12 / 105
二章【トモダチ】
2-4 そして
しおりを挟む
「リオ、待たせてごめんね」
パーティ会場内ーーレイラが挨拶回りを終え、リオの元に戻って来た。
リオは人気のない所にいたので、レイラはそのままその場にしゃがみ込む。
王女様がこんな所でしゃがみ込むだなんて、誰も思わないだろう。
リオはそんなレイラを見て、思わず吹き出した。
なんだか、悩んでいた自分が馬鹿馬鹿しくなるほどに。
そして一言、
「お疲れ様」
と、笑いながら言ってみた。
「そうよ!お疲れなの、おーつーかーれ!」
レイラは少しだけ嬉しそうにしながら大袈裟に言う。
「あっ、そうだわ。今からダンスパーティよ。相手はいる?」
「は?」
レイラがいきなりそんなことを言うので、リオは目を丸くした。
「だから、今からダンスパーティなの。相手がいないなら私と‥‥」
レイラが途中まで言ったところで、
「レイラ王女、申し訳ありません」
綺麗な女性の声が、二人の後ろから聞こえた。
その姿を確認したリオは、
「フィレアさん!」
ーーと。
先程、公園で会った女性ーーフィレアがいたのだ。
とても綺麗な、淡い桜色のパーティ用ドレスを着て。
「レイラ王女、申し訳ありませんが‥‥彼女は私と踊る約束をしていたのです」
フィレアのその言葉に、リオは更に目を丸くした。
「え?約束なんてして‥‥むごっ」
フィレアはリオの口を急いで手で塞ぐ。
「でっ‥‥ではそういうことで!失礼します!」
フィレアはそのままリオを連れて、パーティ会場の人気の多い所に走り去った。
「なっ‥‥なんなのぉ!!?」
レイラは一人、取り残され、
「ちょっとカシルさん!急いでリオとあの女性を捜しますよ!人の友達を勝手に連れて行くなんて‥‥!!」
レイラは必死になり、壁に凭れ、先程までのやりとりをどうでもよさげに見ていたカシルに言った。
(幼稚だな)
カシルは了承しながらも、心の中でそう思う。
しかし、そこで曲が流れ始めてしまった。
人々は自然とペアを組み、ダンスが始まって入り乱れている。
「あーっ!始まっちゃった!これじゃ、リオがどこに紛れてるか分からないじゃない!」
レイラはそう叫んだ後、不思議そうな表情をした。
カシルがレイラの手を軽く取ったのだ。
「えっ‥‥あっ、あの‥‥?」
「相手がいないのなら、私と一曲いかがですか?レイラ様」
なんて言われて。
初めてカシルを見た時と同じように、レイラはただ、静かにカシルを見つめた。
◆◆◆◆◆
流れるゆったりとした音色。
男女が優雅に踊る美しい空間で、リオは苦い顔をしていた。
「なぜ、私とフィレアさんが女同士で踊っているのでしょう」
そうーーフィレアはリオを連れて行った後、そのまま踊り出したのだ。
「しっ‥‥仕方ないじゃない。いきなり曲が始まるんですもの。踊ってないと不自然よ」
フィレアは溜め息を吐き、
「身長は‥‥あなた低すぎて大変だけどね。まあ、あなた見た目男の子っぽいし‥‥端から見て違和感はないでしょう」
そう言った。
リオは身長146センチ辺り。
フィレアは170センチ辺り。
少し、踊りにくい。
「ただ、あなたともう少し話がしたかったのよ。カシルについて」
フィレアが言うので、リオは真っ直ぐに彼女の顔を見た。
「私達二人で、カシルからシュイア様とカシルの関係を聞きださない?それで、カシルが悪者だったら取っ捕まえましょう!」
フィレアはリオにウインクを投げる。
「えっ!?私!?むっ、無理ですよ‥‥」
リオは苦い顔をし、
「私、あの人苦手です!人のこと馬鹿にするし‥‥絶対いつかあの人に殺されます私!なんかそんなこと言われましたから!」
リオは絶対嫌だと必死に訴えるが、
「でも、知りたくないの?二人の関係」
フィレアはじっとリオの瞳を見つめ‥‥
「ううっ‥‥それは‥‥」
二人の関係は『敵』。
それは聞いているが‥‥真意はわからない。
知りたいが、カシルのことを聞くと、シュイアは苦しそうな顔をする。
リオはそのことを思い出した。
「私はやっぱり、シュイアさんを捜します」
リオが言うので、フィレアは不思議そうにリオを見る。
「カシルさんのことはシュイアさんに任せるべきです。だって、シュイアさんはずっとカシルさんを追っているんですから!理由を知らない私達が勝手なこと、できませんよ」
そう言って、リオはフィレアに微笑みかけた。
だが、フィレアは苦い表情を返してきて、
「それは、わかる。でも‥‥シュイア様のお役に立ちたいのよ、私は‥‥」
「フィレアさん?」
ーーしん‥‥と、辺りは静寂に包まれる。
曲が終わった。
周りで踊っていた人々も、曲の終わりと同時に動きを止める。
「私はカシルから絶対に聞き出してみせるわ!そしてカシルがシュイア様に害をなす者であれば、私がこの手で‥‥!」
フィレアは厳しい表情をして、そう言ってリオの元から走り去った。
「えっ!?フィレアさん!?」
彼女のそんな様子にリオは驚くしかない。
(ちょっ‥‥ちょっと待って!今の言い方‥‥フィレアさんはカシルさんを殺すつもりなの!?ダメだよ!シュイアさんは今もきっとカシルさんを捜してるんだ‥‥!)
なぜ、フィレアがそこまでカシルに執着するのかが全く分からない。
(‥‥そっ、そうだ。レイラちゃんはどうなったかな?)
◆◆◆◆◆
カシルはダンス曲が終わってもまだ、レイラの手を握っていた。
「なっ‥‥それはどういう‥‥?」
レイラはカシルに疑問の言葉を投げ掛ける。
「聞こえませんでしたか?」
カシルはレイラの顔に自分の顔をゆっくりと近付け、真っ直ぐにレイラの赤い瞳を見つめた。
どくんどくんと、レイラの鼓動が大きく鳴る。
「簡単に言えばーー俺に協力しろと言っているんだ、レイラ」
カシルはそう言って、レイラの唇に口付けた。
「ーー!!?」
レイラはわけがわからず、そのまま止まっていた。
短い口付けを終え、
「なっ‥‥何をっ」
レイラは顔を真っ赤にして、それだけを言う。
◆◆◆◆◆
「え?」
レイラを捜しに来たリオは小さく声を上げた。
彼女とカシルの姿を見つけはしたが、二人はーー‥‥
「何してるんだろ?」
ただ、二人が近くに居て、離れて‥‥
その後で深刻な顔をして何かを話していたので、なんだか近づきにくくて、二人に気付かれないようにリオはその場を離れた。
だから、リオが見たのはここまで。
二人がこの後、何を話したのか、それはまだ、知らない。
◆◆◆◆◆
パーティ会場を後にし、城から出たリオは宿屋に戻った。
外はもう真っ暗だ。
(レイラちゃんとカシルさん、何を話してたんだろ?)
ソファーに座り、ぼんやりと考える。
「‥‥っ」
すると急に、ゾッと悪寒がした。
カシャンーー‥‥
身震いしたせいで、リオはズボンのポケットに入れていた青いストーンを落としてしまう。
(友達‥‥)
リオはその言葉の意味と、レイラの顔を思い浮かべた。
(会って間もない人のことを、どうしてレイラちゃんは友達だなんて言えるんだろう)
リオはストーンを拾い上げ、天井にかざす。
(ハトネさんもそうだった。会って間もないのに、すぐに私に打ち解けて)
リオはストーンを天井にかざしたまま、ベットに寝転がる。
(いつも会う度に‥‥カシルさんからは嫌な感じがする。レイラちゃんの護衛だって言うけど‥‥本当に大丈夫なのかな?シュイアさんがいれば、ちゃんと判断してくれるのにな。私じゃ分からない‥‥情けないな‥‥)
リオは自分自身にため息を吐いた。
(シュイアさんを捜しに行きたいけど、このままフィレアさんを放っておくわけにもいかないかな)
放っておいたら、フィレアはカシルをーー?
いや、もしくはカシルがフィレアをーー?
(フィレアさんはシュイアさんの知り合い。でも、シュイアさんはカシルさんをずっと捜してる。どちらもシュイアさん絡みの人。なんとかシュイアさんがこの国に戻ってくるまで、二人を無事のままでいさせなきゃ)
リオは目を閉じる。
(フィレアさんやカシルさんだけじゃない、か。レイラちゃんとカシルさんがあんなに深刻な顔をして何を話してたのか、気になるなぁ‥‥)
考えている内に、リオはそのまま眠ってしまった。
◆◆◆◆◆
コンコンーー‥‥リオのいる部屋のドアがノックされる。
リオはベッドからゆっくり起き上がった。
窓の外を見ると、すっかり朝になっている。
(‥‥誰だろ)
ぼんやりした頭のまま、リオはドアを開けた。
「リオ、おはよう」
こんな朝からドアの外にいたのはレイラで、
「‥‥あれ、どうしたの?レイラちゃん」
「用がなきゃ来ちゃいけないの?」
レイラはむっとする。
「うっ、ううん‥‥そうじゃないけど‥‥」
リオはきょろきょろとレイラの周りを見た。
「あれ?カシ‥‥護衛の方は?」
リオはカシルがいないことに気付く。
「え?いえ‥‥その、たまにはいいじゃない」
レイラは苦笑いした。
(昨日、やっぱり何かあったのかな)
リオはそう感じ、
「レイラちゃん、私が言うことじゃないけど‥‥」
いつも穏やかな表情ばかりするリオが、急に真剣な顔をしてレイラを見るので、その表情にレイラは少し戸惑う。
「その護衛の‥‥カシルさんにはあまり、近付かない方がいいと思う」
「‥‥え?」
レイラは目を丸くした。
「あの人は、なんとなくだけど‥‥危ない気がする。レイラちゃんに危険が及ぶかもしれない‥‥」
カシルはシュイアを殺そうとしたのだから、安全な人物でないことは確かだ。
「なっ‥‥何?それ‥‥」
レイラがリオをきつく睨んできたので、今度はリオが目を丸くした。
「カシルさんは優しい方よ、なんでそんなこと言うの?」
レイラの思いもよらない言葉に、リオは言葉を失う。
すると、レイラは慌てて自身の口元に手をあて、
「あっ‥‥ごめんなさいリオ。私、何言ってるのかしら‥‥」
「えっ、いや‥‥なんだか、ごめんね。私、カシルさんのことあんまり知らないのに‥‥見かけで判断しちゃって‥‥」
ーー今思えば、あの時ちゃんと止めておけば良かったなんて。
そんな後悔をしたのはこれが初めてで、これから幾度もそんな後悔を繰り返すのだ。
パーティ会場内ーーレイラが挨拶回りを終え、リオの元に戻って来た。
リオは人気のない所にいたので、レイラはそのままその場にしゃがみ込む。
王女様がこんな所でしゃがみ込むだなんて、誰も思わないだろう。
リオはそんなレイラを見て、思わず吹き出した。
なんだか、悩んでいた自分が馬鹿馬鹿しくなるほどに。
そして一言、
「お疲れ様」
と、笑いながら言ってみた。
「そうよ!お疲れなの、おーつーかーれ!」
レイラは少しだけ嬉しそうにしながら大袈裟に言う。
「あっ、そうだわ。今からダンスパーティよ。相手はいる?」
「は?」
レイラがいきなりそんなことを言うので、リオは目を丸くした。
「だから、今からダンスパーティなの。相手がいないなら私と‥‥」
レイラが途中まで言ったところで、
「レイラ王女、申し訳ありません」
綺麗な女性の声が、二人の後ろから聞こえた。
その姿を確認したリオは、
「フィレアさん!」
ーーと。
先程、公園で会った女性ーーフィレアがいたのだ。
とても綺麗な、淡い桜色のパーティ用ドレスを着て。
「レイラ王女、申し訳ありませんが‥‥彼女は私と踊る約束をしていたのです」
フィレアのその言葉に、リオは更に目を丸くした。
「え?約束なんてして‥‥むごっ」
フィレアはリオの口を急いで手で塞ぐ。
「でっ‥‥ではそういうことで!失礼します!」
フィレアはそのままリオを連れて、パーティ会場の人気の多い所に走り去った。
「なっ‥‥なんなのぉ!!?」
レイラは一人、取り残され、
「ちょっとカシルさん!急いでリオとあの女性を捜しますよ!人の友達を勝手に連れて行くなんて‥‥!!」
レイラは必死になり、壁に凭れ、先程までのやりとりをどうでもよさげに見ていたカシルに言った。
(幼稚だな)
カシルは了承しながらも、心の中でそう思う。
しかし、そこで曲が流れ始めてしまった。
人々は自然とペアを組み、ダンスが始まって入り乱れている。
「あーっ!始まっちゃった!これじゃ、リオがどこに紛れてるか分からないじゃない!」
レイラはそう叫んだ後、不思議そうな表情をした。
カシルがレイラの手を軽く取ったのだ。
「えっ‥‥あっ、あの‥‥?」
「相手がいないのなら、私と一曲いかがですか?レイラ様」
なんて言われて。
初めてカシルを見た時と同じように、レイラはただ、静かにカシルを見つめた。
◆◆◆◆◆
流れるゆったりとした音色。
男女が優雅に踊る美しい空間で、リオは苦い顔をしていた。
「なぜ、私とフィレアさんが女同士で踊っているのでしょう」
そうーーフィレアはリオを連れて行った後、そのまま踊り出したのだ。
「しっ‥‥仕方ないじゃない。いきなり曲が始まるんですもの。踊ってないと不自然よ」
フィレアは溜め息を吐き、
「身長は‥‥あなた低すぎて大変だけどね。まあ、あなた見た目男の子っぽいし‥‥端から見て違和感はないでしょう」
そう言った。
リオは身長146センチ辺り。
フィレアは170センチ辺り。
少し、踊りにくい。
「ただ、あなたともう少し話がしたかったのよ。カシルについて」
フィレアが言うので、リオは真っ直ぐに彼女の顔を見た。
「私達二人で、カシルからシュイア様とカシルの関係を聞きださない?それで、カシルが悪者だったら取っ捕まえましょう!」
フィレアはリオにウインクを投げる。
「えっ!?私!?むっ、無理ですよ‥‥」
リオは苦い顔をし、
「私、あの人苦手です!人のこと馬鹿にするし‥‥絶対いつかあの人に殺されます私!なんかそんなこと言われましたから!」
リオは絶対嫌だと必死に訴えるが、
「でも、知りたくないの?二人の関係」
フィレアはじっとリオの瞳を見つめ‥‥
「ううっ‥‥それは‥‥」
二人の関係は『敵』。
それは聞いているが‥‥真意はわからない。
知りたいが、カシルのことを聞くと、シュイアは苦しそうな顔をする。
リオはそのことを思い出した。
「私はやっぱり、シュイアさんを捜します」
リオが言うので、フィレアは不思議そうにリオを見る。
「カシルさんのことはシュイアさんに任せるべきです。だって、シュイアさんはずっとカシルさんを追っているんですから!理由を知らない私達が勝手なこと、できませんよ」
そう言って、リオはフィレアに微笑みかけた。
だが、フィレアは苦い表情を返してきて、
「それは、わかる。でも‥‥シュイア様のお役に立ちたいのよ、私は‥‥」
「フィレアさん?」
ーーしん‥‥と、辺りは静寂に包まれる。
曲が終わった。
周りで踊っていた人々も、曲の終わりと同時に動きを止める。
「私はカシルから絶対に聞き出してみせるわ!そしてカシルがシュイア様に害をなす者であれば、私がこの手で‥‥!」
フィレアは厳しい表情をして、そう言ってリオの元から走り去った。
「えっ!?フィレアさん!?」
彼女のそんな様子にリオは驚くしかない。
(ちょっ‥‥ちょっと待って!今の言い方‥‥フィレアさんはカシルさんを殺すつもりなの!?ダメだよ!シュイアさんは今もきっとカシルさんを捜してるんだ‥‥!)
なぜ、フィレアがそこまでカシルに執着するのかが全く分からない。
(‥‥そっ、そうだ。レイラちゃんはどうなったかな?)
◆◆◆◆◆
カシルはダンス曲が終わってもまだ、レイラの手を握っていた。
「なっ‥‥それはどういう‥‥?」
レイラはカシルに疑問の言葉を投げ掛ける。
「聞こえませんでしたか?」
カシルはレイラの顔に自分の顔をゆっくりと近付け、真っ直ぐにレイラの赤い瞳を見つめた。
どくんどくんと、レイラの鼓動が大きく鳴る。
「簡単に言えばーー俺に協力しろと言っているんだ、レイラ」
カシルはそう言って、レイラの唇に口付けた。
「ーー!!?」
レイラはわけがわからず、そのまま止まっていた。
短い口付けを終え、
「なっ‥‥何をっ」
レイラは顔を真っ赤にして、それだけを言う。
◆◆◆◆◆
「え?」
レイラを捜しに来たリオは小さく声を上げた。
彼女とカシルの姿を見つけはしたが、二人はーー‥‥
「何してるんだろ?」
ただ、二人が近くに居て、離れて‥‥
その後で深刻な顔をして何かを話していたので、なんだか近づきにくくて、二人に気付かれないようにリオはその場を離れた。
だから、リオが見たのはここまで。
二人がこの後、何を話したのか、それはまだ、知らない。
◆◆◆◆◆
パーティ会場を後にし、城から出たリオは宿屋に戻った。
外はもう真っ暗だ。
(レイラちゃんとカシルさん、何を話してたんだろ?)
ソファーに座り、ぼんやりと考える。
「‥‥っ」
すると急に、ゾッと悪寒がした。
カシャンーー‥‥
身震いしたせいで、リオはズボンのポケットに入れていた青いストーンを落としてしまう。
(友達‥‥)
リオはその言葉の意味と、レイラの顔を思い浮かべた。
(会って間もない人のことを、どうしてレイラちゃんは友達だなんて言えるんだろう)
リオはストーンを拾い上げ、天井にかざす。
(ハトネさんもそうだった。会って間もないのに、すぐに私に打ち解けて)
リオはストーンを天井にかざしたまま、ベットに寝転がる。
(いつも会う度に‥‥カシルさんからは嫌な感じがする。レイラちゃんの護衛だって言うけど‥‥本当に大丈夫なのかな?シュイアさんがいれば、ちゃんと判断してくれるのにな。私じゃ分からない‥‥情けないな‥‥)
リオは自分自身にため息を吐いた。
(シュイアさんを捜しに行きたいけど、このままフィレアさんを放っておくわけにもいかないかな)
放っておいたら、フィレアはカシルをーー?
いや、もしくはカシルがフィレアをーー?
(フィレアさんはシュイアさんの知り合い。でも、シュイアさんはカシルさんをずっと捜してる。どちらもシュイアさん絡みの人。なんとかシュイアさんがこの国に戻ってくるまで、二人を無事のままでいさせなきゃ)
リオは目を閉じる。
(フィレアさんやカシルさんだけじゃない、か。レイラちゃんとカシルさんがあんなに深刻な顔をして何を話してたのか、気になるなぁ‥‥)
考えている内に、リオはそのまま眠ってしまった。
◆◆◆◆◆
コンコンーー‥‥リオのいる部屋のドアがノックされる。
リオはベッドからゆっくり起き上がった。
窓の外を見ると、すっかり朝になっている。
(‥‥誰だろ)
ぼんやりした頭のまま、リオはドアを開けた。
「リオ、おはよう」
こんな朝からドアの外にいたのはレイラで、
「‥‥あれ、どうしたの?レイラちゃん」
「用がなきゃ来ちゃいけないの?」
レイラはむっとする。
「うっ、ううん‥‥そうじゃないけど‥‥」
リオはきょろきょろとレイラの周りを見た。
「あれ?カシ‥‥護衛の方は?」
リオはカシルがいないことに気付く。
「え?いえ‥‥その、たまにはいいじゃない」
レイラは苦笑いした。
(昨日、やっぱり何かあったのかな)
リオはそう感じ、
「レイラちゃん、私が言うことじゃないけど‥‥」
いつも穏やかな表情ばかりするリオが、急に真剣な顔をしてレイラを見るので、その表情にレイラは少し戸惑う。
「その護衛の‥‥カシルさんにはあまり、近付かない方がいいと思う」
「‥‥え?」
レイラは目を丸くした。
「あの人は、なんとなくだけど‥‥危ない気がする。レイラちゃんに危険が及ぶかもしれない‥‥」
カシルはシュイアを殺そうとしたのだから、安全な人物でないことは確かだ。
「なっ‥‥何?それ‥‥」
レイラがリオをきつく睨んできたので、今度はリオが目を丸くした。
「カシルさんは優しい方よ、なんでそんなこと言うの?」
レイラの思いもよらない言葉に、リオは言葉を失う。
すると、レイラは慌てて自身の口元に手をあて、
「あっ‥‥ごめんなさいリオ。私、何言ってるのかしら‥‥」
「えっ、いや‥‥なんだか、ごめんね。私、カシルさんのことあんまり知らないのに‥‥見かけで判断しちゃって‥‥」
ーー今思えば、あの時ちゃんと止めておけば良かったなんて。
そんな後悔をしたのはこれが初めてで、これから幾度もそんな後悔を繰り返すのだ。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
君は妾の子だから、次男がちょうどいい
月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり

【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

【完結】ドアマットに気付かない系夫の謝罪は死んだ妻には届かない
堀 和三盆
恋愛
一年にわたる長期出張から戻ると、愛する妻のシェルタが帰らぬ人になっていた。流行病に罹ったらしく、感染を避けるためにと火葬をされて骨になった妻は墓の下。
信じられなかった。
母を責め使用人を責めて暴れ回って、僕は自らの身に降りかかった突然の不幸を嘆いた。まだ、結婚して3年もたっていないというのに……。
そんな中。僕は遺品の整理中に隠すようにして仕舞われていた妻の日記帳を見つけてしまう。愛する妻が最後に何を考えていたのかを知る手段になるかもしれない。そんな軽い気持ちで日記を開いて戦慄した。
日記には妻がこの家に嫁いでから病に倒れるまでの――母や使用人からの壮絶な嫌がらせの数々が綴られていたのだ。

僕は君を思うと吐き気がする
月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

お飾り王妃の死後~王の後悔~
ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。
王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。
ウィルベルト王国では周知の事実だった。
しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。
最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。
小説家になろう様にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる