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六章【道標】
6-11 あの場所へ
しおりを挟む「模擬店の権利、手に入れました~!」
昼休み、嬉しそうに報告しながら教室に入ってきたのは文化祭委員の松本さん。なにげに彼女ともまた同じクラスで…松本さん、去年も文化祭委員やってたよな。
模擬店は出店数に上限があるから、希望が多いと抽選になってしまう。その抽選を見事当ててきてくれたようだ。
次に文化祭準備にと充てられている時間で決まるよう、何を扱うのか、コンセプトはどうするか、案を出しておいてほしいと。
「光琉はなにかある?」
「シフトが一緒の時間で、日向が接客しないなら何でもいいよ」
「俺、接客しちゃダメなの?」
「ダメ」
これは…いつもの心配性か?
「でも俺も光琉に接客してほしくない」
光琉目当てで来るお客さん、絶対多いと思うし。女子とかオメガとか…心配だし。
「うん。俺もしない。一緒に調理担当したいね」
「それいいな! 前に一緒に作って楽しかった…から///」
やばっ。なんでこんな時に思い出すんだよ。
「日向、顔赤いけど、何考えてるの?」
「なっ!? 別にっ! 何も思い出してないしっ!」
「思い出し…? ふっ。日向のエッチ」
「んなっ!」
だから、一緒に料理した日に初めて最後までしたとか、そんな事思い出してなんかないってば。
あの日と前回の発情期でしかしてないからって…発情期中より記憶が残ってるからって、思い出したりしてないからな!
「ひーなた、拗ねないで?」
「拗ねてないし」
「可愛い。ねぇ、ちゅーしていい?」
「っ!! ダメに決まってるだろっ」
結局何の案もないまま昼休みを終えるチャイムが鳴ってしまった。
「無駄でしょうが一応お願いしておきますね。そういうのは2人きりでやってください」
「「どういうの?」」
「………もういいです」
諦めて席に戻っていった稜ちゃん。蓮も程々にねって言ってくるし…いやいや、今日は咎められるようなことしてないぞ? 俺も光琉もそれぞれ自分の席に座ってるし、キスだってちゃんと断ったし。
「あー、俺も彼女ほしい」
「なに日比野寂しいの? 俺が相手してやろうか?」
「おっ! 宇都宮、俺の彼女になる?」
「なんで俺が彼女なんだよ。日比野が彼女な」
なんて一樹と宇都宮はじゃれているけど、さっさと席に戻れよな。
*
「では飲み物はパック飲料とペットボトルで用意して、ケーキはスポンジケーキに生クリームを添える、これで決定にします」
スポンジケーキは予め用意しておき、数種類の生クリームのうちから注文が入った物を添える。これなら俺でも問題なくできそうだ。
「では次に担当を割り振ります! 希望がある人~」
「俺と日向は調理担当で」
早々に希望を伝えた光琉。
「えっ!? 香坂くんはできたら接客に回ってほしいんだけど…」
やっぱりそうだよな。光琉と宇都宮、稜ちゃんと蓮は集客が見込めるし、接客に回ってほしいって思うよな。
「岩清水くんは絶対に接客に回さないようにするし、シフトだって香坂くんと一緒にするから……お願いできないかな?」
「日向が俺に接客してほしくないって言ってるから、無理」
ちょっと待て。俺ってそんなに接客向いてないのか!? 失礼じゃね?
「俺だって接客くらいできるし…」
「日向、ダメだよ? 一緒に調理担当するって約束したでしょ?」
小さい声で呟いただけなのに、光琉には声が届いていたようで、俺の手を取り、真剣な顔でそう言ってきた。
「そうだけどさ…」
「一緒に調理しようね?」
「……うん」
俺だってそれが一番いいけど…光琉を接客に回したくないって、俺のわがままを聞いてもらっていいのかな?
「あの~香坂くん? 接客に回っては…?」
「無理」
「あ、はい」
絶対にやらないとの姿勢を崩さない光琉に、松本さんも諦めてくれたようだ。
ほんっとごめんな。でも俺は安心した。
話し合いの結果、俺、光琉、蓮、稜ちゃんは調理担当で、一樹と宇都宮は接客担当になった。松本さんは4人を順番に接客のシフトに入れたかったようだけど、それも諦め、俺達みんな同じシフト時間にしてくれるそう。
やったね!
「文化祭を楽しむ権利は俺達にもあるからね」
「それもそうだな」
みんなだって文化祭を回る友達と同じ時間にシフト希望を出すんだし、俺達が希望を出しちゃいけない理由なんてないしな。
「俺は日向と一緒なら4人はどっちでも良いんだけどな」
「あのさ…どっちかはみんなで、どっちかは……2人で回りたい…」
「っ!! 俺も! 日向~」
俺から文化祭デートを誘った事が嬉しかったようで、一応授業中なのに光琉の膝の上に横抱きにされてしまった。
「しないからな」
「いいじゃん」
「ダメ」
ちゅっ。ちゅっ。ちゅっ。
「ダメって言っただろ」
「口にはしてないよ?」
「…………もう、好きにすれば」
光琉に甘すぎだって? うん、それは俺が一番分かってる。
昼休み、嬉しそうに報告しながら教室に入ってきたのは文化祭委員の松本さん。なにげに彼女ともまた同じクラスで…松本さん、去年も文化祭委員やってたよな。
模擬店は出店数に上限があるから、希望が多いと抽選になってしまう。その抽選を見事当ててきてくれたようだ。
次に文化祭準備にと充てられている時間で決まるよう、何を扱うのか、コンセプトはどうするか、案を出しておいてほしいと。
「光琉はなにかある?」
「シフトが一緒の時間で、日向が接客しないなら何でもいいよ」
「俺、接客しちゃダメなの?」
「ダメ」
これは…いつもの心配性か?
「でも俺も光琉に接客してほしくない」
光琉目当てで来るお客さん、絶対多いと思うし。女子とかオメガとか…心配だし。
「うん。俺もしない。一緒に調理担当したいね」
「それいいな! 前に一緒に作って楽しかった…から///」
やばっ。なんでこんな時に思い出すんだよ。
「日向、顔赤いけど、何考えてるの?」
「なっ!? 別にっ! 何も思い出してないしっ!」
「思い出し…? ふっ。日向のエッチ」
「んなっ!」
だから、一緒に料理した日に初めて最後までしたとか、そんな事思い出してなんかないってば。
あの日と前回の発情期でしかしてないからって…発情期中より記憶が残ってるからって、思い出したりしてないからな!
「ひーなた、拗ねないで?」
「拗ねてないし」
「可愛い。ねぇ、ちゅーしていい?」
「っ!! ダメに決まってるだろっ」
結局何の案もないまま昼休みを終えるチャイムが鳴ってしまった。
「無駄でしょうが一応お願いしておきますね。そういうのは2人きりでやってください」
「「どういうの?」」
「………もういいです」
諦めて席に戻っていった稜ちゃん。蓮も程々にねって言ってくるし…いやいや、今日は咎められるようなことしてないぞ? 俺も光琉もそれぞれ自分の席に座ってるし、キスだってちゃんと断ったし。
「あー、俺も彼女ほしい」
「なに日比野寂しいの? 俺が相手してやろうか?」
「おっ! 宇都宮、俺の彼女になる?」
「なんで俺が彼女なんだよ。日比野が彼女な」
なんて一樹と宇都宮はじゃれているけど、さっさと席に戻れよな。
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「では飲み物はパック飲料とペットボトルで用意して、ケーキはスポンジケーキに生クリームを添える、これで決定にします」
スポンジケーキは予め用意しておき、数種類の生クリームのうちから注文が入った物を添える。これなら俺でも問題なくできそうだ。
「では次に担当を割り振ります! 希望がある人~」
「俺と日向は調理担当で」
早々に希望を伝えた光琉。
「えっ!? 香坂くんはできたら接客に回ってほしいんだけど…」
やっぱりそうだよな。光琉と宇都宮、稜ちゃんと蓮は集客が見込めるし、接客に回ってほしいって思うよな。
「岩清水くんは絶対に接客に回さないようにするし、シフトだって香坂くんと一緒にするから……お願いできないかな?」
「日向が俺に接客してほしくないって言ってるから、無理」
ちょっと待て。俺ってそんなに接客向いてないのか!? 失礼じゃね?
「俺だって接客くらいできるし…」
「日向、ダメだよ? 一緒に調理担当するって約束したでしょ?」
小さい声で呟いただけなのに、光琉には声が届いていたようで、俺の手を取り、真剣な顔でそう言ってきた。
「そうだけどさ…」
「一緒に調理しようね?」
「……うん」
俺だってそれが一番いいけど…光琉を接客に回したくないって、俺のわがままを聞いてもらっていいのかな?
「あの~香坂くん? 接客に回っては…?」
「無理」
「あ、はい」
絶対にやらないとの姿勢を崩さない光琉に、松本さんも諦めてくれたようだ。
ほんっとごめんな。でも俺は安心した。
話し合いの結果、俺、光琉、蓮、稜ちゃんは調理担当で、一樹と宇都宮は接客担当になった。松本さんは4人を順番に接客のシフトに入れたかったようだけど、それも諦め、俺達みんな同じシフト時間にしてくれるそう。
やったね!
「文化祭を楽しむ権利は俺達にもあるからね」
「それもそうだな」
みんなだって文化祭を回る友達と同じ時間にシフト希望を出すんだし、俺達が希望を出しちゃいけない理由なんてないしな。
「俺は日向と一緒なら4人はどっちでも良いんだけどな」
「あのさ…どっちかはみんなで、どっちかは……2人で回りたい…」
「っ!! 俺も! 日向~」
俺から文化祭デートを誘った事が嬉しかったようで、一応授業中なのに光琉の膝の上に横抱きにされてしまった。
「しないからな」
「いいじゃん」
「ダメ」
ちゅっ。ちゅっ。ちゅっ。
「ダメって言っただろ」
「口にはしてないよ?」
「…………もう、好きにすれば」
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