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六章【道標】
6-3 平穏
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家に戻ったアドルとクリュミケールは明日の旅立ちの為、早く寝ることにした。
疲れていたのか、二人ともすぐにぐっすりと眠ることができ、いつの間にか朝を迎える。
ーーコンコンッ
「おはよう、アドル」
軽いノック音と同時にクリュミケールは言った。
ガチャーーと、扉が開けられ、
「おはよう!クリュミケールさんっ」
扉を開けたアドルが元気よく言う。
「さて。忘れちゃいないだろうな?今日はアドルの初めての旅立ちの日だぜ」
クリュミケールがウインクしながら言うので、
「大袈裟だなぁ。確かに、この村からあまり出たことないけどさー」
アドルは頬を膨らませる。
「ははっ。なんにせよだ。一応、村の皆にちゃんと挨拶してこい。皆、アドル坊やを心配してたぜ」
「もー!本当に大袈裟だなぁ!」
アドルは更に頬を膨らませ、渋々と部屋から出た。階段を降り、椅子に腰掛ける母の後ろ姿が見える。
「母さんおはよう」
「おはようアドル。やっぱりアドルは弟ね。クリュミケールは随分と早く起きていたわよ」
アスヤに微笑みながらそう言われ、アドルはむっとしながら小さく「ちぇっ」と、悪態を吐いた。
「でも、アドル。気をつけてね。村の外は何かと危険だから‥‥」
「心配しないでよ、母さん。大丈夫だって!毎日、剣の稽古してるもん!」
アドルは片腕でガッツポーズを作り、母を安心させるように笑う。
「そうですよ。それに、何かあった時の為にオレがいるんですから」
いつの間にか二回から降りてきたクリュミケールが、アドルの後ろでそう言った。
「むーっ!クリュミケールさんに助けてもらわなくても、おれだって強いもん!」
「オレに勝ったことないくせにー?」
「ぶーっ!!!」
そんな子供達のやり取りを見て、アスヤはおかしそうに笑い、朝食の支度を始める。
◆◆◆◆◆
朝食を軽く口にし、そろそろ行こうかと二人は話した。
「オレは準備できたけど、アドルは?」
クリュミケールが聞くと、
「んー。薬草に、剣に、お金に、寝間着に‥‥」
アドルは鞄の中をチェックしながら言い、
「まあ、そんなもんだろ。じゃ、行くか」
クリュミケールの言葉にアドルは頷き、荷物を肩にかけてその場から立ち上がる。
「行ってらっしゃい、アドル、クリュミケール。頼んだわね」
アスヤに見送られ、クリュミケールは頷き、
「行ってきます、母さん!」
アドルは大きく手を振り、家から出た。
◆◆◆◆◆
「‥‥あっ、アドル君」
家から出ると、一人の少女がアドルに駆け寄って来る。
「リウス!どうしたの?」
アドルは首を傾げながら少女に聞いた。
茶色い大きな目と、短い黒髪をした、年の頃はアドルより少し下であろう少女、リウス。
「アドル君、遠出するって聞いたから」
そんなアドルとリウスを見て、
「アドル、オレは先に村の外に行ってるから。リウスちゃんもまたな」
気を利かせたのか、クリュミケールはそう言って行ってしまうので、
「ええっ?クリュミケールさん?」
先に行くクリュミケールを見て、アドルは首を傾げる。
「あっ、あのね‥‥アドル君に渡したいものがあって‥‥」
リウスは腰に下げたポシェットの中をごそごそと探っていた。
「おれに?渡したいもの?」
アドルが聞くと、
「うん、あのね‥‥お守り、みたいなものなんだけど」
ポシェットから取り出されたのは、赤い宝石のような小さな玉の両端に羽が付いたペンダントだった。
「これを‥‥?」
「うん‥‥アドル君に」
アドルはそれを受け取ると、不思議そうな顔をしてリウスを見た。彼女は少しだけ真剣な顔をして、
「‥‥なんとなく、今渡さなきゃなと思って。あなたに、持っていてほしくて」
リウスはまた、照れたように笑う。
「そうなの?」
「うっ、うん。前から渡そう渡そうと思って‥‥でもなかなかタイミングが‥‥アドル君、いつも、クリュミケールと一緒だから‥‥そっ、それだけなの!あのっ、‥‥気をつけてね」
それだけ言って、リウスは去ろうとするので、
「ありがとう、リウス!帰ったら何かお礼するよ!」
彼女の背中に、そう言葉を投げた。
◆◆◆◆◆
「済んだか?」
村の出口でクリュミケールが待っていて、
「うん!なんかお守りをくれたよ」
アドルはクリュミケールにペンダントを見せる。しばらくクリュミケールはそれを見つめていた。
(‥‥なんだ、これ。何か、強い‥‥魔力のような‥‥いや、気のせいか)
クリュミケールは首を横に振り、あることに気づく。
「これ、手作りっぽいな」
クリュミケールはニヤニヤとアドルを見た。手作りと言われ、アドルは目を見開かせる。
「なんか、前から渡そうとしてくれてたらしくて、今渡さなきゃいけないと思ったとかなんだとか」
「確かリウスには占術みたいな能力があったんだっけ?」
占術(せんじゅつ)。
占いや予知能力のようなもので、自分の周りに不吉なことや良いことが起こるかどうか感じることができる、珍しい能力だ。
「リウスは何かを感じたのかな」
アドルはそう言いながらペンダントを首にかける。
「まあ、用事済ませて早く帰るだけだしな」
クリュミケールが言うと、
「うん!じゃあ、ファイス国へ行こう!」
父の遺品を、父の故郷であるファイス国にいる家族に届ける為に。
疲れていたのか、二人ともすぐにぐっすりと眠ることができ、いつの間にか朝を迎える。
ーーコンコンッ
「おはよう、アドル」
軽いノック音と同時にクリュミケールは言った。
ガチャーーと、扉が開けられ、
「おはよう!クリュミケールさんっ」
扉を開けたアドルが元気よく言う。
「さて。忘れちゃいないだろうな?今日はアドルの初めての旅立ちの日だぜ」
クリュミケールがウインクしながら言うので、
「大袈裟だなぁ。確かに、この村からあまり出たことないけどさー」
アドルは頬を膨らませる。
「ははっ。なんにせよだ。一応、村の皆にちゃんと挨拶してこい。皆、アドル坊やを心配してたぜ」
「もー!本当に大袈裟だなぁ!」
アドルは更に頬を膨らませ、渋々と部屋から出た。階段を降り、椅子に腰掛ける母の後ろ姿が見える。
「母さんおはよう」
「おはようアドル。やっぱりアドルは弟ね。クリュミケールは随分と早く起きていたわよ」
アスヤに微笑みながらそう言われ、アドルはむっとしながら小さく「ちぇっ」と、悪態を吐いた。
「でも、アドル。気をつけてね。村の外は何かと危険だから‥‥」
「心配しないでよ、母さん。大丈夫だって!毎日、剣の稽古してるもん!」
アドルは片腕でガッツポーズを作り、母を安心させるように笑う。
「そうですよ。それに、何かあった時の為にオレがいるんですから」
いつの間にか二回から降りてきたクリュミケールが、アドルの後ろでそう言った。
「むーっ!クリュミケールさんに助けてもらわなくても、おれだって強いもん!」
「オレに勝ったことないくせにー?」
「ぶーっ!!!」
そんな子供達のやり取りを見て、アスヤはおかしそうに笑い、朝食の支度を始める。
◆◆◆◆◆
朝食を軽く口にし、そろそろ行こうかと二人は話した。
「オレは準備できたけど、アドルは?」
クリュミケールが聞くと、
「んー。薬草に、剣に、お金に、寝間着に‥‥」
アドルは鞄の中をチェックしながら言い、
「まあ、そんなもんだろ。じゃ、行くか」
クリュミケールの言葉にアドルは頷き、荷物を肩にかけてその場から立ち上がる。
「行ってらっしゃい、アドル、クリュミケール。頼んだわね」
アスヤに見送られ、クリュミケールは頷き、
「行ってきます、母さん!」
アドルは大きく手を振り、家から出た。
◆◆◆◆◆
「‥‥あっ、アドル君」
家から出ると、一人の少女がアドルに駆け寄って来る。
「リウス!どうしたの?」
アドルは首を傾げながら少女に聞いた。
茶色い大きな目と、短い黒髪をした、年の頃はアドルより少し下であろう少女、リウス。
「アドル君、遠出するって聞いたから」
そんなアドルとリウスを見て、
「アドル、オレは先に村の外に行ってるから。リウスちゃんもまたな」
気を利かせたのか、クリュミケールはそう言って行ってしまうので、
「ええっ?クリュミケールさん?」
先に行くクリュミケールを見て、アドルは首を傾げる。
「あっ、あのね‥‥アドル君に渡したいものがあって‥‥」
リウスは腰に下げたポシェットの中をごそごそと探っていた。
「おれに?渡したいもの?」
アドルが聞くと、
「うん、あのね‥‥お守り、みたいなものなんだけど」
ポシェットから取り出されたのは、赤い宝石のような小さな玉の両端に羽が付いたペンダントだった。
「これを‥‥?」
「うん‥‥アドル君に」
アドルはそれを受け取ると、不思議そうな顔をしてリウスを見た。彼女は少しだけ真剣な顔をして、
「‥‥なんとなく、今渡さなきゃなと思って。あなたに、持っていてほしくて」
リウスはまた、照れたように笑う。
「そうなの?」
「うっ、うん。前から渡そう渡そうと思って‥‥でもなかなかタイミングが‥‥アドル君、いつも、クリュミケールと一緒だから‥‥そっ、それだけなの!あのっ、‥‥気をつけてね」
それだけ言って、リウスは去ろうとするので、
「ありがとう、リウス!帰ったら何かお礼するよ!」
彼女の背中に、そう言葉を投げた。
◆◆◆◆◆
「済んだか?」
村の出口でクリュミケールが待っていて、
「うん!なんかお守りをくれたよ」
アドルはクリュミケールにペンダントを見せる。しばらくクリュミケールはそれを見つめていた。
(‥‥なんだ、これ。何か、強い‥‥魔力のような‥‥いや、気のせいか)
クリュミケールは首を横に振り、あることに気づく。
「これ、手作りっぽいな」
クリュミケールはニヤニヤとアドルを見た。手作りと言われ、アドルは目を見開かせる。
「なんか、前から渡そうとしてくれてたらしくて、今渡さなきゃいけないと思ったとかなんだとか」
「確かリウスには占術みたいな能力があったんだっけ?」
占術(せんじゅつ)。
占いや予知能力のようなもので、自分の周りに不吉なことや良いことが起こるかどうか感じることができる、珍しい能力だ。
「リウスは何かを感じたのかな」
アドルはそう言いながらペンダントを首にかける。
「まあ、用事済ませて早く帰るだけだしな」
クリュミケールが言うと、
「うん!じゃあ、ファイス国へ行こう!」
父の遺品を、父の故郷であるファイス国にいる家族に届ける為に。
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