥今のが、過去の英雄の一人であり、かつての不死鳥の契約者ーーそして、サジャエルの恋人だった』
このペンダントの持ち主の、空色の髪と金の髪を持った少年‥‥彼は‥‥
クリュミケールは深く息を吐き、
「今は、考えなくていいか‥‥頭の中に、呪文が浮かぶんだ。このペンダントの欠片が、教えてくれているのか‥‥」
そっと、輝き続ける欠片に触れ、まるで、メロディーのように頭の中に流れてくる言葉を口にした。
『世界よ、闇を打ち砕き、光があらんことを。【遠い昔】より【トモダチ】と呼べる【繋がり】よ、【何処かで】一筋の【道標】となり【生きる証】を見つけ、【遠い約束】を思い返せ。我が【望み】よ、一筋の光よ、我が声を力とし、世界を奏でる。今こそーー無色の唄を‥‥』
その呪文の通りに、まるで唄のように、楽譜の線のように光が【世界の心臓】に向かって流れていく。
同時に、シャリン‥‥と、心臓に巻き付いた鎖が切れた。
ぶわっ‥‥と、禍々しい真っ黒な煙が心臓から放たれ、心臓の姿は覆い隠される。
どす黒いものが次から次に溢れて‥‥すると、クリュミケールの目の前に一人の少女が立っていた。
自分と同じ金髪の髪とエメラルド色の瞳をした、見知らぬ少女‥‥
その隣には、銀髪の青年が立っている。
二人はふわりと微笑み、寄り添うように消えていった‥‥
知らないはずの二人なのに、クリュミケールの目から涙が流れる。
振り向けば、ハトネも泣いていた。きっと、知っている誰かなのだろう‥‥
そうして、禍々しい【世界の心臓】も、その姿を消滅させた‥‥
「無色の唄‥‥今のが、生まれるはずのない魔術、か」
すると、クリュミケールの中から力が、魔力というものがなくなっていく感覚がして‥‥
しかし、考える暇も与えてはくれない。空間がひび割れ始めたのだ‥‥
「‥‥【世界の心臓】は消滅した‥‥贄が必要なくなったから、この空間が不要になったのね。リオ君‥‥もう大丈夫。あなたの、【見届ける者】の力で、世界は救われたわ‥‥もう二度と、壊れない」
「本当に‥‥?」
信じられないとクリュミケールはハトネを見つめ、
「じゃあ、一緒に帰ろう、ハトネ!皆の所へ」
クリュミケールは彼女に手を差し伸べるが、ハトネは首を横に振る。
「ほら、不死鳥があの場所で消滅したから、どの道‥‥神々は、私はもう消滅するの。今は【世界の心臓】に生かされていただけ‥‥」
「っ‥‥そう、か。じゃあ、オレも、消滅するのか」
ため息を吐き、クリュミケールはその場に座り込んだ。
「そうだなぁ‥‥ハトネ、君はずっと傍に居てくれた。だから今度はオレが返す番だな。一緒にいるよ。オレのこととリウスのことはきっと、リオラが伝えてくれるよな」
「リオ君‥‥」
ハトネは呆然とクリュミケールを見つめ、それから微笑み、後ろからクリュミケールを抱き締める。
「大好きだよ、リオ君‥‥私の王子様。世界を救った英雄‥‥皆、大好きだよ。シュイアさん、フィレアさん、ラズ君、カシルさん、アイムさん、カルトルート君、レムズさん、アドル君、キャンドルさん‥‥この時代で皆に会えて、本当に、嬉しかった‥‥こんな私が‥‥最後の時代に‥‥幸せに、なれた‥‥!」
ハトネはそう口にして、とても強く、満足そうに笑った。
ーー‥‥空間が無に還る。
ハトネの声と温もりが消えていく。
そしてーー。
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