70 / 105
六章【道標】
6-9 再び炎の中で(後編)
しおりを挟む
燃え盛るアドルの家の中に入り、
「アスヤさん!」
と、クリュミケールは彼の母親の名前を叫んだ。しかし、返事は返ってこない。
アスヤを捜しながら、クリュミケールは家の中を見て回る。
先日まで平和だったこの家が変わり果ててしまった光景ーー自分を救ってくれた場所。
アドルの父ーーカイナが亡くなってからは、いつもアドルとアスヤと共に食事を囲んでいた場所に辿り着き、クリュミケールは何かを凝視する。
食卓の横に、アスヤがうつ伏せになって倒れていたのだ。
急いで彼女の所に駆け寄ろうとしたが、ドスッーー‥‥!と、クリュミケールの足元に一本のナイフが突き刺さる。
背後になんらかの気配を感じ、勢いよく振り返った。
そこには、フードを深く被った小柄な人物がいつの間にか立っていて‥‥
「お前‥‥」
顔は見えないが、その姿に見覚えがあった。
「‥‥そう。あんたは私を知ってるはずだ。今の私も、前の私も」
それは、低い少女の声。
確かに、知っている。しかし、違和感を感じた。【今の私】そして【前の私】‥‥クリュミケールは記憶を手繰り寄せる。
だが、今はそんな場合ではないと、クリュミケールはアスヤの元に駆け寄り、うつ伏せに倒れた彼女の体を仰向けにして呼吸音と心音を確かめようとした‥‥しかし、そうする前に、彼女の瞳孔は開き、乾いた唇がうっすらと開いているその表情で、彼女はもう、死んでいるということが確認できてしまった。
元より、最近体調が悪かったのだ、火の回った家の中から逃げ出すことが出来なかったのだろう。
「‥‥」
クリュミケールは歯を食いしばり、アスヤの体をゆっくりと床に寝かせる。その様子を見ながら、
「一つ言おう。あんたは馬鹿だ。せっかく全てから逃げれたのに、結局あんたは死への道に足を踏み入れる。逃げようとしない。だから、巻き込んでしまうんだ、他人を」
少女はそう言い、じっとクリュミケールの方を見つめたまま、
「‥‥そうだろう?女神リオラの器ーーリオ」
クリュミケールをそう呼んだ。しかし、クリュミケールは動じることなく、
「‥‥そっちは、フードの四人組の一人って呼んだらいいか?」
クリュミケールは苦笑いを作りながら少女に尋ねた。
五年前、とある森の中でリオを取り囲んだ四人のフードの人物ーー女神サジャエルの付き人と名乗った者達。
確かに、四人の中の一人に少女の声をした人物がいた。
「でも、よく聞けばその声は‥‥リウスちゃん、なのか?」
そう続ければ、少女は顔を覆い隠すフードに手をあて、ゆっくりと自身の顔をさらけ出した。
ニキータ村に住む、アドルの友達。
茶色い大きな目と、短い黒髪をした、年の頃はアドルより少し下であろう、占術という珍しい能力を持った少女ーーリウス。
しかし、いつもは大きく可愛らしく開いていた目が今は冷たく、その表情はまるで、無だ。
「なんで君が‥‥いや、君はいつからこの村にいた?」
ふと、クリュミケールの頭の中にそんな疑問が浮かぶ。彼女は、クリュミケールがニキータ村に来た時からいただろうか‥‥と。
「あんたを監視する為、私はこの村に忍び込んだ。このことは私とあの人しか知らない‥‥はずだった」
クリュミケールの疑問に答えず、リウスはそう語る。
「あの人‥‥?はずだったーーと言うことは?」
「女神リオラの器。あんたはこの炎に見覚えがあるんじゃないか?」
「‥‥」
確かに、嫌な感じはしていた。既視感、と言うのだろうか。
あまりに、あの日に似ていたのだ、この炎は。
燃え盛るフォード城。
シャネラ・フォードの死。
そして、
「‥‥ロナス」
憎悪混じりに、その名を口にした。
「リウスちゃん。君の言うあの人って、あの時オレを逃がしてくれた人か?」
「‥‥そうだ」
「じゃあ、リウスちゃんはオレの味方‥‥」
「こうなった以上、私は再びあんたの敵だ。それに、私の本当の名はカナリア。リウスという存在自体が偽りだ」
そう、リウスーーカナリアは話す。
確かにカナリアと呼ばれていたなとクリュミケールは思い出す。
「君達フードの四人については、ロナスのことしかわからないが‥‥カナリア。君のこともよくわからない。でも君はアドルの友達、だろ?これでいいのか?アスヤさんが目の前で倒れているんだぞ?アドルが、悲しむんだぞ?」
リウスという存在のどこまでが偽りだったのかがわからない。それに、彼女のことを改めて考えてみると、やはりどこか違和感がある。
【ニキータは小さい村の為、村人同士の交流は深い。村人全員が家族と言ってもおかしくはない。】
だからこそ、クリュミケールにとってもそうだった。だが、改めて考えると‥‥
リウスとの思い出というものが、とても曖昧になってくる。
クリュミケールの言葉にカナリアは表情を強ばらせて何か言おうとしたが、彼女は急に驚くような顔をして、慌ててフードを被り直した。
その行動をクリュミケールは不思議に思ったが、
「クリュミケールさん‥‥!」
と、近づいてくる足音と、少年の声。
それは、アドルの声だ。
予想していなかった事態に、クリュミケールは焦るようにアスヤの遺体を見つめる。
火の回りがマシな場所を通りながら、アドルが姿を見せた。
「クリュミケールさ‥‥ーー!?かっ、母さん!?」
アドルはクリュミケールの姿を見て一瞬だけ安堵の笑みを見せたが、すぐに床に倒れたアスヤの姿を見つけ、傍に駆け寄る。
アスヤの変わり果てた姿を見て、アドルは力なくその場に崩れ落ちた。
「かっ、母さん?ねえ、母さんってば‥‥どうし、ちゃったの?おれ、ちゃんと父さんの家族の所に行って来たよ?お婆ちゃんに会ったよ?母さん、母さん‥‥!ねえってば!?」
動かぬ母を何度も何度も泣き叫ぶように呼び、アスヤの肩を何度も何度も揺らす。
それは、見ているだけで痛々しい光景だった。
クリュミケールはそんな彼の姿を、何も言えず、立ち尽くして見ていることしかできない。
アドルはゆっくりと顔を上げ、フードの人物ーーリウスを、カナリアを睨み付けた。
「お前‥‥誰だよ?お前が、やったのか‥‥!?ニキータ村を、母さんをこんなにしたのか!?」
初めて聞くようなアドルの憎悪混じりな声に、カナリアの肩が軽く揺れ、彼女はぼそぼそと転移の呪文を唱え、光に包まれてこの場から姿を消した。
彼女のその逃げるような姿を、クリュミケールは黙って見つめていた。
「なっ‥‥なんなんだよ‥‥なんなんだよぉお!?なんで、なんでこんなことに‥‥!?」
アドルは悲痛な声で叫び、アスヤの体を力一杯に抱き締める。
だが、炎の回りは限界を迎え、今にも家は崩れそうだ。
クリュミケールーーリオの体には不死鳥が宿っている。魔力は今、使えないが、それでもこの身に炎の力が宿っていた。
だから、クリュミケールの体は炎に対し耐性を持っている。しかし、アドルは‥‥
「アドル‥‥!とにかく今はここを出るぞ!」
彼にそう言えば、
「母さんは‥‥母さんはどうするの!?嫌だ!置いていくもんか!」
アドルは母の傍から動こうとはしない。
その姿は、かつてのリオだ。
レイラの亡骸を置いていけなかった、リオの姿。
無力に、たくさんたくさん、誰かに迷惑を掛けてしまった、自分の姿。
「アドル‥‥気持ちは、わかる。辛いかもしれないが‥‥ニキータを発つ前にオレはアドルを守るとアスヤさんに約束したんだ‥‥いや、もっともっと前から、オレはお前を守ると決めていた。だから、恨むならオレを恨め‥‥!」
クリュミケールはそう言って、アドルの腕を引いた。
「ーーっ!?やだっ‥‥!やだよ!離して、離してよ!母さん、母さんーーッ‥‥!」
無理矢理クリュミケールに腕を引かれながらアドルは泣き叫び、炎に消え行く母の姿を目に焼き付けた‥‥
そんな彼の声を背中越しに聞きながら、
(ロナス、お前との決着は必ずオレがつける‥‥ニキータ村の皆‥‥そして、レイラと女王の為の仇を、今度こそ‥‥!)
ただただ、かつて取ることのできなかった仇を、今度こそ討つと強く誓う。
なんとか崩壊寸前の家から脱出すると、
「二人共‥‥!!」
外ではキャンドルが待っていた。
「悪いなキャンドル!心配かけたか」
涙目になっているキャンドルの顔に気づいてクリュミケールが言えば、
「当たり前だろ!お前の後でアドルも行っちまうんだ‥‥!本当に、心配したんだぞ‥‥!」
しかし、キャンドルはアドルの顔を見て言葉を止める。
「おいアドル‥‥なんだよ、なんでそんな顔してんだよ?アスヤさんは?まさか‥‥」
涙を流し、唇を噛み締めているアドルの表情で全てを悟り、
「ちくしょう‥‥ちくしょう!なんでこんなことになってんだよ!?久々に故郷に帰って来たってのに‥‥なんで、こんなっ‥‥」
キャンドルは拳を握りしめ、そう声を絞り出した。そんな二人の様子を横目に、クリュミケールは俯きながら歩き出し、村の現状をゆっくりと見て回る。
(オレはここに長く居すぎたんだ‥‥だから、恐らくロナスに見つかった。それは、サジャエルとシュイアさんにも見つかっていると言うことだ‥‥だからこそ)
燃え行く村。よく見知った人達の亡骸。
(この惨状は、オレのせいだ‥‥)
「アスヤさん!」
と、クリュミケールは彼の母親の名前を叫んだ。しかし、返事は返ってこない。
アスヤを捜しながら、クリュミケールは家の中を見て回る。
先日まで平和だったこの家が変わり果ててしまった光景ーー自分を救ってくれた場所。
アドルの父ーーカイナが亡くなってからは、いつもアドルとアスヤと共に食事を囲んでいた場所に辿り着き、クリュミケールは何かを凝視する。
食卓の横に、アスヤがうつ伏せになって倒れていたのだ。
急いで彼女の所に駆け寄ろうとしたが、ドスッーー‥‥!と、クリュミケールの足元に一本のナイフが突き刺さる。
背後になんらかの気配を感じ、勢いよく振り返った。
そこには、フードを深く被った小柄な人物がいつの間にか立っていて‥‥
「お前‥‥」
顔は見えないが、その姿に見覚えがあった。
「‥‥そう。あんたは私を知ってるはずだ。今の私も、前の私も」
それは、低い少女の声。
確かに、知っている。しかし、違和感を感じた。【今の私】そして【前の私】‥‥クリュミケールは記憶を手繰り寄せる。
だが、今はそんな場合ではないと、クリュミケールはアスヤの元に駆け寄り、うつ伏せに倒れた彼女の体を仰向けにして呼吸音と心音を確かめようとした‥‥しかし、そうする前に、彼女の瞳孔は開き、乾いた唇がうっすらと開いているその表情で、彼女はもう、死んでいるということが確認できてしまった。
元より、最近体調が悪かったのだ、火の回った家の中から逃げ出すことが出来なかったのだろう。
「‥‥」
クリュミケールは歯を食いしばり、アスヤの体をゆっくりと床に寝かせる。その様子を見ながら、
「一つ言おう。あんたは馬鹿だ。せっかく全てから逃げれたのに、結局あんたは死への道に足を踏み入れる。逃げようとしない。だから、巻き込んでしまうんだ、他人を」
少女はそう言い、じっとクリュミケールの方を見つめたまま、
「‥‥そうだろう?女神リオラの器ーーリオ」
クリュミケールをそう呼んだ。しかし、クリュミケールは動じることなく、
「‥‥そっちは、フードの四人組の一人って呼んだらいいか?」
クリュミケールは苦笑いを作りながら少女に尋ねた。
五年前、とある森の中でリオを取り囲んだ四人のフードの人物ーー女神サジャエルの付き人と名乗った者達。
確かに、四人の中の一人に少女の声をした人物がいた。
「でも、よく聞けばその声は‥‥リウスちゃん、なのか?」
そう続ければ、少女は顔を覆い隠すフードに手をあて、ゆっくりと自身の顔をさらけ出した。
ニキータ村に住む、アドルの友達。
茶色い大きな目と、短い黒髪をした、年の頃はアドルより少し下であろう、占術という珍しい能力を持った少女ーーリウス。
しかし、いつもは大きく可愛らしく開いていた目が今は冷たく、その表情はまるで、無だ。
「なんで君が‥‥いや、君はいつからこの村にいた?」
ふと、クリュミケールの頭の中にそんな疑問が浮かぶ。彼女は、クリュミケールがニキータ村に来た時からいただろうか‥‥と。
「あんたを監視する為、私はこの村に忍び込んだ。このことは私とあの人しか知らない‥‥はずだった」
クリュミケールの疑問に答えず、リウスはそう語る。
「あの人‥‥?はずだったーーと言うことは?」
「女神リオラの器。あんたはこの炎に見覚えがあるんじゃないか?」
「‥‥」
確かに、嫌な感じはしていた。既視感、と言うのだろうか。
あまりに、あの日に似ていたのだ、この炎は。
燃え盛るフォード城。
シャネラ・フォードの死。
そして、
「‥‥ロナス」
憎悪混じりに、その名を口にした。
「リウスちゃん。君の言うあの人って、あの時オレを逃がしてくれた人か?」
「‥‥そうだ」
「じゃあ、リウスちゃんはオレの味方‥‥」
「こうなった以上、私は再びあんたの敵だ。それに、私の本当の名はカナリア。リウスという存在自体が偽りだ」
そう、リウスーーカナリアは話す。
確かにカナリアと呼ばれていたなとクリュミケールは思い出す。
「君達フードの四人については、ロナスのことしかわからないが‥‥カナリア。君のこともよくわからない。でも君はアドルの友達、だろ?これでいいのか?アスヤさんが目の前で倒れているんだぞ?アドルが、悲しむんだぞ?」
リウスという存在のどこまでが偽りだったのかがわからない。それに、彼女のことを改めて考えてみると、やはりどこか違和感がある。
【ニキータは小さい村の為、村人同士の交流は深い。村人全員が家族と言ってもおかしくはない。】
だからこそ、クリュミケールにとってもそうだった。だが、改めて考えると‥‥
リウスとの思い出というものが、とても曖昧になってくる。
クリュミケールの言葉にカナリアは表情を強ばらせて何か言おうとしたが、彼女は急に驚くような顔をして、慌ててフードを被り直した。
その行動をクリュミケールは不思議に思ったが、
「クリュミケールさん‥‥!」
と、近づいてくる足音と、少年の声。
それは、アドルの声だ。
予想していなかった事態に、クリュミケールは焦るようにアスヤの遺体を見つめる。
火の回りがマシな場所を通りながら、アドルが姿を見せた。
「クリュミケールさ‥‥ーー!?かっ、母さん!?」
アドルはクリュミケールの姿を見て一瞬だけ安堵の笑みを見せたが、すぐに床に倒れたアスヤの姿を見つけ、傍に駆け寄る。
アスヤの変わり果てた姿を見て、アドルは力なくその場に崩れ落ちた。
「かっ、母さん?ねえ、母さんってば‥‥どうし、ちゃったの?おれ、ちゃんと父さんの家族の所に行って来たよ?お婆ちゃんに会ったよ?母さん、母さん‥‥!ねえってば!?」
動かぬ母を何度も何度も泣き叫ぶように呼び、アスヤの肩を何度も何度も揺らす。
それは、見ているだけで痛々しい光景だった。
クリュミケールはそんな彼の姿を、何も言えず、立ち尽くして見ていることしかできない。
アドルはゆっくりと顔を上げ、フードの人物ーーリウスを、カナリアを睨み付けた。
「お前‥‥誰だよ?お前が、やったのか‥‥!?ニキータ村を、母さんをこんなにしたのか!?」
初めて聞くようなアドルの憎悪混じりな声に、カナリアの肩が軽く揺れ、彼女はぼそぼそと転移の呪文を唱え、光に包まれてこの場から姿を消した。
彼女のその逃げるような姿を、クリュミケールは黙って見つめていた。
「なっ‥‥なんなんだよ‥‥なんなんだよぉお!?なんで、なんでこんなことに‥‥!?」
アドルは悲痛な声で叫び、アスヤの体を力一杯に抱き締める。
だが、炎の回りは限界を迎え、今にも家は崩れそうだ。
クリュミケールーーリオの体には不死鳥が宿っている。魔力は今、使えないが、それでもこの身に炎の力が宿っていた。
だから、クリュミケールの体は炎に対し耐性を持っている。しかし、アドルは‥‥
「アドル‥‥!とにかく今はここを出るぞ!」
彼にそう言えば、
「母さんは‥‥母さんはどうするの!?嫌だ!置いていくもんか!」
アドルは母の傍から動こうとはしない。
その姿は、かつてのリオだ。
レイラの亡骸を置いていけなかった、リオの姿。
無力に、たくさんたくさん、誰かに迷惑を掛けてしまった、自分の姿。
「アドル‥‥気持ちは、わかる。辛いかもしれないが‥‥ニキータを発つ前にオレはアドルを守るとアスヤさんに約束したんだ‥‥いや、もっともっと前から、オレはお前を守ると決めていた。だから、恨むならオレを恨め‥‥!」
クリュミケールはそう言って、アドルの腕を引いた。
「ーーっ!?やだっ‥‥!やだよ!離して、離してよ!母さん、母さんーーッ‥‥!」
無理矢理クリュミケールに腕を引かれながらアドルは泣き叫び、炎に消え行く母の姿を目に焼き付けた‥‥
そんな彼の声を背中越しに聞きながら、
(ロナス、お前との決着は必ずオレがつける‥‥ニキータ村の皆‥‥そして、レイラと女王の為の仇を、今度こそ‥‥!)
ただただ、かつて取ることのできなかった仇を、今度こそ討つと強く誓う。
なんとか崩壊寸前の家から脱出すると、
「二人共‥‥!!」
外ではキャンドルが待っていた。
「悪いなキャンドル!心配かけたか」
涙目になっているキャンドルの顔に気づいてクリュミケールが言えば、
「当たり前だろ!お前の後でアドルも行っちまうんだ‥‥!本当に、心配したんだぞ‥‥!」
しかし、キャンドルはアドルの顔を見て言葉を止める。
「おいアドル‥‥なんだよ、なんでそんな顔してんだよ?アスヤさんは?まさか‥‥」
涙を流し、唇を噛み締めているアドルの表情で全てを悟り、
「ちくしょう‥‥ちくしょう!なんでこんなことになってんだよ!?久々に故郷に帰って来たってのに‥‥なんで、こんなっ‥‥」
キャンドルは拳を握りしめ、そう声を絞り出した。そんな二人の様子を横目に、クリュミケールは俯きながら歩き出し、村の現状をゆっくりと見て回る。
(オレはここに長く居すぎたんだ‥‥だから、恐らくロナスに見つかった。それは、サジャエルとシュイアさんにも見つかっていると言うことだ‥‥だからこそ)
燃え行く村。よく見知った人達の亡骸。
(この惨状は、オレのせいだ‥‥)
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
君は妾の子だから、次男がちょうどいい
月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり

僕は君を思うと吐き気がする
月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

【完結】ドアマットに気付かない系夫の謝罪は死んだ妻には届かない
堀 和三盆
恋愛
一年にわたる長期出張から戻ると、愛する妻のシェルタが帰らぬ人になっていた。流行病に罹ったらしく、感染を避けるためにと火葬をされて骨になった妻は墓の下。
信じられなかった。
母を責め使用人を責めて暴れ回って、僕は自らの身に降りかかった突然の不幸を嘆いた。まだ、結婚して3年もたっていないというのに……。
そんな中。僕は遺品の整理中に隠すようにして仕舞われていた妻の日記帳を見つけてしまう。愛する妻が最後に何を考えていたのかを知る手段になるかもしれない。そんな軽い気持ちで日記を開いて戦慄した。
日記には妻がこの家に嫁いでから病に倒れるまでの――母や使用人からの壮絶な嫌がらせの数々が綴られていたのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる