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二章【トモダチ】
2-10 間違っている
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フォード国には、数年前から出来た制度があった。
『貴族は貧困街に住む者と親しくしてはならない』
『余所者とはあまり関わらないようにすること』
『もしフォード国内の者が貧困街の者や余所者とトラブルになった場合、明らかに貧困街の者と余所者が悪いと見なし、処罰を与える』
これを聞いた時、なんて滅茶苦茶な制度だと、リオは驚いた。
悪いのは貧困街の人と余所者だと、最初から決めつけられているのだから。
「そんなの‥‥間違ってます‥‥」
そう声に出したのはリオではなく、銀髪の少年だった。
その言葉に、女王は目を細める。
「僕は‥‥この国が嫌いです。この国の人達には、心がない。苦しむ人達の心を、理解してくれない。僕はここで産まれ育ったけど、貴族の人は大嫌いだ」
そんなことを言われて当然、民衆はざわざわと話し始めた。
そして、一瞬リオは目を見開かせる。
少年の金の目が、その年には似合わず、ギラリと憎悪の色を宿していたことに。
「私だって‥‥大嫌いよ、こんな国‥‥」
次にそう言ったのは、フィレア。
「貴族なんて‥‥金持ちなんて‥‥心がないのよ。私は貧困街の皆から優しさというものを教わったわ。だけど、あなたの作った制度のせいで皆、苦しい思いを‥‥」
フィレアは女王を睨んだ。
「心外ですね、そんな風に見られていたとは」
ため息混じりに女王は言い、冷徹な顔をしてこう言った、
「わかりました。あなた方を即刻、死刑にしましょう。このように民達に不安を招く存在には罰が必要ですね」
リオは、滅茶苦茶すぎる女王の発言に返す言葉もなかった。
(どうして?お母様はそんな人じゃなかったのに‥‥もっと優しかったのに‥‥)
レイラはただ、不安そうに光景を見ていることしかできない。
「どうして貧しい人や余所者をそんな風に嫌うんですか!?」
ハトネが困惑の表情を交えながら聞くも、
「あなた方が知る必要はありません」
女王は一言そう言い、
「何をしているのです、早くその者達を捕まえなさい」
女王の言葉に、民衆は一斉にリオ達のもとへ向かって来た。
向かって来る民衆を見て、四人は体が動かない!
「っ‥‥逃げないと!」
リオのその言葉に、
「‥‥三人共!早く私の近くに来て!」
ハトネがリオとフィレアと少年に言う。
とっさのことで、三人共、瞬時に体が動かない。
「いいから!早く!!」
ハトネのその急かすような言葉に、三人はようやく彼女の側に集まった。
「じゃあ、行くね!!どこでもいいから‥‥連れてってーー!!」
「は!?」
ハトネのその間の抜けた言葉に、三人も民衆も驚くような顔をするしかない。
すると、ハトネの手の平から白い光が放たれて‥‥
その光のせいで、皆の視界は一気に真っ白になり、まるで霧のように辺りが見えなくなった。
「いっ‥‥いったい何?」
フィレアがゆっくりと目を開けながら聞く。
「えっ!?ここは?」
次にリオが声を上げた。
リオ達は先程までフォード国にいたはずだが‥‥なぜだか見渡す限り緑しかない草原にいたのだ。
リオとハトネとフィレアーーそして銀髪の少年だけがここにいる。
フォード国の人々や女王はどこにもいなかった。
「たぶん、ここはフォード国付近の草原だと思います‥‥そういえば、そこのお姉さんが何かを‥‥」
銀髪の少年がハトネを指差す。
言われて、リオはハトネが何かしたのを思い出した。
「ハトネさん‥‥いったい‥‥」
リオが首を傾げながら聞けば、
「あ‥‥あはは、見ちゃった‥‥よね」
ハトネは無理やり笑顔を作ったような顔をしている。
「こういうの、聞きにくいんだけど‥‥もしかしてさっきのは、魔術?答えたくなかったらいいのよ」
フィレアが静かな声で言えば、ハトネは少し黙りこみ、
「うん、そう。魔術だよ」
小さく笑って、ハトネは答えた。
フィレアは頷き、それ以上は何も、何も聞かなかった。
彼女はシュイアの苦しみを理解しているのかもしれない。
だから、同じ境遇の彼女の気持ちもなんとなく、わかったのだろう。
(魔術‥‥どうしてハトネさんまで使えるんだろう?じゃあ、ハトネさんも不老?)
リオも思うだけで、何も聞かなかった。
「リオ君‥‥」
「えっ?」
ハトネに呼ばれて、リオは慌てて彼女を見る。
ハトネが自分に助けを求めているような、そんな表情でリオを見ているのだ。
「気持ち悪いよね‥‥こんな力‥‥」
いつも元気なハトネが、暗い顔でそう言ってきて‥‥
「そっ、そんなこと‥‥」
気持ち悪くなんかないですよと、リオは必死に言う。
本当に、そんな風には思わなかったし、もしここで気持ち悪いだなんて思ったり言ったりしては、シュイアにもその言葉を投げ掛けることになる。
「でも‥‥」
それでもハトネは俯いたままで、
「さっきのハトネさんの力のお陰で私達は助かったんですよ!感謝しかないです!」
そう言って、リオは微笑んだ。
「リオ君‥‥」
「だから、いつものハトネさんでいて下さい。ハトネさんは元気がいいのが一番です」
リオのその言葉に安心したのか、
「やっぱり‥‥あなたはあの時の人と同じだよ。私が捜していた人は‥‥やっぱりリオ君なんだ!だから、あなたにだけは嫌われたくない!」
ハトネは嬉しそうに言いながら、いつものように笑顔でリオに抱きついた。
「いや、だからそれは別人‥‥」
リオはため息を吐き、しかし、今だけは反論するのをやめる。
いつもの彼女に戻ったのなら、それでいいと思ったからだ。
そんな二人を、少年はじっと見ていて‥‥
「あなた達の関係がイマイチよくわからないわね」
と、フィレアは苦笑混じりに言う。
確かに、フィレアとハトネは出会ったばかりで、なんの説明もしていない。
「それより‥‥」
フィレアは銀髪の少年に視線を向け、
「ラズ。あなたどうして街中になんかいたの?危ないじゃない!」
「ごっ、ごめん、フィレアさん」
どうやら、銀髪の少年はラズというらしい。
フィレアと知り合いのようだ。
フィレアが『同じ貧困街に住んでるから』と説明する。
「そういえば、薬と言っていましたね。お母さんの‥‥」
リオは先刻のことを思い出した。
少年は困ったような顔をして頷く。
「あなたのお母さんのご病気‥‥やっぱりまだ、良くなってないのね‥‥」
フィレアは察するかのようにして言った。
「‥‥薬を買うようなお金も、病院に連れて行ってあげるようなお金もないから‥‥だから、街でどうしても薬を手に入れたくてお願いしようとして‥‥」
「ラズ‥‥」
フィレアは小さな少年を抱き締めてやる。
「やっぱり‥‥いろいろ間違ってる‥‥」
リオはそう言い、
「私、明日また女王様に会って‥‥話をしてみます!」
「なっ!?」
リオの突然の言葉に、フィレアは大きく目を見開かせた。
「やっぱり何回考えてもおかしいんです!女王様の意見に私は納得できません!」
「だからって‥‥はあ‥‥」
フィレアは今の今でそんなことを言うリオにため息を吐く。
だが、出会ってほんの少ししか経っていないが、リオの無茶でお人好しな性格は理解していた。
(自分が得することは何もないのに、ほんと、馬鹿ね‥‥きっと、シュイア様がこんな風に真っ直ぐに育てたのね)
フィレアはそう思い、くすっと笑う。
ーーここからが、悪夢の始まりだった。
『貴族は貧困街に住む者と親しくしてはならない』
『余所者とはあまり関わらないようにすること』
『もしフォード国内の者が貧困街の者や余所者とトラブルになった場合、明らかに貧困街の者と余所者が悪いと見なし、処罰を与える』
これを聞いた時、なんて滅茶苦茶な制度だと、リオは驚いた。
悪いのは貧困街の人と余所者だと、最初から決めつけられているのだから。
「そんなの‥‥間違ってます‥‥」
そう声に出したのはリオではなく、銀髪の少年だった。
その言葉に、女王は目を細める。
「僕は‥‥この国が嫌いです。この国の人達には、心がない。苦しむ人達の心を、理解してくれない。僕はここで産まれ育ったけど、貴族の人は大嫌いだ」
そんなことを言われて当然、民衆はざわざわと話し始めた。
そして、一瞬リオは目を見開かせる。
少年の金の目が、その年には似合わず、ギラリと憎悪の色を宿していたことに。
「私だって‥‥大嫌いよ、こんな国‥‥」
次にそう言ったのは、フィレア。
「貴族なんて‥‥金持ちなんて‥‥心がないのよ。私は貧困街の皆から優しさというものを教わったわ。だけど、あなたの作った制度のせいで皆、苦しい思いを‥‥」
フィレアは女王を睨んだ。
「心外ですね、そんな風に見られていたとは」
ため息混じりに女王は言い、冷徹な顔をしてこう言った、
「わかりました。あなた方を即刻、死刑にしましょう。このように民達に不安を招く存在には罰が必要ですね」
リオは、滅茶苦茶すぎる女王の発言に返す言葉もなかった。
(どうして?お母様はそんな人じゃなかったのに‥‥もっと優しかったのに‥‥)
レイラはただ、不安そうに光景を見ていることしかできない。
「どうして貧しい人や余所者をそんな風に嫌うんですか!?」
ハトネが困惑の表情を交えながら聞くも、
「あなた方が知る必要はありません」
女王は一言そう言い、
「何をしているのです、早くその者達を捕まえなさい」
女王の言葉に、民衆は一斉にリオ達のもとへ向かって来た。
向かって来る民衆を見て、四人は体が動かない!
「っ‥‥逃げないと!」
リオのその言葉に、
「‥‥三人共!早く私の近くに来て!」
ハトネがリオとフィレアと少年に言う。
とっさのことで、三人共、瞬時に体が動かない。
「いいから!早く!!」
ハトネのその急かすような言葉に、三人はようやく彼女の側に集まった。
「じゃあ、行くね!!どこでもいいから‥‥連れてってーー!!」
「は!?」
ハトネのその間の抜けた言葉に、三人も民衆も驚くような顔をするしかない。
すると、ハトネの手の平から白い光が放たれて‥‥
その光のせいで、皆の視界は一気に真っ白になり、まるで霧のように辺りが見えなくなった。
「いっ‥‥いったい何?」
フィレアがゆっくりと目を開けながら聞く。
「えっ!?ここは?」
次にリオが声を上げた。
リオ達は先程までフォード国にいたはずだが‥‥なぜだか見渡す限り緑しかない草原にいたのだ。
リオとハトネとフィレアーーそして銀髪の少年だけがここにいる。
フォード国の人々や女王はどこにもいなかった。
「たぶん、ここはフォード国付近の草原だと思います‥‥そういえば、そこのお姉さんが何かを‥‥」
銀髪の少年がハトネを指差す。
言われて、リオはハトネが何かしたのを思い出した。
「ハトネさん‥‥いったい‥‥」
リオが首を傾げながら聞けば、
「あ‥‥あはは、見ちゃった‥‥よね」
ハトネは無理やり笑顔を作ったような顔をしている。
「こういうの、聞きにくいんだけど‥‥もしかしてさっきのは、魔術?答えたくなかったらいいのよ」
フィレアが静かな声で言えば、ハトネは少し黙りこみ、
「うん、そう。魔術だよ」
小さく笑って、ハトネは答えた。
フィレアは頷き、それ以上は何も、何も聞かなかった。
彼女はシュイアの苦しみを理解しているのかもしれない。
だから、同じ境遇の彼女の気持ちもなんとなく、わかったのだろう。
(魔術‥‥どうしてハトネさんまで使えるんだろう?じゃあ、ハトネさんも不老?)
リオも思うだけで、何も聞かなかった。
「リオ君‥‥」
「えっ?」
ハトネに呼ばれて、リオは慌てて彼女を見る。
ハトネが自分に助けを求めているような、そんな表情でリオを見ているのだ。
「気持ち悪いよね‥‥こんな力‥‥」
いつも元気なハトネが、暗い顔でそう言ってきて‥‥
「そっ、そんなこと‥‥」
気持ち悪くなんかないですよと、リオは必死に言う。
本当に、そんな風には思わなかったし、もしここで気持ち悪いだなんて思ったり言ったりしては、シュイアにもその言葉を投げ掛けることになる。
「でも‥‥」
それでもハトネは俯いたままで、
「さっきのハトネさんの力のお陰で私達は助かったんですよ!感謝しかないです!」
そう言って、リオは微笑んだ。
「リオ君‥‥」
「だから、いつものハトネさんでいて下さい。ハトネさんは元気がいいのが一番です」
リオのその言葉に安心したのか、
「やっぱり‥‥あなたはあの時の人と同じだよ。私が捜していた人は‥‥やっぱりリオ君なんだ!だから、あなたにだけは嫌われたくない!」
ハトネは嬉しそうに言いながら、いつものように笑顔でリオに抱きついた。
「いや、だからそれは別人‥‥」
リオはため息を吐き、しかし、今だけは反論するのをやめる。
いつもの彼女に戻ったのなら、それでいいと思ったからだ。
そんな二人を、少年はじっと見ていて‥‥
「あなた達の関係がイマイチよくわからないわね」
と、フィレアは苦笑混じりに言う。
確かに、フィレアとハトネは出会ったばかりで、なんの説明もしていない。
「それより‥‥」
フィレアは銀髪の少年に視線を向け、
「ラズ。あなたどうして街中になんかいたの?危ないじゃない!」
「ごっ、ごめん、フィレアさん」
どうやら、銀髪の少年はラズというらしい。
フィレアと知り合いのようだ。
フィレアが『同じ貧困街に住んでるから』と説明する。
「そういえば、薬と言っていましたね。お母さんの‥‥」
リオは先刻のことを思い出した。
少年は困ったような顔をして頷く。
「あなたのお母さんのご病気‥‥やっぱりまだ、良くなってないのね‥‥」
フィレアは察するかのようにして言った。
「‥‥薬を買うようなお金も、病院に連れて行ってあげるようなお金もないから‥‥だから、街でどうしても薬を手に入れたくてお願いしようとして‥‥」
「ラズ‥‥」
フィレアは小さな少年を抱き締めてやる。
「やっぱり‥‥いろいろ間違ってる‥‥」
リオはそう言い、
「私、明日また女王様に会って‥‥話をしてみます!」
「なっ!?」
リオの突然の言葉に、フィレアは大きく目を見開かせた。
「やっぱり何回考えてもおかしいんです!女王様の意見に私は納得できません!」
「だからって‥‥はあ‥‥」
フィレアは今の今でそんなことを言うリオにため息を吐く。
だが、出会ってほんの少ししか経っていないが、リオの無茶でお人好しな性格は理解していた。
(自分が得することは何もないのに、ほんと、馬鹿ね‥‥きっと、シュイア様がこんな風に真っ直ぐに育てたのね)
フィレアはそう思い、くすっと笑う。
ーーここからが、悪夢の始まりだった。
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