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四章【何処かで】
4-6 断章
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雨は止み、夜空には三日月が浮かんでいる。
いよいよ明日は大会だ。
「お前、またここにいるのか。明日は大会だぞ?」
「あっ」
屋敷内の書庫でソファーに座り、本を読み漁っていたリオは読んでいた本を閉じ、
「うん‥‥本って、あまり読んだことなくて。字は、教えてもらったから読めるけど、でも、色んな情報が詰まってて面白いね!読み出したら止まらないや!」
そう言うと、シェイアードがソファーの後ろまで来て、リオが読んでいた本の表紙を覗きこむ。覗きこんで‥‥シェイアードは少しだけぎょっとした。
「あ、これ?さっきまで悪い魔王を勇者がやっつける物語を読んでたんだけど、これはとある王国のお姫様と勇者のお話なんだって!勇者はお姫様が好きで、お姫様もーー‥‥」
リオが興奮気味に語っていると、シェイアードがリオの手からその本をいきなり取り上げてしまう。
「あっ!!まだ読んでる途中‥‥」
「どこまで読んだ」
「えっ?まだ最初の一話しか‥‥」
それを聞いたシェイアードは小さく息を吐いた。
「これはだな、ハナの趣味だ。いくつかあいつの本が混じっているーーお前は読まない方がいい」
「なんで!?」
「‥‥人様の家で客に‥‥ましてや女にこんなものを読ますわけにもいかない」
「なんなの!?」
ますます気になってしまって、リオは本を取り返そうとソファーから立ち上がり、シェイアードが持つ本に腕を伸ばす。
「続きが気になる!だって一話目はまだ、お姫様はお城で、勇者は遠くに行っていて会話すらしてないんだよー!?」
「それでいいだろ、これはお前の脳内にあるような物語じゃない。なんだ、その、これはだな、大人が読むような恋愛話だ!」
「‥‥大人」
一瞬、シュイアとフィレアが脳裏を過った。シュイアに恋するフィレアは、それは愛だと言っていた。と言うことは、そういった、聞くだけで恥ずかしい内容なのだろうかとリオは感じ‥‥感じた時には、
「あっ、わっ、わぁあああーー!?」
「おまっ‥‥離せ!」
体勢を崩し、ソファーの上に仰向けに倒れてしまう。
同じく、リオに腕を引っ張られたシェイアードも倒れてしまったーー仰向けに倒れたリオの上に覆い被さるように。
「‥‥」
自分の上に覆い被さったシェイアードの顔が近くにあって、
「‥‥だから、こんな感じの話だから、お前は読むな」
「‥‥はっ、はい」
事故とはいえ、身をもって教えられてリオは顔を真っ赤にしていた。
シェイアードがこの体勢から立ち上がろうとしたところで、
「リオさん、お茶が入りましたよ」
と、ハナの声がして‥‥
「あらっ、シェイアード様までこちらに?あらっ、あらあらあら!?お二人共、昨日の今日でもうこんなにも‥‥ですが明日は大会ですわよ!?でも邪魔をしてはいけないので私はこれで」
勘違いをしたままハナは書庫から出て行ってしまうので、リオとシェイアードは慌てて飛び起き、
「ハナさん誤解だよー!!?」
「くそっ」
二人で慌てて彼女の後を追った。
ーーそうして、ハナの誤解を解きはしたが、彼女の中でリオとシェイアードは恋仲なのだという妄想は消えることなく‥‥
三人でお茶を飲んで、他愛のない会話をして‥‥
それから、明日に備えて眠りに就いた。
いよいよ明日は大会だ。
「お前、またここにいるのか。明日は大会だぞ?」
「あっ」
屋敷内の書庫でソファーに座り、本を読み漁っていたリオは読んでいた本を閉じ、
「うん‥‥本って、あまり読んだことなくて。字は、教えてもらったから読めるけど、でも、色んな情報が詰まってて面白いね!読み出したら止まらないや!」
そう言うと、シェイアードがソファーの後ろまで来て、リオが読んでいた本の表紙を覗きこむ。覗きこんで‥‥シェイアードは少しだけぎょっとした。
「あ、これ?さっきまで悪い魔王を勇者がやっつける物語を読んでたんだけど、これはとある王国のお姫様と勇者のお話なんだって!勇者はお姫様が好きで、お姫様もーー‥‥」
リオが興奮気味に語っていると、シェイアードがリオの手からその本をいきなり取り上げてしまう。
「あっ!!まだ読んでる途中‥‥」
「どこまで読んだ」
「えっ?まだ最初の一話しか‥‥」
それを聞いたシェイアードは小さく息を吐いた。
「これはだな、ハナの趣味だ。いくつかあいつの本が混じっているーーお前は読まない方がいい」
「なんで!?」
「‥‥人様の家で客に‥‥ましてや女にこんなものを読ますわけにもいかない」
「なんなの!?」
ますます気になってしまって、リオは本を取り返そうとソファーから立ち上がり、シェイアードが持つ本に腕を伸ばす。
「続きが気になる!だって一話目はまだ、お姫様はお城で、勇者は遠くに行っていて会話すらしてないんだよー!?」
「それでいいだろ、これはお前の脳内にあるような物語じゃない。なんだ、その、これはだな、大人が読むような恋愛話だ!」
「‥‥大人」
一瞬、シュイアとフィレアが脳裏を過った。シュイアに恋するフィレアは、それは愛だと言っていた。と言うことは、そういった、聞くだけで恥ずかしい内容なのだろうかとリオは感じ‥‥感じた時には、
「あっ、わっ、わぁあああーー!?」
「おまっ‥‥離せ!」
体勢を崩し、ソファーの上に仰向けに倒れてしまう。
同じく、リオに腕を引っ張られたシェイアードも倒れてしまったーー仰向けに倒れたリオの上に覆い被さるように。
「‥‥」
自分の上に覆い被さったシェイアードの顔が近くにあって、
「‥‥だから、こんな感じの話だから、お前は読むな」
「‥‥はっ、はい」
事故とはいえ、身をもって教えられてリオは顔を真っ赤にしていた。
シェイアードがこの体勢から立ち上がろうとしたところで、
「リオさん、お茶が入りましたよ」
と、ハナの声がして‥‥
「あらっ、シェイアード様までこちらに?あらっ、あらあらあら!?お二人共、昨日の今日でもうこんなにも‥‥ですが明日は大会ですわよ!?でも邪魔をしてはいけないので私はこれで」
勘違いをしたままハナは書庫から出て行ってしまうので、リオとシェイアードは慌てて飛び起き、
「ハナさん誤解だよー!!?」
「くそっ」
二人で慌てて彼女の後を追った。
ーーそうして、ハナの誤解を解きはしたが、彼女の中でリオとシェイアードは恋仲なのだという妄想は消えることなく‥‥
三人でお茶を飲んで、他愛のない会話をして‥‥
それから、明日に備えて眠りに就いた。
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